タニー【誓い破りの護衛】
概要
呼称 |
・誓い破りの護衛 ・光る牙 |
陣営 | セレスチアル |
種族 | 元々は神だったが、セレスチアルに降格された |
身長 | 230㎝ |
趣味 |
・瞑想 ・戦闘シミュレート |
好きなもの | カタストロフの敵対勢力 |
嫌いなもの | カタストロフの擁護者 |
現在地 | エスペリア |
現在の身分 |
・エスペリアのセレスチアル ・誓い破りの護衛 |
関連人物 |
【親友】 ・フレイラ 【敵】 |
ストーリー
あれは少し前の豪雨の午後のことーー
太陽が沈みきって夜が主役となる前に、
なんとか辺境の兵営に
物資を届けに行った時だった。
ふと、周囲を見渡すと、
痩せこけて垢だらけの老爺が目に入った。
みすぼらしい服を着て、
虚ろな目をしたその老爺は、
兵営の向かい側にある廃屋の屋根の下に
うずくまっていたんだ。
前線に近いこの場所では、
家を戦火に焼かれ、
路頭に迷う人など珍しくない。
だが、俺はその老爺の目から
何か違うものを感じた。
物資を運び終わったくらいだったか、
ザーザー降りだった雨が止んだ。
兵営の中から、明るい声が聞こえる。
ようやく動き出すことができると
兵士たちが開放的になったようだ。
雨の日はどうしても不安や不平不満が
溢れて兵営の中は空気が重くなる。
兵士たちがそこから解き放たれ、
安寧を得られると喜んでいた時だった。
老爺は立ち上がり、
口を開いて泣くような声を上げた。
「ああ、ああ、もうすぐ奴が来る!
グルリンタニー……
光る牙、神々の番犬、石の心……
奴の無尽の贖罪が再び始まる……!」
突然のことに呆気にとられていると、
老爺はいきなり俺の襟元を掴んだんだ。
「すべてはタニーのせいだ!
タニーの光が、奴の守るものによって
穢されたからだ。
この世で逃げ回っている
カタストロフの鮮血でしか、
その罪は洗い流すことはできない!」
俺は慌てて老爺を振りほどこうとしたが、
勢いあまって地面に倒れてしまった。
起き上がろうとした次の瞬間、
さっきまで喜びに満ちていたはずの
兵営の中から、
兵士たちの悲痛な叫びが聞こえたんだ。
続いて缶や樽、馬車といった物が
砕ける音。
大きな物音と悲鳴と泣きわめく声。
最後に……
俺が一番聞きたくなかった、
カタストロフの咆哮が聞こえたんだ。
壁の後ろから炎が上がり始めて、
ここはもう地獄になると悟った。
ひとりでも助けようと
老爺の腕を引っ張ろうとしたら、
頭を抱えて震え出したんだ。
濁った涙で俺の手を濡らしながら、
老爺は叫んだ。
「来る! 来る! 感じる!
身に焼き付いた烙印が燃えている……
わしに呪いをかけたあの者がやってくる!
今日はわしを
連れ去ってくれるのだろうか!?」
老爺が何を言っているのかわからない。
だが考える間もなく、轟音が鳴り響いた。
見れば、兵営の門が
紙が破れたように引き裂かれていた。
その向こうから半分になった鎧を持った
カタストロフが現れたんだ。
俺たちを見て、
カタストロフは頭を掻いている。
絶望した。もう終わりだ……
だが、老爺は一層激しく泣き始める。
そして、カタストロフを
迎え入れるかのように跪き、両手を広げた。
カタストロフは興味を持ったのか、
笑いながら老爺に近づいて、人間の礼遇を
喜んで受け入れているように見えた。
カタストロフの生臭さを感じるくらい
距離が近いのに、
俺は両足の力が抜けて、
背後の木にもたれることしかできなかった。
逃げなければ殺されるのに……
俺は怖くなってぎゅっと目を閉じた。
こういう時、
なぜか時間が遅く感じるというが、
本当にそうかもしれない。
俺は亡くなった母の顔を
思い浮かべて祈った。
その直後ーー
鈍い音がしたかと思えば、
どろどろとした生臭い液体が
顔に飛び散ったのを感じた。
何が起こったのかわからず、
キーンという耳鳴りだけが痛く響いている。
耳鳴りを我慢して目を開けると、
近くにいたカタストロフが
空から落ちてきた奇妙な柱に
押しつぶされていたんだ。
神々しさが感じられる紋様が彫られた
その柱は、この世のものではない。
なぜかそれは確信していた。
ゆっくり視線をずらして老爺を見ると、
顔をひどく歪めていて、
柱に向って何かを叫んでいた。
だが、耳鳴りが続いていて
よく聞き取れない。
徐々にそれが治まってきて、
ようやく老爺の言葉を聞くことができた。
「ああーー!!! 違う、違う!!
