エレン

ページ名:エレン

エレン【密林の棘】

概要

呼称

・密林の棘

・茨のデストロイヤー

陣営 ヴェルディア連盟
種族 狐人族
身長 180㎝
趣味 強力な胞子を育てること
好きなもの

・ミサカと一緒に遊ぶこと

・侵入者を懲らしめること

嫌いなもの 森の平和を乱す異族
現在地 ユグドラシル
現在の身分 茨のデストロイヤー
関連人物

【仲の良い先輩】

オルク

【ジャングルの仲間】

ミサカ

【協力者】

ソリス

ストーリー

「ここに入りなさい!」

 

雷雨の夜だった。

ここ、と母に示された場所は、

虫に食われて中が空洞になっていた倒木だ。

エレンは母の指示通り、

倒木の空洞に身を隠した。

当然ながら、続けて母も同じ場所に

隠れるだろうと思っていたが……

母は来ない。

空洞の外を覗いて見ると、

勢いよく駆け出す母の足が見えたのだ。

エレンは穴から抜け出して

すぐに母を追いかけようとしたが、

次の瞬間、人間の革靴が視界に入り、

恐怖で縮こまってしまった。

その人間は何かに気づいたのか、

立ち止まる。

周囲を探るように見渡したあと、

人間は母が駆け出した方へと

向かっていった。

その足音は、

雷の音よりも恐怖を感じるものだった。

 

しばらくすると、あたりは静かになった。

エレンは、母を失ったと気づく。

母は子どもを奴隷商人から逃がすために

時間を稼ぎ、囮になったのだ。

おそるおそる木の穴から抜け出し、

この暗い森から家に帰る道を探そうと

一歩踏み出した。

だがそこは見知らぬ森。

怯えるエレンは次の一歩が出ない。

 

「おい、起きろ」

 

低くこもった声がエレンの意識を呼び戻す。

目を覚ましたエレンが、

声がしたほうに顔を向けると、

大きな手に肩をポンポンと叩かれる。

そして熱々の麦茶を渡された。

この状況を理解するのに

少し時間がかかったが、

エレンは椅子に座ったまま

寝ていたと気づく。

渡された麦茶をググっと口にすると、

温もりが胃から体中に染み渡り、

あの雷雨の夜の冷たさを

かき消してくれるようだった。

 

「オルクおじさん、ありがとう」

 

「もうお前とは10年の付き合いだ。

遠慮はいらん」

 

隣に座っていた老人は、

宿の暖炉に炭を投げ入れながら続ける。

 

「そろそろミサカを見習え。

あいつは他人行儀なんてしないぞ」

 

寝起きのエレンの様子を見て、

オルクは明るい話題を振ろうとしていた。

10年前からエレンが

悪夢に悩まされていることを

知っているからだった。

 

10年前ーー

家族を失ったエレンは、

歩いて家路につくことを余儀なくされた。

彼は見知らぬ土地で誰も信用できなかった。

そのため、ヴェルディアの民が

生命を司るデューラから授かった

大自然と疎通できる力だけを信じて、

安全な道を選んで進んでいく。

森で採れた野生の果物を食べたり、

通りすがりの行商人の荷車から

食料を盗んだりして、

なんとかその日を生きていた。

ある日、お腹を空かせたエレンは、

道の真ん中に停まっている

1台の馬車を見つける。

食料をこっそり取るために、

慎重にカーテンを開けると……

馬車の中が血まみれで、

体がビクリと跳ねた。

馬車の周りをよくよく見てみれば、

ひとりのヴェルディアの民が

地面に座ったまま、

自身の傷の手当てをしていた。

その側で、2人の人間の死体が

横たわっている。

エレンに気づいたヴェルディアの民は、

驚いて声を上げた。

ヴェルディアの民の名前はオルク。

いろいろと話を聞いてみると、

オルクは『茨の清算者』のメンバーらしい。

この組織のメンバーの多くは、

かつて外来者に傷つけられた過去を持ち、

その者たちへの復讐を名目に集結している。

オルク自身も娘を攫われていて、

長年娘を捜すために奔走していると言う。

そして今回、ユグドラシルに侵入して

貴重な薬草を盗んだ人間の商人を追って、

ここ……ブライト王国の辺境に

たどり着いたようだ。

 

(このおじさんなら、信用できるかも……)

 

偶然の出会いから、エレンはオルクと

行動を共にするようになった。

それでもエレンは毎晩悪夢で目を覚ます。

エレンの家族が攫われたことを

知ったオルクは、

一緒に捜すと約束をして

エレンをゆっくり寝かしつけた。

苦しそうなエレンの寝顔を見つめながら、

オルクは娘のことを思い出す。

 

(もしかしたら、この子の親もーー)

 

最悪を想定したが、オルクは頭を横に振り、

すべて飲み込んだのだった。

 

エレンはオルクに連れられ、

ユグドラシルに戻ってくることができた。

そしてオルクは狐人族の村で

過ごすのはどうかとエレンに提案する。

だがエレンは、どうしてもオルクに

付いていきたいようだった。

 

「おじさんみたいに、

人間たちに復讐がしたい」

 

オルクを見つめるエレンの赤い瞳の奥には、

燃えるような何かがあった。

オルクは少し困惑した。

 

(あの時、2人の人間を

始末しているところを

見られたのが間違いだったか……)

 

「エレン、お前はまだ幼い。

子どもを戦争に巻き込むわけには

いかない」

 

だが、エレンはしっかとした口調で

反論した。

 

「でも、僕はもう、戦争に巻き込まれてる」

 

その強い瞳に負けたオルクは、

深くため息を吐く。

こうして、エレンは最年少の

『茨の清算者』となったのだった。

 

