ヘリアン

ページ名:ヘリアン

ヘリアン【恐れなき審判者】

概要

呼称 恐れなき審判者
陣営 竜族
関連人物

【かつての友】

スカラン

ストーリー

生を受けた時から、ヘリアンは竜の島の秩序と正義のために生涯を捧げる運命にある。

彼女の父は名高き審判長として知られ、その家系は代々法を厳守し、すこしの逸脱も許されることはなかった。

幼い頃のヘリアンには、ほとんど友達がいなかった。

審判者である家族の威厳で、皆彼女と友達になることを躊躇したのだ。

ただ一人、スカランという名の竜族の少年だけが、味気ない毎日を彩ってくれた。

スカランが属するブルーウィング部族は、かつて空を支配していた竜の島の象徴だったが、ある戦いをきっかけに次第に衰退への道を辿っていた。

若きスカランは規則に縛られず、しばしば型破りな行動をとったが、規則を重んじるヘリアンとは意外に気が合った。

ヘリアンの目には、スカランは「自由」そのものだ。

彼と共に辺境の断崖を登り、荒々しい風の唸りを感じた瞬間は、厳しい家庭環境で育ってきた彼女にとって最も大切な思い出となったのだ。

ある日、スカランがヘリアンを連れてこっそり郊外へ遊びに行った。

亜竜の住む村で、二人は奇妙な事件に遭遇したのだ。

一群の亜竜が一頭の駄獣を取り囲んでいた。

そして駄獣の傍らには、亜竜の死体が横たわっていた。

死体には深い噛み跡が付けられており、駄獣の歯の隙間には亜竜の血と服の切れ端が残っていた。

その場に居合わせた者たちの話によると、駄獣がその亜竜を咥えてここまで引きずってきた。

証拠品も目撃者もそろっており、駄獣が自らの主を嚙み殺したことはもはや争えない事実。

村人たちは激怒し、その場で駄獣を処刑しようと声を上げた。

審判者の家系に生まれ育ったヘリアンは、どうにも腑に落ちない点に気づいた。

聞いたところによると、この駄獣はいつも従順だった。

それがなぜか突然発狂して主を襲ったのだろうか?