タニーめ!!
貴様の狙いはこのわしのはずだ!
いつまでわしを囮にする気だ!?
こんな荒んだ辺境にわしを追いやっても
気が済まないのか!?」
老爺の視線を追うと、
柱の影に人のような体が見えた。
風になびく白い髪の男。
彫像のような漆黒の体に
金色の紋章が浮かび上がって、
ゆっくり体の上を流れていた。
圧倒される姿だが、
なぜか彼の足は硬い岩の中に
深く埋め込まれている。
呆然とその姿を眺めていると、
次から次へと柱が空から轟音とともに
落ちてきて、残りのカタストロフたちが
押しつぶされていった。
それを見た老爺はその者を罵った。
「呪ってやる、呪ってやるぞ、タニー!
貴様が……貴様こそが!
デューラが人間に火を与えることを!
我々が力を得ることを妨害していた神だ!
貴様は人間を……
貴様の使命の下で這い回る
ただの虫けらだと思っている!
だから人間は貴様のことを知った日から
貴様を忌み嫌い、恐れ、裏切り、
忘却するのだ!」
老爺の叫びはだんだんと嫌味を増していく。
「だがな……
いくら貴様が人間を神から遠ざけようとも、
カタストロフが人間を誘惑するのを
やめさせることはできないのだ!
カタストロフの力のおかげで、
貴様に蔑まれている我々人間は、
神々の居所を揺るがし、
貴様らを壊滅させることが
できるのだからな!
ハハハハハッ!」
タニーと呼ばれた者はずっと黙っていたが、
ついに口を開く。
「己に属さない力への欲望。
この卑屈な野心が…...
お前たち人間がカタストロフと
手を結ぶ理由か?」
言葉を返すタニーの顔がよく見えない。
だが、老爺はその返答に激昂した。
「卑屈? ハハッ、野心!?
なぜ神は雲の上でのうのうと長生きできて、
人間は病と死を耐えなければ
ならないのだ!?
なぜ我々は脆弱で無力に生まれたのだ!?
己の知恵に相応しい力を欲して
何が悪い!!!!」
怒りを露にする老爺とは反対に、
タニーは淡々と答える。
「人間は他の生き物よりも
優れた知恵と感情を持っている。
だが、結果的にそれが強欲を
生み出すことになった」
タニーの声は心の芯まで凍るほど、
冷たかった。
「俺はデューラから『破滅の深淵』の
封印を守る役目を託された。
だが、カタストロフの崇拝者たちは
封印を破り、
再びエスペリアにカタストロフを
解き放とうとしている。
その冒涜をこの俺は決して許さない」
それを聞いた老爺は、
狂ったように笑い出した。
「ハハハハハハハハハッ!」
「そうだ……貴様は失敗して
我々は成功したのだ。
だからこそ貴様らは我々を迫害し、
追放した。
そうだろう?
お偉い神様たちが負けて、
我々はカタストロフの力を
手に入れたのだからな!」
2人のやり取りから、
タニーと呼ばれる者はどうやら神らしい。
そしてその神は、
どんなに老爺になじられても
まったく動じなかった。
「あれは俺の責任だ。否定はしない」
タニーは影の中から冷たい目を覗かせた。
「ハハハッ!
そうだろう!? だからこうなったのだ!
貴様は本当に頑固で非道な番人だ!
己を罰するために、
カタストロフをすべて排除するまで
一歩も歩かないと誓って、
両足を岩に封印するとはな!
ハッ、こんなことで貴様の名誉が
挽回するとでも思っているのか!?
笑わせるな!」
老爺は再び怒りを込めて言い放った。
「我々が憎くてたまらないのだろう!?
だったら殺せ! 今すぐに!
いつまで囮に使うつもりだ!?
貴様はすべてのカタストロフを
排除するのが目的のはずだろう!
