アラロー【砂漠の眼】
概要
呼称 | 砂漠の眼 |
陣営 | ババリア部族 |
身長 | 185㎝ |
趣味 |
・遠見視力を鍛えること ・あらゆる異変を観察すること |
好きなもの |
・ゾーン(アラローのかかしの友人) ・ドラゴンブレススピリッツ ・燃える手羽焼き |
嫌いなもの |
・木登り ・終わらない戦火 |
故郷 | ユグドラシル |
現在地 | タスタン砂漠 |
現在の身分 | ババリア部族偵察兵 |
関連人物 |
【忠誠を誓った相手】 |
ストーリー
どうして俺がユグドラシルを離れて、
ババリア部族の偵察兵になったのか。
個人的な意見を言わせてもらうと……
生まれ故郷で将来が決まるわけでも
人生が決まるわけでもないってことだ。
「お前は生まれた時から異端だ。
お前はグリーンリザードではない」
みんな、俺のことをこう言って遠ざけた。
その理由は3つある。
1つ目、俺は木に登れなかった。
それどころかユグドラシルにある木の
樹皮を掴むことすらできなかった。
だから賢い俺は、
木から落ちて尻餅をつく前に、
木登りをやめたんだ。
2つ目、俺は菜食主義者ではない。
口元からいつも肉の香りを漂わせてたんだ。
そのことが菜食主義者であるお隣さんの
気に障ったらしい。
3つ目、俺の肌は緑色ではない。
だからチームで探索している時、
いつも真っ先に見つかってしまうんだ。
みんな俺と遊ぶのがつまらないと言って、
離れていった。
気づけば、友達といえるのは
ゾーンだけになってしまった。
この3つが、俺が産まれた時から
異質だと言われている理由だった。
だけど、もっと根本的に異なる部分がある。
俺は目が悪かった。
近くのものが見えず、
遠くのものしか見えなかった。
だからいつも遠視用眼鏡をかけてたんだ。
目が悪いグリーンリザードなんて、
俺ぐらいだった。
「アラロー。
明日はグリーンリザードの成人儀式よ」
おふくろは肉のスープを
俺の前に叩きつけるように置き、
じっと俺を睨みつけた。
「どうするつもりなの?」
俺は黙って目の前のスープを飲み干し、
手に持っていた『砂漠見聞録』を
こっそりポケットにしまった。
俺は家族の中で、唯一成人儀式に
パスしていないグリーンリザードだった。
しかも5年連続だ。
成人儀式では仲間とチームを組んで、
ユグドラシルの奥深くに隠されている
自分の戦利品を見つけないといけない。
「あなたとチームを組みたいって相手、
まだ現れないの?」
おふくろはため息をつきながら続ける。
「砂漠を探検だなんて
馬鹿な考えはしないでね。
あそこは危険なの。
特にヴェルディアの民にとってはね」
たしかに、平和で暮らしやすい
ユグドラシルとは違い、
『砂漠見聞録』に記されたそこは、
日照り、高温、飢餓など
生活するには厳しい環境だった。
「歳月以外、我々に敵は存在しない」
大自然の叡智はいつもこう語っていた。
あんなに長生きしてても、
嘆くもんなんだな。
だけど、俺は心のどこかでずっと
未知の世界に憧れてたんだ。
心の奥底に根付いているその憧れは、
もうひとつの『故郷』を探しに行けって、
語りかけてくるんだよ。
俺がユグドラシルを離れる時、
誰も送別になんか来てくれなかった。
だけど、ゾーンだけは
俺に付いてきてくれた。
俺たちは西に向かって歩いた。
数日歩いて、
ついにボーライ山にたどり着いた。
今まで嗅いだことがない、
奇妙な匂いを含んだ熱波が顔に押し寄せる。
山の向こうには無限に広がる砂漠があって、
そこに潜む危険を知らせるかのように
あちこちに白骨が転がっていた。
目の前にある金色の砂の丘が、
西側に向かって伸びている。
まるで孤独なドラゴンが、
恋焦がれた相手を追い求めるように……
俺はなんだかウズウズして、
たまらず体を横にして砂の斜面を
滑り落ちたんだ。
自分で言うのもなんだけど、
その姿はものすごくかっこよかった!
