エルード

ページ名:エルード

エルード【断罪の神父】

概要

呼称 断罪の神父
陣営 ブライト王国

ストーリー

『断罪の神父』エルードーー

女神デューラの信条を守り、異端者を排除する。

制裁者のために生まれてきたと言っても

過言ではない存在だった……

その昔、エルードが幼少の頃ーー

ブライト大聖堂に引き取られた子どもの中で

誰よりも信仰熱心だった。

いつでもどこでも聖書は手放さず、

理解するまで何度も何度も読み返していたのだ。

飲み込みの悪い子どもがいれば、

率先してわかりやすい言葉で教えるなど、

エルードはとても優しい少年だった。

聡明、敬虔、温和そして

忍耐力を持ち合わせたエルードは、

ほかの子どもたちからも人気で、

彼もまた、まるで本当のきょうだいのように

接していたのだ。

礼拝の日になると、

子どもたちに白いローブと赤いネクタイ、

丸い帽子を被せてあげてから、

パイプオルガンの前で聖なる光を称える賛美歌を

一緒に歌ったものだった。

そんな子どもたちの

リーダー的存在であるエルード。

だからこそ、ここにいる誰よりも早く

聖なる光が呼応してくれるだろうと

みんな信じて疑わなかった。

しかし、運命のいたずらだろうか……

エルードと同時期に

聖堂へ引き取られた子たちが、

次々に聖なる光と繋がっていくのに対し、

彼だけ繋がることがなかった。

心配した子たちが、エルードを慰めるも、

やはり彼に聖なる光は応えてくれない。

そのうちに、認められた子たちは、

ブライト王国各地にデューラの教えと

聖なる光の信仰を広めるため、

次から次へと聖堂を離れていき……

ついに、残っているのは

エルードだけとなってしまった。

そして、そのまま成人を迎えることとなった。

気づけば、人々のエルードを見る目が

変わっていた。

つい先日まで、強い意志と深い信仰心を持つ

エルードなら誰よりも早く

聖なる光と繋がることができると信じていた。

だが、一向にその兆しが現れない彼に対し、

疑いの目を向けるようになる。

あれほどまでに将来有望な聖職者になると

称賛されてきたが、

今では聖なるオーラが色褪せ、

周囲からは『神に見捨てられた者』と、

蔑まれるようになってしまった。

だが。エルードはそんな雑言には耳を貸さず、

諦めず毎日祈りを捧げていた。

そんな日がしばらく続くも、

聖なる光は応えてくれなかった……。

人々はエルードのことを、邪悪な存在と

まともに戦うことができない者と判断し、

彼の言葉を一切聞かなくなってしまった。

それでもエルードは諦めなかった。

ブライト王国辺境の地にある、

地方や外部との交流がめったにない寂れた町や、

異端者の形跡がある村など、

場所を選ばずデューラの教えを

大陸隅々まで広めようと努力したのだ。

聖書の内容や聖なる光の起源、

エスペリア大陸の伝説など、

誰もが理解できる言葉に換えて

村人や子どもたちにわかりやすく伝えていた。

これはエルードが南部辺境の村

モルジに行った時の話だーー

この村の教会は、

聖像やドーム状の建物などは存在せず、

ステンドグラスの窓1つと祈り部屋のみで

とても小さく質素だった。

宣教活動を始めて4日目を迎えた時。

この日は村人たちに『モーン記』について

話していた。

長時間の語りに、

エルードは喉が渇き一度話をとめると、

これをいい機会だと思ったのか、

村人たちが次々と教会を離れていった。

そして、エルード1人だけが残される。

しばらくすると、1人の村の娘が

水の入った樽を持って教会の中に入ってきた。

「喉、渇いてるんでしょ?」

樽を渡されたエルードは、

カップに水を注ぎながら少女を見つめる。

とても澄んだ瞳をしていた。

「前もあなたのような格好をした人が

ここに来たことがあるの。

今日で4日目だし、

みんな退屈し始めちゃったから、

