1.ユーフラテス中・上流域に君臨した神
ダガン、(※特にペリシテ人の地で崇拝された場合は「ダゴン」)は、西方地域の主神にして穀物神(ダガンは「穀物」に関するヘブライ語、ウガリト語共通の言葉)。
ユーフラテス河上・中流域やシリアなど、西アジアにおいて幅広く信仰され、アッカド、マリ、エブラ、アッシリア、トゥトゥルなどで崇められた。時期としては、アッカド王朝期(前24世紀~前23世紀)やアッシリアの時代に厚く信仰を集め、人名にも多く登場するようになる
2.豊穣神
穀物神であるため、配偶女神は、セム系の穀物女神であるシャラ女神、あるいはイシュハラ女神と言われる。また、ある伝承では、ダガンは "犂の発明者" とされている。
ウル第3王朝時代には、ニップル市近郊に「プズリシュ・ダガン」(現代名ドレヘム)という穀倉地帯があったが、そこにダガンの公式な祭儀所があったとされている。また、冥界神、死者の裁判官とされることもあるのだが、豊穣に関係する神が冥界と接点を持つパターンの一例といえる。
3.シュメルに取り入れられた神
参考「メソポタミアの神々と空想動物」によれば、ダガンは元々は西方の神であったが、早々にシュメルの神に吸収され、エンリルの臣下になったという。それゆえに、バビロニア地域でも比較的高位の地位を占めたことは間違いないようで、『ハンムラビ法典』碑文にその名が出てきたり、アッカド王の功業を称える碑文にもその名が見える。
またダガン神がシュメルに入ってきた経緯について、「古代オリエント事典」では、ウル第3王朝第3代王アマルシンの王妃であるアビ・シムティの影響を指摘するものもある
(参考文献)
「メソポタミアの王・神・世界観」、「メソポタミアの神々と空想動物」、「古代オリエント都市の旅」、
「古代メソポタミアの神々」、「古代オリエント事典」
(出典神話等)
『エラの神話』、『ズーの神話』、『イシュタル讃歌』、『ハンムラビ法典碑』
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