トレズナー【怨念騎士】
概要
呼称 |
・怨念騎士 ・帝国防衛軍(生前の呼称) |
陣営 | グレイヴボーン |
身長 | 182㎝ |
趣味 |
・瞑想にふけること ・防衛施設の設計 |
好きなもの |
・忠実な軍馬 ・死の島の風と波 |
嫌いなもの | ケハディマンの手先 |
現在地 | 死の島 |
現在の身分 | 怨念騎士 |
関連人物 |
【かつての主】 ・トーラン 【仇敵】 ・フィン |
ストーリー
今日の天気はジメジメとしている。
あまり寒くもなく、
岩にぶつかる波はいつもより穏やか。
絶好の昼寝日和だ。
ついでに、いい夢が見れたら完璧だ……
『死の島』の北東に広がる高台で、
彼は頭の後ろに手を置いて考えていた。
トレズナーを乗せて幾度となく戦に出た馬は、
少し離れたところで尻尾を振っている。
いい夢を見れたら……と望むこと自体、
贅沢かもしれない。
なぜなら、トレズナーは眠ることすら
できないのだから。
そう……彼はもう人間ではない。
トレズナーは両目を閉じ、
穏やかな風を感じながら、
昔に思いを馳せるーー
バンティスが豊かで繁栄している帝国と
呼ばれていた時代。
ある反乱がきっかけで、
まるで破滅の魔法でもかけられたかのように、
バンティスは地獄と化していった。
トレズナーはかつて、
帝国を守備する騎士だった。
消極的に戦っている仲間とは違い、
城の壁際まで迫ってきた敵軍を
食い止めるため、彼の小隊は最後まで
諦めずに戦っていた。
ところが、フォールンキング・トーランが
グレイヴボーンを引き連れ、
バンティスに舞い戻ってきたのだ。
かの有名な賢帝、トーランが戻ってきたと
知った民衆たちは心の底から喜んだ。
帝国中に歓声が響き渡り、
人々は浮き立っている。
帝国民は知らないのだ。
トーランはすでに人間ではない
ということを……
その情報を得ていたトレズナーたちは、
民衆たちを必死に落ち着かせようとするが、
まったく言うことを聞かなかった。
そして、トーランに帝国を救ってもらおうと
希望に満ち溢れた人々は、
ついに城の門を開けてしまう。
目の前に現れたのは、残虐非道な暴君……
人々が知っているトーランの面影など
残っていなかった。
そうして、繁栄していたバンティス帝国は
死者の楽園へと堕ちていったのだった。
無実の民は殺され、呪われ、
永遠に安息を得ることができない
亡霊へと成り果てた。
トーランへの服従を拒んだ者は、
黒鉄の牢獄に入れられ、拷問された。
そんな地獄の最中、
トレズナーと彼の友人であるウォーレルが
立ち上がったのだ。
守るべき帝国はとっくに
過去のものへとなっている。
だが、帝国の守護者としての義務を
果たすべく、亡霊と成り果てた者たちを
ひとつにまとめ上げていった。
亡霊たちは、生者でも死者でもない
この呪いから解放されることを切望し、
自分たちのことを『怨生者』と呼んでいた。
トレズナーとウォーレルは、
黒鉄の牢獄からの脱出計画を立てる。
それはすぐに投獄中の人々にも伝えられ、
多くの民衆から賛同を得ることができた。
計画を確実に実行するために、
それぞれが重要な役割を担うこととなった。
だが、それを遂行するには、
長い準備期間を要する。
その間も、多くの人々が
魂を虐げられ亡霊と化したり、
トーランに服従することを強いられたり、
悲惨な状況が続いていった。
それだけにとどまらず、
トーランは奴隷や投獄した人々と
ケハディマンを契約させたのだ。
契約をさせられた者は、
邪悪な瞳に監視されながらも、
強い力を手に入れたのだった。
トーランの忠実なる奴隷となった人々は、
トレズナーたちの脱出計画を密告する。
計画は失敗に終わった。
絶体絶命の危機に陥ったトレズナーの前に
出たのはウォーレルだった。
ウォーレルはトレズナーをかばって、
自ら首謀者と名乗り投獄されてしまった。
これ以上、仲間を失うことが
耐えられなかったトレズナーは、
脱獄計画の立て直しを急いだ。
だが、現実は残酷だった。
かつて互いを信頼し、
自分と一緒に戦った仲間が、
ケハディマンと契約を交わして得た力で
攻撃をしてくる。
ともに立ち上がったトレズナーの友人である
ウォーレルもその1人だ。
どんなに悪戦苦闘を強いられても、
トレズナーは迫りくる亡霊たちと
戦うことができなかった。
かつての仲間に武器を向けることが
できなかったのだ。
鋭い刃を自分に向けて
突進するウォーレルを見て、トレズナーは
ウォーレルが投獄されてしまった日のことを
思い出した……
「このままでは……みんなやられてしまう」
トレズナーは鉄格子越しに、
不安をウォーレルに打ち明けた。
「君の体も……」
「心配するな、トレズナー。
少し冷静になろう」
ウォーレルはその場に座り込む。
トレズナーは焦っていたが、
特に何かいい方法があるわけでもなかった。
ウォーレルはすでに亡霊と化していて、
獄長によって魂を虐げられていたが、
なんとか理性を保っていた。
そうはいっても、仲間たちを失い、
拷問され続けてきたウォーレルの魂と意志は、
どんどん弱まってきている。
「もしものことなんだが、もしも……」
ウォーレルの声は少しかれていたが、
それでも平常心を維持していた。
「私が彼らみたいに自我を失ったら、
その時は君の手で私をーー」
バンティスが豊かで平和な国だった頃から、
2人は数え切れないほど
『もしも』について話してきた。
だが、今回ばかりは、トレズナーは
頷くことができなかった……
鋭い刃がトレズナーの肩に突き刺さり、
その痛みによって彼は我に返った。
目の前にいるウォーレルは、
もはやトレズナーの知っている
ウォーレルではない。
自我を失い、その顔は怒りと憎しみに
満ちていた。
永遠の命とは恩恵なのか、
それとも呪いなのか?
