アンサット

ページ名:アンサット

アンサット【罪負いの戦神】

概要

呼称

・罪負いの戦神

・恩師(ブルータスの彼女に対する呼称)

陣営 ババリア部族
種族 タイガー族
身長 176㎝
好きなもの

・ブルータスの訓練を眺める

・静かなテントの中

嫌いなもの サンドクロー
故郷 茨の断崖外周
現在地 風化した砂の海
現在の身分 先代ババリアの戦神
関連人物

【弟子】

ブルータス

【志を共にする親友】

スケーリアス

ストーリー

まだブルータスが幼かった頃ーー

ババリア部族は分裂の危機に陥っていた。

これは彼の数少ない不安を感じた

記憶の話だ……。

 

ババリア部族は壊滅寸前だったが、

当時の大酋長は権威を保っていた。

それを警戒していた各種族は、

密かに力を蓄えるだけで、

決して野心を明かすことはしなかった。

だが大酋長の死によって、

弱肉強食の掟がこの砂漠でより顕著になる。

ファルコン族、ケンタウロス族など、

各種族はこれまで隠してきた牙を

剥き出しにして、土地も資源も民も

手当たり次第略奪を始めるようになった。

 

それから数十年間ーー

強い種族は次々と弱い種族を虐殺し、

無理やり併合し、土地を奪っていった。

そうして多くの種族が

この荒れた土地から消えていったのだった。

それを目の当たりにしている弱い種族は、

日々の生活に怯えながらも、

危機から救ってくれる英雄を待っている。

誕生すらしていない英雄が

ババリア部族の大酋長となり、

各種族を統率してくれる日を

願っているのだ。

 

その最中、

ババリアの戦神だったアンサットは、

大酋長として最も有望視されていた。

この激動の時代、

砂漠で立場を確立するために

最も必要なものは武力だった。

彼女は戦士としてとても強く、

先代のババリアの戦神から

最高の栄誉を受け継いだのだった。

アンサットには、

本人が持つ優れた戦闘能力だけでなく、

種族を統率する力もあった。

彼女には多くの信奉者がいたのだ。

 

「ババリアの戦神とは、

多くの使命を背負わなければならない。

ババリアの戦神こそが、

不屈の意志の化身とも言える存在だ」

 

アンサットの宣言は、

多くの戦士を引き寄せた。

ブルータスもその中のひとりだった。

 

彼はアンサットを師として崇め、

数々の試練を乗り越え、

アンサットの部隊に加入することができた。

そしてその優れた闘争本能と不屈の精神で、

アンサットの一番弟子にまで

上り詰めたのだ。

ブルータスは、アンサットの部下である

他の戦士同様、自分の師は部族の王となり、

ババリア部族をかつてのように

栄光へ導くだろうと信じていた。

 

アンサットは彼らの期待通り、

勇敢な戦士を率いて

数々の戦いで勝利を収め、

分裂したババリア部族を統率していく。

助けを求める弱い種族には守りを、

歯向かう種族には鉄槌を下した。

無法者であった『サンドクロー』でさえ、

アンサットの旗を見ると逃げ出すほどだ。

種族の族長たちは次々と弾圧され、

アンサットと同盟を結ばされた。

 

だが、物事はいつも

順調に進むわけではない。

ババリア部族が住む

タスタン砂漠内の勢力は、

時と共に大きく変わってしまったのだ。

弱い種族たちを無理やり併合し続けてきた

種族の族長たちは、

ババリア部族が統率されることを拒み、

自身の勢力を拡大している。

さらに、内部争いをしている間に、

スケーリアスというファルコン族が

ババリア大酋長に忠誠を誓う

『ブラッドガード』を率いていると

もっぱらの噂だった。

スケーリアスは、わずか数年で

アンサットの部隊に匹敵するほど

成長していったのだった。

 

