1.『クマルビ神話』のあらすじ
ヒッタイトの男神。ヒッタイトの神話『クマルビ神話』において、印象的な敵役として語られる。
同神話において、主アヌに反旗を翻して玉座に着くが、アヌの精液を飲み込んだことにより天候神(テシュプ神)を体内に宿し、やがて逆襲にあう。
『クマルビ神話』後半(『ウルリクムミの歌』)では、天候神への復讐心を逞しくし、ウルキシャ(クマルビの信仰地。ハブル河沿岸の町)を出て、冷たい泉のそばの岩に精液を与えて子を宿させる。岩に産ませた子、ウルリクムミを海中に隠し育て、神々への逆襲を謀るのであった…
2.『クマルビ神話』と他の神話との比較
『クマルビ神話』と、伝統的なメソポタミアの神話との関係について触れる。
クマルビが海と結んで天候神に対立するという構図は、バビロニアの天地創造神話(『エヌマ・エリシュ』)におけるティアマトを思い起こさせる。また、英雄的な存在(『クマルビ神話』においては天候神、『エヌマ・エリシュ』においてはマルドゥク)が敵役を倒し、世界を平定し新しい世代を確立するという筋立ても類似している。
ただ一方で、『クマルビ神話』の内容は、シュメル・バビロニアよりもギリシア神話に近いという指摘がある。一つの根拠として、この話には、天地創造性が全くない(※神話『エヌマ・エリシュ』は、天地創造、世界の有り様を語っているのが一つの特徴だが、『クマルビ神話』にはそれがない)。ギリシア神話において、息子クロノスが父ウラノスを討ち、息子ゼウスが父クロノスを討つ構図は、『クマルビ神話』に類似している(※『クマルビ神話』では、アラル神→アヌ神→クマルビ神(更に→天候神)という順番で覇権が移り変わる。参考図書「古代メソポタミアの神々」においては、クマルビはエンリルと同一視されており、アヌ神の息子だという。もし、アラル神がアンシャル神を指すのであれば(※「アラル」を参照)、アラル-アヌ-クマルビの神統譜は、ギリシア神話の流れと一致するか)
以上のことから、英雄が敵を倒して世界を秩序付ける話はシュメル・バビロニアから存在し、アナトリア(ヒッタイト)を通過してギリシアへ移入された可能性も指摘されている。
3.ヒッタイト語版『ギルガメシュ叙事詩』、その他
ヒッタイト語版『ギルガメシュ叙事詩』(月本訳)において、クマルビの名が出てくる
また、ウガリトにおいては、エル神と同一視される。
4.参考動画
以下、クマルビについての参考動画です。

【東方MMD】 クマルビ神話Part① 【ヒッタイト神話】(https://www.nicovideo.jp/watch/sm30019047)
(主な参考文献)
「古代オリエント集(※クマルビ神話解説文)」、「古代メソポタミアの神々」
(出典神話等)
『クマルビ神話』、『ギルガメシュ叙事詩(※ヒッタイト語版)』
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