コラム 第四回

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小字の行方を追う」

明治の地租改正で新しい小字が設置されてから現在に至るまでに多くの小字が消滅している。小字が消滅する理由の大半は、町名地番整理や住居表示実施により町が新設される際に、旧来の小字が廃止されることによるものである。そこで、どの小字区域がどの町区域に変更されたかがわかれば、旧小字と新町名の対応を取ることができる。ただし、小字区域と町区域は完全には一致しないため、一つの旧小字が複数の町名に対応することになる。

町名地番変更の場合、県や市町村の告示によって変更があった区域が地番とともに示されることが多く、小字も記載されている。一方、住居表示実施においては、告示には変更区域がおおまかな地図と境界情報のみで示され、小字も記載されないことが多いこれは埼玉県だけのことかと思ったが、どうやら全国共通の事務手続きマニュアルがあるらしく、だいたいはそれに沿って記載されるようだ。

そこで、住居表示実施の場合は、告示以外にもさまざまな行政資料を調べて対応付けを行うことになる。しかし、どうしてもそのような資料が見つからないときは、一つ裏技がある。住居表示が実施されると、住所は町名・街区符号・住居番号からなるものが新しく付与されるが、地番は新町名と従前の地番を合わせたものとなる。したがって、小字と地番の対応が付く資料があれば、住居表示地番対照地図(ブルーマップ)を用いて旧小字と新町名の対応が付けられる。

同じ区域に町名地番変更や住居表示実施が二度以上行われると、追跡はかなり難しくなる。一つ一つ地番を追っかけていけば対応はつけられるのかもしれないが、さすがに大変なので、本サイトでは最初の変更分だけしか記載していない。

小字区域に新設されるのは町とは限らず、新しい大字や小字が新設される場合もある。また、字区域の変更の際に他の小字に編入されて消滅する場合もある。かつて存在した小字が現代において消滅してしまっているとき、さまざまな原因を考えて追跡を行う必要がある。

そもそもある小字が完全に消滅したかどうかも簡単にはわからない場合があるのだが、これについても地番からある程度は推測が立てられる。怪しい場所については登記情報を取得すれば正解がわかるが、お金がかかるので最後の手段である。稀に残っている小字区域がすべて河川や道路などの番地がない場所であるときがあるが、この場合は現存確認がきわめて難しい。埼玉県の例では、小字区域がすべて貯水池になった例や、道路と鉄道用地に町名地番整理の残存区域が残っているなどがある。これらはある程度推測はできても、確実な証拠を見つけるのは難しい。

本サイトでは明治の地租改正以後に存在した小字の行方をすべて解明するのを一つの目標にしているが、その道のりは長くて厳しいものとなりそうだ。

 

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