SPタレン

ページ名:SPタレン

SPタレン【蘇る紅炎】

概要

呼称 蘇る紅炎
陣営 セレスチアル

ストーリー

あの時から長い時が経っているというのに、

タレンの心は未だ縛られたままだ。

母親がこの世を去る時の光景が、

はっきりと脳裏に焼き付いている。

 

……丸く孤を描いた火炎シールドが、

フレミングの攻撃で亀裂が入った。

タレンは物陰から心配そうに

母親を見つめる。

いつも美しく優しい母が、

炎の力を振り絞り必死に持ちこたえていた。

カタストロフの邪悪な炎が荒れ狂い、

母親を覆っていく。

絶望と無力感がタレンの心を

支配していった。

これ以上見続けることができず、

飛び出そうとするも、母親に制されて

その場に留まるしかなかった。

シールドに入った亀裂が

だんだんと大きくなっていき、

ついには打ち破られてしまう。

タレンは邪悪な炎に飲み込まれる

母親の最期を、

ただただ震えながら見つめることしか

できなかったのだったーー

 

『炎陽の炉心』で生まれ変わって以来、

タレンは母親の仇である

カタストロフを追っていた。

彼女はずっと悔やんでいたのだ。

母親が殺されてしまったのは、

すべて自分が幼く弱かったためだと

思っている。

あの時、守る存在がなければ……

タレンの頭の中で、

何度も何度もこの考えが繰り返されている。

母親の仇を必ず見つけ出し、

自らの手で復讐をしようと

彼女は決めていた。

タレンはもう、

幼い頃の臆病な幻炎鳥ではない。

『紅炎』の力は復讐のための武器となった。

 

タレンは『紅炎』の力を利用して

カタストロフを見つけ、

そこからフレミングの行方を探っている。

次第に、『紅炎が現れるところ、

必ずカタストロフが討伐される』

と噂されるようになった。

そして、幻炎鳥最後の血脈であるタレンは、

エスペリア中で英雄と

称賛されるようになる。

だが、エスペリアの民の心とは反対に、

タレンの心は復讐で燃え上がっている。

フレミングが存在する限り、

復讐の炎は永遠に消えることはない。

 

ある日ーー

タレンはカタストロフの跡を追って

ユグドラシルの森にやってきた。

森を穢すカタストロフを炎で焼き払い、

フレミングの痕跡を探ろうとした

その時だった。

茂みに隠れていた

小さな森の住民を見つける。

『森の炎』から生まれた妖精、

アスタだった。

頭上から小さな炎が燃え上がっていて、

そのつぶらな瞳は

じっとタレンを見つめていた。

 

『森の炎』ーー

それは『紅炎』から生まれた炎だった。

『紅炎』が燃え盛る『炎陽の炉心』で

生まれ変わったタレン、

『紅炎』の力がある『森の炎』から

生まれたアスタ……

同じ力があるせいか、

2人は初めて出会ったはずなのに、

なぜか親近感が湧いていた。

 

アスタはタレンのことを

唯一の家族と思うようになり、

どこに行ってもタレンにくっついていた。

タレンの目的はあくまでも復讐だったため、

アスタがどんなについてこようとも

気にも留めていなかった。

だが、いつしかそれも

悪くないと思うようになり、

アスタのことを旅の仲間として

接するようになったのだ。

母親を失ってから

ずっとひとりきりだったタレンに、

仲間ができた瞬間だった。

 

アスタと一緒に旅をしていると、

ふとした時に幼かった頃の自分と

アスタを重ねてしまうことがあった。

この小さな妖精が

タレンを頼りにしているように、

かつてのタレンも母親を頼りにしていた。

 

(私もアスタぐらいの時は、

母に甘えてばかりだった……)

 

懐かしさと愛おしさがこみ上げてきて、

心が少し温かくなった。

 

広大なユグドラシルの森では、

結界の隙を突いて、時折カタストロフが

侵入してくることがある。

すぐさまタレンが攻撃を仕掛けると、

アスタも彼女の真似をして

炎を噴射しようとする。

しかし、アスタはまだ

炎の扱いに慣れていない。

アスタからしてみれば、

タレンを助けようとしているのだが、

それがかえって仇となることもあった。

とはいっても、タレンにとっては

取るに足らない微笑ましい出来事だ。

だが、それは今だから思えることだろう。

もし相手がただのカタストロフではなく、

フレミングだとしたら……? 

不安と心配が一気に押し寄せた。

タレンはただ世界を

旅しているわけではない。

母親の仇である、

フレミングに復讐するために

世界をまわっているのだ。

このままでは、いつかアスタに

危険が及んでしまうかもしれない……

 

カタストロフを焼き払ったある日ーー

タレンはアスタに力の制御の仕方を

教え始めた。

自分の身は自分で守れるようにするためだ。

タレン指導のもと、

アスタは鍛錬を積み重ね、

炎を制御する方法を身に付けていった。

以前のように、

デタラメに炎を放つのではなく、

ターゲットに命中できるようになった。

また、多くのスキルも

使えるようになったのだった。

 

だが、平穏な日々は長く続かなかった。

 

タレンはついにフレミングの居場所を

特定する。

そして、アスタと別れる準備を始めた。

いくら身を守れるようになったとはいえ、

アスタを自分のせいで

危険に晒すことはできなかったのだ。

アスタがぐっすり眠っている隙に、

そっとその場を離れて、

目的地へと飛び立っていった。

 

森の上空から長い間追ってきた、

復讐の対象であるフレミングの姿を

確認する。

 

(やっと……見つけた!)

