ルディアロ【遊戯者】
概要
呼称 | 遊戯者 |
陣営 | セレスチアル |
ストーリー
真夜中の酒場で、揺らめくろうそくの光が豪華なチェス盤を照らし、整然と並んだ駒が斑模様の影を落としていた。
チェス盤の向こうでルディアロが長椅子に寄りかかり、金の刺繍が施された長衣をだらしなく開け、薄手のシャツからは最近流行っている高級コロンの香りがかすかに漂っていた。
彼の顔は影に隠れていたが、その狡猾で人を惹きつける目は隠しきれていなかった。
向かいには3人の男が座っていた。
金貸しのモルは震えていた。
いつもは口達者で「顧客」から最後の一文まで絞り取る男だった。
耳を掻きむしる麻薬中毒者はカルロで、腕利きのイカサマ師だ。
ちょっとした手品で相手を破産させることができる。
凶悪な目つきでルディアロを睨みつけているのはサンドだ。
腕の刺青の一つ一つが奪った命の数を表していた。
彼らは共謀して金を騙し取ることを続けていたが、今は何かの力で椅子に縛り付けられているようで、目の前には一つずつ駒が置かれていた。
「こんばんはお越しくださり、誠にありがとうございます」
ルディアロの端正な顔が影の中から現れた。
「お前は...!」
カルロが驚いて叫んだ。
ルディアロが微笑みながらチェス盤のポーンを動かすと、駒から奇妙な唸り声が聞こえた。
「先日のカードゲームでは物足りなかったようですね。その後、皆様から『熱烈な招待』をいただきましたよ」
詐欺師のモルが慌てて割り込んだ。
「ご、誤解です! あなたの腕前には敵いません。借金の件については話し合いで解決しましょう」
「ふふ、あなたの短気な友人はそうは思っていないようですね。あの日、私が酒場を出たとたん、彼に狙われましたから」
ルディアロはアゴでサンドを指し示した。
「しかし皆さん、がっかりしないでください。今回は私から皆さんを誘う番です。もし皆さんが勝てば、すべてチャラにしましょう...いえ、さらに賞品も差し上げましょう」
「賞品?」
カルロの喉ぼとけが上下した。
ルディアロが華麗な杖で軽く床を叩くと、賑やかだった酒場が一瞬で巨大なチェス盤に変わった。
白黒の升目が広がり、全員がチェス盤の異なる位置に押しやられた。
ルディアロは相変わらず落ち着いていて、彼の声が広い空間に響き渡った。
「賞品はこの『策略家』の杖です」
チェス盤は2つの陣営に分かれた。
片方はルディアロを表す白、もう片方は3人の悪党を表す黒。
「最もシンプルなチェスにしましょう」
ルディアロは無感情な口調で説明した。
「私たちはこのチェス盤上の駒です。ポーンは前進し、ルークは遠くから攻撃し、キングは後方に控えます。先にチェックメイトを決めた方が勝ちと見なされます」
「くだらねぇ、チェスなんざ知るか。てめぇをバラバラにしてやる!」
サンドは顔を真っ赤にして暴れようとしたが、チェス盤の升目からは一歩も離れられなかった。
前回目の前でルディアロに逃げられ、何日も悔しい思いをしていたのだ。
ルディアロはサンドを意に介さず話の続きをした。
「ここでは、ルールを破る者、従わない者の居場所はありません」
そして意味深に間を置いた。
「皆さんにとっては、少し難しいかもしれませんね」
ゲームが始まった。
モルは相手の強さを知っていた。
前回のカードゲームでは必死に頭を絞っても、ルディアロに大金を巻き上げられてしまった。
相手は幻術師なのだろうか?
モルは話しかけるふりをしながら、ポケットの中を探った。
彼は最近闇市場で拳銃を手に入れたばかりだった......
しかし、指先が拳銃に触れた瞬間、それは突然燃えるトカゲに変わり、彼の体中を這い回り、彼はその熱さで飛び上がった。
ルディアロは彼の窮状を見て、軽蔑的に言った。
「チェスのルールを守れない者には、続ける資格はありませんよ」
「策略家」を見つめるカルロの目に狂気の光が宿った。
彼の目に狂いが無ければ、あれはイカサマ師たちの間に伝わる伝説ーー
ゲームの神の杖だ。
伝説によると、ゲームの神は神々の中でも異質な存在で、デューラに仕えず、人間界を歩き回ることを好むという......
とにかく、彼のような詐欺師なら神に勝つチャンスを逃すわけにはいかない。
カルロは衝動的で狂躁的になり始め、モルの嘆きとサンドの罵りを無視してポーンを猛然と前進させたが、次の手でルディアロが冷静に動かしたルークに阻まれてしまった。
一方サンドは、歯を食いしばりながら、モルとカルロを利用して時間を稼ぐ方法を考えていた。
彼は自分の駒をゆっくりと動かし、ポーンに注意を引かせようとした。
しかし、こんな単純な策略は誰も誤魔化せなかった。
モルは不満そうに呟いた。
「何をしているんだ? 俺の駒を犠牲にして自分を守るつもりか?」
カルロは冷笑した。
「まったく、命を惜しむ愚か者め」
3人の間の信頼関係はあっという間に崩壊し、互いの非難や妨害によってチェス盤面がゴチャゴチャになっていた。
彼らは協力できたはずなのに、欲望と恐怖と怒りに身を任し、好機を逃してしまった。
ルディアロは冷ややかに傍観していた。
この茶番劇は彼の予想通りだった。
彼の動きは素早く優雅で、一手一手が綿密に計算され、ゲームを完璧にコントロールしていた。
最終的に、チェス盤に残ったのはサンド一人だけで、キングが危険な状態に陥っていた。
「なぜだ?」
サンドは絶望と憎しみを込めて言った。
「俺たちを直接倒すこともできたはずだ。なぜこんな芝居を打つんだ?」
「あなたたちは人々をゲームに誘い、裏でルールを踏みにじる」
ルディアロは落ち着いて彼に近づいた。
「それでも、私はあなたたちに正々堂々と自らを救う機会を与えた。しかしながら、君たちはその機会を掴めなかったようだ」
「チェックメイト」
ゲームは黒の完敗に終わった。
ルディアロが杖を振ると、「策略家」が眩い光を放った。
3人の罪人は地面に押し付けられ、動くことができなくなった。
「ルールに従い、敗者は代償を払わねばなりません」
彼らが再び目を開けたとき、モルは吃音になっており、どんなに頑張ってもうまく言葉を組み立てられなかった。
カルロの両手は3倍に肥大して重くなり、もはやサイコロを握ることすらできなかった。
そしてサンドは小人になっていて、瘦せ細った番犬に追いかけられて街中を逃げ回ることになった。
「ゲームのルールは絶対だ。これが私にとって唯一の正義なのです」
ろうそくの光が再び揺らめいたとき、ルディアロの姿はすでに消えていた。
しかし、ゲームのルールを冒涜した悪党たちは、永遠に彼の名を忘れることはないだろう。
酒場の賑わいは相変わらずで、まるで何も起こらなかったかのようだった。
そしてルディアロは、おそらくこれからも人間界を歩き回って次のゲームを探し、ルールを守らない輩を懲らしめるだろう。
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