江波山気象館(旧広島地方気象台)
江波山にある昭和9年建築の鉄筋コンクリート製の気象観測施設
当初の名前は『広島測候所』といい国泰寺村にあった気象観測の施設が移転してきたものでした。5年後の昭和14年に国営移管され文部省の『文部省中央気象台広島測候所』となります。
昭和16年12月に太平洋戦争が勃発すると天気予報・観測値は軍事機密となり気象無線はすべて暗号化され国民への報道は一切禁止されました。
太平洋戦争中の昭和18年に、今度は運輸通信省に移管され『広島地方気象台』と改称します。
昭和20年8月の原爆投下では高台にあったことが災いし爆風の直撃を受けてしまいます。庁舎・測器などに大きな損害が出て職員も死傷しますが観測はなんとか継続することができました。
戦後も広島地方気象台として利用され昭和24年には山口県を除く中国4県の気象観測の中枢機関となりますが、昭和62年に広島地方気象台は上八丁堀に移転しました 。
戦前の鉄筋コンクリート末期のモダンな造りの建物ですが、入口は割と控え目なデザインで東北側は原爆の日の爆風に耐えた外壁を見ることができます。
現在は広島市の指定重要文化財として気象に関する博物館となっており毎年夏休みになると多くの子供達が訪れます。
余談ですが、呉市の灰ヶ峰気象レーダーも広島地方気象台の管轄観測所でした。
原爆の爆風を受けた外壁
北東側の外壁
昭和20年8月の原爆投下の際に爆風を受けた外壁が保存されています。
写真3枚目と4枚目の窓枠が爆風で上にへの字に湾曲しているのがわかります。
館内
戦前の建物を思わせるモダンな館内です。
写真3枚目は玄関ホールの受付窓でステンドグラスが使われています。
写真4枚目は左官職人がコテで作ったモルタル彫刻です。
この時代は現在と逆で「人件費より材料費の方が高かった」時代なので手間をかけてていねいに作られています。
原爆の爆風で壁に突き刺さったガラス片
昭和20年8月の原爆投下で爆風により窓ガラスが飛散し壁に突き刺さった痕です。
原爆投下の瞬間に広島市内の窓ガラスが一斉に割れたというのは有名な話ですが、江波山で観測された原爆の爆風は風速700メートルと音速の2倍になります。
飛び散ったガラス片は弾丸のように壁に突き刺さっており、広島市内でもガラス片は「第二の凶器」として非常に危険でした。
このような速度で人間の体に刺さったガラス片はすぐに取り出すことができず、戦後数十年経ってようやく摘出できたという事例もあります。
原爆の爆風で曲がった窓枠
昭和20年8月の原爆投下で爆風により曲がった2階の窓枠
建物は鉄筋コンクリートで丈夫であったため倒壊は免れましたが窓枠はすべて大きく曲がってしまいました。
後に職員によって修復されましたが曲がった痕が残っています。
備考 |
・休館日は江波山気象館サイトで確認を ・夏休み期間中は駐車場が混雑し入場制限がかかるので公共交通機関で行った方がいい ・江波山のふもとに海宝寺の山門という被爆遺構があるので興味があれば見学するといいかも ・原爆の爆風で窓ガラス片が刺さった壁は広島赤十字原爆病院(旧広島赤十字病院)にもある ・同じ江波山に江波山公園(江波山高射砲陣地跡)がある |
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住所 |
広島県広島市中区江波南1丁目40-1 |
駐車場 | あり |
トイレ | あり |
竣工 | 昭和9年 |
公開 | 常時(休館日あり) |
登山難易度 | - |
サイト | |
分類 | 被爆遺構、観光地、指定重要文化財、広島県建物100選 |
アクセス |
・広島電鉄路面電車「江波」電停から徒歩15分 ・広島電鉄バス「江波トンネル北」バス停から徒歩5分 |
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