なぜ殺さず烙印を押して追うのだ!?」
老爺の質問にタニーは答える。
「カタストロフの崇拝者は、
力を得る代わりに
カタストロフが災いを撒き散らすための
道標になる。
つまり、お前たちを追えばそこに
カタストロフがいる。
俺にとって最高の囮だ」
老爺は感情もなく答えるタニーを
まくし立てた。
「貴様、それでも神か!?
まるで悪魔じゃないか!」
老爺は泣いているのか、
顔を両手にうずめる。
雨がまた降り出し、
老爺の乱れた髪を濡らした。
今まで気づかなかったが、
老爺の額には奇妙な金色の烙印があって、
微かに光っていたんだ。
カタストロフが目の前で潰され、
人間が神を罵る……
あまりの出来事に
俺は呆然と2人を見ていることしか
できなかった。
だから反応が遅れてしまった。
突然、老爺が俺に飛びかかってきて、
カタストロフの武器の破片を
ぎゅっと握りしめながら、
まっすぐ俺の胸に突き刺してきたんだ。
叫ぶ間もなく、
タニーがすぅーと近づいてきて、
老爺の首を掴んで持ち上げた。
「ぐ……! こ、ろせ」
老爺はかろうじて3文字の言葉を
絞り出した。
そして、持っている武器で
タニーの腕を刺したが、無駄だった。
「お前を簡単に死なせない」
タニーは武器をへし折って、老爺を投げた。
「俺の烙印を持って逃げるがいい。
野良犬のようなお前らの運命は続く。
俺の贖罪が終わるまでな」
「くっ……ふざけるな……
それは不可能だ、ハハハ……
グルリンタニー……
誓い破りの番人め……
貴様が罪を償い終える日など来ない!」
俺と神は何も言わず老爺を見る。
老爺は狂ったように這って逃げ出し、
荒野の奥へ駈け込んでいった。
いつの間にかタニーがいなくなっていた。
雨が止んだ時には、
何もなかったかのように、
すべての痕跡がきれいさっぱりに
洗い流されていた。
だが、残酷な神の行いは
悪夢のように俺の胸に残った。
その名前……
『グルリンタニー』は
ずっと俺の頭に刻まれている。
彼は情けをかけることなく、
死ぬまで止まることなく、
カタストロフを狩り続けるだろうーー
ドリーのコーナー
肉体と精神の強さを併せ持つ戦士・タニーはかつて、大きな過ちを犯したことがある。
破滅の深淵がデューラに封印されて以来、タニーはカタストロフの侵入を防ぐ最後の防衛線として、破滅の深淵を監視する責務を背負っていた。
カタストロフたちは封印を破ろうと、数年間暗躍していたが、群山の頂から破滅の深淵を見つめる神々と、近くで監視する強者・タニーがいたため、大事には至らなかった。
しかしある日、イグテスの策で、山頂の神々の多くはハトール大陸の戦場へ赴くことになり、破滅の深淵のそばに残るのは、タニーだけとなった。
前線から、戦いの熾烈さと戦況の不利を語る戦報が飛んでくる。
タニーは冷静さを失い、苦戦する神々の力になれない自分を呪う。
悩みの末、タニーは覚悟を決め、戦場へ行こうとする。
しかしその時、様子を窺っていたカタストロフたちが一斉に動き出し、破滅の深淵の封印を破った。
戦いは惨敗に終わった。
タニーは辛うじて生き延びたが、監視の任務を投げ出したことへの後悔が、彼の心を蝕む。
元から無口だったタニーは、ますます寡黙になった。
彼は両足を封印し、歩くのをやめ、黙々とカタストロフの痕跡を探す。
そしてカタストロフを見つけると、すぐに罪の柱を呼び出して粉砕する。
彼は冷徹になり、一般人を慮る気持ちも薄れていった。
罪と復讐に苛まれるタニーを見て、親友のフレイラは居ても立っても居られなかった。
彼女はタニーのそばで、彼の贖罪の旅を見守り続け、タニーがカタストロフをせん滅した後に、壊された村の再建に尽力した。
そんな彼女を見ても、タニーは感謝の言葉を口にしなかった。
彼にできるのは、カタストロフを一日も早くせん滅し、この世全てのカタストロフの血で、自分の罪を洗い流すことだ。
それを達成するまでに、この悪魔狩りの旅は終わらない。
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