ダヴィンチ

ページ名:ダヴィンチ

ダヴィンチ【夢を創る芸術家】

概要

呼称 夢を創る芸術家
陣営 ボイドビジター

ストーリー

窓から差し込む光が、

だんだんとオレンジ色に染まっていき、

黄昏時がやってくる。

そよそよと心地よい風が入ってくる部屋には、

格調高い調度品や家具が置いてあった。

柔らかい風が、

机にあるスケッチブックをペラペラと

めくっていく。

ひとしきり風が吹き終わると、

ページをめくる音がとまった。

開いたページに描かれていたのは、

オーニソプターの設計図だった。

ダヴィンチは、自分が設計した

オーニソプターの絵を見つめながら、

赤ん坊の頃に見た夢に

思いを馳せるのだった……

 

揺りかごの中で、すやすやと眠っている

赤ん坊は夢を見ていた。

それは、奇妙な鳥が頭上をぐるぐると

旋回していたと思えば、

自分のところに舞い降りてきて、

黒い尾で何度も顔を撫でるという夢だった。

眠りから覚めた赤ん坊は、

両目をぱっちりと開けている。

ダヴィンチと呼ばれる赤ん坊は、

この夢が忘れられず、

ずっと心の中にあったという。

それからというもの、彼は空飛ぶ生き物に

すっかり魅了されてしまったのだった。

 

時が経ちーー

フィレンツェの街中で、1人の若い画家が

掌に乗っている小鳥を優しく撫でていた。

その画家の名前はダヴィンチ。

彼は絵の勉強の合間に、

ケージに入れられた鳥を購入し、

翼の構造を注意深く観察していたのだった。

ダヴィンチが鳥を乗せた手を掲げると、

その鳥は澄んだ空に優雅な孤を描いて

空高く羽ばたいていく。

その様子を見ながら、

ダヴィンチは羽根ペンを滑らせる。

紙の上に円弧を描き、

デザインの最後の仕上げに入った。

 

20代のレオナルド・ダヴィンチは、

絵を描くことに熟達していた。

彼のスケッチブックには、

コウモリや翼竜などがもつ膜状の翼に

よく似た翼を持つ鳥のようなものが

描かれていた。

彼はこれに『オーニソプター』と名付ける。

そして、精巧なミニチュア模型を作り、

空飛ぶ機械『オーニソプター』を発明した。

 

地中海の太陽の下で、

ダヴィンチは模型を空中に高く放り上げると、

翼の膜が空気をかき分け、音を立てた。

だが、オーニソプターは飛ぶことはなく、

激しく地面に叩きつけられる。

その鈍い音は、画家を落胆させたのだった。

 

テストフライトの失敗は、

これが初めてでもなく、最後でもない。

44歳になっても、ダヴィンチは空を

飛ぶことへの執着を手放せなかった。

彼はオーニソプターの残骸を拾い上げ、

失敗の原因を設計図に書き込んだ。

画家でもあり、科学者でもあるダヴィンチは、

類まれなる発想力と観察眼の持ち主だった。

それゆえ、設計し直した空飛ぶ機械が

再び作られるまで、そう長い時間は

かからなかった。

ダヴィンチの構想では、

オーニソプターは空高く飛び、

夕日を越えていくものだった……

 

窓から見える夕日がだんだんと沈んでいき、

燃えるような赤が部屋の中を染めていく。

ふと、空に目を向けると、

藍色の帳が降り始めていた。

67歳のダヴィンチの顔を夕日が照らし、

しわの陰影をより濃くしていった。

時というのは残酷なもので、

キャンバスに描かれている彼の顔は、

いつまでも若々しい。

だが、実際にはどこからどう見ても、

年老いたただ1人の男性だった。

柔らかいベッドにその老体をそっと預け、

机の上のスケッチに目をやる。

ヘリコプター、全方位に大砲を配置した戦車、

旋回する橋……

手書きのスケッチは、

どれも老人の繊細な想像力の賜物だが、

ほとんどは紙の上にしか残っていない。

その時代の素材、技術では、

実現には至らなかったのだ。

ダヴィンチはこれらのスケッチを封印し、

実現する時代の到来を待っていた……

 

ダヴィンチが最期を迎える時、

幼少期過ごした、あの揺りかごの中に

戻ったかのように感じた。

ふと、机にあるスケッチに視線を移すと、

夢で見た黒い尾の鳥がスケッチブックから

飛び出し、オーニソプターへと形を

変えていくではないか。

そして、ダヴィンチの鼻先をかすめてから

窓の外へと飛んでいき、夕日を越えていった。

ずっと思い描いていたものが、

今、目の前で実現している。

老人の夢を叶えたオーニソプターは、

果てしない空へと消えていったのだった……

 

ダヴィンチが目を覚ますと、

そこは自室ではなく、見たこともない

生き物がたくさんいる世界だった。

そう、彼はエスペリアの世界へと

やってきたのだ。

鳥でもない、コウモリでもない生物が

空を飛び交っている。

いつもの癖で、ついついペンを取ろうと

手を伸ばそうとするも、

その先には何もなかった。

ペンもスケッチブックも、

身の回りにあったものが何もかも

見当たらなかったのだ。

残念に思ったその瞬間、奇跡が起きる。

ダヴィンチの体から不思議な力が湧き出て、

気づくと手に筆が握られていたのだ。

ダヴィンチは子供のように無邪気な笑顔を

浮かべる。

この世界には、きっと無限の可能性が

秘められているのだと感じたからだ。

ダヴィンチは少年のように

キラキラとした目で異世界の空を見つめ、

心を弾ませながら未知の世界へと

旅立っていったのだったーー

 

「わしは見て、考え、創る。

奇跡とはこうして誕生するのじゃ」

 

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