SPブルータス【孤高の獅子】
概要
呼称 | 孤高の獅子 |
陣営 | ババリア部族 |
ストーリー
ブルータスは剣を大きく振り下ろし、
目の前にいる最後の敵を倒す。
大剣のポンメルに両手を置き、
偵察兵から怪物に関する報告を
静かに聞いていた。
最近、異形の怪物がどこからともなく
ババリア部族の辺境に出没し、
周辺の村を荒らして生活を脅かしている。
「それからもうひとつ……
ブルータス様のお探しの方が
『風化した砂の海』に現れたようです」
「なに……?」
予想外の報告を受けた
ブルータスの表情は固い。
だが、その目には期待がにじみ出ていた。
「ーー見つけたぞ、アンサット」
『風化した砂の海』とは
タスタン砂漠の奥深くに位置する。
ここに訪れる者はほとんどいない。
一面ただの砂の海である。
この砂の海で、
ブルータスはまさに今、
激戦を繰り広げている。
相手は身の丈ほどの
大きな剣を振り回しながら、
ブルータスの大剣を受け止めた。
金属のぶつかり合う音が鳴り響き、
剣圧で砂煙が巻き上がった。
「探したぞ……
ババリア部族の裏切り者め」
探していた相手とはアンサットだった。
ブルータスの恩師であり、
部族を裏切った先代ババリアの戦神である。
あの時ーー
ブルータスは偶然にも
アンサットがブライト王国の貴族と
結託しているという手紙を見つけた。
そして、部下たちを率いて
アンサットがババリア大酋長の座に
就こうとする陰謀を阻止したのだ。
その結果、
ババリア部族の各種族は
人間が部族共通の敵であることを認識し、
代理の大酋長を務めていたスケーリアスを
ババリア部族の大酋長に任命した。
そうしてスケーリアス指揮のもと、
ババリア部族は再び統一されたのだ。
ブルータスはというと民衆の支持を得て、
新たなババリアの戦神となった。
ババリアの戦神は、ババリア部族の中で
最も崇敬される称号だが、
アンサットの裏切りにより汚された。
裏切り者から受け継いだ称号には
もはやかつての栄誉など存在しないと
ブルータスは思っていた。
それゆえ、彼はババリアの戦神という
称号を受け入れることができず、
代々受け継がれてきたマントと冠も
神殿の中に封印していたのだ。
一方、裏切り者となったアンサットは、
ババリア部族の民衆の前から
姿を消していた。
あれ以来、
ブルータスは師の行方を追ってきたが、
今日ついに彼女を見つけたのだ。
これまで一度も勝利したことのない
アンサットと数年ぶりに剣を交える。
だが、かつての彼女はいなかった。
ブルータスが強くなったのか、
アンサットが弱くなったのか……
ついにブルータスは隙を突いて、
彼女の大剣を吹き飛ばし、
地面に叩きつけたのだ。
ブルータスはアンサットに近づき、
刃先を彼女の首に向ける。
だが、どうしても斬ることができなかった。
「あなたは野心家ではなかったはずだ。
なぜ裏切りなど……!」
アンサットは質問には答えず、
この長い戦いを終わらせろとだけ告げる。
「真実を話せ!」
師に勝つことがブルータスの目的ではない。
あの時、恩師に何があったのか、
なぜ裏切りに至ったのか、
そもそも本当に裏切ったのか……
彼はただ真実が知りたかったのだ。
「ならば私が話そう」
声とともにスケーリアスが姿を現した。
「あの時起きた、すべてのことを……」
戸惑うブルータスをよそに、
スケーリアスは淡々と話し始めた。
先代のババリア部族大酋長が暗殺された後、
ババリア部族は分裂し、
内部争いが絶えなかった。
そこに目をつけたブライト王国が、
『サンドクロー』を利用して
種族間の争いを煽り、
ババリア部族を内部から
崩壊させようとしたのだ。
種族の長たちは、それにまったく気づかず、
争い続けていた。
そうして人間たちは、
自らは手を下さず利益だけを得ていたのだ。
スケーリアスとアンサットは、
ババリア部族の中でも
数少ない先見の明がある者だった。
部族の分裂を危惧した2人は、
互いに接触した後、
すぐに協力関係を結んだのだ。
叡智な2人は、
軍閥割拠な現状はババリア部族統一の
大きな妨げとなるどころか、
滅亡の一途をたどってしまうと憂いた。
この状態でスケーリアスとアンサットが
協力関係にあると宣言しても、
部族の内部に『より大きな軍閥』が
1つ増えるだけ。
武力で服従させても、
それは仮初めの忠誠だ。
自分の利益しか考えていない種族は、
必ず反撃して権力を奪取する。
スケーリアスとアンサットは
このように考えていたのだ。
分裂を完全に終わらせるためには、
ババリア部族の中で共通の敵を
作る必要があった。
そう、ブライト王国だ。
ババリア部族の内部争いを苛烈化させ、
私腹を肥やしている人間どもは、
格好の餌食だった。
スケーリアスとアンサットは、
大酋長の座を奪い合っているように
見せかけ、
秘密裏に緻密な計画を立て、
