アゼス【気高き賢木】
概要
呼称 | 気高き賢木 |
陣営 | ヴェルディア連盟 |
身長 | 219㎝ |
好きなもの |
・新たな挑戦 ・弱い者を助ける ・果物と野菜のサラダ |
嫌いなもの |
・怠けること ・尻込んで逃げること |
故郷 | ユグドラシル |
現在地 | ユグドラシル |
現在の身分 | 大自然の叡智の候補者 |
関連人物 |
【恩師】 ・アルドン 【遠い親戚】 ・エルロン |
ストーリー
ユグドラシルにある黄昏のアリーナの観客席は今日、普段よりも少しだけ賑やかなようだ。
しかし、間もなく行われるのは頂上対決などではない。
末端戦士の淘汰試合だ。
負ければ、アリーナでのその後の参戦資格をはく奪されてしまう。
それが大自然の叡智「アルドン」の弟子でも例外ではない。
大自然の叡智「アルドン」の無数にいる教え子の中で、誰が最も優れているかを決めるのは難しい。
しかし、最もクズで愚かな者を挙げるとしたら、今まさにこの場にいる、黄昏のアリーナの万年サンドバッグ「アゼス」を思い浮かべる者は多いだろう。
「えっ、エルロンだって?」
ーーもう一つの扉が開いてアゼスの対戦相手を知った時、観客席からはため息が漏れた。
エルロンはユグドラシルでもトップレベルの戦士なのだ。
アゼスにはもはや一縷の望みもない。
「よう、いとこさん。そんじゃあ始めるか」
アゼスは気楽な様子でそう言うと、鹿の頭の形をした杖を手に奇妙な戦闘態勢を取った。
まただ…観客たちはすでに、アゼスの一風変わった戦法にもすっかり慣れてしまっていた。
森に生きる者は、誰もが己の立ち位置をしっかりと決めている。
メイジや戦士、アサシン、そしてレンジャー。
それぞれが自分なりの方法で森を守り、貢献しているのだ。
しかし、アゼスが一体どういう立場なのかを真に知る者はいない。
アゼスはエレンやキャットと剣を握ることもあれば、クインやソリスと瞑想しながら魔法の流れを感じることもあった。
どんなものにも手を出すことで、すべてをそれなりに身に着けてはいるが、おかげで戦術は独特なものになったと言える。
大きな体を持つからこそ打たれ強く、なんとかアリーナの末端戦士をして残っているようなものだ。
アゼスが肩を落としてアリーナから出るたびに、アルドンは何も言わずに傷薬を渡していた。
同じ師に学ぶ仲間たちも、そのことで頭を悩ませている。
何にでも手を出すようでは、一つのことに精通することなど難しいのだ。
大自然の叡智であるアルドンも、なぜ己の教え子にその点を指摘してやらないのか、皆わからずにいた。
試合が始まると、エルロンは無表情のままゆっくりとアゼスに近づいた。
エルロンは剣すら抜いていない。
アルドンに頼まれなければ、彼は今この場にはいなかっただろう。
視線を上げて一瞥すると、やはりアルドンが客席の片隅にいるのが見えた。
まさか今日は、アゼスに徹底的にわからせるための試合なのか?
彼のデタラメな修行をやめさせようと言うのだろうか?
エルロンは余計なことを考えるのはやめた。
きっと一撃で終わるだろう、これ以上時間を無駄にしたくはない。
アゼスは後退を始めた。
エルロンが前に一歩出るたびに後ろに下がって行く。
四歩目に差し掛かった時、アゼスは後ろに下がる足を止めたがエルロンはそのまま前に出た。
「1、2…」
ーー小声でそう口にした瞬間アゼスは体を折り曲げ、片手を地面について前にころがり始めた。
エルロンの剣先がアゼスの杖に一筋の傷跡を残していく。
「ヘヘッ、エルロン、本気を出せよ」
アゼスとエルロンの位置が入れ替わり、互いに先ほどまで相手がいた場所に立っている。
アゼスの顎から汗が滴り落ちた。
「私は決して敵を見くびりません」
エルロンは少々驚き、もう一本の剣も抜いた。
先ほどの反応だけでも、この見知らぬ「いとこ」が腕の立つ戦士だということがわかったのだ。
しかしあの杖は一体…?
アゼスは、メイジなのだろうか?
