フワワ(フンババ)

ページ名:フワワ(フンババ)

1.森を守る怪物

 フワワ、フンババ。森を守る怪物。『ギルガメシュ叙事詩』において、ギルガメシュは森の番人であるフンババ征伐を志す(※もともとの話は、シュメルの『ビルガメシュとフワワ』)。


2.フンババの容貌

 フンババの容貌について、いくつかの参考を紹介。
 卜占において語られるフンババの顔は「鼻の根元が細く、鼻の先が太く、眼が以上に大きい」とされている。こうした特徴は、遺跡などから見つかっているフンババの顔をした魔除け、護符に近しい。
 また、月本昭男訳『ギルガメシュ叙事詩』古バビロニア版注釈では「頭」が複数形となっている。これを文字どおりにとるならば、フワワは複数の頭を持つ可能性がある。


3.フンババの神性

 魔除けや護符が見つかっていることは、フンババがただ恐ろしい怪物であるだけでなく、神性をまとっていることを意味する。そもそも、フンババを杉の森の番人に置いたのはエンリル神であり(『ギルガメシュとフワワ』においては、杉の森はウトゥ神の管轄域)、フンババに神性があるのは当然ともいえる。
 遺跡テル・エル・マリでは、神殿の出入り口にフンババの頭をあしらった飾りが二つあったことがわかっており(参考「オリエントの印章」)、レナード・ウーリー著「カルデア人のウル」によれば、ウルの「繁華街」について詳述するくだりで「第二の戸の楣のところには、たいていフンババ神のテラコッタ面がかかっている、ともある。「熱病をもたらす南西風を払うまじないである」と書かれており、おそろしいフンババの姿は人を守る力に使おうという人の願いが垣間見える。
 なお2016年春に、イラクのウルにおいてイラク・アメリカ合同チームによる発掘が再開されたが、ここでもフンババの護符が見つかったようだ。そのことは、先述のウーリーの言葉と符合するだろうか。


4.新発見によって示唆される、森の文化性

 2015年に、ギルガメシュ叙事詩の失われていた書板が発見されたと話題になった。
 その新文書について記している渡辺和子「『ギルガメシュ叙事詩』の新文書」によれば、杉の森の中では虫や鳥や猿たちの合唱を表した箇所がある。これをして渡辺は「新文書によって明らかになったことのうちには、このような自然賛歌がメソポタミア文学のなかにあったという驚くべき事実がある。~中略~この箇所においてフンババは決して下等でも野蛮でもなく、驚嘆すべき豊かな森で、「文化的」に、尊重されて暮らしていることが示されている」と評価している。
 渡辺女史が論じるように、古代メソポタミアの神話・世界観を通じてこのような自然賛歌の描写は珍しく、注目に値する。


5.そのた

 なお、前3000年紀から前1000年紀のものとみられるギルガメシュとエンキドゥがフンババを殺す場面を示す図像(テラコッタ)が多く発掘されている。『ギルガメシュ叙事詩』あるいはそれが成立する以前から、継続的に作られてきたとみられるが、題材として人気があったのであろうか…?


6.参考動画

 以下、フンババについての参考動画です(拙作参考)。
 


 ゆっくりギルガメシュ 第7話 森の守り手フンババ(https://www.nicovideo.jp/watch/sm23518562


(出典神話等)
 『ギルガメシュ叙事詩』、『ギルガメシュと<生者の国>』、『ギルガメシュ卜占集』、『ビルガメシュ神の死』
(参考文献)
 「オリエントの印章」、「カルデア人のウル」、「『ギルガメシュ叙事詩』の新文書」、「古代オリエント事典」

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