SPサフィア【星を食らう女王】
概要
呼称 | 星を食らう女王 |
陣営 | ババリア部族 |
関連人物 |
【敵】 |
ストーリー
メラメラと燃える松明が
高くそびえる石板を照らす。
揺れる木陰のように
黒くひしめく蜘蛛族の兵士たちが、
サフィアを逃すまいと取り囲んだ。
じりじりと蜘蛛たちに迫られ、
黒翼族の女王は一歩一歩と前に進む。
目の前にある不吉な雰囲気を漂わせる
隕石との距離が狭まっていった。
アンキーラの嘲るような笑いが
緊迫した静けさを打ち破る。
「どうしたの?
あれほど強く求めてた暗星の欠片を
自分のものにできるのよ、サフィア」
傲慢な蜘蛛族の女王が急き立てる中、
サフィアは目の前にある不穏な
暗星の欠片を見つめる。
そして蜘蛛族の巣穴で糸に絡め取られた
滲めな過去の姿を思い出した。
あの時ーー
反乱軍に追われ黒翼族の王座から
引きずり下ろされたサフィアの逃げた先は、
偶然にも蜘蛛族の巣穴だった。
だが、巧みな話術で
蜘蛛族の女王と同盟を結び、
蜘蛛の大軍の力を借りて
王位を取り戻したのだ。
「我らでババリア部族最強を
目指すのだ!」
そう誓い合った仲だったが、
結果的に現状を作り出してしまった。
野心を呼び起こされた蜘蛛族の女王は、
巣穴での生活に満足できなくなったのだ。
アンキーラは蜘蛛族の大軍を率いて
黒翼族の領地を奪い、
盟友という立場を利用して
黒翼族の内部から徐々に侵食していった。
その頃の黒翼族は、
混乱から立ち直ったばかりだった。
サフィアは反乱軍の主導者たちを処刑し、
自身の地位を確かなものにしようと
忙しかった。
そんな時、蜘蛛族の女王は
大勢の手下を黒翼族の領地に送り込み、
力を誇示してサフィアに脅威を
感じさせたのだ。
サフィアとしては、
徐々に蜘蛛族の勢力を
奪っていくつもりだったが、
とある出来事が彼女の予定を早まらせた。
あの日ーー
異様な光を放つ流れ星が空を横切り、
大きな爆発音と共に、
凄まじい輝きを放つ欠片が
黒翼族の領地に現れたのだ。
長年禁忌の魔法を学んできたサフィアは、
それが『暗黒星界』の力を持つ
暗星の欠片であることにすぐに気づいた。
だがサフィアがそれを調査する前に、
同じく暗星の欠片の特殊性を察知した
アンキーラが一足先に兵を送り、
誰も近づけないように
一帯を封鎖してしまったのだ。
そこでサフィアは、
『暗黒星界』の力を持つ暗星の欠片を
御することができれば、
自分と同じように『暗黒星界』の魔法を
習得することができると
アンキーラに言った。
さらに、アンキーラの力をもってすれば、
欠片をコントロールすることなど容易く、
ババリア部族の頂点に立つのも
夢ではないと仄めかしたのだ。
しばらくして……
サフィアのもとに暗星の欠片の力を
手に入れる瞬間を見届けてほしいと
アンキーラから知らせを受けた。
護衛を連れて向かった
サフィアを待っていたのは、
蜘蛛族の女王が念入りに仕組んだ
罠だったのだ。
そして今に至る……。
大量の蜘蛛族が物陰から湧きだし、
サフィアをジリジリと追い詰める。
それだけではない。
最悪なことに、彼女の護衛までもが
剣を突きつけてきたのだ。
最初からサフィアを警戒していた
アンキーラは、盟友の言葉を
鵜呑みにしていなかった。
なにより今回のサフィアの言動は
あまりにも不自然だと感じたのだ。
アンキーラの目に映るサフィアは、
野心的な政治家であって、
決して慈善家ではなかった。
もし本当に欠片にそんな力があるのなら、
サフィアはきっと自分が手にしたいと
思うだろう。
アンキーラは暗星の欠片にどんな力が
宿っているか確かめるため、
自分が欠片に触れる前に
手下に触れるよう命じた。
すると、手下が触れた瞬間、
『暗黒星界』の力に飲み込まれ、
理性を失ったアンデッドと成り果てたのだ。
結果から、
アンキーラはサフィアの言葉を罠だと
判断する。
そして、サフィアが暗星の欠片で
アンキーラを排除しようと
企んでいるのではないかと勘ぐったのだ。
それは密偵からもたらされた情報で
確信へと変わった。
お得意の蜘蛛の巣を張るように、
蜘蛛族の女王は反乱軍を支援していた
黒翼族を裏で買収していたのだ。
排除しようとしている事実を知り、
怒りに燃えたアンキーラは、
自分を陥れようとしたサフィアに
その報いを受けさせるため、
罠をしかけて彼女を誘い出したのだった。
「アンキーラ……!