エルロンは、己が最も得意とする体勢で力を溜めた。
風と氷が二本の剣にまとわり、彼が本気を出したことに観客は驚いた。
「エルロンはアゼスを殺すつもりなのか?」
エルロンは軽々と飛び上がり、二本の剣が小気味よい音とともに空を斬る。
アゼスはその場から動かず、剣先にまとう鋭い風がその額に届こうとしたその時、エルロンはアゼスの左手が相変わらず地面に置かれていることに気がついた。
先ほどから微動だにしていないその腕につけられた奇妙な腕当てから、地中に向けて根が伸びているようだ。
空中に飛び出している時、剣士は最も無防備な状態となる。
アゼスの左腕から放たれた霊木魔法は正確に地面を突き破り、エルロンの足を掴んだ。
普通の剣士であれば、これですでに手も足も出ないだろう。
しかし、エルロンは軽やかに風を使い、その剣先から風の波動が湧きだした。
アゼスは脳天に衝撃を受け、そのまま気を失ってしまったようだ。
「勝者。エルロン!」
ーー次の瞬間審判が叫んだ。
アゼスが再び目を覚ました時、エルロンとアルドンは二人とも彼のそばにいた。
「俺、負けたのか? くやしいな」
そう言いながら、アゼスは体を起こして額をさすった。
「あなたには剣士の才能があるのに、なぜメイジのような戦い方をするのですか?」
と、エルロンが問う。
「エルロンよ、弟子たちはわしのことを高き山のように見ておる。皆、努力を重ねて射手や戦士、メイジのトップに立とうとしておるのじゃ。そして、大自然の叡智の導きの下でユグドラシルを守り続ける。じゃが、アゼスは唯一、その高き山に登ろうとしておるのじゃよ」
「まさか、大自然の叡智になるおつもりなのですか?」
エルロンは、その日2回目の驚きを見せた。
「それも首席な。じいさんだって、いつまでも俺らの面倒は見られないだろ。誰かがその後を継いでやらないとな」
アゼスは己の杖につけられた傷跡をいたわりながら指でなぞり、そう言った。
「アゼス、言うたであろう。わしの後継者となるには、ヴェルディア連盟の意志を継ぎ、未来を切り開く要となる必要があると。単純なメイジや戦士の修行では、到底足らん。誰も歩んだことのない道を歩まねばならんのじゃ。ゆえに、おぬしは武術と霊木魔法を同時に習得する道を選び、今日までアリーナで己の腕を鍛え続けてきた。おぬしはすでに、広き森への第一歩を踏み出しておる。そろそろアリーナから歩み出る頃合いじゃ」
そう言ったアルドンに、アゼスはこう問いかけた。
「先生、俺は次に進む準備ができたってことか?」
「エルロン、おぬしはどう思う?」
アルドンはエルロンに尋ねた。
「細き枝はまだ大樹に育ってはいませんが、それでもすでに青き木陰は広がっていると言えるでしょう。良い弟子をお持ちですね。マスターアルドン」
エルロンは二本の剣を鞘に戻し、振り向きもせずにその場を去った。
ドリーのコーナー
アゼスは黄昏のアリーナの常連客だった。
アリーナの状態を最善に保つため、彼は自律的な生活ルールと、非常に強度の高いトレーニングを行う頻度を守り続けている。
トレーニングは毎回深夜まで続き、黄昏のアリーナで仰向けになって星を見ていると、アゼスの心はこれ以上ないほど落ち着くのだ。
だが意外なことに、こうした努力によってアゼスは名誉を得られないどころか、アリーナの「常駐サンドバッグ」として笑い者になってしまった。
だが不思議なことに、アゼスは失敗やこうした嘲笑を真に受けていないようだ。
その理由を、彼の神経の図太さと単純な脳のせいだと言う者もいた。
だが、これがアゼスの自らを極限にまで追い込むやり方だと知っているのは大自然の叡智・アルドンだけだ。
アゼスは、戦闘戦略におけるある側面で成長に近づくと、すぐに戦略を変えて始めからやり直すのだ。
アゼスにとって激しい戦闘は自身の弱点を知り、欠点を補う効率のいい修行法なのだ。
そして相手を最速で理解して技を盗む手っ取り早い方法でもある。
だから彼は「常駐サンドバッグ」というあだ名を一切気にせず、常に楽観的な精神状態と高い闘争心を持ち、次の対決に臨むのだ。
だがアゼスの友人には、彼のやり方に理解を示さず、あんなに大きくなったのに、何故いつも殴られることを選んでいるのだろうと不思議に思う者もいた。
そんな時、アゼスは表向きにはいつも微笑んでお茶を濁しているが、彼の繊細な心はやはり、自分の力だけではこのジャングルを守れないのではないかと真剣に悩んでいた。
彼は、恩師であるアルドンを助け、ユグドラシルの過去と未来を繋ぐ存在になれるように自分だけの道を見つけなければいけない。
それに、アルドンがいつも自分を気にかけてくれていることは、アゼスも分かっていた。
だから、自分の恩師を失望させるわけにはいかないのだ。
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