SPエルロン【氷風剣影】
概要
呼称 | 氷風剣影 |
陣営 | ヴェルディア連盟 |
身長 | 210㎝ |
趣味 | 剣術の修行 |
好きなもの | 純粋な剣術対決 |
嫌いなもの | 混沌とした世界 |
現在地 | ユグドラシル |
現在の身分 | ドラゴンクリスタルの力の継承者 |
関連人物 |
【協力者】 |
ストーリー
ユグドラシルの医療キャンプの中で、目隠しをしているエルロンは隅においてある双剣を手探りで探そうとしたが、鋭い刃で指先を切ってしまった。
怒りのあまり目隠しを取り外そうとした瞬間、手が止まった。
それはやってはいけないことだと彼は知っていた。
数日前、カタストロフの大軍がユグドラシルに攻め込んできた。
そのボスが使う剣術はずる賢くて悪辣なものだった。
『これほど卑怯な技は初めて見た』と思いつつ、勝負に没頭していたエルロンは相手を追いかけ、いつの間にか仲間たちから離れていき、森の奥まで着いたのだった。
決闘が膠着する中、思わぬことが起こった。
二人が繰り出した剣の衝撃波がぶつかり、近くにある毒の花を切り裂いた。
その花から毒霧が瞬く間に辺りを覆い尽くし、エルロンは両目が焼かれたような激痛を覚えた。
彼は苦しそうに倒れ、気絶しかけたところに聞こえたのは、カタストロフの剣士が残した皮肉の言葉だった。
「勝負は預けよう。このまま殺しても興ざめだ…」
気絶から目覚めたとき、エルロンはヴェルディア連盟の医療キャンプにいた。
幸い、彼はグウィネスに見つけられ助けられた。
彼女がユグドラシルにやってきたのは、育ての父親を治療するために医師を探しているからだという。
診断と治療を経て、目の怪我は楽観視できないと医師ネモラから説明を受けた。
視力を回復させる希望があるとはいえ、20日間薬を使って治療する必要があり、その間に一瞬でも目隠しを外したら、一生目が見えなくなるという。
自分の心を落ち着かせるため、エルロンは一日中、悔しげに双剣を抱きかかえている。
しかし、彼は失明という悩みだけでなく、負傷者たちがこぼした不満にも直面しなければならない。
あの時、エルロンがカタストロフのボスを追うために部隊から離れたが、後方にいる仲間たちは敵部隊に囲まれることになった。
自分のせいだと気づいたからこそ、エルロンは黙って受け入れることを選択した。
弁解してくれる人もいたが、それはかえってエルロンを自責の念に苛まれることになった。
一刻も早く故郷からカタストロフどもを駆逐し、罪を償いたいとひたすらに思っている彼は今、カタストロフと対抗する力を失った。
顔なじみの見習い医師の話によると、グウィネスがここに来たもう一つの目的は、ドラゴンクリスタルの力の後継者を探すことで、エルロンならその資格があるかもしれないという。
だがエルロンは沈黙を貫いた。
失明する以前は剣術に専念し、それ以外の力に頼ることなど決して考えもしなかった。
そして今の自分は思うままに剣を操ることができなくなった。
グウィネスの要求に応えられないと考えるのも当然のことだ。
剣を握ることすらままならない剣士が、何ができるというのだ?
しかし彼は確信している、自分にはやるべきことがあると。
治療されている間、ずっと面倒を見てくれた仲間たち、そして一族への罪悪感に何度も心を揺さぶられた。
だから彼はキャンプの子どもたちに剣術を指導すると、仲間たちに約束をした。
剣術を磨き上げる方法を心に刻み込んだ彼にとって、これはもともとひとつの試みに過ぎなかった。
小さな子どもたちが過酷な稽古を経た後も、彼についていく決心を見せた。
未来を思い描く子どもたちから『みんなを守りたい』と聞いたとき、彼は一瞬、蝶々が舞い上がって心にそよ風を吹かせたような、今までにない奇妙な感情を覚えた。
一流の剣術を追い求めて修行の旅に出てから、彼は一切の雑念を払うため、徐々に一族と距離を置いた。
幼い子どもたちから、『みんなを守るために強くなりたい、どんなに厳しい訓練でもやる』と決意を伝えられたとき、彼はようやく、自分が今まで蔑ろにしてきたことに気づいた。
エルロンは剣技を磨き上げるため、最も優秀な剣士を探しにブライト王国に行ったことを思い出す。
彼と手合わせをしたセインはこう言った。
「貴様は手にした剣への執念が深すぎる。剣そのものより大切なものがあると信じてほしい」
剣士にとって、剣よりも大切なものはあるのか?
