レンガの積み方
明治時代の建築素材として広く使われている煉瓦(レンガ)
呉市の旧呉鎮守府や旧呉海軍工廠、広島市の広島陸軍被服支廠跡など呉市周辺にはレンガ造りの遺構が多く存在します。
レンガ建築には積み方によって大きく分けて『イギリス積み』と『フランス積み』に分かれます。
明治時代に日本にレンガが入ってきた際に「海軍はイギリス海軍をお手本にしたのでイギリス積みの建物が多く、陸軍はフランスをお手本にしたのでフランス積みの建物が多い」という俗説があります。しかし、実際はフランス積みは明治時代初期に一部で用いられたに過ぎず明治中期以降は陸軍の建物でも強度と経済性に優れたイギリス積みが主流となりました。
呉市周辺のレンガ建築も基地や砲台が多いため、イギリス積みが圧倒的に多くフランス積みはごく一部に限られています。
日本でレンガ建築が盛んになったのは明治5年の銀座大火災により建物に耐火性が求められた事に起因します。しかし大正12年に発生した関東大震災では多くのレンガ建築物が倒壊し、耐震性に問題があるとされ需要が急速に減少しました。
それ以降、建築業界では次第にコンクリート建築への移行が進んでいきました。
名称
レンガの一番面積の多い長方形の部分(重ねる部分)を『平』、側面の長方形部分を『長手』、側面の正方形部分を『小口』と言います。
イギリス積み
イギリス積みは長手だけの段と小口だけの段を交互に積んでいく作り方です。
イギリス積みはフランス積みに比べて強度が高く、使用するレンガの数も少ないのでコスト面でも優れており、インフラや大型建物の建築に向いています。
呉市周辺のレンガ造りの遺構は軍事施設・インフラを含めてほとんどがイギリス積みで作られています。
【積み方】
4段目:長手・長手・長手・長手
3段目:小口・小口・小口・小口
2段目:長手・長手・長手・長手
1段目:小口・小口・小口・小口
フランス積み(フランドル積み)
フランス積みは別名「フランドル積み」ともいい、すべての段で長手と小口を交互に積みます。段と段の間は互い違いに積んでいきます。
フランス積みは強度・コスト性は劣りますが、すべての段と面が互い違いとなるため遠目で見てもレンガが整って見えます。経済性では劣りますが美しさの面ではイギリス積みに勝っていると言えます。
【積み方】
4段目:長手・小口・長手・小口
3段目:小口・長手・小口・長手
2段目:長手・小口・長手・小口
1段目:小口・長手・小口・長手
長手積み
長手積みは長手だけを互い違いに積んでいく方法です。
この方法はイギリス積みとフランス積みに比べて厚みをだすことができないため、呉市周辺では民家の塀にのみ使われています。
余談ですが、洪水などの災害時に袋に土を詰めて作る土嚢は長手積みで作られます。
【積み方】
4段目:長手・長手・長手・長手
3段目:長手・長手・長手・長手
2段目:長手・長手・長手・長手
1段目:長手・長手・長手・長手
小口積み(ドイツ積み)
小口積みは小口だけを互い違いに積んでいく方法で別名「ドイツ積み」とも言います。
小口だけを前面に出すため必然的に小さくなり大型の建築には向きません。井戸や焼却炉等の小物を作るときに使われるのが一般的です。
呉市周辺ではあまり見ない積み方ですが、小口積みで作られた門柱を稀に見かけます。
【積み方】
4段目:小口・小口・小口・小口
3段目:小口・小口・小口・小口
2段目:小口・小口・小口・小口
1段目:小口・小口・小口・小口
アメリカ積み
長手積みの層を小口積みで挟む積み方
長手積みを4~6段積んで小口積み1段を積みます。呉市周辺では見ることはありません。
備考 |
・イギリス積みは呉市周辺の遺構に多いため意識しなくても見つけることができる ・フランス積みは猿島砲台跡や舞鶴海軍工廠魚形水雷庫が有名だが、呉市周辺では似島第一検疫所の焼却炉煙突の一部と三高山砲台跡の一部に残っている ※管理者が見つけていないだけで他にも存在する可能性はあり ・三高山砲台跡の境界線のレンガ壁がフランス積みで観測所の支柱が小口積みなので、三高山砲台跡に行けばイギリス積みとフランス積みと小口積みの3種類を見ることができる ・長手積みのレンガ塀は呉市全域の昔からある民家でよく見る |
---|---|
住所 |
- |
駐車場 | - |
トイレ | - |
竣工 | - |
公開 |
- |
登山難易度 | - |
サイト |
- |
分類 | 遺構、インフラ、基地跡 |
アクセス |
- |
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