ティベリウス

ページ名:ティベリウス

ティベリウス【群山の守護者】

概要

呼称 群山の守護者
陣営 セレスチアル

ストーリー

(1)

ついに来た。

温かい南風が頂上に吹くと、

『風の使者』は私の目の前に飛んでくるのだ。

私の肩の上に乗り、冷たい鎧をつつく。

そして首をかしげて私を見ながら、

楽しそうな声で教えてくれる。

エスペリアの世界はいつも新鮮で

楽しいことがいっぱいあると。

 

「いつか行けることがあるのだろうか?」

 

そんな素晴らしい世界にまったく興味がない、

といえば嘘になる。

だが、私はここを離れるわけにはいかないのだ。

私の名はティベリウス。

テンプルガーディアンの最後のひとり。

後ろにある神殿を守っている。

畏敬の念を抱かせるこの神殿は、

かつて女神デューラのものだったが、

今は誰もいない。ただ静けさだけが漂っている。

 

来る日も来る日も、

私は白い石の階段に足を曲げて座っていた。

たまに、神の工匠が贈ってくれる盾と槍を

手に取り、握るくらいはしているが、

それ以外は使命を果たすため、

神殿を守っている。

毎年1回だけ訪れる『小さな使者』を除けば、

私のそばにいてくれるのは、

この巨大な柱だけだった。

33本ある神殿の柱の間を、

薔薇色の朝日と星の光が交互に入り、

地面へと降り注いでいる。

神殿は汚れのない銀白の巨獣で、

私はそれを守護する少年、

そして彼方で深い眠りについている賢者は、

女神デューラ、といったところだ。

 

この静けさと平和は、永遠に続くと思っていた。

カタストロフがここにやってくるまでは……。

 

雪嵐とともにやってきたカタストロフは、

血の臭いを撒き散らしながらやってきた。

そして、果てしない暗闇が山を包み込む。

重い金属製の鎧が擦れる音と同時に、

私は白い階段から立ち上がる。

 

「ああ……そろそろ体を動かさないとな」

 

槍を構えるも、まるでイナゴの群れのように

カタストロフが階段の下から

上がってくるのを見て、

私は自分の終わりを予感した。

だが、私は諦めなかった。

戦いで鎧が砕け、槍が折れてしまっても、

使命を果たすことはできなくても、

自分の名に恥じないよう、

命尽きるまで戦い続けたのだ。

私の体は崩れた神殿に埋もれ、

巨大な柱とともに粉々になってしまった。


(2)

暗闇の果てはさらなる暗闇ーー

私はこの闇の中で

どれだけ眠っていたのだろうか。

そんな静かな暗闇の中、カツン、カツンと

金属に何かがぶつかる音がした。

 

「……起きなさい。

我が子、ティベリウスよ」

誰かが優しい声で私の名前を囁いてくれた。

それはとても心地よく、

まるで母親のようだった。

 

「……『善意』。

それは神殿が万物を導いた方向です。

しかし世界は混沌としていて、

カタストロフが溢れているため、

人々の『善意』は流れ星よりも短く、

ホタルの命よりも儚くなっています。

彼らを守ってくれますか? 

あなたの勇気がきっと彼らにとって

支えとなるでしょう。

あなたがかつて神殿を守ってきたように……」

 

母なる導きの声が辺りに響き渡った。

背中をそっと押してくれているような、

優しくて強い力が引っ張ってくれているのを

感じ、私は目を覚ました。

埃をかぶった金属の円盤は、

淡い黄金色の光を放ち、

ゆっくり、ぐるぐると回りだした。

 

チチチッ……

 

耳元から清らかな小鳥の鳴き声が聞こえる。

『小さな使者』とその友だちだった。

また来てくれたのだ。

何かを感じ取ったのか、

私の最も身近な友人はゆっくりと降りてきて、

小さな頭を傾け不思議そうに見つめている。

そして、黄色く尖った柔らかいくちばしで、

石柱をつついてきた。

私が目覚めたことにやっと気づいたようで、

喜びを歌うように鳴き出したのだ。

朗らかな鳴き声を聞いていると、

私の記憶が少しずつ戻ってきた。

そして、『小さな使者』が教えてくれた

人間のことを思い出したのだった。

エスペリアという大地には、

純粋な勇気と恐れを知らない心が溢れている。

人々は他人の喜びや悲しみとつながり、

愛と死を経験し、感じ合う魂がある。

この大地では、内なる平和と『善意』が

育まれているのだ。

 

「この大地を歩いてみたくなった。

人は誰もが心の中に神殿を持っている。

その神殿を私は守りたい」

 

暗闇の中で、女神デューラの問に対する答えを、

見つけたような気がした。

私自身も、私の使命も、

まだ終わってはいない。守るべきものがある。

白い光を放ちながら燃え上がる星のコアが

より熱く、より明るくなった。

 

私の耳元で神の工匠の声が聞こえた。

わずかに笑みを浮かべながら、

穏やかに、そして力強く語りかけたーー

 

「ティベリウス、よくぞ戻られた。

……この世界は、

あなたの守護を必要としている」

 

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