アンサットが軍営から出てくることは

少なくなった。

師を心配したブルータスが

テントを覗くと、

彼女は地図を眺めながら何やら考えていた。

一度だけではない。

何度もその姿を見たのだった。

 

ある日ーー

スケーリアスが砂嵐と共に

アンサットの軍営までやってきた。

彼はババリアの戦神と会談を望んでいる。

誠意の証として、

『ブラッドガード』のリーダーである

アノーキが率いる護衛だけを連れてきた。

ブルータスはこれを挑発と受け止め、

スケーリアスを退けようとするが、

アンサットによって阻止された。

渋々身を引いたブルータスを下がらせ、

アンサットはスケーリアスとふたりきりで

テントに入り密談をした。

2人が何を話したかは誰も知らない。

ただスケーリアスが去る時、

アンサットの表情はとても沈んでいて、

複雑な面持ちをしていた。

長い沈黙の後、

彼女はゆっくりと口を開けた。

 

「ババリア部族に必要な大酋長は、

ただひとりのみ……。

ふたりもいらないのだ」

 

その密談以来ーー

アンサットの部隊と

スケーリアスは対立することになった。

双方ともに譲らず、

常に互角に渡り合ってきた。

だが、アンサットは何を企んでいるのか、

戦いは部下に任せっきりで、

自身はますます軍営に籠りきりになる。

それどころか、時々正体不明の者が

彼女のテントに出入りし、

こそこそと会合をするようになったのだ。

 

砂漠にいるすべての勢力、種族が

ふたりの戦いに注目している。

どちらが新たなババリア部族の大酋長と

なるのか……

彗星のごとく戻ってきた

スケーリアスか、

勢力を統率してきたアンサットか……

この戦いの結果、

大酋長が誕生するに違いないと

皆、浮き立っていた。

 

ほどなくして、

スケーリアスが行動を起こした。

ババリア部族の大酋長代理として、

各種族の族長を集め、

ババリア部族の将来を話し合う場を設けた。

アンサットも当然その中に含まれていた。

 

その会合の前夜ーー

アンサットはいつものように

ブルータスに稽古をつけていた。

彼の剣技は驚くほど早く向上していて、

アンサットが全力で受けなくては

ならないほどだった。

稽古が終わると、

風の音にまぎれてアンサットが呟いた。

 

「ブルータス、覚えておけ。

戦士は決して戦いをやめてはならない。

ババリアの戦神であるなら、なおさらだ。

時には苦しい選択を

迫られることもあるだろう。

時にはお前の心に

逆らわなければならないこともあるだろう。

だが、それが戦士だ。

それがババリアの戦神なのだ……」

 

ブルータスに教えるように言いながらも、

アンサットの神妙な面持ちを見ると、

それは自身に言い聞かせているようだった。

 

「……安心しろ。

明日以降、ババリア部族は安泰する。

なにせ新たな大酋長が誕生するのだからな」

 

砂漠の砂が風に吹かれて月明かりを遮る。

ブルータスは目の前にいる恩師の顔が

なぜか見慣れない顔のように感じた。

 

翌日ーー

各種族の族長が話し合いに集まったが、

そこにアンサットの姿はなかった。

スケーリアスはひとまず、

今集まっている者だけで会議を

始めようとしたその時だった。

アンサットが『サンドクロー』を率いて

襲撃したのだ。

そして各種族の族長たちを包囲し、

力ずくでアンサットがババリア部族の

大酋長であることを認めさせようとした。

身動きが取れない族長たちは、

彼女の要求に従うしか選択肢はない。

だが次の瞬間、

突然大きな叫び声が轟いた。

ブルータスが率いる小隊が

『サンドクロー』の包囲を突破したのだ。

金属のぶつかる音と悲痛の声が溢れ、

アンサットは戸惑っていた。

 

