モータス

ページ名:モータス

モータス【ジェスター】

概要

呼称 ジェスター
陣営 カタストロフ
身長 185㎝
趣味 自分の欲望を満たし続けること
好きなもの 目的を達成させる手段すべて
嫌いなもの

・軟弱さ

・無能さ

現在地 バンティス
関連人物

【惑わす対象】

エドウィン

ストーリー

(1)

私が初めて彼に会った時、

町中でつまらない芸を売る、

ただの道化師だった。

 

そんな彼が、

まさかあのようなことを起こすとは……。

この時の私はまだ知らないーー

 

ーー道化師、モータスーー

 

当時の彼は、サイズの合わない

道化服を身に纏い、カラフルな化粧をし、

大衆の前で面白おかしい演技をしながら

小銭を稼いでいた。

 

しかし彼の演技はとてもつまらない……。

それゆえ、彼の芸が村人たちの注意を

引くことはほとんどなかった。

唯一笑い声が出るといえば、

モータスの芸ではなく、

子どもたちが投げ銭箱に羊の糞を

投げ入れる光景だった。

人々は次第に彼に対して

関心すら持たなくなっていったが、

それでも彼は演技を続けていく。

彼は今いる自分の環境から抜け出して、

もっと多くの人々に

認めてもらいたかったようだ。

人々の無関心は、

むしろ、モータスをよりやる気にさせ、

一層演技に没頭させたのだった。

 

私は彼の前に立ち、1枚のコインを投げた。

 

「ありがとうございます、お優しい紳士さん!」

 

モータスは満面の笑みを浮かべ私に挨拶したが、

化粧のせいかその笑顔は不気味さを増していた。

 

悪魔との取引は、

自分をより一層堕落させてしまうことを、

この愚かな道化師はまだ知らないーー


(2)

私が次にモータスに会った時、

彼は大きな劇場のトップスターになっていた。

かつて私が投げ銭した

1枚のコインを資本にして

あの村を離れ、都会にやってきたようだった。

彼はトップの座につくため、

多くの努力をしていたのだ。

 

劇場で1番有能な役者のもとで学び、

街中を歩き回り笑い話をかき集め、

夜遅くまで鏡の前で演技の練習をしていた。

 

そして、確実にスターの座を手に入れるため、

彼がおこなったこと、それは……。

 

役者選抜の前夜ーー

自分の師に毒を盛って

声が出ないようにしたことである。

 

自分の欲望のためには手段を選ばない。

 

だが、彼に待ち受けていたものは……?

 

ついに大舞台へ進出したモータス。

しかし、観客はそれでも彼を嘲笑った。

 

道化師は始終笑わせの道具であり、

それは昔も今も変わりはない。

 

どれだけ努力しても、

どれだけ上り詰めても、

トップの座を奪い取り

大舞台に立ったモータスでも、

彼に対する観客の見方は変わらなかった……。

 

しかし、

そんなことで屈するモータスではなかった。

欲望の赴くままに、

彼はさらなる高みを目指すことになった。


(3)

3年後ーー

モータスはバンティス帝国の

エドウィン親王に最も気に入られている

道化師となっていた。

 

彼は貴族を喜ばせることで、

自分の体に烙印された卑しい身分を

振り払おうとしていたのだ。

だが努力も虚しく、

以前よりも笑い話がうまくなった道化師

ぐらいにしか見てもらえなかった。

 

モータスが頂点に近づけば近づくほど、

その力が自分のものであるかのように

勘違いしてしまうようだ。

宮廷の道化師となったモータスは、

自ら権力を握ろうと

密かにチャンスを伺っていたのだ。

 

そしてーー

そのチャンスは意外とすぐにやってきた。

 

一方、その頃ーー

エドウィン親王の幼い子どもが

突然重病を患ってしまう。

親王は治療してくれる医者を探していた。

 

私は古き魔法が記録された巻物を

モータスのベッドにこっそり置いたのだーー


(4)

豪華なシルクの道化服を着たモータスは

バンティス帝国の軍人たちによって

牢獄に入れられた。

彼は自分の無実を訴えるが、

誰も聞く耳を持たなかったのだ。

愚かな道化師よ……。

欲望のあまり彼は次第に判断を誤り、

自滅の道へ進むことになる。

 

あの巻物の魔法は、

確かに全ての病気を治すことができるが、

引き換えに大きな代価を払うことになる。

その代価とは……。

対象の人間を生と死の間で存在する、

アンデッドにさせてしまうことだ。

そしてアンデッドになった者は

死ぬことができず、

肉体が朽ち果てる苦痛を

永遠に味わうこととなる。

 

なぜエドウィン親王の子どもが

急に病気になったかというと……?

 

「さあね」

 

私は獄卒を操り、

モータスが牢獄の中で

1番残酷な拷問を受けるようにしたのだ。

獄卒の中でも特にセフィルという男は

とても残忍で、

モータスの両頬を話すこともできないくらい

何度も鞭で打ち続けていた。

 

「ここでこのまま死ぬわけにはいかない。

私を陥れた全ての人間に

私と同じ苦痛を味わわせてやる!」

 

モータスに新たな欲望が生まれた瞬間であった。

 

「ーー話をしよう、モータス」

 

私は自分本来の姿である、

カタストロフの姿のまま、彼の前に現れた。

 

「お前の欲しいものはわかっている、

私が手助けしてやろう」

 

「お前に……何がわかる……?」

 

彼は息も絶え絶えに、

地面に横たわり、血を吐き続けた。

 

「私を嘲笑いに来たのだろう? 

