SPベリンダ【光と炎の司祭】
概要
呼称 | 光と炎の司祭 |
陣営 | ブライト王国 |
ストーリー
「ベリンダ、本当にそれでいいのか?」
ブライト王国の西、火山の奥。
マグマに満ちた洞窟の中で、
火の元素を司る、
『烈火』のエレメントガーディアンは
目の前の女性に最後の確認をする。
ベリンダは顔を上げた。
その白い肌は煤に汚れ、
白い服はボロボロに焼けている。
疲れ切った彼女の目を見ると、
エレメントガーディアンを探す旅は
どうやら苦難の道だったようだ。
だが、試練はまだ終わっていない。
彼女の選択次第では、
これからさらなる苦難が
待ち受けているかもしれないのだ。
それでも、
ベリンダの意志は揺るがなかった。
「その質問をされるのは、
これで二度目です。
私は……
すでに答えを見つけ出しています」
十数日前ーー
ベリンダは聖堂の廊下を歩きながら、
師パレルモの問いを思い出していた。
「ベリンダ、本当にそれでいいのか?」
近頃、ブライト王国の各地に
『侵食する者』と呼ばれる化け物が現れ、
平和を乱している。
あのライアン将軍でさえ負傷して、
昏睡状態に陥っているのだ。
ベリンダは聖なる光の力で
セリスを目覚めさせようとしたが、
その試みはすべて失敗に終わっている。
事態は刻一刻と悪化していて、
『侵食する者』の出現頻度が上がっている。
比例するように、
昏睡状態に陥る国民の数も増えていった。
今まで聖なる光の力で
国民を治癒してきた聖堂だが、
『侵食する者』の攻撃による苦痛には
手の打ちようがなかった。
だが、事態は一変した。
ベリンダがセリスのお見舞いに
ライアン邸を訪れた時、
執事セインの手紙の内容を知ったのだ。
それは聖堂が悪戦苦闘している、
『侵食する者』による災いの原因だった。
どうやらこの災いは、
元素のバランスが崩れたことにより
起こったようだ。
これを鎮めるには、
5人のエレメントガーディアンを
見つけるしかない。
ベリンダは急いで聖堂に戻り、
パレルモ司教にすべてを報告した。
王国西部の火山の中にいるという
火の元素を司る、『烈火』の
エレメントガーディアンを一刻も早く
見つけ出すべきだと彼女は力説した。
だが、パレルモ司教は彼女の意見を
聞き入れずただ問いかけるだけだった。
「ベリンダ、本当にそれでいいのか?」
それだけ告げて、
パレルモ司教はベリンダに反省を促した。
聖堂が何を恐れているのか、
ベリンダはわかっている。
聖なる光以外の救いの方法を探すことだ。
それはすなわち、聖なる光の無力さを
認めることになるからだった。
それでもベリンダは、
エレメントガーディアンを
探そうとしているため、
きっとパレルモ司教には
聖なる光の教えに背く者として
見られているのだろう。
聖堂が支援してくれないというならば、
自分には何ができるのかと
ベリンダは考えを巡らせた。
答えが出ず悩んでいると、
目の前のざわめきで我に返った。
ベリンダはいつの間にか
聖堂の門をくぐり抜けていたのだ。
そこは救済を求める国民たちの声で
溢れていた。
門の前にいるのは、
みすぼらしい格好をした被災者たちだった。
何人かは子供を抱きかかえながら、
修道女と修道士がパンを配るのを
待っている。
司祭の服を着ているベリンダに気づいた
被災者たちは、
期待に満ちた目をしながら彼女のもとへと
集まってきた。
ひとりの若い母親が、
自分の子供をベリンダに見せる。
『侵食する者』の攻撃を受けた子だ。
ベリンダにとって、
これは見慣れた光景だった。
聖なる光の力では、『侵食する者』の
苦痛を癒やすことはできないことを
知っていたが、
母親の縋るような目に
何もせずにはいられなかった。
ベリンダは手を伸ばし、
子供の体に聖なる光を放ったが、
やはり今までと同様に奇跡は起きなかった。
期待に満ちた母親の瞳は、
だんだんと光を失っていく。
母親はむせび泣き、地面にひれ伏した。
「お願いします!!
