最高傑作

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ストーリー

コード「テラーゴーレム」生体武器実験報告1

 

被験体:イゾルデ、人間男性、36歳

診断結果:肉体の破損がひどく、

四肢の筋肉は欠け、

全身の骨格にダメージと奇形が

多数見られる

結論:永続性ダメージ、修復不能

 

この生者が霊魂院を訪ねてきた時、

私は正直驚きが隠せなかった。

ここまで全身に障害を持っている人間が、

一体どうやって無数の不死者がいる、

このバンティスの地を乗り越え、

たどり着くことができたのか......。

私が知りうる中では、

この死の大地を乗り越えてきた生者はーー

私を含め彼で2人目だ。

まるで過去の自分を見ているかのようだった。

この人間も身体を治しに

ここへやって来たのだろう。

かつては戦士だったらしいが、

とある戦争で深手を負い、

再起不能な身体となってしまったと聞いた。

だが、それでも彼の表情から

屈強な精神がわずかに感じ取れる。

彼は医者を探して各地を巡ったというが、

そこら辺の医者では

この傷を治すことはできないだろう。

逆に間違った治療を施し、

悪化させるだけだったに違いない。

この傷を元に戻すことは、もはや不可能。

だが私は平凡な医者とは違う。

特殊な治療方法で、彼を改造させて見せよう。


コード「テラーゴーレム」生体武器実験報告2

 

改造案:新しい身体を用意

実験対象の脳を切り離し、それに移植

追加案:新しい身体に錬金装置を埋め込み、

実験対象の強化を図る

改造リスク:不明

 

私は人間の身体がいかに脆いのか、

よく分かっている。

だからこそ実験対象の身体を捨て、

死霊魔術を施した死体を使用する。

 

私はこれまで様々な死体の臓器移植を

行ってきたが、

生きた人間の身体ではまだ実験したことがない。

よって、

この実験にどれぐらいのリスクがあるのかも

全くわからないのだ。

 

私は今まで自分の作品に、

一度も満足することはなかった。

実験対象はどれも自我を持たない

動く屍でしかなかったからだ。

いくら改造を加えても、

意識を持たないただのでくの坊にしかならなかった。

 

ーーだが、人間は違う。

しかも、彼は戦士だ。

今は牙を折られているが、

それでも戦士でありたいという誇りまで

失っていない。

人間の力と意志、精神を司っているのは脳だ。

戦いと暴力に対しての強い渇望も

脳があるからこそ募るのだ。

なんとしてでも、

彼のその心......いや、脳だけは

保持しなければならない。


コード「テラーゴーレム」生体武器実験報告3

 

実験場所:6号実験室

実験参加者:サイラス(私)、ニル

観察記録者:学徒ビクトル

実験結果:成功

 

万が一の事を考え、私はニルに協力を求めた。

ニルは生前、

凄腕の外科医だったと聞いていたからだ。

今回の実験で、

ニルは素晴らしい腕前で実験対象の脳を

摘出してくれた。

グレイヴボーンとなった今でも、

その腕は劣っていない。

だが本番はこれからだ。

脳を新しい身体に移植しようとしたところ、

強い拒絶反応を起こし始めたのである。

とはいえ、これは予測済みだ。

事前に準備していた免疫抑制剤を使って、

拒絶反応を抑える。

数値が安定したのを確認した私は、

再び手術を始めた。

そして......。

中枢神経に脳と新しい身体を

繋ぎ合わせることに成功したのだ。

ここまで来れば、

実験はほぼ成功したと言えるだろう。

私は精密に作られた錬金装置を

新しい身体の中に埋め込み、

特製の錬金ホルモンを流し込んだ。

これでもっと強靭な身体になるはずだ。

ああ......忘れてはいけない。

彼は戦士だ。

錬金装置の中に分子構造が不安定な酸を追加し、

腐食性と爆発性の気体を

ミスト発生機で放出できるようにしよう。

実験対象は全身武装の

バイオ兵器へと生まれ変わることになるのだ。

 

ーー手術が終わり、

私は実験対象の身体を起こした。

動きはまだ鈍い。

新しい身体に慣れるまでは、

しばらく時間がかかるだろう。

データ測定は当分先になりそうだが、

私には十分な時間がある。

気長に待つとする。


コード「テラーゴーレム」生体武器実験報告4

 

測定項目:力、反応、自己回復能力、戦闘スキル

測定観察者:コンスタン院長

測定結果:完璧

 

知っての通り霊魂院には2つの分派、

霊術派と錬金派が存在する。

霊術派とは元来の死霊術の研究がメインだ。

反対に錬金派はこれまでの規則にとらわれず、

研究者達の考えに基づき、

様々な実験と錬金術を駆使し、死霊術を増幅させ、

不死者の潜在能力を引き出そうとしている。

私が所属しているのはもちろん錬金派だ。

理念の違いにより、

2つの派閥間でしばしば衝突が起こっている。

霊術派は自分達のことを正統だと主張し、

我々のことを、

『死霊術を冒涜する異端者だ』と罵っている。

錬金術こそが元来の死霊術の限界を

乗り越えられる唯一の方法であることを

霊術派の奴らに証明したい。

私はそのために様々な実験を行っている。

 

そして、その時が来たーー

 

実験対象は、

新しい身体を完全に制御することが可能になり、

性能測定段階に入った。

力、反応、自己回復能力ともに

私の予測を遥かに超えている。

さらに、彼の戦闘スキルと経験により、

純粋で完璧な殺戮マシーンへと

生まれ変わったのだ!

 

最終結論:

イゾルデは私が自慢できる最高傑作だ!

 

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