本来なら妾たち二人で
女王の座をほしいままにできたものを……」
サフィアのかすかに震える声が、
アンキーラの嘲笑をさらに大きくした。
「一つの王座に
女王が二人とも座れるわけないでしょう?」
アンキーラは、
手下たちをサフィアへけしかけ、
欠片の方に近づけさせた。
「あなたは焦りすぎたのよ、サフィア。
欠片を手に入れさせようとしなければ、
あなたの罠にはまっていたかもしれないわ。
そしてあなたはもう一つ間違いを犯した。
裏切り者たちを生かしておくなんてね。
彼らが恩を感じて
あなたに忠誠を誓うとでも思ったの?」
サフィアと欠片の距離はどんどん縮まる。
「ほら、何を躊躇しているの。
ババリアを統べる力を手に入れなさい!
サフィア!」
今のサフィアには
アンキーラの命令を断る術がない。
彼女が恐ろしい力を秘めた欠片に
一歩一歩と近づくたび、
アンキーラは喜びを抑えきれなかった。
アンデッドと成り果てた
実験体たちからもわかるように、
サフィアも必ず『暗黒星界』の力に
呑まれるだろう。
そして、それは蜘蛛族の女王が
黒翼族を支配する絶好のチャンスだった。
サフィアが欠片に触れた瞬間、
巨大な力が吹き出し、
激しい砂埃が辺りを覆う。
同時に、ほとばしる光が
サフィアを包み込んだ。
彼女は一瞬表情を歪ませるも、
すぐに穏やかになり不敵な笑みを滲ませた。
次の瞬間ーー
『暗黒星界』から放たれた力に
サフィアが苦痛の悲鳴を上げる。
だがそれはどこか高笑いを彷彿とさせた。
あっという間にサフィアが闇の中に消え、
まるで何事もなかったかのように、
辺りは静寂に包まれる。
「今この瞬間、
黒翼族の新たな女王が誕生したわ!」
跡形もなく消え去った
サフィアへの憐れみなど微塵もなく、
アンキーラは蜘蛛族の大軍に、
黒翼族の土地の占領を命じる。
そして哀れな黒翼族の支配へと乗り出した。
だが、その喜びは続かなかった。
欠片が激しく揺れ始めたかと思えば、
たちまち表面に無数の亀裂が走り、
赤い光が吹き出して、
夜空を真っ赤に染め上げたのだ。
本能的に危険を察知したアンキーラは、
素早く光を避けて大きな岩の影に隠れたが、
残された蜘蛛族たちはその光を浴びた直後、
一瞬で塵と化した。
「禁忌の力とは、
なんと素晴らしいものだ……」
再び現れたサフィアは、
まるで暗闇に漂う星のように、
燃え滾る暗黒の炎に包まれ、
大きく開かれた翼からは
とてつもない力がほとばしっていた。
アンキーラは目の前で起きたことが
理解できなかった。
女王が誇る軍隊を
一瞬で消し去った力の正体も、
始末したと思った盟友が
瞬く間に姿を現したわけも……。
何ひとつわからなかった。
唯一理解しているのは、
今すぐこの場から
逃げなければならないということだけだ。
「サフィア……なぜ……」
「親愛なる盟友よ。
妾はお前を騙したことなど一度もないぞ」
サフィアがアンキーラに告げた言葉通り、
暗星の欠片は『暗黒星界』の力を
秘めていた。
欠片の存在を知った時、
アンキーラとの偽りの均衡を
打ち砕くためにも、
なんとしてでもその力を手に入れる必要が
あったのだ。
だが、アンキーラに自分の意図を
悟られてしまったら、
必ず阻止するだろうと考えていた。
だからサフィアは
わざと不自然な言動でアンキーラに
欠片を手に入れるよう促し、
自分を疑うよう仕向けたのだ。
アンキーラに情報を提供した者の存在も、
実はサフィアの意図的なものだった。
彼女が反乱軍を支持した者たちを
徹底的に排除しなかった理由は2つある。
1つは反乱を制圧したばかりの黒翼族は
人手が不足していた。
そしてもう1つは、
元裏切り者にしかできないこと……
間違った情報を伝えるという役割が
あったからだ。
先程まで見せていたサフィアの姿勢も、
怪しまれることなく暗星の欠片に
接触できるよう、
アンキーラを誘導するためだった。
サフィアは確信していたのだ。
盟友は必ず彼女を陥れ、
罠にはめるだろうと……。
「さて、これで立場逆転だな」
サフィアの率いる黒翼族によって、
残された蜘蛛族は領地を追い出された。
そして今回のことで、
サフィアは一族から今までにない信頼を
得ることに成功する。
だが安定した地位を手に入れたとはいえ、
サフィアは満足していなかった。
王座と至高の力を手にした今も、
猜疑と裏切りの過去が
彼女にさらなる権力を渇望させる。
ババリア部族がサフィアの手中に
収まる日もそう遠くはないだろう。
野心家にとって、この権力ゲームはまだ
始まったばかりなのだからーー
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