SPバートン【栄枯の騎士】
概要
ストーリー
バートンは『侵食する者』たちの
厳重な警戒を潜り抜け、
『死の島』の中心に戻ってきたーー
密林の中に進むと、
複雑に絡み合った蔓が、
カゴのような空間を作り上げていた。
隙間から中をのぞくと、
そこにはひとりの女性が眠っている。
怪我をしていないことを
確認したバートンは、
ほっと安堵のため息をついた。
そして優しい声色で呼びかける。
「ネオファ、大丈夫か?」
女性の名前はネオファ。
木の元素を司る、『蒼翠』の
エレメントガーディアンだ。
少し前に遡るーー
グレイヴボーンの体となってから
誰とも関わりを持たなかったバートンは、
ひとりでエスペリアを彷徨っていた。
その時、偶然この不思議な島にたどり着き、
島に上陸したバートンの前に
グレイヴボーンが現れ、
いつものように戦闘態勢に入る。
だが、ずっとさまよい続けていた上に、
内側から湧き上がる抑えきれない
邪悪な呪いの力が大きくなり、
戦う力がなくなっていたのだ。
グレイヴボーンたちに囲まれ、
戦わなくてはいけないことを
理解していながらも、
力を失った体は言う事をきかない。
そうして気を失うように
そのまま地面に向かって倒れていった。
バートンが目を覚ますと、
優しい声が彼に降りかかる。
「動かないで、
まだ呪いの力が大きいの。
あなたを取り込もうとしているわ」
バートンの目の前には、
ひとりの美しい女性がいた。
彼女の額には1枚の葉のような、
文字のような模様が付いていて、
そこから力強い命の息吹が
溢れだしている。
それが彼女の両手をつたい、
全身を包帯で巻かれたバートンの体に
注がれていた。
「あの、グレイヴボーンたちは……」
「彼らは『怨生者』よ。
あなたと同じように帰る場所を失い、
呪いからの解放を願う
グレイヴボーンなの」
ネオファが体を横にずらすと、
後ろには痩せこけた顔で敵意のない笑顔を
浮かべた『怨生者』がいた。
「ようこそ『死の島』へ。
そして、『怨生者』の家へ」
ネオファのおかげで体が
動くようになったバートンは、
彼女に『死の島』を案内してもらった。
住民たち……
つまり『怨生者』たちの様子を見て、
今まで接触してきたグレイヴボーンと
まったく異なるもので驚いた。
亡霊と成り果てた
恐ろしい見た目とは反対に、
とても親切で人懐っこいのだ。
バートンは人間や
堕落したグレイヴボーンよりも、
彼らのように不死を望まない
『怨生者』の方が親しみを感じた。
『死の島』はとても静かで、
まるで人間が住む普通の田舎町の
ようだった。
戦争や混乱がない分、
むしろ人間の田舎町よりも
ずっと穏やかに感じられた。
「あなたさえよければ、
ずっとここにいてもいいのよ」
ネオファは優しく微笑みながら言うが、
バートンは何も答えなかった。
「何か気がかりなことがあるのね。
家族? 恋人? それとも友達?」
「生死を共にしてきた親友だ」
しばらくしてーー
定住はしなかったが、
バートンは『死の島』にすっかり
馴染んでいた。
ブライト王国の国境付近を通りかかった時、
ふと故郷を思い出すも、
『死の島』という孤独な楽園のことが
頭に浮かぶほどだった。
バートンは客人のように
たまに『死の島』を訪れては、
エスペリアでどのようなことが
起こっているのかをみんなに話した。
「『死の島』を訪れるのは
オレの呪いを解くためだ。
きっとあの島にはその方法が……」
バートンは自分にそう言い聞かせた。
だが、自分でも気づかないうちに、
『死の島』を訪れる頻度が
だんだんと増えていったのだった。
ある日ーー
いつものように『死の島』を訪れた
バートンは、島が元素災変の影響を
受けていることに気づく。
腐敗した霧が島全体を覆い、
木々は不気味にうねっていた。
