SPアンダンドラ

ページ名:SPアンダンドラ

SPアンダンドラ【赤炎の槍】

概要

呼称 赤炎の槍
陣営 ババリア部族

ストーリー

「おぬしはいつでも心に従い決断を下せるのじゃよ、アンダンドラ」

かつての同僚に連れられて、アンダンドラがボロボロの体を引きずってブードゥー神殿を後にした時、ヌミスは最後に彼女に向かってそう声をかけた。

「その代償を払えるといいのじゃがのう」

代償…隣にいる澄んだ目の少女を見ながら、アンダンドラはなぜかそんなことを思い出した。

「アンダンドラ、見て! あそこ、なんか変だよ!」

サテラが耳をそばたて、前方を指し示した。

少し前、アンダンドラが流砂岩窟で槍を修理していたら、ある子どもが知っているようでまったく知らない人影を連れてきた。

「アンダンドラ?」

数年ぶりに会ったサテラは、そう言いながら押しかけてきた。

少女は大人と言えるまでに成長し、その声には心配と喜びがこもっていた。

アンダンドラはサテラが恋しかったが、彼女がここへ来たのには理由があるのだと分かっていた。

カタストロフが大挙して押し寄せたことを知ったブードゥー神殿が、各部落に人を送ったそうだ。

サテラはすぐにアンダンドラのことを思い出し、自ら進んで流浪の地付近の住民への連絡役を買って出た。

もちろん、ウィッチドクターたちの同意なしにやって来たのだ。

サテラの話を聞いたアンダンドラはこう言った。

「流浪の地にも罪のない住民はいるわ、助けなきゃ」

「うん、あたいも一緒に行くよ」

と、サテラも迷いの色を見せなかった。

 

アンダンドラとサテラはソルトウォーターの周辺に身を隠して様子を見守った。

サテラが示した通り、黒い人影が町の外れに迫ってきていた。

「カタストロフよ! 住民を避難させましょう」

と、アンダンドラが立ち上がった。

村からはすでに泣き叫ぶ声が上がっている。

アンダンドラは全速力で走り、すんでのところでカタストロフから少女を救った。

彼女がそっと少女の顔についた血を拭うと、懐かしい感覚が甦った。

「しっかり掴まってて!」

とアンダンドラは少女に話した。

 

サテラとドワーフのケイセンの助けにより、アンダンドラは一部の住民を避難させた。

だが、カタストロフの数はあまりにも多く、また何か狙いがあるようで、アンダンドラが日夜住民の避難を続けてもカタストロフはいなくならなかった。

難民の多くは亜人と人間の老人や子どもで、アンダンドラはソルトウォーターに迷い込みかけていた年老いた行商人をも引き止めた。

ある若い人間が帝国周辺への避難を提案した。

が、彼らよりもカタストロフの機動力の方が遥かに上だ。

国境に差しかかる前に追いつかれてしまうだろう。

「どこへ行けばいいんじゃ?」

とケイセンはアンダンドラに尋ねた。

追放された女戦士は考え込みながらキャンプをちらりと見ると、サテラが、先ほどアンダンドラが助けた少女の手当てをしているのが見えた。

サテラは穏やかな表情で優しく耳を垂らしていて、まるでアンダンドラのそばにいることで安心感を抱いているようだった。

「代償を払えるといいのじゃがのう、アンダンドラよ」

というヌミスの声が再びアンダンドラの脳内にこだました。

頭の上では怪鳥がしゃがれた鳴き声を上げて夕暮れの地平線の向こうへと旋回しながら飛び去っていき、そこには曖昧な黒い影も見えた。

カタストロフ軍のキャンプがあり、アンダンドラの動きをしっかりと見張っているのだ。

「サテラ、もう一か所あるわよね…」

アンダンドラは言った。

「それって…ブードゥー神殿? 確かにあそこの方が近いけど…」

「長老たちが血の契約を破ってあんたを神殿に入れるはずがない。そうなったらあんた1人でカタストロフ全員を相手しなきゃいけないんだよ!」

とサテラが言った。

それこそが代償なのだ。

アンダンドラはそう言いかけてこらえた。

彼女は、赤い耳の少女が自分の肩にもたれかかってまどろむまで、少女をなだめ続けた。

ケイセンが見張りをしてくれているものの、アンダンドラに睡魔は訪れなかった。

この静かな時が自らに尽きることのないエネルギーをくれるような気がして、深く心に刻もうと考えた。

 