その言葉を、あの時のエルロンは口に出さなかった。
しかし今はどうやら、自力でその答えを見つけたようだ。
あれから19日後、グウィネスは容態が落ち着いた養父と共にユグドラシルから離れ、エルロンも治療を終えた。
翌日、彼は再び目が見えるようになる。
いくら冷静沈着な彼であっても、自分の両目のことになると、言葉では言い表せない期待を抱いているのだろう。
そんな時、医療キャンプの静寂を打ち破った叫び声が聞こえてきた。
何の前触れもなくカタストロフ軍が再び襲ってきたのだ。
キャンプにいる負傷者の数が多く、一族の安全を守るためには素早く撤退するしかなかった。
ほかの負傷者と共に、エルロンは仲間たちに援護されながら小道から撤退し、ネモラは主力部隊を率いて側面から素早く移動すると同時に、しんがりの部隊が時間稼ぎをする。
医師に支えられて、エルロンは静かに密林を駆け抜ける。
迫りくる敵から誰もが必死に逃げようとしている。
それでも密林は不気味なほど静寂で、聞こえるのはせわしげな足音と抑えられた呼吸音だけだった。
「ドオォォンーー」
大きな爆発音が後ろから聞こえてきた。
エルロンは足を止めて状況を確認する。
ネモラたちのほうだ、おそらくカタストロフの追っ手に遭遇したのだろう。
無意識に救援に向かおうとするエルロンだったが、『もうじき目が見えるようになるからやめた方がいい』と仲間たちに引き止められた。
仲間たちの言う通りだ。
あと一日、そう、あと一日で元の状態に戻れる。
そしたらまた剣を握ることができるのだ。
それでも…
エルロンはそっと目隠しを取り外し、爆発音の方向へ駆けつけた。
同胞たちが死地に立っている。
剣よりも大切なものがある。
カタストロフの待ち伏せによって主力部隊は多数の死傷者を出した。
仲間を助けるために敵兵に囲まれたネモラは、後ろに自分を斬りかかろうとする敵に気づいていない。
次の瞬間、いくつもの衝撃波が風を切って周囲のカタストロフ兵をなぎ倒した。
目の前に現れた男はシャキッとして彼女に背を向けて、『ひとまずここを離れてください』と言った。
カタストロフのボスはエルロンを目にした途端、襲いかかる部下の兵士たちに怒鳴り散らして退かせた。
完治した彼ともう一度戦うことをこの上なく期待していたのだ。
二人はほぼ同時にお互いに向かって突っ走り、嵐のように刃を交えては金属音を轟かせる。
そこからほとばしる衝撃波に当たった兵士たちは次々と倒れていた。
エルロンは身を捨てるような猛攻撃を仕掛けた。
たとえ刺し違えてでも倒す勢いで、完全に光を失う前に、仲間たちに生きる希望を勝ち取らなければならない。
何十回もの技をぶつけ合った後、エルロンは傷だらけになった。
何よりも、彼の目はもう限界に至った。
視線が暗くなって相手の動きを見極めることができなくなった。
カタストロフのボスはエルロンの変化に気づいた。
「その目はまだ治っていない。そうだろう?」
期待を裏切られたと悟った瞬間、彼の怒りは収まらなくなった。
虫けらごときのために剣術を諦めた奴は相手にならないと言わんばかりに、興味を失ったようだ。
彼の号令のもと、兵士たちは波のように押し寄せてきた。
しかしエルロンは、背筋を伸ばしたまま立っていて、心は今までにない穏やかさに包まれていた。
「これで大丈夫です。同胞たちはもう逃げ切ったのでしょう」
突如、凍てつくような気配を帯びた矢がエルロンの傍を飛んでいき、カタストロフの群れを爆発で退けた。
雲を突き破る竜の鳴き声が、グウィネスの帰りを告げる。
先ほどの爆発音のおかげで、彼女はユグドラシルに戻ってきた。
ちょうど、エルロンが死守しているところを見かけたのだ。
「エルロン、私も加勢します! 目の前の敵に集中してください!」
エルロンの刃にドラゴンクリスタルの力が付与されたおかげで、カタストロフの動きを感じられるようになった。
エルロンは剣を握り締めて、再びカタストロフのボスとの激しい戦いの中に身を投じた。
攻守は逆転した。
絶え間なく繰り出される剣技を受け止めきれず、カタストロフのボスが隙を見せた。
そして勝利が見えてきた。
氷の刃は一筋の光となって、相手の弱点を突いた。
自由自在に操られる剣は眩しい光の軌道を描き出し、カタストロフのボスを消滅させた。
完璧な一撃を放ったエルロンは、いつも通りに背筋を伸ばして、一族が待っている方向に歩みだした。
ドリーのコーナー
エルロンが優れた剣士であることは疑う余地もない。
彼は勤勉で苦労をいとわず、完璧を追求し、抜きん出た剣術と固い意志を有する。
彼の完璧な剣術への執着は、生命そのもののようだ。
そうした執着によって彼はカタストロフのボスの罠にはまり、仲間を危険に晒しただけではなく、彼自身も毒によって視力を永遠に失う危機に陥った。
このことは、彼にとって確実に大きなショックを与えた。
剣士である彼にとっては、視力はとても大切なものだ。
だが今は、そうした目に見えない暗闇が、彼の生きる上での拠りどころである技術と信念を脅かしている。
治療期間、エルロンは果てしなく広がる闇に囚われている感覚に襲われ続け、自身の軽率な行動によって仲間を危険に巻き込んだことで、自責と後悔の念を抱いていた。
だが仲間たちと過ごす日々や、現在でも剣術の勉強に励む子どもたちの情熱に触れて、彼はかつての自分が剣術に夢中になるあまり、様々なものを見落としていたことに次第に気づいていった。
そして再びカタストロフのボスと対峙すると、彼は別の選択を下した。
視力を取り戻す機会を捨て、一族の人々が安全に逃げられる時間を稼いだのだ。
彼にとって剣術がとても重要なことに変わりはないが、仲間との絆の方がもっと貴重で大切だった。
危機が去り、エルロンはもはや何も見えなくなっていたが、もう迷うことも当惑することもなかった。
闇に囚われていても、彼の剣は仲間を守るために振るわれるのだ。
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