エレンガーナ【千の顔を持つ伯爵】
概要
呼称 | 千の顔を持つ伯爵 |
陣営 | カタストロフ |
外見年齢 | 45歳 |
身長 | 180㎝ |
趣味 |
・読書 ・権力遊戯 ・犬の散歩 |
好きなもの |
・珍しい古書籍 ・賢い者 |
嫌いなもの | 愚かな者 |
現在地 | ケイリン城 |
現在の身分 | ケイリン城の名誉伯爵 |
ストーリー
4月24日 晴れ時々曇り
ブライト王国の王都サバンナに送り込んだ
密偵からの情報によると、
ある豪商が名誉伯爵の肩書と引き換えに
大量の物資を王国に寄付したようで、
1ヶ月後には正式に爵位を授与されるという。
それと同時に、
王国から屋敷を与えられるそうだ。
その場所は……ケイリン城の城下町内だった。
エレンガーナーー
彼の話は聞いたことがある。
噂では各地を歩き回り、
いろんな種族を相手に商売する行商だそうだ。
そして長年の旅のおかげで、
彼は豊富な知識と莫大な富を得ることができた。
成功した商人は口が達者であることが多い。
エレンガーナもその一人で、
狡猾なカタストロフも彼の商品を
買っているという噂もある。
名誉伯爵という肩書きは名ばかりだ。
だが、爵位を手に入れることで
貴族とより交流できることは確かである。
この町の安定のためにも、
ケイリン城の城主として、一刻も早く
彼の目的を突き止めなければならない。
5月31日 曇り
彼の爵位授与式から1週間が過ぎ、
長い間放置されていた、
エレンガーナに与える屋敷も一新されていた。
今日、私は城主として
ここを訪れることになっていたのだ。
「城主様、よくきてくれたのう」
1本の杖が応接間の側面にある
ドアの影から見えた。
その持ち主は上品で蒼白な手をした中年男性、
この屋敷の主人だった。
だが、おかしい。
まるで闇の中から出てきたように、
足音が聞こえなかったのだ。
私はぐるぐると思考をしていたが、
コツコツと地面を叩く杖の音が聞こえて、
その思考を手放した。
伯爵は噂通りの人で、博識で話し上手だった。
厳格なサバンナのマナー講師が見ても、
その優雅な振る舞いと慣れた礼儀作法には
非の打ち所がなかったという。
会話中、私は何度か探りを入れていた。
すると不思議なことに、
彼が語る自身の経験談は、
密偵が集めた情報とぴったり一致していたのだ。
私は帰り際、
「聖なる光の加護がありますように」
と、祝福を贈る。
この言葉は、たとえ信仰心がなくても、
貴族であるなら誰でも言う挨拶だ。
だが、その直後、
伯爵の表情は一瞬固まったように見えた。
すぐ優しい笑顔に戻ったが、
私はその瞬間を見逃さなかった。
もしかしたら、
これは1つの突破口となるかもしれない。
8月16日 雨
エレンガーナがケイリン城の
城下町にやってきてから3ヶ月あまり経った。
彼はすっかり社交界に馴染んでいるようだった。
伯爵がどれほど知恵と寛大な心を持っているか、
貴族たちが語るのを何度も聞いたことがある。
うまい話とお世辞にのせられた
愚かな貴族たちはこの新参貴族を
すっかり信用しているようだ。
エレンガーナは見た目とは違うと
私は確信を持ち始める。
特に、彼の周辺に送り込んだ長年育ててきた
2人の密偵を失ってからは、
ますますそう思うようになった。
この3ヶ月間、私たちは表向きでは
城主と一貴族としての関係だったが、
密かに何度か会っていたのだ。
奴が何者であるかはまだ不明だ。
だが、密会を繰り返すごとに、
少しずつ正体が見えてきた。
とある晩餐会の後ーー
伯爵が何気ない会話の中で
こう言ったのを覚えている。
「人間とは仮面を被って生きる種じゃ。
特に貴族がそれに当てはまるわい。
子供は噓泣きをよくするじゃろう。
嘘泣きをすると好きなおもちゃを
買ってもらえるとわかっているからじゃ。
一度、偽りの甘さを覚えると、
大人になっても繰り返す。
次第に分厚い仮面を被るようになるんじゃよ」
では、伯爵。
お前の仮面の下はどんな顔をしているのだ?
