終焉の使者

ページ名:終焉の使者

ストーリー

ネモラの理性があの破滅の深淵に侵食され、

暗闇の中で彼女の心は

怒りに満ち溢れていた......

 

カタストロフがユグドラシルに

足を踏み入れた瞬間、

森が一斉に悲痛の叫びを上げる。

薄汚れた吐息が

この汚れなき土地を汚染していく。

邪悪な腐食に侵された森の生命が枯れ果て、

蝕まれていくのを目の当たりにしたネモラは

憤りを感じていた。

そして、

怒りで我を忘れていくのだった。

カタストロフはこの機を逃さず、

彼女の心の中へと

ゆっくり入り込んでいき......。

邪悪の力がネモラの理性を捻じ曲げ、

彼女の怒りによって肥大していく。

そうしてカタストロフは、

ネモラの魂を憎悪と破壊の闇に陥れたのだ。

 

わずかに残っているネモラの理性。

完全に闇に飲み込まれそうになった

その時だったーー

彼女の心の中に、緑が生い茂る大樹の影が

ゆらりと現れたのだ。

しかし大樹はすぐさま暗闇に覆われ、

苦痛の悲鳴を上げた。

青々としている葉が一気に枯れ落ち、

無残な姿へと変わっていく。

だが大樹が強固な意志で暗闇の中でもがき、

抵抗すると、弱みにつけ込み邪悪な力は

霧散していった。

生気を取り戻した大樹からは、

枯れた枝からは新しい若葉が生え始める。

 

「あれは叡智の古樹アルマス......。

かつて邪悪な力に

飲み込まれそうになったけど、

最後にはそれを振り払うことが

できたって聞いたわ......。

ネモラだってーー」

 

ネモラは歯を食いしばり、

アルドン先生の教えを思い出した......。

 

「ーーもし、おぬしが暴威に対して

怒りを感じているのなら、

それはおぬしの心の中に

良心があるからじゃ。

じゃが、その怒りはおぬしの理性を蝕み、

やがては暴を以て暴に易う、破滅の深淵へと

落ちていく。

最後には暴威に支配される

野獣と化すじゃろうーー」

 

ネモラは怒りを鎮めるため、

心を落ち着かせようと呼吸をする。

 

彼女は森の医者だ。

かつては多くの生きとし生けるものの傷を

癒やしてきた。

ネモラには森の驚異的な力が

秘められていて、

それは闇の力を遥かに凌ぐものだ。

 

「森の生命力が木々の根と葉に

溢れているのと同じで、

ネモラの血にも流れているの。

大自然に愛されし者ネモラ。

ネモラの力はこの森のエネルギーなのよ」

 

怒りを収め、森を救うために

立ち上がったネモラの力は強大だった。

ネモラに打ち負けた邪悪な力は、

金切り声を上げながら、

彼女の体から出ていく。

森の中へと去っていくその姿は、

まるで尻尾を巻いて逃げる

負け犬のようだった。

 

邪悪な力に飲み込まれそうになりながらも、

ネモラは闇を追い払うことができた。

破滅の深淵に侵食され、

彷徨い歩いていた彼女はもういない。

 

だが、彼女の心は疲れ切っていた......。

 

森の奥深くーー

ひと塊の闇があたりをぐるぐる回り、

そしてゆっくり固まる。

それは真っ白な四足の生物へと

変わっていった。

 

その生物を見たものは、

きっと恐怖におののくだろう。

なぜなら、その生物は、

ネモラとまったく同じ姿をしていたからだ。

 

唯一違うのは、

体の回りが暗い霧で包まれていること。

彼女は悪戯な笑みを浮かべて口を開く。

 

「私は終焉をもたらす者」

 

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