砂粒越しに砂漠の鼓動が
聞こえるような気がした。
隠された水源、砂の中に潜む虫たちの動き、
吹き荒れる風……
いつも夢見ていた光景が、
今まさに目の前にあるんだ。
こうして、俺の砂漠の旅が始まったーー
ジャングルの中では目立ってしまう
黄色い肌も、砂漠の中では
絶好の保護色になってくれた。
俺はまず、
『デビルサンドキャッスル』に向かった。
そこは悪名高い『サンドクロー』の
根城だと聞いたことがあるからだ。
俺はやつらの夕食に下剤を混ぜて、
ついでに金になるものを少し騙し取った。
俺はヴードゥーの神殿に忍び込み、
謎のトーテム紋様の上に
小便をかけたこともあった。
それから……
『血の闘技場』で賭けをして大儲けしたり、
蛇使いの集落の近くにある毒沼の
『骨溶かしの沼地』で蛇に噛まれて
命を落としそうになったりもしたな。
いろいろと回ってきたけど、
結局俺はカントの城下町で
落ち着くことにした。
オアシスのそばにある砂漠の城だ。
ここは異民族に対して寛容だった。
商人たちはここでババリア部族、
ブライト王国、ヴェルディア連盟、
さらにグレイヴボーンから仕入れてきた
珍しい物を売りさばいていたんだ。
俺とゾーンは自分たちの家を建てた。
特にやることはなくて、
喉が渇いたらドラゴンブレススピリッツを
飲むっていう毎日を送っていたーー
俺は砂の上に寝そべって夕日を浴びていた。
「歳月以外、我々に敵は存在しない……」
あくびをしながらゾーンに話しかけた時、
何かに強く踏まれて
砂に埋もれてしまったんだ。
俺はすぐに砂の中から転がり出て、
舌を使ってナイフに毒を塗った。
だけど、目の前にいた
ババリア部族のやつは申し訳なさそうに
俺にお辞儀をしてきたんだ。
そのあと、自分は今、砂漠の上で
瞑想をしているところなんだと説明してきた。
俺はこの『礼儀正しい』
ババリア部族のやつをじっくり眺めた。
半分がハヤブサで、
半分が人間の体をしていて、
破れた服を着ていた。
見るからに長い間旅をしているような
ボロボロな格好をしてる。
「砂漠で瞑想……? なんだ、それは?」
「こんなにも美しい砂漠の上で、
部族同士はどうしていつも
争いをしているのかを考えていたのだ」
半分ハヤブサのやつが答えたけど、
俺はぜんぜん意味がわからなかった。
「私の一族が言うには、
兵士という生き物は
血にしか美を見いだせないらしい。
君はどう思う?」
「ああ……そのとおりだな」
俺は冷笑しながら続けた。
「生き物ってやつは
自分と異なるものに対して敵意を抱く。
それは同族であってもだ」
半分ハヤブサのやつは、
俺の話を聞いて少し失望した目をした。
だけど、首を横に振って否定したんだ。
「だがそんな敵意はやがて魂を腐蝕し、
自我を失うことになる」
俺はこの哲学じみた野郎に
話しかけるんじゃなかった、と後悔した。
2回目にそいつに会ったのは、
錬金術の煙が立ち込める
カントの城下町だった。
さっきまでここでファルコン族と
ウルサスとの間で争いが起きていたんだ。
俺は近くのババリア部族の狩猟場で
狩りを見ていたから、慌てて逃げてきた。
繁栄した城下町でも錬金爆弾一発で
台無しだ。
巻き込まれずに済んでよかった。
忘れかけていたけど、
ここはババリア部族の領地にある砂漠だ。
だから、部族間の争いは
日常茶飯事だったんだ。
俺は必死になって廃墟の中から
ゾーンを探した。
あいつも狩猟場に連れていくべきだった。
「ついて来なさい」
例の哲学野郎が俺の後ろに突然現れ、
瓦礫をかき分ける俺の手をとめようとした。
俺はそいつの手を思いっきり払って、
ゾーンを探し続けたんだ。
「君の仲間なら私のところにいる」
その言葉を聞いて、俺は手をとめた。