8月23日 晴れ
エレンガーナが突然やって来て、
私と手を組みたいと言ってきた。
誠意の証として、
私にある秘密を教えてくれるという。
応接間に入った伯爵は
軽くマントをはためかせて、
突然右手で自分の顔を覆った。
やせ細った指の間から見える彼の目が
みるみるうちに真っ赤になっていく。
額からはカタストロフの典型的な特徴である
螺旋状の角が生え始めたのだ。
「あまり驚かないようじゃな、人間よ」
私を見つめるエレンガーナは
どこか納得している様子だった。
顔を覆っていた手をはずすと、
カタストロフの姿は跡形もなく消え去った。
「お前のような統治者にとっては、
疑うことは本能的なことということかのう」
確かに、ケイリン城の城主となってから、
いかなる『外部の者』に対して
常に疑念と警戒心を抱いている。
伯爵の正体について様々な憶測をしていて、
カタストロフはそのうちの1つだった。
「互いに賢い取引をするのはどうじゃ?」
伯爵は不気味な笑みを浮かべていた。
伯爵が去ったあと、私は護衛を呼び出した。
念のため応接間にある隠し扉の奥に
配置させていたのだ。
そして、私は彼らに聞いた。
伯爵がマントをはためかせたあと、
何が見えたのかを……。
護衛たちはわたしの問いに戸惑いながらも、
普通に私と伯爵2人が話していたと答える。
11月25日 晴れ
エレンガーナが城に来てからというもの、
ケイリン城は不穏な空気に包まれていたが、
ようやくいつもの穏やかさを取り戻した。
エレンガーナと手を組むようになってからは、
密偵が入手しづらい貴族たちの隠された秘密が
1つずつ文書となって私の机に
届くようになった。
今やこの町の不安要素は伯爵1人のみ。
幸い伯爵はカタストロフのように
破壊的ではない。
彼の言葉を借りれば……。
「求めているのは、
人間の偽装する能力のみじゃ。
結局、人間はあらゆる種族の中で
最も偽善的なんじゃよ」
私はカタストロフの言葉など信じていない。
きっと何か企みがあるに決まっているからだ。
だが、いまのところエレンガーナとの利害は
一致している。
当分の間はこの関係は続くだろう。
信頼関係がないことはエレンガーナも
承知の上だ。
私がやるべきことは、
一部の密書をエレンガーナに手渡し、
彼がカタストロフであることを
秘密にしておくことだった。
この町の安全が保証されるなら
危険なカタストロフとの取引も許容範囲内だ。
今日の午前中、
私たち2人はとあるアートサロンに出席した。
そして別れ際、お互いに敬意を表した。
「聖なる光の加護がありますように」
賢くて博識、神秘的でデンジャラスーー
「しーっ! 陰口を叩いてはいけない。
いつの間にか背後から現れるかも」
ドリーのコーナー
エレンガーナはカタストロフの中でも特別で、彼は生まれた時から高い学習力と理解力を持っていた。
数千年以来、彼は絶え間なく周囲の知識を蓄積し、今に至る。
彼にとって暴力は下等生物による野蛮な行為であり、ひどく嫌っていた。
エレンガーナにとっての崇高な力とは知識によって広がる世界に対する認識であり、そのため、彼は他のカタストロフとほとんど関わることはなく、長きに渡り一人で様々な身分を装って、エスペリアの王国、部族などの権力が集う地域を歩き渡った。
エレンガーナは神々とその神々が作り出した生物との関係や複雑に絡み合う人間性に興味を持っており、中でも特に権力の誕生と変革が長い歴史の中で繰り返されていくことに深い興味を持っていた。
彼は様々な権力の間を行き来し、自分の知恵を利用して権謀、そして人間性を弄び、最高級の芸術だと自称した。
ケイリン城はエレンガーナが最も長い間とどまった場所であった。
それまで彼は王国の首都にとどまっていたが、平凡な国王は先代の国王ほどエレンガーナの興味を惹かせることはできなかった。
しかしケイリン城の領主はなかなかの切れ者だった。
ライスト親王は優秀な国王が備えるべき智謀、思いやり、眼力、野心などをすべて持っていたが、自分よりも平凡である兄に仕えていた。
この人間の親王はエレンガーナがカタストロフであることを知ると、はじめは驚いたが、すぐに彼の力を利用することを思いついた。
ケイリン城の繁栄と帝国の安定という目的のためなら、ライスト親王はカタストロフとの取引もいとわなかった。
もちろん、これは後にエレンガーナを十分に理解した上での決断だった。
ライスト親王は数千年に渡り唯一エレンガーナに認められた人間であり、そんなライスト親王に対して、エレンガーナは最大限の支援をした。
必要なものはすべて与えよう、そしてお前がどこまでやれるのか見届けてやろう。
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