ほかの……奴らと一緒だ」

 

「私はお前よりも、

お前のことをよく知っている」

 

呼吸の浅いモータスを見下ろしながら、

私は話を続けた。

 

「才能は認められ、人は平等に尊重される。

人として当然得られる権利だ。

だがお前はこれらを手に入れたことはあるか? 

この世界は公平なのか?」

 

モータスは何も言わず黙り込んでいた。

 

「お前にチャンスをやろう。

これまでお前を嘲笑い、

お前の努力を認めていなかった者たちをーー」

 

私は彼の目を見ながら低い声で告げる。

 

「すべて殺せ!」

 

「私に力を……与えてくれ。

私を苦しめた者たちに復讐する力を!」

 

どんどん声が低くなるモータスは、

ついに決心する。

 

「全ての者に復讐を果たした時、

私の魂をくれてやる!」

 

「交渉成立だな」

 

モータスが復讐しようとしている者たちは

ただの人間だ。

そのまま放っておいても

数十年後には死んでいることだろう。

だが、モータスの命は

酷い拷問を受け続けたため、風前の灯火状態だ。

このままでは欲望に満たされた魂を

手に入れられなくなってしまう。

私にはこれ以上待つことはできなかった。

 

モータスの血を使って符号を描き、

自分の力を彼に付与した。

こうしてモータスは、カタストロフとして

生まれ変わったのだったーー


(5)

それから半年後ーー

モータスは牢獄に戻っていた。

ここ半年間、

彼は自分を嘲笑った人々を全て殺していた。

そして、カタストロフの力で

エドウィン親王に再び近づき、

バンティス帝国の反乱を企てさせたのだ。

残るはあと1人……。

牢獄で自分を痛めつけた獄卒のセフィルである。

 

モータスとの取引がまもなく実現される。

私はモータスの後ろに立って見守ることにした。

 

すると……。

モータスはふと振り返り、笑みを浮かべた。

 

「ーーその前にいいものを見せてやろう」

 

私は妙な不安を感じた。

何か大事なことを見落としているような

胸騒ぎがするのだ。

 

モータスが胸元から取り出したものとはーー

 

かつて私がモータスのベッドに置いて、

エドウィン親王の子どもを

アンデッドにさせた巻物だったのだ。

 

「くそ! 騙したな!?」

 

私は急いでセフィルを殺そうとしたが

それは時既に遅し。

この獄卒はすでにアンデッドになっていて、

身体は腐敗し、声を上げることもできなかった。

 

カタストロフでも

アンデッドを殺すことは不可能。

モータスが復讐を果たそうとする者が

既にアンデッドになっていては、

私たちの契約は永遠に終わらない……。

 

ーー侮っていたーー

 

モータスの欲望を助長したのは確かだが、

彼が契約を受けた真の目的が

復讐ではなく、カタストロフの力を

欲していたことには気づかなかった。

 

こうしてモータスは、

永遠に私の、カタストロフの力を手に入れた。

 

道化師の不気味な笑い声が響き渡る。

 

のどかな村、繁華な都市、大劇場、宮廷……。

そしてーー

最後は牢獄の上空で鳴り響いた。

 

これはモータスの、私に対する嘲笑い。

 

奴は貪欲でずる賢い。

かつてはただの人間だったが、

今ではカタストロフよりも邪悪だーー

 

ドリーのコーナー

モータスは貧しい農家の生まれである。

偶然の巡り合わせで、道化師になることを選んだ。

道化が好きでもなく、才能があるわけでもないモータスは演技が下手で、毎日食べて行くのがやっとだった。

来る日も来る日もつまらない演技をすることに、モータスは心底憎悪を抱くようになった。

そして憎悪は不満を生み、不満は欲望を増長させた。

その頃のモータスは自分がほしいものが何か分からなかったが、とにかく上り詰めようとした。

そのため、あのコインがモータスの欲望に火をつけたのか、それとも彼は元々欲望の傀儡になる運命にあったのかは定かではない。

彼は師匠に毒を盛った後、一瞬だけ罪悪感を感じたが、清々しい気分のほうが強かった。

その後はあらゆる手段を使って、上流社会に入ることに成功した。

モータスはこのような下劣なやり方に長けていて、楽しんでいる節がある。

モータスは間もなくして王家に這い上がった。

昔自分の芸を嘲笑いした連中にもはや哀れみすら感じる。

今のモータスは滑稽なトリックまたは大げさな賛辞を口にするだけで、権力者も大臣も彼の言いなりだ。

忌まわしい駄犬みたいにエドウィン親王の足元で尻尾を振る時は、エドウィン親王も道端で芸を見るやつらと同じ、自分に振り回されている存在だと思えてくる。

「自分こそがこの国を裏で牛耳る者だ」

その気になれば、いつでもこの考えを実現できる。

そう思うと、モータスは一層媚びた笑顔を堪えた。

欲望に支配された人間は一番カタストロフに狙われやすい。

案の定、モータスは罠にはまった。

しかし、取引きを持ちかけたカタストロフの考えていることなどとっくに見透かしたモータスは、いい気になってあれこれ手配するカタストロフがただただ滑稽な道化にしか見えなかった。

これは取引きというより、ゲームだ。

モータスはカタストロフの力を手に入れ、ニューゲームを始めようとした。

権力と欲望の取引きは常に公平ではない。

一番狡猾な者が勝つ続けるのだ。

 

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