ジャンヌ・ダルク【曙光の守護者】
概要
呼称 | 曙光の守護者 |
陣営 | ボイドビジター |
ストーリー
広場では……
燃え盛る炎がジャンヌ・ダルクを
包み込んでいる。
彼女は意識を失う前に、
幼い頃に住んでいた場所を思い浮かべた。
ーージャンヌ・ダルクは、
戦火に巻き込まれた故郷を救うべく
立ち上がった。
そしてわずか数年で、
片田舎の農村の娘から救国の英雄へと
変わったのだった。
彼女のおかげで、
王太子は王位に就くことができた。
戴冠後、王は次々と領土を奪還し、
100年にわたった戦争を終結させる。
だが彼女は、
国の勝利を目にすることはなかった。
ジャンヌ・ダルクは戦争が終わる前に
捕らえられ、異端者の烙印を押される。
そして、異端審問で死刑判決を受け、
炎に焼かれてしまったのだ。
まさか後世で無罪となり、
人々に讃えられ英雄化されているなど、
彼女は知る由もない。
ーー故郷を思い出しながら、
ジャンヌ・ダルクは炎に焼かれ、
灰となって消えていく……はずだった。
目を覚ましたのだ。
あたりを見渡すと、
見知らぬ景色が広がっている。
先程まで彼女を囲んでいた民衆の姿はなく、
のどかな田舎道に素朴な家が並んでいた。
(これは奇跡なのか?)
そう思った直後、
やんちゃな子どもたちがぶつかってきた。
驚き振り返ると、
近くの家の窓から顔を出した若い母親が、
彼女に謝っている。
すると、ぶつかってきた子どもたちも、
足をとめてジャンヌ・ダルクを見上げて、
おずおずと謝る。
その姿に思わず笑ってしまった彼女は、
手を伸ばして優しく子どもたちの頭を
撫でた。
駆け出していく子どもたちの後ろ姿を
眺めながら、見知らぬ世界へと
やってきてしまった自身のことを
考え始めた。
今まで国を救うために戦ってきたため、
平和な風景を前にすると、
自身がどうすべきかわからなくなる。
彼女はあてもなく町を歩いた。
すると、小さな聖堂が見えてきた。
きっと彼女が信じている神とは
異なるはず……。
しばらく入ることをためらっていたが、
ジャンヌ・ダルクは聖堂の中に入り、
修道士たちの祈りを聞いた。
どうやら、ここエスペリアという場所では、
デューラという女神を祀っているようだ。
(ここの女神は、異邦人である私にも
加護を与えてくれるのだろうか……)
聖堂の中にある像を見上げる。
女神に祈りを捧げなかったせいなのか、
彼女は聖なる光の存在を
感じることはできなかった。
平和な町は
、ジャンヌ・ダルクを受け入れてくれた。
エスペリアでは、
彼女のようにほかの宇宙からやってきた
異世界の者を
『ボイドビジター』と呼ぶらしい。
ジャンヌ・ダルクは町の人々と同じように、
普通の19歳の人間として働き、
生活していったのだった。
持っていた剣を敵に奪い取られてしまい、
残念な気持ちになったが、
この町では剣よりも農具のほうが
ずっと役立っているため、
その気持ちはいつの間にか消えていた。
ただ時折、厩舎を通り過ぎる時に、
聞き慣れた馬の嘶きが聞こえたり、
鍛冶屋を通り過ぎる時に、
ハンマーで鉄を叩く音が聞こえたりすると、
その日の夜は戦場で激戦を
繰り広げる夢を見るのだった。
(私の故郷は今、
どうなっているのだろうか?
国は勝利したのだろうか?)
夢を見るたびに故郷に思いを馳せるが、
異なる世界に来てしまっては
何もすることができない。
しばらくして、ジャンヌ・ダルクは
考えても仕方のないことだと
頭の隅に追いやることにした。
蒸し暑い夏の夕暮れ時ーー
ジャンヌ・ダルクは、
バルコニーに干してあった
鈴口オーキッドを籠に入れていた。
この花でお茶を淹れると、
とても美味しく気に入っている。
何よりも故郷で咲いていたアイリスに
似ていることから、
ジャンヌ・ダルクはこの花を好んでいた。
そんな時、遠くの方でロバの鈴の音が
激しく鳴っているのが聞こえた。
音がする方を見ると、
数人の行商人が町に駆け込んできて、
カタストロフがこちらに向かっていると
大声で叫んでいたのだ。
ロバの背に乗っている行商人たちは、
体中、血と泥まみれだった。
通常なら、商売道具を乗せた
荷車を引いているが、
命を守るためどこかに置いてきたのだろう。
荷車はなかった。
ロバたちもパニックに陥り、
主人である行商人たちを振り落として、
一目散に逃げていく。
ジャンヌ・ダルクが呆気にとられていると、
神父が聖堂から若い修道士たちを連れて、
傷ついた行商人たちの手当をしたり、
安全な場所に運んだりした。
そして次の瞬間、
町の中心の広場にある大きな鐘が
鳴り響いたのだ。
鐘の音を聞いた町の人々たちは、
みな松明を持って通りに出る。
誰もが勇ましい顔をしていた。
老人が子どもたちに家に入るよう叫ぶと、
神父は戦うために聖なる光を
呼び寄せる祈りを唱え始めた。
多くの若者たちは手に斧や鎌、鍬などの
農具を持って立ち上がる。
戦闘訓練をあまり受けていないように
見えるが、
カタストロフの襲撃の危機に直面したのは
初めてではない様子だった。
平和そうに見えていたこの町も、
実はカタストロフたちの魔の手に
脅かされていたのだ。
ジャンヌ・ダルクは、ためらうことなく
若者たちの列に合流して、
町の入り口へと向かっていった。
人混みの中で、あまり滑らかではない
ロングソードを手に取る。
慣れない感触に最初は戸惑っていたが、
ジャンヌ・ダルクはこれまで
数え切れない戦いに参戦してきたのだ。
どんな剣であろうとも、戦える。
彼女は戦い方を忘れてはいなかった。
ふと周囲を見渡すと、懐かしさを感じた。
住民たちの敵に向かう顔つきが、
かつての仲間たちと同じだったのだ。
彼らは戦う前に、
お互い故郷のことを語り合っていた。
広大な麦畑の話や、のんびりした羊の話、
オリーブの瓶漬けの話、
松の屋根に柔らかく降る雪の話、
岩の砥石がきしむ話など……
だが、いざ戦いが始まると、
迷わず戦場へ赴くのだ。
彼らのことを思い出し、
ジャンヌ・ダルクはわずかに微笑む。
そして、剣を構えてカタストロフに
突進していった。
カタストロフとの戦いは
今回が初めてだったが、
国を救おうとする信念は変わらなかった。
それが故郷であれ、
今いるエスペリアであれ……
数日後ーー
ジャンヌ・ダルクは王都に向かった。
神父の話によると、
王都に行けば他の『ボイドビジター』と
会うことができるらしい。
彼らに会えば、空間の裂け目について
いろいろと話が聞けるかもしれない。
彼女は国のために戦うという使命を
忘れてはいなかった。
だが国へ戻る前に、やるべきことがある。
ジャンヌ・ダルクはエスペリアのために
戦うと決意したのだったーー
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