ヴィッカ【影の鞭使い】
概要
呼称 | 影の鞭使い |
陣営 | ババリア部族 |
身長 | 190㎝ |
趣味 |
【昔】 ・闘技場での死闘 【現在】 ・各地を渡り歩くこと |
好きなもの | ドラゴンブレススピリッツ |
嫌いなもの | 卑怯で陰湿なクソ野郎 |
現在地 | 流浪の地 |
現在の身分 | 流浪の地の傭兵 |
ストーリー
ババリア部族のウォックとティーダが
『血の闘技場』で優勝争いをするよりも
もっともっと前の時代ーー
ヴィッカに最後に会ったのは、
何年も前のことだった。
はじめは名前すら教えてくれなかったが、
それは相手が俺だったから
というわけではない。
ヴィッカは意図的に己の過去を隠し、
別人となってこの地に戻って来たんだ。
彼女がここに戻って来たのは
俺のためだと言える。
別に自惚れているわけではない。
正確に言えば、
俺たちは依頼者と傭兵の関係なんだ。
実はヴィッカが来る前、
俺は人生最大の困難にぶち当たっていた。
だからこそ、彼女のような『偉大』な者と
知り合うことができたのだろう。
ヴィッカの行いは、
他者から見たら恐ろしいものかもしれない。
だが、俺はそれを偉大だと思っている。
当時の俺は、
『血の闘技場』でも腕の立つ存在だった。
倒してきた相手は数えきれないほどだ。
戦いの場で命乞いをする臆病者など
心から軽蔑する。
ババリア部族において、
もっとも恥ずべき行為だ。
ランディもそうだった……
そう思っていたはずなのにーー
俺をこんな有様に陥れたのは
誰でもない……
あのろくでなしランディのせいだった。
『血の闘技場』が残忍なのは周知の事実だ。
毎日どれほどの者が
闘技場で再起不能になっていることか……
もはや数えきれない。
勝利に酔いしれていた俺は、
かなり思い上がっていた。
だから、ランディが俺に
わざと負けてくれれば大金をくれてやると
言ってきたとき、
ランディの顔に唾を吐いてやったんだ。
だってそうだろ?
剣闘士は金よりも栄誉が大事だ。
それはババリア部族の誇りでもある。
何より俺は、
やつと同じようになりたくなかった。
だが、俺は忘れていたんだ。
やつの裏で
手綱を引いている者たちのことを……
そいつらは栄誉なんてどうでもよかった。
求めているのは、
剣闘士という駒を使って
より多くのものを手に入れることだった。
「ふっ……」
見てくれ、今の俺の悲惨な姿を。
そいつらに逆らった結果がこれだ。
俺は両足を失った。
生きるためのすべてを失った。
こうなったのも、
全部ランディとやつの裏で
手綱を引いていたろくでなし共のせいだ!
その日から、
俺の人生はメチャクチャになったーー
抜け殻のようになった俺は、
酒浸りの日々を過ごしている。
それでもランディは
俺を許すことはなかった。
事あるごとに俺から奪った
勝者のベルトを使って侮辱し続けたんだ。
そして、俺をこの有様にした
連中の『事業』はますます大きくなって、
剣闘士たちの死闘への決意を
デタラメで滑稽なものにしていったんだ。
このままでは、あまりにも悔しい……
やつらが憎い!
だが、今の俺は廃人だ……
だから俺の身に起きたことと、
望みをこの手紙に書くことにした。
誰かが助けてくれるのを願って……
それからどれだけ経ったのかーー
ある日、俺の小汚い小屋に
ヴィッカと名乗る女性がやって来た。
よく考えると妙なものだ。
その時の彼女は、
すでに名の知れた傭兵だったんだ。
本来、こんな面倒な依頼なんて
見向きもしないはずだ。
ヴィッカへの報酬金には
到底足りていないが、
彼女には全財産を出すと約束した。
依頼を受けてくれなくても、
文句なんて言わない。
「心配するな」
そんな俺の思いとは裏腹に、
ヴィッカはただ微笑みながら、
己の狂気じみた計画を教えてくれた……
彼女は勝者の殿堂に行って、
卑劣なやつらを一網打尽にするらしい。
ヴィッカがその場所を
知っていたことに驚いた。
彼女はどうやらそこを『よく』
知っているらしい。
だが、勝者の殿堂は『血の闘技場』で
勝利し続けた王者のみが入れる場所だ。
ヴィッカがそこに入る資格が
あるのかどうかはわからない。
思い返せば、
当時の俺はあと少しで……
いや、そんなことを思っても仕方ない。
後から知ったが、
あの場所は裏で手綱を引いている者たちが
自分たちに従う臆病者を
おびき寄せるための場所だったんだ。
だが、真実を知らない剣闘士にとっては
最高のステータスの証だった!