組織に加入したエレンは、

先輩たちから貪欲に戦いのスキルを学んだ。

同時に組織にいる学者に

両親の行方の調査を依頼する。

より効果的に敵と戦うため、

『茨の清算者』には人間を研究する

学者もいるのだ。

エレンはその時初めて、

両親が人間たちに何をされるのか、

どう苦しめられてしまうのかを知る。

 

すべてのヴェルディアの民と同じく、

狐人族にも声明を司る神デューラから

授かった大自然と疎通できる力があり、

自然を感じ取ることができる。

だが欲張りな人間たちは

そう思っていない。

神から授かった力は、

地下に埋められた宝物を見つけるために

使うものという認識らしい。

エレンたちが狙われたのもそのためだ。

このままいくと、

両親はブライト王国国境内の

砂漠鉱山に送られ、風塵の中で残り短い

人生を過ごすことになる。

劣悪な環境下にある鉱山では、

ヴェルディアの民は生き抜くことが難しい。

激しい気温差によって肌は荒れ、

砂埃で呼吸器官は傷つく。

さらには隣の錬金術師の坩堝からは

怪しいガスが吹き出していて、

体に入ったらどうなるか……

そんな環境下では生きてはいけないだろう。

そのため、数年ごとにヴェルディアの民を

補充する必要がある。

大切な命が日々奪われていっているが、

鉱山主から見れば、

地下から見つかる琥珀の利益に

比べたらヴェルディアの民の命なんて

安いものなのだ。

 

エレンは黙り込んでしまった。

 

学者の話を聞いてから、

エレンは森の奥にある沼のそばに

小さな小屋を建てて、

昼夜問わず戦闘の修行に励んだ。

それは、オルクが心配になるほど

脇目も振らず取り組んでいた。

しばらくして……

森の奥深くで強靭な木材を集めたエレンは、

鍛冶屋に取り外し可能の槍を作らせた。

そして、沼のほとりに生息する

奇妙な胞子を、

槍の先端と柄に植え付けようと試み始めた。

最初はエレンが何をしているのか

理解する者はいなかった。

だが数年後ーー

エレンの初任務の時だ。

エレンが攻撃した敵の傷口から

奇妙な煙の花が咲くのを見て、

エレンが自身に適した戦い方を

見つけたのだと周囲の者たちは

確信したのだった。

 

さらに数年後ーー

エレンは貧弱な少年から

たくましく立派な青年へと成長する。

紆余曲折の末、

彼はやっと家族を攫った奴隷商人を

見つけたのだ。

エレンは毒キノコを使って

相手を徹底的に苦しめ、

すべての情報を聞き出したあと、

淡々と冷静にとどめを刺した。

 

この任務が完遂したあと、

エレンのパートナーを担当した

『茨の清算者』のメンバーは、

周囲にこう口にしていた。

 

「まるで冷徹な悪魔を見ているようだった」

 

その言葉を聞いたオルクは、

昔のことを思い出した。

エレンがオルクの家を訪れた時のことだ。

初めてウルサスの少女、ミサカに出会う。

ミサカが不機嫌そうな顔をしたため、

エレンは慌てて綺麗な銀色のキノコを

作り出し少女を喜ばせたのだ。

 

あの時はエレンが冷徹な悪魔になるとは

思いもしなかった。

エレン自身、そんなふうに

言われていることなど

知りもしなかった。

 

エレンは奴隷商人から聞き出した

情報を辿り、真の復讐相手を見つけ、

ブライト王国へと旅立った。

今回、彼の同行者はオルクだ。

そうして……

エレンとオルクはブライト王国の町に

たどり着く。

エレンは再び10年前の出来事を夢見るが、

悪夢はもうすぐ終わらせることができると

確信している。

 

数日後ーー

ブライト王国のとある有名な鉱山主が

奇妙な病で死んだという噂が流れる。

鉱山主の肺葉には、

藻がびっしり詰まっていて、

慌てて駆けつけた医師たちは

驚いていたというーー

 

ドリーのコーナー

ラスティーアンカーの地下社会の住人は最近、「補給」のためにジャングルに送られた荷馬車が戻ってこないという噂で怯えている。

ジャングルを通りかかった商人は、馬車の持ち主の死体を発見し、その凄惨な死に様は数日間人々の話題となった。

人混みの中、フードを被ったエレンは密かに微笑んでいた。

「茨の清算者」は皆心に強い憎しみを抱いており、そして彼も例外ではない。

母を失ってから長い間、悲しみすら忘れていた彼は、憎しみに駆られ、一瞬たりとも気を抜くことなく、殺しの技の修練と研究に励んでいたのだ。

端正な容姿とは裏腹に、その手法は非常に残酷であり、それを目撃した仲間たちでもそのギャップに衝撃を受けるという。

それはまるで幻夜の森の毒キノコのようで、色鮮やかだが致命的である。

オルクがいなかったら、今日の自分はいないだろうと、エレンは思う。

この頼りになるおじさんは、敵の前ではとても残酷でありながら、ミサカや自分の前では見た目から想像できないくらいの優しさを見せる。

エレンが悪夢にうなされていると、オルクはそこから自分を呼び戻し、そして温かい麦茶を手渡してくる。

ミサカと胞子で遊んでいる自分を、オルクおじさんが優しく見守る...

これらの日常は、いつもエレンに安心感を与えている。

ヒューマンによって酷使されたヴェルディア亜人の最期を知ったエレンは、自分の両親の次に、オルクやミサカ、そして「茨の清算者」の先輩たちの姿を思い浮かべた。

果たすべき仇はすでに果たされたが、彼の復讐は続く。

密林の毒茨は、平和を乱す者たちを阻止し、やつらが犯した罪を償わせるだろう。

 

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