1.メソポタミア随一の合成獣
ムシュフシュ、ムシュフッシュは合成獣で、サソリの尾をした竜。
メソポタミアには合成獣が多くいるが、蛇に関係するものが多い。湿地に住まう蛇がそのはじまりと思われる。ムシュフシュはシュメル語で「恐ろしい蛇」の意味であり、アッカド語においてもムシュフシュと言うのは、シュメル語からの借用。
ムシュフシュは、古代メソポタミア世界において最も有名な合成獣の一つであり、バビロンのイシュタル門に描かれた姿は古代美術の傑作として有名。
2.随獣 —— 大神のステータス…?
ムシュフシュは、バビロンの神であるマルドゥクの随獣として有名だが、実は、大神たちがムシュフシュを "ペットとして奪い合った結果" とも考えられる。
ムシュフシュは、古くはエシュヌンナ市の都市神ニンアズの随獣であったが、後のアッカド時代あるいは古バビロニア時代になると、ティシュパク神がエシュヌンナの都市神になったことから、ティシュパク神の随獣となる。更にラガシュでは、ニンアズ神の息子ニンギシュジダ神の随獣になっている。
その後、おそらくバビロンのハンムラビ王がエシュヌンナを征服したことで、バビロンの主神であるマルドゥク神の随獣となる。更には、その息子ナブ神の随獣となったほか、アッシリア王サンナケリブがバビロンを征服した後には、アッシュール神がムシュフシュを従えるようになってしまった。
言ってしまえば、自らの大神を権威づける宗教的・政治的な意味合いが強いが、特定の神の興隆に伴って、ムシュフシュは主を変える運命をたどった(ムシュフシュを従えることが、大神としてのステータスになった可能性…)。
なお神話上においては、『エヌマ・エリシュ』でティアマト女神が生み出す存在の一つとして描かれた。
※上記「2.」の考察については、特定の参考文献に記載された内容に、編者の考察を加えたものであることをおことわりしておきます。
3.図像の変化
ムシュフシュが変わった(変えた)のは、主だけでない。図像において、その姿は変化している。
ムシュフシュは、初期には首を絡ませた二頭(?)の姿で描かれていたが、新アッシリア時代には、主のそばで伏せ、いかにも随獣然とした姿で描かれるなど、幾つものバージョンで描かれている。
ただし、ムシュフシュの最も有名な姿といえば、イシュタル門に描かれた姿だと思われる。
4.「永劫の火」
ムシュフシュにかかる話として、野火にまつわる話がある。
イラクは油田地帯であり、石油の自然発火により野火が燃え続ける「永劫の火」という自然現象が発生しうる。古代メソポタミアの人々は、この "石油の自然発火した様" を、ムシュフシュとして畏怖したらしい。
5.参考動画
以下、ムシュフシュについての参考動画です。

【古代メソポタミア小話②】次々と主人を変えた…(https://www.nicovideo.jp/watch/sm35056660)
(出典神話等)
『エヌマ・エリシュ』
(参考文献)
「古代メソポタミアの神々」、「五〇〇〇年前の日常」、「古代オリエント事典」
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