さらに森の中からは、
数えきれないほどの
『侵食する者』たちが湧き出し、
『死の島』を占拠していたのだ。
バートンは、ネオファや『怨生者』たちの
無事を確認しようと駆け出した。
島中を駆け回り密林の中に行くと、
ネオファは蔓で織ったカゴの中で
深い眠りに落ちていた。
『怨生者』を守るため、
力のほとんどを出し尽くしたらしい。
眠りに落ちる前、
ネオファは誰かが助けてくれるかも
しれないという微かな期待を胸に、
自分を蔓で織ったカゴの中に
閉じ込めたようだ。
バートンは慎重に考える。
軽率に動けば、
自分と『死の島』を取り返しのつかない
状況にしてしまうかもしれない。
バートンはこの状況を打破するため、
他のエレメントガーディアンに
助けを求めようと
ユグドラシルに向かったーー
風の元素を司る、『狂風』の
エレメントガーディアンを見つけた
バートンは、
彼と一緒に『死の島』に戻った。
『狂風』のエレメントガーディアンが
『侵食する者』たちをひきつけている間に、
『死の島』の地形をよく知っている
バートンが密林に入っていく。
そしてネオファのもとへ急いだ。
衰弱したネオファを蔓からそっと出し、
守るように抱えて薄暗い密林の中を
警戒しながら駆け抜けた。
『怨生者』の秘密の楽園であった
『死の島』は、今や見る影もない。
腐った木々の間から次々と現れる
『侵食する者』……
(少しでも気を抜けば、
すぐに取り囲まれてしまうだろう。
だが、この密林を抜ければ海岸だ。
そこには島から逃げ出すための
船を用意してある……)
「大丈夫だ。必ず連れ出してやる」
「うっ……」
「ネオファ!?
気づいたのか!?」
ネオファはうっすらと目を開け、
弱々しい声で話し始めた。
「元素の力が乱れている……
最初の異変を抑えるために、
力を使いすぎたわ。
あなたは先に行って。
他のエレメントガーディアンを
探すのよ……」
「オレは何があっても
友を見捨てたりはしない」
「この命、尽きるまで戦い抜いてみせる」
バートンはかつて戦場で
自らの命と引き換えにセインと部隊を
撤退させた時と同様に、
力強い口調で告げた。
「耐えるんだ、ネオファ。
もう少しで、援軍が来る」
だが、バートンの期待とは反対に
密林の中から『侵食する者』たちが
まるで蟻の大軍のように群がってきた。
バートンはわずかな隙をついて、
ネオファを守りながら突っ切るも、
『侵食する者』の追尾は続く。
「援軍とはもしかして……
あなたの親友?」
「約束したんだ。
土の元素を司る、『岩盤』の
エレメントガーディアンを探し出したら、
この島で落ち合おうと」
「……そう。
なら、捕まるわけにはいかないわね」
ネオファは力を振り絞って
木の根や蔓を放ち、『侵食する者』たちの
足止めをする。
だがそれも焼け石に水。
新たな『侵食する者』たちが、
それらを踏み台にしてさらに追ってきた。
まるで、イタチごっこだ。
その時突然、
『侵食する者』たちの間を割って
一体の巨大な怪物が姿を現す。
ねじ曲がった枯れ枝でできたその体からは、
凄まじい腐敗の力が溢れ出ていた。
それは『侵食する者』の異種であり、
まさに『死の島』で起きた異変の
元凶でもあった。
怪物が通った後は、蔓や枝が腐り落ち、
ヘドロと化していく。
怪物はあっという間に、
バートンに追いついた。
怪物が枯れ枝の手を伸ばせば、
2人を握りつぶせそうなほどの距離だ。
「援軍を待っている時間はないわ。
バートン、先に行って!」
目の前の状況を絶望的だと思った
ネオファは、大声で叫ぶ。
「あなた1人なら、
ここから逃げられるわ!」
だがバートンは行かなかった。
それどころか、後ろに向き直り、
敵を迎え撃つ構えを見せたのだ。
「もう少しの辛抱だ、ネオファ!