明日からはもう誰も来ないと思うわ」

少女はそう言いながら、

摘んできた花を祭壇に飾っていく。

「大丈夫だよ」

エルードは手に持っていたカップの水を

一口飲んでから続ける。

「真の理は偽りに勝る。

司祭は聖なる光の代行者。

女神デューラへの信仰を持って真の理を説けば、

いつかきっと伝わるはず」

「真の理?」

「そう。永遠に変わることのない正しい理。

それらは聖書に書かれている。

迷える民に対する女神の導きと慈悲なんだ」

少女はしばらく佇んだあと、飾った花を整え、

水の入った樽に赤い布を被せた。

その姿を見て、彼女に何か悩みごとが

あるに違いないと察する。

そして自分が幼い頃、

聖堂のシスターが自分にしてくれたように、

優しく手を伸ばし少女の頭をなでた。

「……っ!?」

その瞬間、少女は目を丸くして

エルードを見上げる。

「どうしたんだい?」

エルードの質問に答えることなく、

少女はそのまま教会の外に走り去っていった。

異変が起きたのはその日の夕方のことーー

エルードが森で日光浴をして教会に戻ると、

教会の前にはたくさんの村人たちが

集まっていた。

村人たちは教会の窓の下に

木の枝で作った人形を、

窓の上には蝋燭を置いて、

何かの儀式を始めるようだった。

日が沈むにつれ蝋燭の光が

木の人形の影をつくりだし、

その影はゆっくりと祭壇にいる

少女へと伸びていった。

生まれて初めて見る儀式に、

エルードは足がすくんでしまう。

(嫌な予感がする……)

村人たちは祭壇に向かって、

聞き覚えのある言葉で祈りを捧げていた。

司祭であるエルードだからこそ理解できるもの。

それは、聖書の言葉だった。

だが、ブライト王国では司祭のみが

聖書を読み解く資格を持っている。

なぜ、村人たちが……

ーー異端ーー

エルードの脳裏をよぎる。

祈りを捧げた村人たちは、

『感謝祭』の歌を歌い始める。

だが、生贄となっているのは子羊ではなく、

人間の女の子だった。

彼らが求めているのは聖なる光の導きではなく、

その下に潜んでいる影だったのだ。

「やめさせなければ!」

エルードはこの馬鹿げた儀式を阻止しようと、

すぐさま祭壇に駆け上がった。

だが、彼のことなど目もくれず、

村人たちは歌い続ける。

エルードは少女に忍び寄る影を踏みつけるも、

どんどん伸びていく。

助けるためにはこれしかない、と

少女の手を強引に掴み、

この場から逃げようとしたその時だった。

「いやあああああああああああああああ!!」

少女が身の毛がよだつほどの金切り声を上げ、

エルードの手を振りほどこうとする。

(なぜ……? この少女は、

生贄にされることを望んでいるのか? 

これではまるで、私が異端者のようではないか)

儀式を邪魔しているエルードを

祭壇から引きずり下ろしたいと思っているのに

村人たちは一向に動かない。

戦う勇気がないのだ。

だが、少女に忍び寄っていた影が、

動かない村人の1人にひっそりと入り込むと、

突然エルードに襲いかかり、

地面に押さえつけた。

すると、祭壇のそばにいた夫人が

机に置かれている儀式用のナイフを手に取り、

エルードめがけて勢いよく振りかざした。

その瞬間ーー

エルードに聖なる光が見えたのだった。

今までどんなに努力しても、

呼応しなかった聖なる光がこの時、

エルードを優しく包み込んだ。

時が止まったように静まり返ると、

聖なる光は審判を下し、裁きを与えた。

エルードは聖なる光の代行者である

聖堂の司祭として、

慈悲と憐憫の心で懺悔を受け入れ、

赦すことしか教えられていない。

聖なる光の裁きについて、

彼は何も知らなかった。

それゆえ、目の前で起こっている制裁に

なす術がなかったのだった。

エルードは呆然と立ち尽くしながら、

光の裁きを見つめる。

(これは……私がしていることなのか? 

