1.慈悲深いとりなしの女神
ラマ女神は、シュメルの慈恵女神、守護女神であり、人と神の間をとりなしてくれる存在。(「シュメルには誰でも守護してくれるラマ女神のようなありがたい女神もいた」とは、参考図書「古代メソポタミアの神々」の一文である)。
シュメルから新バビロニアまで長期にわたって信仰された女神。円筒印章の図柄において、人間の手を引き高位の神に引き合わせてくれるラマ女神の姿が認められる。レナード・ウーリーの「カルデア人のウル」(p.266)によれば、ヘンドゥルサグ礼拝堂の一角でラマ女神の青銅肖像が発掘されたという(残念ながら同ページの写真は女性礼拝者像であり女神像でない)。ウーリーの解説によれば「死者のためにより偉大な神々の仲介の役を果たす女神ラマ」と記され、仲介は仲介でも死者の仲介という位置づけがなされている(※ウーリー以外に、死者と限定しているものは他に見ないが…)。
2.女神から動物像へ ―― ラマッス
アッシリアの王宮や神殿の門を守る像(有翼人面牡牛像、有翼人面獅子像)は、ラマッスと呼ばれている。このラマッスは、どうやらこのラマ女神を元としているようである。
有翼、無翼の人面動物は、シュメル都市国家時代からあるメソポタミア美術の伝統的な題材であるが、門の守護神として巨大な像が造られるようになるのはアッシリアの時代から。伝統的な有翼人面動物のモチーフと、これまた伝統的に存在していたラマ女神を融合してしまった経緯は不明で、謎深い。
ラマッス像の美的特徴としては、正面から見ても、側面から見ても四つ足に見えるように、全部で五本脚が刻まれていること。
3.「古代メソポタミア」の象徴となったラマッス
発掘史に目を転じた場合、ラマッス像の存在は意義深い。19世紀西欧列国に発するメソポタミア熱は、相次いで砂の下に埋まっていた遺跡を掘り起こさせた。その中でも、巨大なラマッス像の発掘は視覚的にセンセーショナルであり、「古代メソポタミア」を象徴するものの一つとして認識された。
現在、発掘されたラマッス像は欧米に点在する(ロンドン、パリ、ベルリン(ベルリンのものはレプリカ)、シカゴ、ニューヨーク)。古代中東(アッシリア)で崇められたラマッスが(…そして、遠い昔に忘れ去られ、砂の下で眠っていたラマッスが)、掘り起こされ、遠く離れた欧米に連れて来られたことは、アッシリア学の功罪を物語っている。
4.参考動画
以下、ラマ(ラマッス)についての拙作参考動画です。よろしければどうぞ。
ゆかり「霊鳥だって女神様だって変身するんです!」【A.I.VOICE解説・雑談5】
(https://www.nicovideo.jp/watch/sm39614271)
(出典神話等)
『テリピヌ伝説』
(参考文献)
「古代メソポタミアの神々」、「オリエントの印章」、「カルデア人のウル」、
「古代メソポタミアの神々」、「メソポタミアの神々と空想動物」
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