1.「ギルスの主」
※「ニンギルス」については、「ニンウルタ」とは別の神格として扱っているが、両者は同一視が著しいため、必要に応じて「ニンウルタ」を参照していただきたい。
ニンギルスはシュメルの神で、ラガシュ市の主神(ニンギルスは「ギルスの主」の意、ギルスはラガシュ市の一市区)。戦闘神、植物神。『シュルギ王讃歌』ではルガルバガラという別名で呼ばれた。
2.ニンウルタ神との混濁、違い
別の神格であるニンウルタ(ニヌルタ)と本質的には同じであり、『ズーの神話』においては、名前がニヌルタだったりニンギルスだったり、もはや同一視されている。神話『ルガル神話』の主人公は元々ニンウルタでなくこのニンギルスであったという説(※参考「シュメル神話の世界」)、ニンウルタ神の地方形がニンギルスであるという説(参考:「メソポタミアの神々と空想動物」)など、2神を近しい神格として捉える解釈も多い。ニンギルスの配偶女神はバウ女神とされているが、ニンウルタの配偶女神が治癒女神であることと似通っており、やはり似ている。
ただ、似てはいてもそれぞれにオリジナリティがある。"ニンギルスらしさ" は、その名のとおりラガシュ(ギルス)に密着した神ということである。ニンギルスはラガシュ市ギルス地区の神だが、配偶女神バウはラガシュ市ラガシュ地区の女神、姉妹のナンシェ女神はラガシュ市シララ地区の女神である。
3.元々は女神だった・・・?
ニンギルスの謎は、その男神らしからぬ名前である。シュメルの神々の名前には、「エン」(男主人)or「ニン」(女主人)と付いているものが多く、「ギルスの主(男神)」としたいのであれば、 "エンギルス" となるのが自然だ。にもかかわらず、何故かニンギルス(厳密に言うと「ギルスの婦人」)なのである。このためニンギルスは、実は元々女神だったのではないかという説がある。
ニンギルス女神説については、その名前だけではなく、彼の属するラガシュ(※都市国家ラガシュは、ラガシュ地区やギルス地区などが連合した都市国家である)のほかの地区の神格――バウやナンシェ――が女神なので、ニンギルスもやはり女神だったのではないか、という考察もある。
4.その他
ニンギルスの聖数は50。彼の住まいはエニンヌ神殿で「50のメの家」を意味する。
(出典神話等)
『グデアの神殿讃歌』、『シュルギ王とニンリル女神の聖船』、『ズーの神話』、
『ババ女神讃歌』、『ルガルバンダ叙事詩』、『ルガル神話』
(参考文献)
「シュメル神話の世界」、「メソポタミアの神々と空想動物」、「古代メソポタミアの神々」
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