ユージーン【混沌の愚者】
概要
呼称 | 混沌の愚者 |
陣営 | カタストロフ |
身長 | 185㎝ |
趣味 |
・冒険 ・日記を書くこと |
好きなもの | 奇妙な小物 |
嫌いなもの | 古臭い教え |
現在地 | 不明 |
現在の身分 | 隠居者 |
関連人物 |
【友人】 ・ガイウス 【養子】 ・リベータ ・ルシラ |
ストーリー
ユージーンはガイウスから、
赤い表紙に金色の箔押しが入った日記帳を
プレゼントされる。
彼は少し驚いた。
以前、ユージーンは人間の職人技を学び、
草木や綿、麻を使って加工した
珍しい日記帳を持っていたのだ。
そこには旅の途中で感じたことを
書き留めていたのだが、
事故により失くしてしまい、
それ以降記録をつけていなかった。
「新しい日記帳があれば、
毎晩私のところにその日あったことを
報告する必要がなくなりますよ」
ガイウスは穏やかに言った。
ユージーンはその通りだと感じたものの、
その前に過去にあった面白いことを、
この新しい日記帳に
書き直さなければと思う。
だが、記憶力の悪いユージーンは、
遠い昔のことは
とっくに忘れてしまっていた。
身を隠している最近の生活は、
あまりにも平穏すぎて書くことがない。
よく考えた結果、
ガイウスとの出会いだけが、
当時は予測不能で面白く
価値のあるものだった。
ユージーンとガイウスが出会ったのは、
ある誤解がきっかけだったーー
この正直者のセレスチアルが
真剣に神器を探している時、
ユージーンのことを一緒に神器を奪った
仲間だと勘違いをしたのだ。
ユージーンは元々、
退屈な生活を打ち破ってくれるような
新しい体験を大切にしていたが、
だからといって宿敵である
セレスチアルと行動を共にするのを
受け入れられるわけはない。
この『陰険なハト』が
天秤で呪いをかけたことにより、
逃げられないだけでなく、
ハトと命を繋がれてしまったのだ。
ユージーンは、自分の命の方が大事だ。
彼は自分の運の悪さを認めるほかなく、
ガイウスの神器の奪還に
付き合うことになった。
間一髪のところでカタストロフの刃から、
ガイウスの命を救うはめにもなった。
しかもそのせいで、ユージーンは
ガイウスと神器の入った容器もろとも
崖下の深い谷底に落ちてしまったのだ。
さらに不運だったのは、
容器の中からは赤ん坊の泣き声が
聞こえてきたことだった。
新奇なことに慣れていたユージーンも、
この時ばかりは驚いた。
「マジかよ!?
俺たちが奪い合ってた神器って
人間の赤ん坊だったのか!?」
『神々と肩を並べた時代』に
生み出されたと言われるこの姉弟の体には、
確かに天地を揺るがすほどの
力が備わっていた。
そのせいでカタストロフたちと
群山の頂上にいる神々が、
神器を手に入れようと躍起になり、
世界を転覆しようと
目論むようになったのだった。
ガイウスはもともと神器を群山に持ち帰り、
神々の命令を全うするつもりだった。
だが、その途中でガイウスもユージーンも
赤ん坊に情が移ってしまい、
旅へと変わっていった。
最初の頃、ユージーンは子守りなんて
面倒だと思っていた。
少女が得体の知れない
クモを食べても放置したり、
おむつに火がつくまで焚き火のそばに
大人しい少年を置きっぱなしにしたり……。
さらには、子どもたち2人を使って
お手玉をして遊んだりしていたのだ。
ガイウスからは、
その度に冷たい視線を向けられた。
「あなたは、この子たちの力強い生命力を
そんなにも見たいということなんですか?」
「うるせぇな!