トレズナーは歯を食いしばり、
ウォーレルを押し返す。
そして槍を握り、
怨生者たちの前に立ちはだかった。
この時……
トレズナーは初めて、
自身が不死身であることに
感謝したのだったーー
ソトロン大陸西の最果て……
恐怖の海峡南側には隔絶された孤島がある。
この島には、異質な亡霊たちが
居座っているという。
不死を求めている多くの亡霊とは違って、
永遠の命は呪いであると彼らは考え、
いつかこの呪いから解き放たれ、
本当の安らぎと永遠の眠りにつくことを
望んでいるのだ。
命がある者たちに邪魔されたくない彼らは、
恐ろしい幻を創り出して、
この島に訪れる者を追い返している。
「トレズナー!」
慌ただしい足音がトレズナーの横で停まった。
「島の南方から正体不明の船が接近中」
長らく目を閉じたままだったトレズナーは、
ゆっくりと目を開ける。
ジメジメとした空気を感じながら、
真っ赤に染まった空を見上げた。
「行くぞ」
トレズナーは起き上がり、大きく背伸びした。
「侵入者が誰なのか、
確かめてみようではないか」
アンデッドの馬が
トレズナーのそばに駆け寄り、
頭を彼の体に擦り付けた。
黒鉄の牢獄脱出の時、
脱出することを諦めざるを得なかった
仲間たちは、このまま自我を失い、
魂を奪われるくらいなら……と、
人間の体を犠牲にして
お互いの魂を融合させた。
ひとりひとりの小さな願いが1つになって
希望となり……
最後には戦馬の姿となって、
トレズナーを背中に乗せて
牢獄から脱出したのだった。
強い風が吹くと、
トレズナーの髪がふわりとなびく。
そして槍を持って馬に乗り、
目的地へ向かって出発した。
かつての友人の言葉が、
馬の蹄音とともに耳もとに響いてくるーー
「自分の献身に誇りを持ち、
責任を忠実に果たし、
どんな強敵も恐れないこと。
君は真理の側に立ち、公平でなければならず、
それに値する人には慈悲を与えること。
約束を重んじ、口に出したことは
必ず実行すること。
そうすればいつか、不死の呪いから
解放されるだろう。
もしも……
私が彼らみたいに自我を失ったら、
その時は君の手で私をーー
いや……
私の分まで彼らを守ってほしい」
ドリーのコーナー
トレズナーは、よく出来た戦士だった。
彼は勇敢で誠実で、犠牲を恐れない。
バンティスは国民皆兵の帝国であり、トレズナーも国民の一員として、国のために自分の血肉を捧げるつもりだった。
トレズナーは子供の頃から、戦場や死と隣り合わせの軍隊生活に憧れていた。
その憧れは、死を崇拝する信者たちとは違い、明君・トーランへの忠誠心から来るものである。
彼はトーランの慈愛と胆力に満ちた数々の物語に惹かれ、王の配下になることを夢見ていた。
成人式の修行の後、トレズナーたちは帝国の勇士として、数名単位の小隊に編入され、議事堂で王に謁見した。
彼らはその時、初めて王を見た。
トレズナーは軍の中で、人生で一番楽しい数年間を過ごした。
彼はウォーレルと親友になり、他の隊員たちとも強い絆で結ばれていた。
そして、トレズナーは高い統率力を見込まれて、小隊長に選ばれた。
訓練が終わると、小隊の仲間たちはいつも、安い酒を飲みながら、帝国の新政について話す。
そして時々、王に謁見したあの日のことを思い出す。
時が流れ、トレズナーたちは王と再会した。
しかし、かつての明君は暴虐な独裁者に変わり果てていた。
トレズナーが憧れていた慈悲深く、民のために尽力する王は、もはやどこにもいない。
暴君トーランの行いは、トレズナーの正義とあまりにもかけ離れていた。
変わったトーランに、忠誠を誓うことは出来ない。
信念を貫いたトレズナーは、仲間たちと共に、黒鉄獄に投獄された。
檻の中で、トレズナーは真理を信じることにした。
彼は仲間たちと共に、罪のない人々を黒鉄獄から逃がす計画を立てた。
しかし、計画が実行される前に、多くの人々が獄長・フィンの拷問に屈し、トーランに忠誠を誓い、ケハディマンの手先となった。
トレズナーの親友・ウォーレルも、心が折れて屈服してしまった。
そしてトレズナーは、かつての親友と戦うことになる。
彼は自分の責務を全うし、怨生者たちを連れて、包囲網を突破した。
仲間たちの言葉を胸に、トレズナーは自分自身と怨生者たちの信念を守ることにした。
彼は今も、怨生者の解脱の道を探し続けている。
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