アスタ【曜炎の使者】
概要
呼称 | 曜炎の使者 |
陣営 | ヴェルディア連盟 |
ストーリー
ユグドラシルの空を吹く風が、木の上で気持ちよく寝ていたアスタの髪を優しく揺らし、彼女は眠りから覚める。
そして両目をこすりながら枝の隙間から空を眺めた。
風はメッセンジャーのように森の木々を揺らすと、そのまま森の外へと去っていった。
大樹の上では森の炎が真っ赤に燃えている。
アスタは大きくあくびをして背を伸ばすとすぐにそばのランタンを拾い上げ、跳んで森の奥へ入っていった。
伝説によれば、一年の最も寒い時期に咲くという森の炎には、紅炎の力が宿っているという。
山頂からエスペリアを見守る曜雀が死なない限り、森の炎も消えることはないようだ。
そして最後の曜雀であるタレンが炎の中から生まれ変わった時、ユグドラシルの巨木で燃え上がるように咲き乱れた…
「アスタ!!」
森の奥から聞こえてくる轟音が、枝に止まっている鳥たちを驚かせる。
名前を呼ばれると、茂みから人影が現れ、軽やかに小川を飛び越えた。
背後には黒い煙が立ち込め、消火のために助けを求める声が聞こえる。
アスタは服についた埃を叩くと、持っていたランタンを地面に置いて、河に映った自分の顔を見た。
まだ鼻の先に黒焦げが付いている。
「タムタム」
アスタは草むらに座り込み、ポケットからわずかに出ている小さな頭をなでた。
「アスタはカイルおじさんを助けて田んぼの雑草を焼き払ったのに、どうしてカイルおじさんは怒っているんだろう?」
『タム』と呼ばれるこの生物はまばたきをしながら耳をわずかに揺らし、自ら頭をアスタの手に寄せた。
彼女を慰める様子だった。
アスタは頭を傾げて考えた。
頭の上にある火種は彼女の悩みに同調するかのようにゆらゆら揺れている。
彼女は唯一森の中で会ったことのある年老いた炎の精霊を思い出した。
彼女の指導者でもある炎の精霊はかつて彼女にこう話した。
「お前は炎の力を秘めている。これを使って邪悪を打ち破り、自らを守ることもできるし、人々に希望を与えることもできる。だがそれだけで万事解決というわけでは無いんじゃ」
アスタは頭を悩ませていたが、言葉の意味を理解できず、やがて彼女を指導した炎の精霊も命を全うすることになった。
周りの人はみんな彼女を厄介者として、できるだけ遠ざけたいと思っていた。
それでも彼女は森の者のためになることをしようとするもーー
最後はいつも火事を起こして失敗した。
その度アスタは挫けそうになるが、タムの慰めによりすぐに立ち直った。
「大丈夫! 少なくとも今まで、炎は何でも解決してくれたわ!」
アスタは森で一番大きな『森の炎』から生まれた。
彼女は、ユグドラシルの住民とは似ても似つかず、むしろ正反対の存在であった。
彼女は遊び好きで、天真爛漫で、まだ試したことのないものや、まだ知らない世界に常に好奇心を持っていた。
彼女は自分を育んだ森の炎を摘み取り、ユグドラシルの住民のように、それをランタンのように持ち歩いた。
彼女が尻尾を振ると、上で燃え続けている炎も同調するように揺れ、ランタンの中の炎もまた激しく燃えた。
しかし、炎に対する制御がまだできておらず、誤って火事を起こしてしまうこともしばしばあり、ユグドラシルの住民たちを困らせた。
しかし年配である炎の精霊は、アスタはいたずら好きだが悪意はないこと、正しい練習をすればいつか火を操る技術が身に付くことを住民たちに言い聞かせた。
アスタのいたずらを叱ることもなく、ただ笑顔でアスタの言い訳と気持ちを優しく聞いてくれた。
しかし意外なことに、この優しい指導者はすでに老いており、アスタが生まれた年に、僅かだった残りの炎を燃やし尽くし、その命を全うした。
一緒にいた時間は短かったが、それでもアスタは心のどこかで寂しいと感じた。
やがて落ち込んでいた気持ちも次第に立ち直り、それからアスタは自由を感じた。
彼女は茂みや草むらに火をつけ、岩陰に隠れて慌てるユグドラシルの住民たちを見て腹を抱えて笑った。
しかしすぐに彼女は寂しさを感じた。
彼女は自分と同類の精霊を見つけようとしたが、一向に見つからなかった。
彼女は辺りに火をつけて周りの注意をひこうとしたが、すぐ住民たちに制止された。
アスタは再び行く宛が無くなった。
そんな日々が続き、彼女は自分を離れた炎の精霊を思い出すようになった。
彼は自分がアスタを離れても十分一人で生活していけると思っているようだった。
彼は自分の命が尽きる直前、アスタに対してこう言った。
「もう私が教えることはなにもない。これからお前が人生の中で大切な人たちと出会うことで、必要なものが何か、愛や希望が何かを必ず理解することができるだろう」
その後、彼女は炎を使って人を助けようとするが、いつもタイミングやその方法が間違っており、逆効果となってしまい、その都度落ち込んでは立ち直った。
そして今、再びやる気を取り戻したアスタは、ふと鼻先を動かして注意深く空気を嗅ぎ、遠くに漂う風に不吉な存在の気配を察知した。
アスタはすぐに茨の枝を巧みにくぐり抜け、茂みに隠れて目の前の出来事を静かに探った。
やがてどこからともなくやってきたカタストロフたちが、ユグドラシルの壁を破って森を蹂躙し始め、目に入るものすべてを破壊し回った。
「タムタム、悪い奴らが森の動物や植物たちをめちゃくちゃにしているよ、助けるべきだと思う?」
タムは少しためらったが、すぐに頭をアスタの指に当てた。
「うん! そうだね、森を守れば、みんなもアスタがイタズラっ子だって思わないよね」
アスタは決意を決め、そしてやさしくタムの頭をなでた。
しかしその瞬間、澄んだ鳥の鳴き声とともに、美しく力強い姿が、大きな翼を開いて空から舞い降り、自分と同じ匂いのする炎で目の前にいるすべてのカタストロフを焼き払った。
アスタは一瞬呆然とした。
そしてその人影が振り返ると、彼女の額には自分と同じ炎が燃えているのを見た。
すごい!
同じ匂いの炎なのに、どうしてこのきれいなお姉ちゃんの手から出ている炎は自分のものと全く違うの?
よくわからないけど、でも大丈夫!
このきれいなお姉ちゃんについていけば、いつかアスタも炎を自在に操れるはずよ!
そう考えたアスタは彼女の前に行ってこう言った。
「あの…あなたはどこに行くの? アスタも連れて行ってくれる?」
一人ぼっちで行く宛がなかったアスタは、ようやく進むべき方向、目指すべき目標を見つけた。
ほら、やっぱり炎は何でも解決するよ!
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