ランディが俺から奪っていった
勝者のベルトは、
そこに行くための『鍵』だった……
ヴィッカはすぐに闘技場へ向かい、
対戦相手ひとりひとりに勝負を挑み始めた。
その姿は、まるで長年戦い続けてきた
剣闘士のように手慣れている。
彼女ほどの実力とテクニックを持つ者を
見たことがなかった。
そう思うと、俺の杞憂なんて笑えてくる。
ヴィッカの強さに、
会場が歓声と興奮で沸き立った。
すべての対戦相手を薙ぎ払った彼女は、
勝者の殿堂へ足を踏み入れるチャンスを
手に入れたんだ。
だが、なぜだかその時、
俺は不安に襲われた。
卑怯なやつらが、
高額な報酬をヴィッカに提示して
裏切るんじゃないかって……
だが、彼女は俺と約束してくれた。
「すべてが終わった時、
報酬を受け取りに来る」
そう言って、
ヴィッカは綺麗に磨き上げられた武器ーー
長い長い杖と、
奇妙な図柄が刻印されたこまを手に取り、
勝者の殿堂へと歩み出していった。
俺は、一昼夜家で待った。
やきもきしていたまさにその時、
全身汚れまみれのヴィッカが戻って来た。
最初は重傷を負っていると思ったが、
それは彼女のものではなかった。
ヴィッカはやったんだ。
ランディとあのろくでなしどもは、
相応の報いを受けたらしい。
興奮に震えた俺は、
金袋をうまく持てなかった。
彼女はそんな俺を見て笑い声を漏らした。
俺が金袋をなんとか彼女に差し出したが、
ヴィッカは報酬を受け取っては
くれなかった。
その上、闘技場で手に入れた
自分の賞金まで俺の机に置いて、
別れを告げて出ていってしまった。
それ以降、ヴィッカに会うことはなかった。
ヴィッカと言う名は、
別れ際に彼女が教えてくれたものだ。
その名前には聞き覚えがあった。
かつて、『血の闘技場』に
名を轟かせた剣闘士だったんだ。
だが、対戦相手に謀られ
重傷を負ってしまった。
俺よりもずっとずっと悲惨なものだった!
当時の彼女は、
力を振り絞りながら相手の卑劣な手段を
指摘した。
だが、その言葉を信じる者などいなかった。
ただ、気を狂わせた敗者の戯言だと
見なされたんだ。
その後、風の噂で
その剣闘士は傷を癒すために海を渡り、
遠方にいる不思議な魔道士に
法術を学んだと聞いた。
もしかしたら……
ヴィッカこそがその剣闘士だったのかも
しれない。
だが彼女は、過去を明かさなかったから
真相はわからない。
傷だらけのあの場所は、
彼女を破滅に追いやった。
汚らわしい卑怯者どものせいで
ヴィッカは闘技場に勝者の証を
刻むことが許されなかったからだ。
だが今、彼女はすべての者に打ち勝ち、
その足で闘技場の頂点に登りつめたんだ。
剣闘士としての彼女の栄誉は
悪意からの重傷を負ったあの日、
跡形もなく消えてしまったけれど……
ヴィッカは俺と同じだ。
卑怯者どもを心の底から憎んでいる。
だからこそ、彼女はあの場所に戻った。
俺のために、そして自分のために……
また、ヴィッカに会いたいと思う。
傭兵としての彼女の評判は
日に日に上がっている。
だが、ヴィッカは
すべての依頼受けているわけではない。
どんなに金を積んでも
彼女に依頼を受けてもらえない者も
多いらしい。
もしかしたら、
ヴィッカはすでに遠くへ行って
しまったのかもしれない。
もう二度と、
ここには戻ってこないかもしれない。
そういえば……
ヴィッカは勝者の殿堂から戻ってきたとき、
俺にプレゼントを持ってきてくれた。
彼女が去ってから開けてみたが、
中にはランディが俺から奪った
勝者のベルトが入っていたんだ。
これはかつてのヴィッカにとって
何よりも手に入れたいと願っていた
物なのかもしれない。
だが、今ではもう不用なものだ。
ドリーのコーナー
昔々、ヴィッカはマタル城の剣闘士だった。
マタル城に位置するババリア最大の「血の闘技場」、そこで繰り広げられる死闘は、まさに生まれつき武を重んじるババリアの象徴そのものだった。
剣闘士たちは何年も闘技場にとどまり、勝利と栄誉のために絶えず相手に挑み続ける。
そんな血で血を洗う剣闘士たちの生死も、ギャンブラーたちにとっては賭けの対象でしかなく、金、武器、奴隷、果ては領地まで賭ける彼らに目をつけた一部の者たちは、脅迫や誘惑といった手段で不誠実な剣闘士たちと結託し、戦局を意のままに操り始めた。
ヴィッカは、不正の被害に遭った多くの剣闘士のうちの一人にすぎない。
相手が差し出した賄賂をはねのけた彼女は、己に恥じない剣闘士として、ちっぽけな目先の利益よりも、正々堂々の勝利を取ったのだ。
だが裏で糸を引く者たちの卑劣さは、彼女の想像を遥かに上回っていた。
危うく五体不満足になるところまで追い詰められ、手にするはずだった栄誉も失い、すべてをなくしたヴィッカは絶望のどん底に突き落とされた。
そして傷を癒やすために海を越え、そこで謎のメイジから魔法を学ぶようになる。
卑怯者を心底憎む彼女にとって、過去は苦痛でしかなかった。
だが過去を捨てた今でも、当時の選択を一度も後悔したことはない。
その後、そこそこ名の知れた傭兵となったヴィッカだが、彼女は自分の信念を一度も曲げたことはなく、卑怯な手口を使う者たちには決して手加減しない。
もし悪人がヴィッカを雇おうものなら、彼女のウィップステッキはきっと容赦しないだろう。
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