私の人生すべてを聖なる光に捧げます!
だから……どうか……
どうかこの子をお助けください!!!!」
泣きじゃくる母親の後ろには、
大勢の被災者が立っていて、
その視線はベリンダに向けられていた。
国民たちから期待と悲しみを
ひしひしと感じたベリンダは、
強く決心する。
(これ以上は待てません……
今すぐエレメントガーディアンを
見つけ出し、災の根源を断たなければ!)
「あなたたちに、
聖なる光のご加護があらんことを」
ベリンダは被災者たちに一礼し、
聖堂内に戻って行く。
書斎に向かうと、
パレルモ司教が頭を抱えながら
重要な書類を読んでいるようだった。
「私はこれから、
エレメントガーディアンを探しに行きます。
火山へ行かせてください」
ベリンダは前置きなどせずに、
いきなり本題を切り出した。
「乱れた元素は、
エスペリアの平和を脅かしています。
聖堂の司祭として、
私はブライト王国の民を
守らなければなりません」
パレルモ司教は視線を書類に落としたまま
ベリンダに答えた。
「聖なる光は、
この土地を守ってくれるんじゃ」
「聖なる光も……万能じゃありません」
ベリンダの言葉にパレルモ司教は
ついに顔を上げて厳しい口調で告げた。
「司祭よ。
そなたが進もうとしている道は、
危険な道じゃ。わかっておるのか」
ベリンダは深く息を吸い、
決意を込めて自分の考えを述べた。
「元素の乱れを抑えるには、
その源を突き止める必要があります。
聖なる光ならば……
民を救おうとする私たちのことを、
必ず許してくれるでしょう。
司教様、今すぐ出発する許可をください」
「民を救う方法を、聖堂は知っておる。
司祭よ、そなたは聖なる光の前で
誓ったことを忘れているのではないか?」
「私は誓いを忘れたことなど、
一度もありません」
ベリンダはパレルモ司教の目を
まっすぐ見て、思いをぶつける。
「聖なる光の名の元に、
私は希望とともに帰ってきます!」
ベリンダの言葉を最後まで聞いたが、
パレルモ司教は何も言わず、
そのまま書斎を出て行った。
「やはり許されないのでしょうか……」
許可を得ることができず
肩を落としていると、
ふとパレルモ司教の机の上に
古い地図が広げられていることに気づく。
それは、伝説の火山の位置を示す
地図だった。
「聖なる光は……
私を導いているのですね」
ベリンダは、パレルモ司教が出て行った
書斎の扉を見つめながらつぶやいた。
そして火山の地図を握りしめ、
旅に出るのだった。
現在ーー
火山の中。
火の元素を司る、
『烈火』のエレメントガーディアンは、
目の前の司祭を見つめている。
ベリンダの決意と信念を
十分感じ取っているが、
元素の紋章を持つ者の代償である、
未来永劫『侵食する者』たちに
狙われる運命を
彼女に背負わせていいのかどうか、
決めかねていた。
「聖なる光は、
私に答えを教えてくれました」
炎の中に見える影を、
師の姿と重ねながらベリンダは続けた。
「私は聖堂司祭になったあの日に、
聖なる光に誓ったのです。
私のすべてを捧げ、
救える命があるならば、
誰一人見捨てることなく
救い出してみせると!」
「そうか……
では、その願い叶えてやろう」
火の元素を司る、
『烈火』のエレメントガーディアンが
小さく頷くと、
神秘的な模様がベリンダの
手のひらに落ち、猛烈な炎に変わった。
そして、彼女の体から純粋な聖光が
放たれ、光と炎が一体となったのだった。
金色に輝く聖なる炎は彼女と包み込み、
燃え盛る夜明けの太陽のように
闇を消し去った。
そしてベリンダは聖なる炎の中から
手を伸ばし、新しくなった杖を握り締めた。
ベリンダは多くの命を救う力を手に入れ、
宣言通り希望と共に帰るのだったーー
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