俺のやってることが気にくわねぇなら、
さっさと俺を追放しろよ。
このイタズラ好きのガキが、
俺の髪の毛をハゲるまで
抜こうとしてるのが見えないのか?」
残念ながら命をつなぐ呪いをかけた天秤は、
神器を奪い合った時に壊れてしまったのだ。
少なくとも修理が終わるまで、
2人は一緒にいなければいけない。
反論をしなくなったガイウスに
口先だけで勝っても、
ユージーンはあまり面白いと感じなかった。
当時の日記に、
彼はガイウスのことを
自由とカタストロフの尊厳を否定する
最大の敵として書いていた。
カタストロフの存在価値は、
どれだけ人間に
死を受け入れさせることができるか、
すべてを無に帰すことができるかで決まる。
だが、その考え方がガイウスによって
まさか変わるとは思っていなかった。
この堅物のセレスチアルのせいで
彼は日々、混沌に戻りたいと
死にたいと考えるようになっていった。
ガイウスの影響を受けたのか、
ユージーンが固定概念を捨てたのかは
わからないが、
彼と子どもたちの距離が縮まり出した。
彼は積極的に子どもたちの面倒を
見るようになったのだ。
ガイウスが天秤を修理し、
命を繋ぐ呪いを解いても、
少し留守にすることはあったが、
逃げることはなかった。
反りは合わないが、
ユージーンはガイウスのことを
かなり気に入ってると
認めざるを得なかった。
彼らの関係はいつの間にか、
犬猿の仲から戦友に代わっていた。
2人の子どもは、
泣いたり笑ったり騒がしかったりと
かなり手がかかる。
こんなに面倒で厄介な子どもだが、
殺戮兵器になるところなど
ユージーンは見たくなかったのだ。
ガイウスも、命ある存在が
武器として利用されることを
断固として許さなかった。
彼らの運命はこの共同生活の中で
知らず知らずのうちに固く結びついていた。
だが、セレスチアルもカタストロフも、
神器を諦めてはいなかったのだ。
逃亡中、ガイウスが人間の世界で
暮らしたいと言っていたが、
それは決して簡単なことではないと
ユージーンは警告した。
ガイウスが十分な備えを
していなかったからだ。
彼らはそれぞれセレスチアルや
カタストロフとして
長く生きてきた身だったため、
食べ物に関しては心配いらない。
だが子どもたちは違う。
『真理のゆりかご』にいた時、
彼らはまだ重湯を必要としていた。
食糧が底を尽きかけている今、
急いで補充しないと子どもたちは
飢えてしまう。
元々ユージーンはそのことを
気にしていなかった。
人間は極度の飢餓状態でも、
死体の山から食べ物を見つけて
食べていたのを見たことがあるからだ。
子どもたちが空腹になったら、
草木の根でも食べればいい。
正義感の強いガイウスは、
そんな話を聞いていられず、
ユージーンを叱った。
だが、解決策は何も浮かばなかった。
「いいことを思いついた」
ユージーンは嬉々として話し始める。
「人間に助けを求めようぜ。
あいつらは弱っちいが、
少なくともお前より面白い脳みそを
持ってるぞ!」
ガイウスはそうしたことに不慣れだった。
セレスチアルになって
かなりの年月が経ったが、
ガイウスが教わってきたのは
敬虔な人間たちへの応え方ばかりで、
人間に頼み事をする方法など
誰からも教わらなかったのだ。
ガイウスは慎重に考えながら口を開く。
「それは不適切ではないでしょうか」
「お前たちハトは本当に理屈っぽいな。
だが残念ながら、このガキどもは
プライドで腹を満たせねぇんだよ!
気が進まないのなら俺がやる」
「嘘をついてはいけませんよ」
ガイウスは子どもたちを抱いていて、
手が離せなかったが、
ユージーンに向かって言い放った。
魂胆を見破られたユージーンは
ムスッとする。
「嘘ってのはな、
自分の欠陥を美化するもんなんだよ!
