カシウス

ページ名:カシウス

カシウス【歴史の探求者】

概要

呼称 歴史の探求者
陣営 竜族

ストーリー

家族が面会に来たのは、カシウスが監禁されてから数えきれない日数が経ったあとだった。

いつも通りの沈黙は、ドアの外で吐かれるため息を際立たせている。

カシウスの目にようやく少しの光が宿ったのは、家族が仕切り越しに、カシウスが求めていた紙とペンを手渡したときだった。

代々カシウスの一族は、史官として竜族の歴史を記録する役目を担っていた。

古来、一族の中で最も優秀な者は長老院の書記を務め、長老会議の決定を正確に記録する役割も任されていたが、カシウスはその両方をこなすことができる当代きってのエリートであった。

彼は、この職務を長年忠実に担ってきた一族の一員であることを誇りに思っていた。

また志も高く、一族、ひいては竜族全体で最も優秀な史官になることを目指していた。

しかしある日、そんな状況を一変させる事実をカシウスは知ることになる。

ブラッドリッジ部族の長老シルヴィンは竜族の長老会議を招集し、カシウスも書記としてその会議に参加することとなった。

大規模なカタストロフの侵攻とエスペリア全域に及ぶ大災害に直面したシルヴィンは、カタストロフに対抗するために、人間に協力を依頼し、その見返りとしてドラゴンクリスタルを与えることを決議にかけた。

決議案は可決されたものの、長老たちの多くが苦渋の表情を浮かべていることにカシウスは困惑した。

彼が巨竜の碑林にも記されていない事実を知ることになったのはそのときだった。

竜族が人間の奴隷として従属させられていたことをシルヴィンに聞かされたのだ。

カシウスは理解した。

長老たちは人間による裏切りを恐れているのだ。

その時のことを思い出すたびに、カシウスの一族としての誇りはズタズタに引き裂かれた。

竜族の屈辱的な過去にショックを受けるとともに、一族が心血を注いで編纂してきた歴史がまったく真実ではなかったことに、悲しさと憤りを覚えた。

家に戻ったカシウスは年長者に確認を求めるも、これは一族が代々隠し通してきた『秘密』であることを明かされた。

カシウスの史官としての信念は瞬時に崩壊し、生涯をかけて研究してきた歴史が捏造であったことを許せなかった。

彼は真実を解明したうえで、改訂した歴史書を公にすることを決意した。

しかし、カシウスの考えは一族の年長者に猛反発を受けた。

竜族の栄光を汚すことは許されない、屈辱の歴史は岩壁の間に封印しておくべきというのが彼らの意見だった。

カシウスはその懸念に理解を示しつつ、自らのキャリアを葬り去ってでも、みんなに真実を伝えるのだという彼の決意は揺るがなかった。

それでも年長者を説得することはできず、真の歴史が公表されることを恐れた彼らによって、カシウスは監禁されてしまう。

年長者たちは、カシウスは誤って間違った道に入ってしまっただけで、数日監禁すれば正しい道に戻るだろうと考えていた。

一族が何世代にもわたって築き上げてきた栄誉と地位を台無しにすることがどれほどのことか、時間を与えれば理解してくれるはずだと。

しかし、そんな年長者たちの考えとは裏腹に、カシウスはハンガーストライキをもって妥協することを拒否した。

かつての目の輝きは完全に失われ、日に日にやつれていく姿は家族を大いに苦しめた。

家族があらゆる手を使って説得を試みても、カシウスはまったく聞く耳を持たなかった。

長い時間を経て、カシウスはようやく口を開き、家族に紙とペンを求めた。

それはシルヴィンに手紙を書くためであり、もしシルヴィンの理解を得られないようであれば、あらゆる罰も受け入れ、屈辱の歴史の改訂と公表を諦めるつもりだと伝えた。

家族の年長者たちは、シルヴィンの理解など得られるはずもなく、カシウスの計画を断念させられると考え、その要求を認めた。

シルヴィンがカシウスの監禁室を訪れたのは、それから数カ月後のことだった。

すっかり痩せ細りながらも、毅然とした態度を崩さない若い史官を見たシルヴィンは、哀れみとともに驚きを感じた。

それから二人は長い時間をかけて語り合い、シルヴィンはカシウスの考えに同意した。

エスペリア各地を訪れたことで、過去の過ちを繰り返さないためには歴史に学ぶしかないことをシルヴィンは知っていた。

そしてカシウスを監禁室から出し、歴史書の改訂を支援すると約束した。

仕事に戻ったカシウスは、睡眠時間を削って作業を続けた。

この歴史が公になれば、竜の島に大騒動を引き起こすことを彼は予期していた。

恐らく数えきれないほどの罵声を浴びるだろう。

ほとんどの竜族に受け入れられないかもしれない。

しかし、真の歴史が復元され、みんなが真実を知るとき、それは竜族の新たな栄光の始まりになると信じていた。

カシウスは、これからも真実を追い求め続けるだろう。

そして、樹木が刻む年輪のように、彼は真の歴史を書に刻んでいくのだ。

 

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