機が熟すのを待っていた。
そしてその時が来た。
ブライト王国は『サンドクロー』を通して
使者を送り込んできた。
案の定、
彼らはアンサットに大酋長の地位を
約束する代わりに、
計画に邪魔なスケーリアスを排除するよう
依頼をする。
話に乗って『裏切り者』を演じることで、
アンサットたちはブライト王国の陰謀を
暴こうとしていた。
この計画の鍵は、
ババリア部族に忠実な戦士に
『裏切り者』を撃退させることだった。
そうすればアンサットが退いたあと、
その者がババリアの戦神を引き継ぎ、
戦士たちを大酋長のもとへ導いてくれる。
共通の敵を倒すべく
ババリア部族の統一が果たせると
考えていたからだ。
そう……
選ばれたのはブルータスだった。
ブルータスはアンサットたちの思惑通り、
ババリアの戦神となり、
ババリア部族の統一を果たしたのだった。
一方、スケーリアスの計らいにより、
民衆の前から姿を消していたアンサットは、
土の元素を司る、
『岩盤』のエレメントガーディアンである
グラニトの護衛についていた。
グラニトは『風化した砂の海』に広がる
流砂を鎮圧するために
この地にやってきていたのだ。
スケーリアスが真実をすべて話し終えると、
ブルータスは苦しみから
解き放たれたかのように心を震わせていた。
目の前にいる崇高な戦士は、
一度もババリア部族を裏切ってなど
いなかったのだ。
アンサットは自慢の弟子に向かって
ゆっくり口を開いた。
「すまなかった。
ババリア部族統一のために、
どうしても犠牲が必要だったのだ……
ババリア部族が危機に瀕する時、
ババリアの戦神は真っ先に
立ち向かわなければならないからな」
穏やかな空気が漂い始めた時、
アンサットはスケーリアスに向かって、
なぜ『風化した砂の海』にいるのか聞く。
「それは……」
スケーリアスは話を切り出した。
ここ最近、
元素のバランスが著しく崩れ始め、
『侵食する者』という怪物が出現し、
災いがすぐそこまで
迫っているからだと言う。
この厄災を止めることができるのは、
エレメントガーディアンのみ。
だが、グラニトは流砂の広がりを
抑えなければならないため、
この地を離れることができない。
誰かがグラニトから土の元素の紋章の力を
受け継ぐことが必要だった。
「アンサット、君こそが適任者だ」
スケーリアスが言い終わると、
横からグラニトの声が響いた。
「力を得れば、大きな代償を伴う。
土の元素がもたらすものは力だけではない。
同時に未知の災厄をももたらす。
紋章には『侵食する者』を
引き寄せる力がある。
お前は常に危険にさらされる」
ババリア部族のためにすべてを捧げると
すでに決意していたアンサットに
迷いはなかった。
彼女が新しい使命を受け入れようとした
その時ーー
ブルータスがグラニトの前に立った。
「我が引き受ける」
ブルータスはわかっていた。
師があまりにも多くのことを
背負っていることを……
今こそ師の使命と責任を
受け継ぐべき時であると思ったのだ。
「ババリア部族が危機に瀕する時、
ババリアの戦神は真っ先に
立ち向かわなければならない」
ブルータスは毅然とした態度で、
先程アンサットが告げた言葉と
同じ言葉を口にする。
すると、
土の元素の紋章がグラニトの体から離れ、
ブルータスの持つ大剣に
吸い込まれていったのだったーー
『風化した砂の海』から戻った
ブルータスは、新たな旅に出る
準備をしていた。
だが、その前にもうひとつ
やるべきことがある。
ゆっくりと神殿から出てきた
ブルータスの身には、
それまで神殿に封印していた
ババリアの戦神に代々受け継がれてきた
冠とマントが着けられていた。
かつては受け入れることが
できなかった地位だが、
正真正銘のババリアの戦神として
使命を全うしようとする
決意の表れである。
神殿の外には、
元素の紋章に引き寄せられた
『侵食する者』が虎視眈々と
攻撃の機会をうかがっている。
膨大な数の敵を前に、
ゆっくりと前に進む。
彼の目には敵しか見えていない。
だが、心の中では恩師の声が
鳴り響いていたのだったーー
「ババリア部族は、戦いの中で誕生した。
我々には不屈の意志が刻まれた血が
流れている。
そしてババリアの戦神こそが、
この意志の化身とも言える存在なのだ。
これからお前はこの意志を受け継ぎ、
ババリアの戦神となる。
厳しい道のりになるだろう。
強い敵に囲まれ、
数が圧倒的に不利な状況でも
単身で立ち向かうのだ。
だが忘れるな。
部族がお前を必要とする時、
お前は身を挺さなければならない。
我がすべては部族の為なり!」
ブルータスは一歩ずつ足を速め、
『侵食する者』に向かって
大きく剣を振り下ろしたのだったーー
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