一種の言語芸術ってやつだ」
その時彼らはブライト王国にいた。
ユージーンはこう言い捨てたものの、
収穫は何もなかった。
大半の人間は、
物乞いという行為に好感を抱かない。
しかも、カタストロフの力を使うことを
ガイウスに禁止されていたため、
人間を自分の思い通りに
動かすこともできない。
1人のセレスチアルと
1人のカタストロフは、
無一文という取るに足らないことが、
人間の世界では冷遇されることを
思い知ったのだった。
賑やかな町から遠く離れ、
ユグドラシルとの境界に近づいた時、
小さな村を見つけた。
村には十数軒ほどの農家が点在するだけだ。
どうやら聖堂教会の布教には素通りされ、
邪教の信者からも忘れられた場所のようだ。
紛争から遠く離れたこの地には、
子どもたちに喜んで食べ物を
与えてくれる老婦人がいた。
「聖光の下なら、
協力し合うことくらい簡単だと
思っていたのですが……」
ガイウスはため息をついた。
「お前は群山で長く過ごしてたから、
浮世離れしてるんだろ」
ユージーンは肩をすくめて
笑いながら言った。
「だが今まで見たこともなかった
景色を見たり、知らなかったことを
経験したりするのって面白いだろ?」
村のすぐ外はユグドラシルの境界だ。
ガイウスが言うには、
森との境界には独特な天然のバリアが
張られているため、
ある程度は気配を消すことができるそうだ。
彼らの逃亡の旅は、
ここで一段落となりそうだ。
この旅を思い返してみると
苦しみは一切ない。
むしろユージーンにとって
共に騒いだ日々は楽しいものだった。
彼は記憶を辿りながら日記を書いていたが、
どれだけ書き足しても足りないと感じた。
「夜がこんなに静かだなんて最高だな。
面倒くせぇガキも、
つまんねぇハトもいない。
残ったのは俺とお前、
俺の気持ちを聞いてくれる
この日記帳だけだ……
あぁ、新しいことを書かーー
待てよ、何か忘れてる気が……
チッ! ガキが起きた! クソが!」
ドリーのコーナー
ユージーンは、ずっと前から世界各地を放浪している。
どこから来たのかはもう忘れてしまった。
もちろん、どこに向かうのかもわからない。
彼は天性の冒険家だ。
旅をしていれば新鮮なものに出会え、追い求めた自由を得ることができる。
カタストロフとして生まれたユージーンは他のカタストロフ同様、皆から疎まれ恐れられていた。
しかし、大多数のカタストロフとは違い、彼はそこまで悪意には満ちていない。
ユージーンはただ、自分がしたいように生きているに過ぎないのだ。
彼にとっては、面白いかどうかがすべての判断基準なのだから、そんな性格だからか他のカタストロフは彼を見下し、一族の異端児だと見なしている。
しかし、ユージーンはそんな事など、まったく気にしてはいない。
彼は暮らしの中の楽しさを見つけるので忙しいのだ。
低俗な者たちの考えなど気にしている暇はない。
相容れないからこそ、縁があるとでも言うのか、カタストロフのユージーンとセレスチアルのガイウスの出会いは至極胸糞が悪いものだった。
ガイウスにセレスチアルの兵器を盗んだ犯人だと疑われたユージーンは、「敵わないなら逃げるまで」という信条を貫くことさえできなかった。
ガイウスは均衡の天秤を使い、直接二人の命を繋いだのだ。
その時、ユージーンの気持ちは過去最低にまで落ち込んだ。
しかし、ともに時間を過ごしていくうちに、ユージーンは融通のきかないセレスチアルとの暮らしにも慣れていった。
セレスチアルの「兵器」は、泣きわめくのが得意な二人の子どもだと知ってから、ユージーンは命を大切にするガイウスの考え方に賛同するようになった。
しかし、ガイウスを遣わしたセレスチアルたちが、あの子どもたちを連れ帰ったところで彼らを大切にしてくれるとは思えない。
事実はユージーンの憂いが正しかったことを証明してくれた。
狂気的なまでに「兵器」を奪い合うセレスチアルとカタストロフの姿を見た時、ユージーンはためらうことなく、ガイウスとともに子どもたちを連れて逃亡の旅に出た...
長らく書いていなかった日記帳を指でなぞったユージーン。
彼が日記を書き始めたのは、それが楽しいと思ったからに過ぎない。
そして今、その日記帳にはガイウスや子どもたちとの暮らしのすべてが書かれている。
カタストロフに捕らえられ、牢に閉じ込められていた十数年の間、ユージーンの命は壊れかけの時計のように、思い出の中に沈んでいった。
しかし今日、まさに今この時、二人の子どもたちの懐かしい呼び声が、ユージーンの命の静けさを破った。
姉弟は再会し、家族はまた一つとなる。
準備は万端だ。
ユージーンはついに動き出すことができる、日記に書かれている主人公に会いに行けるのだ。
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