半信半疑だったけど、
それでもゾーンが無事かもしれないって
いう希望は捨てたくない。
俺はやつの後ろを追って
城下町のはずれに向かって走った。
当然、毒ナイフはいつでも
使えるようにしておいた。
もし俺を騙したらすぐに刺すつもりだった。
砂の丘をいくつか越え、
たどり着いたその場所の光景に、
俺は驚いた。
夕日に照らされた砂の上で、
みんな強力し合いながら
テントを建てていて、
焚き火を囲んでいたんだ。
そして、俺と哲学野郎を
温かく迎えてくれた。
そいつらは自分たちが戦乱から逃れたこと、
束の間の平和が訪れたことを喜び、
どうやってカント城を立て直すかを
議論していた。
その片隅で、ゾーンが俺を見ながら
にこにこしてるのを見つけた。
俺はゾーンに近づき、
藁の頭にかぶっているホコリを払ってやった。
ーーそう、ゾーンはカカシなんだ。
みんな俺から遠ざかった時、
唯一俺のそばにいてくれた
いいやつなんだよ。
ここで、哲学野郎がエリート軍隊を
率いていたことがわかったんだ。
こいつは偵察兵から情報を事前に入手し、
あらかじめカントにいる住民たちを
近くの安全な場所に移していたらしい。
その時ゾーンも運んでくれたみたいだ。
「恨みは破滅しかもたらさない。
偏見をなくさない限り、
家を建てることはできない」
また小難しいことを言い始めた哲学野郎は
俺に手を伸ばした。
「私はスケーリアス、君は?」
スケーリアスの瞳には、
魔力が秘められているらしく、
俺は気づいたら伸ばされたこいつの手を
握っていた。
「私も追放されている者だ」
そう話すスケーリアスの瞳に、
俺の姿が映っていた。
「だが、我々は必ず自分たちが
平和に暮らせる居場所を見つけ出す」
俺はスケーリアスから角笛を受け取って、
ババリアの偵察兵に加入した。
なぜかって……?
それは俺の魂に何かが
入り込んできたからだ。
砂漠を照らしていた夕日が沈み、
闇が主役になる頃。
赤と青が混ざり合った空には、
最初の星が輝き始めたのだったーー
ドリーのコーナー
砂漠に来るまで、アラローは故郷のない者だった。
アラローはユグドラシルで少年時代を過ごしたが、最後まで馴染めなかった。
アラローには、静かな森が性に合わなかったのである。
彼には環境に馴染むカモフラージュも、探索に必要な視力もサバイバル能力もない。
そのせいで彼は仲間たちに異分子と見放された。
受け入れられない、認められないという孤独から、アラローの外の世界に対する憧れが膨らんでいった。
森を出た後、アラローはやっと彼の世界を見つけた。
未知の危険に彼は興奮を覚えた。
何千万回夢見ていた砂漠がようやく目の前に広がった時、熱い空気にすら親しみを感じた。
広い砂漠では、彼の短所とされていた特性は長所になり、今までに味わったことのなかった自由と、心からの安心感を感じた。
アラローは最初、一つの場所に長く滞在することはないと思っていたが、スケーリアスと出会ってその考えが変わった。
穏やかで知的なスケーリアスの生まれつきのカリスマ性にひかれ、アラローは喜んで忠誠を誓った。
見放された者同士として、アラローはスケーリアスに共通点を見出した。
彼らは偏見と戦争を嫌い、認められることと安心感を求めている。
だから、ババリア偵察隊に入らないかとスケーリアスに聞かれた時、アラローはすぐ承諾した。
スケーリアスの指導のもと、ババリア部族にはいつか平和が訪れるかもしれない。
これは非現実的な夢ではないと、アラローは信じている。
アラローこそ砂漠の眼。
彼は本当の故郷を見つけた。
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