 

攻撃をしようとしたその瞬間、

フレミングの近くに小さな影を見つける。

 

「アスタ……!? なぜここに!」

 

だが、彼女に迷っている時間はなかった。

 

「アスタを救って、フレミングを倒す! 

母の……仇だ!」

 

タレンは炎を剣の形に変え、

上空からフレミング目掛けて斬りかかった。

タレンの攻撃に素早く反応した

フレミングは、後ろに飛んで回避した。

彼女はすぐさまアスタのそばに駆け寄る。

 

「アスタ、怪我は!?」

 

「平気だよ! タムも元気!」

 

あちこち土で汚れながらも、

笑顔を向けるアスタに

ほっと胸をなでおろす。

 

「無事ならばよかった。

だが、どうしてここに……?」

 

「勝手に動いてごめんなさい……

起きたらタレンがいなくて。

アスタ、いろんなところ探してたら

あのカタストロフに見つかっちゃって……」

 

こればかりはアスタの動きを

想定していなかったタレンの落ち度だ。

 

「アスタ、下がってなさい」

 

アスタを守りながら戦うことができるか

不安になりながらも、

フレミングに目を向け炎の剣を構える。

先ほど、一撃を与えることはできたが、

容易く撃破できる相手ではないことは

わかっていた。

突然、森中に響き渡るくらい大きな声で

フレミングは不気味な高笑いをした。

赤紫色の炎がその体を包み込み、

禍々しく燃え上がる。

その直後、タレンが土埃を上げながら

炎の剣を振るった。

だがフレミングの魔炎が土埃を突き破り、

一直線にタレンに向かっていく。

タレンが目にも留まらぬ速さで

上空へ飛び上がると、

逃すまいとフレミングも追いかけ、

空中で激しくぶつかり合った。

 

カタストロフと幻炎鳥は激戦を繰り広げた。

序盤はタレンの『紅炎』の力が

優勢だったが、

徐々にフレミングがその力に慣れ始めて、

反撃を開始する。

フレミングは自身の周りで燃えている炎を

すべて食らいつくした。

そして、魔炎を拳に纏い、

タレンに思い一撃を与えたのだった。

赤紫色の穢れた炎がタレンの視界を覆う。

すると、まるで走馬灯のように、

母親が殺されたあの日のことが駆け巡った。

 

「……!」

 

『紅炎』の力さえあれば、

復讐できると思っていた。

だが、この脳裏に焼き付いて

離れない記憶は恐怖しかなかった。

あの日のことをひた隠しにして、

虚勢を張っていたことに

気づいたタレンは、

恐怖の闇に飲み込まれそうになった。

フレミングはうすら笑いながら、

ゆっくりとタレンに近づき、

残りの『紅炎』を奪おうとする。

だが、その時ーー

小さな妖精が幻炎鳥とカタストロフの

間に立ちはだかった。

 

「アス……タ……?」

 

目の前の小さな体は、

小刻みに震えながらランタンを

カタストロフに向けている。

勇敢なその後ろ姿を見て、

タレンの心は大きく揺れた。

母を失った痛み、

アスタが傷つき倒れるかもしれない恐怖。

だが、自分自身が恐怖を乗り越えなければ、

この小さな命すら救えない。

 

タレンの瞳はもう揺れていなかった。

 

目の前でフレミングに

立ち向かおうとしているアスタを抱きしめ、

タレンは空高く手を掲げた。

すると、丸く孤を描いた火炎シールドが

彼女たちの周りを覆う。

そう……あの時の母と同じように……

タレンは最後の力を振り絞り、

ここから逃げるようアスタに叫んだ。

 

「で、でも!」

 

「いいから、早く!」

 

フレミングから繰り出される猛攻によって、

シールドに亀裂が入る。

タレンに強く言われて、

アスタは泣きながら慌てて逃げ出した。

遠くまで逃げたことを確認したタレンは、

かろうじて維持していたシールドから

手を離すと、反発しあっていた

『紅炎』と『魔炎』の力が解き放たれ、

大爆発を起こす。

アスタの姿はもう見えない。

それに安堵したタレンは、

力が抜けてその場に倒れてしまった。

フレミングは、爆発の衝撃から逃げるため、

この場から素早く立ち去っていた。

 

母親の仇であるフレミングを倒すことは

できなかった。

だが、タレンにはもう

復讐する力は残っていない。

彼女の額で燃えている炎が、

だんだんと小さくなっていく。

朦朧とした意識の中……

アスタがタレンのもとへと

駆け寄ってくる姿が見えた。

 

「アスタ……無事で、よか……た」

 

「タレンはアスタが助けるよ!」

 

つぶらな瞳に涙をいっぱい溜めながら、

アスタは自分の炎をタレンの体に

注ぎ始めた。

アスタの炎が注がれたことで、

消えかかっていた額の炎が

再び激しく燃え上がり、

タレンの体を包み込んだのだ。

純粋で眩しい光がタレンの体から溢れ出て、

炎の色も変化していった。

穢れなき純粋な炎は、

森を覆っていた赤紫色の魔炎を

一気に消し去ったのだった。

 

タレンは両目を開け、大きく羽根を広げた。

最も純粋な炎が再びエスペリアに姿を現す。

そして、最後の幻炎鳥が

新しい姿でこの地に舞い降りたーー

 

「『紅炎』が消えない限り、

幻炎鳥の血脈は決して途絶えることはない」

 

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