アヌンナキ

ページ名:アヌンナキ

1.神々の集団

 シュメルの神々の集団で、50~60柱以上のまとまりを指す。シュメル語「A.NUN.NA」(君侯の種)から派生、「神々の貴公子ら」を意味する。ただ、その総称は宗教文学作品のみに限られるようであり、実信仰上において「アヌンナキ」が信仰対象となったかは不明。


2.「アヌンナキ」と「イギギ」の違い

 「アヌンナキ」と「イギギ」は、ともに神々の集団を意味する言葉だが、微妙に用例が違うようで、検討が必要。アヌンナキは、全神々のまとまりを指して使われる場合もあるが、より限定的には「冥界の神々」を指して使われる場面が多い。『イナンナの冥界下り』では、冥界にいるイナンナを裁く役割の神々を「アヌンナキ」と呼んでおり、『ナンナル神に対する「手をあげる」祈祷文』では、イギギが天の神々を指しているのに対し、アヌンナキは冥界の神々を指している。この他、『ネルガルとエレシュキガル』、『ギルガメシュ叙事詩』注釈でも同様である。
 「イギギ」については、前述の『ナンナル~』と似た表現が『エラ神話』にある。同神話の「天上まで私は昇っていって、イギギに命令をしよう。アプスーのところに私は降っていて、アヌンナキを見守ろう。」という言葉は、イギギは上方向の神々の総称、アヌンナキは下方向の神々の総称という傾向を端的に示している。
 なお「古代オリエント事典」では、アヌンナキ(アヌンナック)とイギギ(イギグ)の用例について、古くはアヌンナキがイギギの上に位置され、しかし前2千年紀になるとアヌンナキは地上あるいは地下の神々を指すことが多くなったと整理している。
 ただ必ずしも左記の例が当てはまるわけではない。『エヌマ・エリシュ』では「すべての神々」(すなわち全神々の集団)の意味でアヌンナキを用いている箇所があり、また『アトラ・ハシス物語』では、「七人の大神アヌンナキは、イギギに仕事を負わしめていた。」という書き方をしており、特定のアヌンナキたちがより高位の神として君臨しているような表現である。似た言葉であるだけに、使い分けが難しそうだ。


(出典神話等)
 『イナンナの冥界下り』、『ナンナル神に対する「手をあげる」祈祷文』、『ネルガルとエレシュキガル』、
 『ギルガメシュ叙事詩』、『エヌマ・エリシュ』、『アトラ・ハシス物語」
(参考文献)
 「古代メソポタミアの神々」、「古代オリエント事典」

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