1.火と光の神
※この項では、ギビル神とギラ神を同一の神として扱っています。
ギビル(シュメル語)、ギラ(ギッラ。アッカド語)は、火と光の神。その属性ゆえ破壊性を有する存在として描かれることがあり、『ウル滅亡哀歌』においてエンリル神が都市の滅亡を決定した時、ギビルを「自分の助手」とした。
コラム:ジャン・ボテロ「最古の料理」によれば、火の神格化は非常に古く少なくとも前3000年紀の早い段階から神格化されたようである。シュメル語ギビルは、「葦」(gi)と「炎をあげる」(bil)からなるものであり、火はもともと自然発火によるものと認識されていたのであろう。 |
2.祈祷、ランプ
火神であるため、それを起点として派生的に属性を獲得していく。
祈禱において占い師や呪術師は火を焚くため、この時ヌスクに嘆願するのが通例となった。またカッシート時代からは、ヌスク神の象徴としてランプが用いられるようになる。
3.清潔さ、暴力性
火神の名は、バビロニアの神話『エヌマ・エリシュ』においても取り上げられている。同神話のクライマックスは、マルドゥク神の50の名が列挙されているが、その中にギビルの名が含まれている。当該箇所では、ギビル以外にも「旧来の神々の名がマルドゥクの別名」として描かれており、このことマルドゥク神の権威付けを神話的に補完する効果があったものと考えられる。
ギビル(ギラ)の名は『エラの神話』でも取り上げられている。エラ神はバビロンから退くマルドゥク神に向かって「あなたがこの家に入り、神ギラがあなたの衣服を浄め、あなたが再び帰ってくるまで~」と語り掛ける。また後半では「火の神(ギラ)のように焼いた」とあり、攻撃的な属性を見せる(このほか、『バビロニアの神義論』においても、「火神ギラ」の名が挙がっている)。
火は古くから人類の文明・生活に関わっており、儀式の場で用いられる火の清潔さや、あらゆるものを飲み込む火の暴力性は、神話上におけるギビルの扱い方に如実に表れている。
4.神統譜
神統譜においては揺らぎがあり、知恵の神エンキの子とされる場合、光の神ヌスクの子とされる場合、アヌ神とシャラ女神の子とされる場合もある(※ヌスク神は「光の神」、「エンリル神の侍従」であるため、ギビル神の「火の神」、「(エンリル)自分の助手」という肩書とすこぶる相性がよく見える)
配偶は豊穣、性愛の女神イシュハラ。
(出典神話等)
『ウルの滅亡哀歌』、『イナンナ女神とエビフ山』、『エラの神話』、『バビロニアの神義論』、『ズーの神話』
(参考資料)
「古代メソポタミアの神々」、「メソポタミアの神々と空想動物」、「古代オリエント カミとヒトのものがたり」、「最古の料理」
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