スカランに自分が感じた違和感を伝えると、彼は頷きながら、真剣な面持ちでこう語った。

「目で見たものは必ずしも真実とは限らない。真相は、見過ごしがちな細部に隠れているかもしれないな」と。

スカランの励ましを受け、ヘリアンは深く息を吸い込むと、遺体に近づき、慎重に調査を始めた。

すぐに、彼女は死者のふくらはぎに2つの小さな傷を見つけた。

そこには暗い色の中毒疹ができており、明らかに毒に侵されていた。

「これは駄獣の噛み跡じゃない」

彼女は小さくつぶやいた。

「毒蛇に噛まれた跡だ!」

次に、ヘリアンは駄獣が遺体を引きずった跡をたどりながら、注意深く調べ始めた。

そして間もなく、雑草の中で獣の蹄に踏み潰された毒蛇を見つけ出した。

真相が明らかになった。

その亜竜は草むらで不運にも毒蛇に咬まれ、忠実な駄獣は怒りに任せて毒蛇を踏み殺したのだ。

そして主を咥えて引きずってきたのは、誰かに助けを求めるためだった。

しかし残念ながら、主は助けを得られないまま毒に倒れてしまったのだった。

結局、駄獣は処刑から免れた。

そして、スカランの言葉は、深くヘリアンの心に刻まれることになったのだ。

成人したヘリアンは、願いどおり竜の島の審判部門に配属され、同僚たちと共に島のあらゆる事件の審理に携わり、竜の島の規律を守る使命を担うこととなった。

審判者として、彼女は法の「絶対的正義」を追求し続けた。

『目で見たものは必ずしも真実とは限らない』というスカランの言葉は、いつも彼女の心の奥深くに息づいていた。

父が退任後、ヘリアンは審判長の座を継ぐこととなった。

就任するや否や、彼女は大胆な決断を下した。

文書館に眠る事件記録を一つ一つ丹念に調べ、少しでも疑わしい点があれば再審理を行うと決めたのだ。

この行動は竜の島の上層部から批判を浴びたが、『恐れなき審判者』として民衆たちの信頼を得た。

公務の合間を縫って、彼女は相変わらずスカランと時を過ごしていた。

かつての型破りな竜族の少年は、今や青臭さを脱ぎ捨て、ブルーウィング氏族で最年少の長老として成長を遂げていたが、崖の上に立って竜の島を眺めるとき、二人は昔と変わらぬ会話を交わしていた。

時が経つにつれ、二人が会う機会は少なくなっていった。

ヘリアンは仕事に追われ、スカランもまた、何か重要なことのために奔走しているらしい。

しかし、ヘリアンは二人が再び会ったとき、まさか敵対する立場にあるとは、夢にも思わなかった。

その日、竜の島の空は暗雲に覆われ、轟く雷鳴の中、巨竜の骨が埋まっている空の島から、禍々しい魔力の波動が溢れ出していた。

報告を受けた長老たちは直ちにエリート衛兵を率いて駆けつけ、ヘリアンも審判者たちと共に現場へと赴いた。

不安を抱えながら空の島に辿り着いた彼女の目に映ったのは、邪悪な気配を纏うグレイヴボーンと並び立つスカランの姿。

その背後には骨竜の軍団がいた。

ヘリアンは一目で、その骨竜たちが戦死したブルーウィング部族の者だとわかったのだ。

その光景は、ヘリアンを底なしの深淵へと突き落とした。

幼い頃からの親友が、グレイヴボーンと手を組んでいたとは。

全ての証拠が物語っていたーー

スカランは竜族を裏切り、ブルーウィング部族の先人たちのなきがらを外敵に引き渡し、グレイヴボーンと手を組んで竜の島への反逆を企てているのだと。

骨竜軍団の放つ威圧感に、その場にいた竜族たちの表情は恐怖に歪んだ。

長老たちは即座に、スカランとそのグレイヴボーンの同盟者を取り押さえるよう衛兵たちに命令を下した。

ヘリアンは驚きと動揺を隠しきれず、怒りに震える声でスカランに詰め寄った。

しかし、ヘリアンに向けたスカランの眼差しには、彼女が今まで見たことのない冷たさが宿っていた。

「目で見たものは必ずしも真実とは限らないよ、ヘリアン」

突如、空を裂くように雷光が走り、その閃光に紛れてスカラン一行は竜の島の守備隊の包囲を突破し、骨竜の大軍を率いて竜の島の国境へと消えていった。

竜の島の上空には陰鬱な空気だけが残された。

ブルーウィング部族の長老であるスカランがグレイヴボーンと結託し、禁術を使って巨竜の遺骸を穢したことは、もはや疑いようのない事実となった。

激怒した竜族の長老たちは、必ずこの裏切り者を捕らえ、裁きを下すと誓った。

一夜を明かして思い悩んだ末、ヘリアンは、自らソトロン大陸へ赴いてスカランを追跡することを決意した。

しかし、二人の絆を知る家族や同僚たちは、彼女に公平な判断を下せるのかと疑念の目を向けた。

そんな周囲の疑念に、ヘリアンは固い決意を込めて答えた。

もしスカランが本当に取り返しのつかない罪を犯したのなら、例え親友であろうと、必ずや相応の裁きを下す。

けれど、もし目の前で起きたことが真実の全てではないのなら、真相を追い求め続ける、と。

ヘリアンにとって、これは孤独で危険な道のりとなるだろう。

しかし、彼女は公正と勇気を胸に、かすかな真実の光を追い求め続けることを選んだ。

幾多の困難が待ち受けようとも、何の悔いもない。

 

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