オレがいる限り、アイツは必ず来る!」
巨大な怪物が、果敢に挑もうとする
目の前の戦士を見下ろした。
絶望を感じさせる巨大な影に
覆われたバートンは、
槍を握る力が強くなる。
その時だった。
バートンの目の前を一筋の光が通り過ぎ、
巨大な怪物に直撃したのだ。
その光が消えると同時に現れたのは、
セインだった。
「セイン……!」
「遅くなった」
「ああ、本当に」
バートンはネオファを安全な場所に
連れていき、木に寄りかからせた。
「少し体力を回復させておけ。
オレはセインと共に戦う!」
敵に向かって走りながらも
バートンはわかっていた。
自分の力では、あの怪物に真正面から
挑んでも敵わないと……
彼は頭を切り替え、セインの援護に徹した。
バートンは移動しながら
怪物の動きを観察し、
癖や弱点をセインに伝えた。
今のバートンとセインは
実力の差はあるものの、
昔2人で敵を倒した時と変わらず
息がピッタリと合っていた。
バートンの援護もあり、
セインは徐々に攻勢を強めた。
巨大な怪物と
互角の戦いを繰り広げているが、
致命的なダメージを与えることができない。
そのまま戦いは膠着状態に陥った。
この局面を打ち破ろうと、
バートンは危険な賭けに打って出た。
怪物の前に躍り出て
骨槍と鋸刃を振り回したのだ。
それが見事に命中し、怪物が怯んだ。
隙を見逃さなかったセインは、
怪物の胸を大きく切り裂いた。
だが、負傷したことで
さらに凶暴化した怪物は、
セインの攻撃には見向きもせず、
バートンに向かって飛びかかる。
絶えず嫌がらせをする目障りな虫けらを
先に潰そうという意志があるようだった。
バートンは林の中へと吹き飛ばされた。
そして、バートンに気を取られていた
セインもまた、
怪物に弾き飛ばされてしまった。
体力を回復しているネオファの前に、
バートンが飛んでくる。
ネオファは体に鞭打って起き上がり、
急いでバートンのもとに駆け寄る。
なんとかバートンの体を起こし、
呼びかけた。
もともと傷だらけだったバートンの体は、
度重なる激しい戦いを経て、
さらにボロボロになっていた。
ネオファは最後の力を振り絞り、
元素の紋章をバートンの体の前に
浮き上がらせた。
「……これが最後の希望」
だがその希望の裏側には、
逃れることのできない大きな代償がある。
「バートン……私の友よ……
今の私では、あなたの体を
治すことはできないけど、
元素の紋章の力があれば、
あなたは生まれ変われる。
でも……
それを受け入れてしまうと、
あなたの穏やかな日常が
奪われることになる。
あなたは『侵食する者』たちに
追い続けられることになるの……
私は友にそんなつらい思いをさせたくない。
でも、あなたを助けたい……」
ネオファの言葉を聞いたバートンは、
ゆっくりと手を伸ばして
浮いている紋章を握りしめる。
すると、木の元素の紋章が放っている光が
バートンの体を包み込んだ。
その光の中から、
迷いのない静かな声が聞こえてきた。
「穏やかな日常なんて、
オレには似合わない……
闇に追われるのが、オレの運命だ。
それに……
オレはもう1人ではない!」
光に包まれたバートンが一歩踏み出すと、
ボロボロだった体が木の元素の力によって
よみがえっていく。
そして再び怪物と激しい戦いに突入した
セインを助けるべく、
バートンは駆け出した。
セインとバートンは互いに
目と目を合わせる。
心が通じ合っている2人に言葉は必要ない。
彼らは再び息を合わせて戦った。
セインは休むことなく風の刃を放ち続け、
バートンは木の元素の力で蔓を操り、
怪物の動きを抑え込んだ。
「チャンスだ!」
セインは一瞬で、
怪物の胸にあるエネルギーの殻を
切り裂くと、
キラキラと輝く元素の光の核が、
中から現れた。
「打ち抜く!」
この機会を逃さないよう、
バートンは瞬時に木の元素のエネルギーを
槍に凝縮させ核を突き刺した。
次の瞬間、
強烈なエネルギーが爆発し、
巨大な怪物が大きな音を立てて倒れた。
怪物を倒し、
『死の島」は危機を脱した。
だが、これで終わりではない。
元素災変は続いていて、
エスペリアの状況はひどくなる一方だった。
なんとかこの場を切り抜けた『死の島』も、
平和が訪れたというわけではない。
「セイン、次の戦場へ行こう。
昔のように、2人で……な?」
「あぁ、昔のように」
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