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ストーリー
ブライト王国で二番目に大きい港湾都市、
無法地帯ラスティーアンカー——
最近、この港町周辺に
突然魔物が現れることが多く、
旅人や船乗りがたびたび襲われていた。
そのせいか、多くの賞金稼ぎが
魔物狩りで稼ぐためにこの町にやってくる。
ラスティーアンカーの酒場には、
所狭しと手配書が張り出されていて、
いつも以上に賑わっていた。
賞金稼ぎ達は、手配書をしげしげと見つめ、
吟味している。
価格が気に入れば、それを引き剥がして
酒場のマスターに承認してもらい、
討伐しに行くのだ。
酒場のグラグラしている扉が
キーっという音を立てて開かれた。
ザワザワとしている酒場では、
誰もその音を気にする者はいないだろう。
しかし、そこに現れたのは......。
炎のように赤いロングヘアの魔女だったのだ。
彼女の姿を見た途端、
酒場にいた者達は口をつむぐ。
シンと静まり返った酒場の中を
彼女は気にする素振りもなく
手配書の方に向かって歩いていく。
元々手配書の近くにいた賞金稼ぎ達も
蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
「なんだ? なんでみんな去っていくんだ?」
若い賞金稼ぎが戸惑いながら言った。
「知らねぇのか?
あの女は魔女ミレイルだぞ」
近くにいた同業者が
無知な若者に小声で教えるが......。
「えっ!!? 灰燼の魔女ミレイル!?」
「お前静かにしろ! 聞こえたらどうする!」
大きな声で驚く若者の口元を抑え、
ミレイルを気にするようにチラッと確認する。
特に気づいている様子もないことに安堵し、
同業者は話を続けた。
「噂によると、
ボビーの髪の毛がチリチリになったのは、
彼女が燃やしたって話だ。
どうやら、ボビーは
仕事の横取りをしようとしたらしい......。
彼女はそれが一番大嫌いで、
そういう奴らには容赦しねぇんだ。
怒ったらまるで火を噴くドラゴンみたいに
怖いらしいぞ!」
その会話は全てミレイルの耳に入っていたが、
こういった噂話は慣れているため気にもしない。
彼女は手配書を眺めながら、
楽しそうな案件を探していた。
ここ数日、張り出される手配書が
低レベルの魔物ばかりで、
刺激を求めていたミレイルにとっては、
全く興味が湧かなかった。
ふうっとため息をつき、
今回も空振りかとばかりに踵を返そうとした
その瞬間、一つの手配書が目に留まる......。
『巷で悪さをしている十頭の悪食獣を討伐せよ』
「ふ~ん。 まあまあ面白そうね」
久しぶりに興味を示すものにありつけそうで、
ミレイルは心が弾む。
手配書を引き剥がそうと手を伸ばしたがーー
誰かが先にそれを引き剥がしてしまったのだ。
ムッとした表情で振り返ると、
そこには茶色い肌の女賞金稼ぎがいた。
右の額から頬にかけて鮮明な傷跡があるその女は、
ニヤニヤしながら手にしている手配書を
眺めていた。
「ちょっと。
この手配書はわたしが先に狙ったものよ?」
「はァ? アンタなに言ってんだい。
これはアタイが先に見つけたもんだ」
どっちも譲らず、にらみ合いを続けるが、
先に動き出したのはミレイルだった。
挑発的な目線を女賞金稼ぎに向け、
軽く指を鳴らすと、
女が持っていた手配書が突然燃え出し、
瞬く間に灰になってしまったのだった。
「そこの魔女、誰にケンカ売ってんのか、
分かってんだろうね!?」
威圧的に言い放ち、
腰の袋から二本の銃を取り出して回転させた。
「へぇ?わたしとケンカするつもり?
上等だわ」
ミレイルはここ数日面白い仕事がなく、
体を動かして暇つぶしでもしたいところだった。
「ハッ! いい度胸してるじゃないの!」
女賞金稼ぎも刺激を求めていたようで、
うずうずと興奮しているようだった。
酒場にいる客がこの様子を見て、
みんな外に逃げ出していく。
マスターも怯えてカウンターの後ろに隠れた。
ただ一人......。
カウンターの端にいる白髪の男だけは、
気にせずビールを飲んでいた。
彼の隣には、大きな棺が壁に寄りかかっている。
ミレイルと女賞金稼ぎがそれぞれ数歩後退し、
膠着状態になる。
しばらくそれが続き......。
先に静寂を破ったのはミレイルだった。
彼女は素早く火球を凝縮し、投げつけたのだ。
女賞金稼ぎはすぐに後ろに飛び退き、
テーブルを蹴り倒して盾にする。
そしてその影から二本の銃で交互に射撃した。
ミレイルは目の前で炎の盾を作り出し、
銃弾を止める。
天井のシャンデリアが目に入ったミレイルは、
そこに向かって火球を放ったのだ。
シャンデリアの真下には女賞金稼ぎがいる。
ミレイルはそれを狙っていたのだ。
「こいつッ!」
女賞金稼ぎは舌打ちをしながら、
床に転がりシャンデリアをかわした。
その勢いで奇特な角度から
ミレイルに向かって一発撃つと、
それを回避することができず、
とんがり帽子が撃たれて飛んだ。
しばらくそれが続いて......。
気づけば酒場はまるで戦場のような状態だった。
銃弾が飛び、炎の光が煌き、
空気に硝煙の臭いが蔓延している。
お互いに一歩も譲らないため、
勝負がなかなかつかなかったのだ。
次の攻撃のタイミングを見計らって、
再びにらみ合うと......。
ズドンーー!
二人の間に巨大な棺が落ちてきた。
そこへ隅で酒を飲んでいた白髪の男が
歩いて来ると......。
「もういい、レイン。やりすぎだ」
なんとその男が止めに入ったのだ。
「フォークス、まだこれからじゃないか!」
レインと呼ばれた女賞金稼ぎは文句を言うも、
黙ってにらみつけるフォークスに敵うわけもなく、
ガックリと肩を落としながら銃を腰の袋に入れた。
「魔女、アンタ相当クレイジーだねぇ。
アタイ、気に入っちゃったよ。
ねえ、アタイ達とチームを組んで、
魔物を狩るなんてどうだい?
刺激と楽しみがいっぱいだし、
絶対に退屈はしないよ!」
「へぇー、いいわね。その話、乗るわ。
それに......このケンカの決着をつけないと」
それを聞いたレインは豪快に笑い出す。
「やっぱりアタイが見込んだ通りだね!
ホント、アンタって面白いよ!」
すると、コインが入っている袋を
カウンターに投げて、
フォークスとミレイルの肩を叩きながら言う。
「とりあえず、一杯飲もうか。
ここはアタイの奢りだ!」
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