彼はアンサットの異変に気づいていたのだ。

師を崇める気持ちを捨て、

意を決したブルータスは

アンサットの留守中に『サンドクロー』と

手を組んでいる証拠を見つけていた。

それはブライト王国の貴族からの

密書だった。

ブライト王国はこれまでずっと

ババリア部族の内乱を引き起こすため、

『サンドクロー』に資金援助を

していたのだ。

スケーリアスの勢力を脅威に感じた

ブライト王国の貴族たちは、

対立していたアンサットを

大酋長の座につかせようとしていた。

まさか尊敬する師が戦士の名誉に背き、

権力欲しさにブライト王国の

下僕になるとは思ってもみなかった。

だが万が一に備えて、

ブルータスは最も信頼のおける小隊と

秘密裏に連絡を取り合っていたのだ。

もし、アンサットの陰謀が成功していたら、

ババリア部族は完全に

ブライト王国の傀儡になっていただろう。

 

首に剣を突きつけられていた族長たちは、

この混乱に乗じて反撃に出た。

スケーリアスも勇敢に立ち向かい、

戦いの指揮を執った。

ブルータスは、その場にいた

ババリアの戦士たちと力を合わせ、

『サンドクロー』を撃退する。

勝ち目がないことを悟ったアンサットは、

『サンドクロー』の残党を残して

その場から逃げ出そうとした。

だが、ブルータスがそれを阻止する。

彼は聞きたかったのだ。

ババリアの戦神であるアンサットが

なぜこのようなことをしたのか、

その理由を……

ブルータスは全力でアンサットを止めるが、

彼の剣技はすべて彼女から

伝授されたものゆえに、敵うはずもない。

これまで手合わせしてアンサットに

勝利したことが一度もないブルータスは、

今回も勝つことはできなかった。

目の前で逃げていくかつての師を

睨みながら、怒りに満ちた声で叫んだ。

 

「なぜだ!? 

なぜ、このようなことをーー!!」

 

「ブルータス……。

私が覚えておけといったことを

もう忘れたのか?

ババリア部族統一のためには、

誰かが犠牲にならなければならないのだ」

 

逃げていくアンサットの呟く声が聞こえる。

彼女は一歩踏み出し、

暗闇の中に消えていったのだったーー

 

ドリーのコーナー

アンサットはかつて多くのものを持っていた。

輝かしい称号、周りをまとめる統率力、可愛い弟子達、しかし今は裏切り者としての罵りと議論しか残されていない。

スケーリアスが率いるもと、ババリア部族は今や一致団結している。

各部族は大酋長と軍神を称える一方で、時折、かつて無敵と呼ばれた昔の軍神を思い出し、ため息をつく。

みんなは彼女が欲深く、スケーリアスに自分の地位を脅かされると、部族の裏切りをしたのだと思っている。

アンサットの弟子であるブルータスは、自ら彼女の企みを暴き、威信を勝ち取った。

あの日、ブルータスは恩師に刃を向けた。

そして今に至るまで、アンサットはあの時の弟子が見せた失意と葛藤に満ちた眼差しを忘れられずにいる。

弟子入りしたばかりの頃のブルータスはただただ力任せの無法者だったが、忠実で誇り高い戦神の素質があった彼は、やがて彼女に匹敵するほどの剣技を身につけるほどに成長した。

しかし、彼女には時間がなかった。

スケーリアスも彼女も、ババリアがひとつにならなければブライト王国に立ち向かうことはできないと解っていた。

そこで一芝居打ち、彼女が「裏切り者」となることで、ババリア部族を勇者たるスケーリアスに託したのだった。

まさかこんな短い期間にここまで成長するとは。

アンサットはブルータスの猛烈な剣風を受け流しながら感心した。

しかしまだ実力は及ばず、ブルータスは地面に倒された。

「なぜだ!」

弟子の尋問を前に、アンサットは背を向け、その場から離れた。

いつか戦神を受け継げば、称号の裏にある責任を知り、彼もまたババリアの意志に含まれた真の意味を知ることになるだろう。

その時になったら、あるいはまた彼と一戦交えることになるかもしれない。

 

スキン【黄金の意志】

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