「待て、動くな!」

というケイセンの叫び声に、アンダンドラはハッとした。

帝国周辺への避難を提案した人間は、とんでもない秘密を抱えていたのだ。

彼は帝国の名家・ロヴィス家の戦士で、カタストロフを圧倒するドラゴンクリスタルを一族のもとへと届けるために難民に紛れ込んでいた。

それこそが、カタストロフが彼らにしつこく追ってきている理由だった。

難民を危険に晒すわけにはいかず、ドラゴンクリスタルを渡すわけにもいかないアンダンドラは、再びジレンマを抱えた。

アンダンドラは、その瞬間は予想以上に近づいているようだと思った。

彼女はサテラの手を掴んで、彼女とケイセンに難民をブードゥー神殿まで護送するよう頼み、彼女はロヴィス家の戦士と共に国境近くへとドラゴンクリスタルを運ぶことにした。

アンダンドラは、

「ちゃんとあの子の面倒を見てくれるわよね?」

とサテラに問いかけた。

赤い耳の少女は涙をたたえていたが、唇を噛み締めて力強く頷いた。

少女は気づかなかったが、アンダンドラは珍しく微笑みを浮かべていた。

誇りと安堵、そして長く抱えていた胸のつかえが取れた安らぎから、彼女は微笑んだのだ。

 

熟練の戦士2人の援軍は侮れなかった。

アンダンドラはロヴィス家の戦士を帝国の谷へと送り届けたが、彼のために時間を稼がないといけない。

案の定、カタストロフが猛烈な勢いで侵攻してきて、アンダンドラは雄たけびをあげて迎え撃った。

今の彼女はいつになく落ち着いていて、肩には軽ささえ感じていた。

彼女の頭には、様々な記憶が甦りだした。

訓練を受ける道を選び、神殿武士になって世俗的な暮らしを捨てたこと、流浪の地に残ると決めたこと、不公平と暴力を前に身を挺してソルトウォーターの難民を救うと決め、1人でカタストロフを引きつけたこと…

そう、これらはすべて、彼女が自分の心に従って選んだことだ。

その選択に彼女はボロボロになって苦しんでいたが、逃げたことは一度もなかった。

アンダンドラの行動は十分ではなかったかもしれないが、彼女は決断や選択に対する最後の代償を払う覚悟を決めていた。

「戦士よ、ここで倒れてはいかぬぞ」

と、血のように赤い影がよぎった。

竜族・ブラッドリッジ部族の長老シルヴィンが年老いた行商人に扮して難民の中に紛れ、ひそかにドラゴンクリスタルの装備を守りながら、難民を保護するアンダンドラの勇気ある献身的な姿を見ていたのだ。

彼は正体を現すと間一髪で自らのドラゴンクリスタルを放り投げ、アンダンドラに巨竜の力を与えた。

この力により、アンダンドラは大量のカタストロフを勇敢にも瞬時に打ち倒した。

燃え盛る炎が彼女を包み込んだ。生死を乗り越えたアンダンドラは呆然として、

「これは…?」

とシルヴィンに尋ねた。

シルヴィンは、

「巨竜の力を使えるよう、お前にドラゴンクリスタルを授けたのだ。気高い戦士であるお前なら、その力をうまく使うことができよう」

と答えた。

「それで…あなたは私にこの力で何をしてほしいの?」

「まさにお前がしてきたことだ。カタストロフに苦しめられている生き物を守り、戦士として恐れることなく戦うこと…自身の心に従って、決断を下し続けることだ」

シルヴィンはそう答えた。

炎に重さはない。

だが、アンダンドラは何かが肩に落ちてくるのを感じた。

その感覚は何よりも重く、また気持ちをたかぶらせるものだった。

 

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