私と繋がった聖なる光が下しているのか?)

彼は村人に裁きを与えるつもりは毛頭なく、

ただ少女を救いたかっただけだった。

だが、振り返ると、

自分が守ろうとしている少女が

自身の『神』に祈りを捧げている。

そして、ためらいなく自分の心臓に

ナイフを突き刺したのだ。

エルードの邪魔が入らなかったら、

村人たちが見守る中

祭壇で行われていた光景だったのだろう。

ブライト教会の特務機構『異端裁判所』の

制裁者たちがモルジにたどり着くと、

息絶えた少女を抱え、祭壇の前に

うずくまっているエルードの姿があった。

燭台の蝋燭はとうに燃え尽き、

月の光によってできた木の人形の影は、

村人たちの死体を包み隠していた。

その後の調査によると、

村人たちは全員異端の信者だった。

エルードがブライト大聖堂に

連れ戻された時は、すでに深夜。

迎えてくれたのは、聖堂図書館の守衛である、

年老いたプリースト1人だけだった。

老人は聖堂内にある聖像の前にやってきて、

白い蝋燭に火をつける。

そして、顔面蒼白で帰ってきたエルードに

語りかけた。

「聖なる光がお前を見守ってくれるじゃろう。

真の理は偽りに勝り、愛は恨みに勝り。

聖なる光はあらゆる敵勢力よりも強力なのじゃ。

その力をもって、わしたちは世界を

迫害する者たちから守るのじゃ。

そうすれば道も開けるじゃろう」

エルードは聖像に頭を下げ、

両手を合わせて祈りを捧げようとするが、

どうしても祈りの言葉を

口にすることができなかった。

「うっ……うううっ」

手で顔を覆い泣き崩れるエルードの代わりに

老人は蝋燭を祭壇に置き、聖堂を出ていった。

しかし、老人は今エルードを1人にさせるのは

間違っているのではないかと考える。

老人の足は自然と止まり、

聖堂の扉の前まで戻ってくる。

やはり満身創痍なエルードを

放っておくことができず、

落ち着くまで扉の前で待つことにしたのだった。

しばらくすると、

エルードの懺悔の声が聞こえてきた。

「……私は聖なる光であの村人たちに

救いの手を差し出そうとしました。

しかし、少女の体が冷え切るまで、

聖なる光を感じることができませんでした。

慈悲なる母よ、偉大なる神よ、

教えてください……」

老人はため息をつき、

エルードに幼い頃聞かせた森の中の狼と

鹿の話を扉の前で始めた。

ーー人は鹿をかわいそうに思い狼を殺した。

しかし天敵がなくなった鹿は、

その数を増やしていき……

やがて森に災難をもたらしたーー

この世には絶対な悪は存在しない。

ただそれぞれの役割が異なるという、

神の教えであるこの物語も

今この状態で聞くとまた違う教えに聞こえる。

自分の役割は森の中の鹿だったのか、

それとも狼だったのか……

翌日エルードは聖像の前で祈りを捧げていた。

あの村での出来事は、

たった4日間しかいなかったけれど、

彼にとってとても長く感じただろう。

聖なる光がエルードに何を語りかけたのか

誰も知らない。

だが、彼を包み込んだ聖なる光は

ほかの誰よりも『まばゆい』もので、

王都の外にいる者までもが

その光を感じ取れるほどだったという。

エルードの神に対する信仰心と

生涯を神に捧げるという信条は

昔も今も変わっていない。

ただ、これまでのように各地方に赴き、

デューラの教えを広めていた過去とは違い、

今はブライト教会一の特務機構である

『異端裁判所』で使命を果たしている。

異端者を排除するその機関は、

かつてない優秀な『断罪の神父』を

迎えることとなった。

エルードは人間の感情を振り払うため、

黄金のマスクで顔を隠し、

より完璧な制裁と聖なる光の審判の代行者として

生まれ変わったのだ。

「聖なる光よ。

光を嫌い闇を愛する者に裁きを与えたまえ」

 

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