ヴィルフィラ【魔力を織る者】
概要
呼称 | 魔力を織る者 |
陣営 | 竜族 |
ストーリー
ヴィルフィラは練習場の中央に立ち、周囲に散らばった木偶の残骸を見つめていた。
照りつける日差しに少し苛立ちながら、今週練習場を爆発させたのはこれで3回目だと思うと、一族の長老たちがまた延々と小言を言うだろうと想像した。
彼女の指先が空中をそっと滑り、魔力の糸が気まぐれな風のように自由に空を舞った。
これは彼女の才能の象徴であり、一族が誇りに思う伝承でもあった。
「また来たのか」
威厳のある声が沈黙を破った。
彼女の兄アンドラスが木陰から現れた。
眉をひそめ、琥珀色の瞳に非難の色を浮かべていた。
ヴィルフィラは振り向かず、魔法の糸をいじり続けた。
手首には昨日の実験で負った火傷の跡が残っていたが、彼女はそれを気にも留めなかった。
これから始まるのは、伝統や責任、そして彼女を息苦しくさせている規則についての説教だと分かっていた。
「防御魔法は竜の島を守るためのものだ。我が一族は代々防御結界を築き、外界の侵略から島を守ってきた」
アンドラスはため息をつきながらこう言った。
「防御魔法をこんな風に使っては......」
「みんな防御魔法を甲羅のように扱うけれど、私たちが閉じこもったら敵が攻撃をやめるとは思えない」
ヴィルフィラは振り向き、傲慢な目つきは皮肉気に見えるが、それ以上に現状への不満が見えた。
「外の世界を見ろ。変化し、進歩し続けているのに、私たちはただ結界の中に隠れて、臆病者のように先祖が残した規則を守っているだけ」
すべては、あの事故から始まった。
あの日、ヴィルフィラが新しい結界を張ろうとしていた時、うっかり呪文の順序を間違えてしまった。
本来は穏やかなはずの防御魔法が突然逆転し、瞬時に木人形を縛り付け圧縮した。
この失敗は種のように彼女の心に根付き、魔法に対する彼女の認識を覆した。
「私は単に防御魔法の他の使い道を模索しているだけ」
彼女は手を振り上げると、指先に絡みついていた柔らかな魔力の糸がピンと張り、鋭い刃に変わった。
巨石が音を立てて裂け、破片がアンドラスのところまで飛び散った。
これこそが力のあるべき姿だと彼女は思った。
力は何かを閉じ込めるためのものではなく、すべてを打ち破るためのものだと。
日が経つにつれ、一族の長老たちはヴィルフィラを目にするたびに眉をひそめるようになっていった。
それはまるで、彼女が異端者であるかのようだった。
彼女は傲慢すぎる、本分を忘れている、防御魔法における比類なき才能を無駄にしていると言われた。
このままではいずれ竜族に厄災をもたらすだろうとまで警告された。
そんな時、ヴィルフィラはいつも自分の運命を変えたあの日のこと、魔法が逆転した時のあの驚くべき力を思い出す。
彼女の部屋には、ノートと黄ばんだ古書が山積みになっていた。
新しい術式を試し続けて痺れた指先は、彼らの陳腐な言葉と同じくらい取るに足りないものだった。
ヴィルフィラの一族では、防御魔法の精巧さがメイジとしての実力を測る重要な基準とされていた。
数十年おきに、一族は若い世代に試練を課し、彼らの才能と研究成果を競わせる。
これは栄誉を賭けた戦いであり、地位を手に入れる重要な機会でもあった。
ヴィルフィラは自らの研究成果を示し、自分の選択が正しかったことを証明したいと強く願っていた。
彼女は、一族が長年使ってきた防御魔法が、自分の改良によってこの試練で輝かしい成績を上げると信じていた。
しかし、彼女はまだ完全に制御できておらず、魔法は暴走してしまった。
魔力の糸は放れ馬のように、相手を縛り上げた挙句、奔流する魔力が相手の鱗さえも傷つけてしまった。
今回の試練でヴィルフィラは認められるどころか、さらに厳しい非難を浴びるようになり、一族から追放すべきだという声さえ上がった。
兄のアンドラスが周りの反対を押し切ったおかげで、彼女は辛うじて追放を免れたものの、監禁を余儀なくされた。
「ヴィルフィラ、自分が何をすべきか分かっているだろうな?」
アンドラスの声色には失望が滲んでいた。
暗い監禁室の中、彼女は静かに自らを見つめ直した。
己の力を証明しようと焦りすぎたせいで、かえって災いをもたらした。
革新的な力は、正しい場所で使われてこそ真価を発揮する。
魔力の光が指先に灯る。
ヴィルフィラはまた術式の調整と改良を始めた。
今回は、急いで成果を上げようとするのではなく、心を落ち着かせ、一本一本の魔力の糸、その脈動を丁寧に感じ取った。
彼女は指から血が流れるまで、魔力に満ちた糸が自分の思い通りになるまで、試行錯誤を続けることを決意した。
「何をしているんだ?」
巡回中のアンドラスが尋ねた。
「改良よ」
彼女は簡潔に答えた。
「より強く、より制御しやすくするの」
カタストロフとの戦争が勃発してまもなく、巨竜がソトロン大陸に帰還し、再び人々の前に姿を現して戦いに加わった。
ヴィルフィラも、新たに創造した魔法を以て長い間の監禁生活を終えた。
彼女はやっと自分の実力で、かつて自分を疑っていた一族の者たちを黙らせた。
一族が防御魔法を編むために使っていた魔力の糸は、もはや障壁を作るためだけのものではなく、流れるような刃にも、死をもたらす踊りにもなれる。
防御の概念を覆したこの斬新な魔法は、戦場に無数の可能性をもたらし、一族に防御魔法の新たな存在意義を示した。
彼女の革新的な思考は、もはや異端思想ではなく、未来を照らす灯火となった。
「お前は小さい頃から落ち着きがなくて、いつも何か違うことをしようとしていたな」
戦いの後、アンドラスが彼女の隣に座り、血のような夕日を眺めながら言った。
「若い頃の自分を思い出す。あの頃は、世界中が自分の足を引っ張っているように感じていた」
ヴィルフィラは笑った。
「でも、最後には伝統を守ることを選んだんでしょ」
「そしてお前は、それを変えることを選んだ」
アンドラスは言った。
「これが運命というものだ。誰かが違う道を歩まなければならない」
ヴィルフィラはこれ以上何も言わなかった。
彼女は遠くを見つめ、風が鱗を優しく撫でるのを感じていた。
遠くの地平線は、打ち破られるのを待つ境界線のようだった。
生きることはそういうことだ。
流れに身を任せるか、逆らって進むか。
彼女は後者を選び、決して後悔しなかった。
なぜなら、真の伝承とは固守することではなく、継承しながら革新を起こし、困難を成長の糧にすることだと理解していたからだ。
彼女の反抗と信念は、やがて竜族の新たな力となるだろう。
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