aklib_story_局部壊死_6-9_別の角度から_戦闘前

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局部壊死_6-9_別の角度から_戦闘前

時は戻って現在。ナインという女性が龍門を去る道を選んだことにより、レユニオンはまた後ろ盾を見つけたようだ。そしてチェンは黒装束の部隊をスノーデビル小隊にぶつけることを決めた。


[チェン] 行くぞ。

[近衛局隊員] ですが我々は、ここの地形構造に詳しくはありません。感染者が……我々を目標に動けばどうなるか。

[チェン] 安心しろ、私はこの場所には詳しい。私の指揮に従えば問題ない。

[近衛局隊員] 承知いたしました!

[近衛局隊員] チェン隊長、悪い報せです。各所からの報告によると、レユニオンの部隊がまた秩序を取り戻しているとのことです。まるで新しい指揮官を得たように……!

[近衛局隊員] しかも……既存の通信チャンネルに暗号化が加えられたようで、通信を傍受することができなくなりました!

[チェン] ……まさかスラムの部隊と合流したのか?

[チェン] いや、それはあり得ない。ロドスからはスラムの処理は終わったと聞いている。だからこそ我々は、内と外からの挟撃を受けずに済んでいるのだろう。

[チェン] 変だな……。

[スワイヤー] チェン、ちょっと——

[チェン] 通信か?

[チェン] 悪いが「お嬢様」、向こうで待っていてくれ。

[スワイヤー] あんたね、なんでいつもあたしが用があるってときに限って用事ができるのよ?

[スワイヤー] 諜報員に連絡がついたの?

[チェン] さっさと行け、今度魚団子を買ってやるから。

[スワイヤー] ったく、子供じゃないっての。

[チェン] ……チェンだ。

[???] 新たなレユニオンの部隊がスラム下層から来ている。

[???] スノーデビルと呼ばれる感染者の小隊だ。建造物を倒壊させ、都市の基礎部分を破壊する能力を持っているようだ。

[???] 気をつけろ。

[チェン] ……了解。

[チェン] Only-1、龍門所属の特殊部隊がスラムで活動中だ。我々では現状ヤツらを止めることは難しい、そちらも気をつけてくれ。

[???] わかった。

[チェン] ……Only-1、どうして今まで定期連絡を送らなかった?

[???] 考えていたんだ。

[???] 今はもうはっきりした、龍門はお前に任せよう。

[チェン] 何だと? 何が言いたい?

[???] 今の私は、もうこの場所にはいられない、ということだ。

[チェン] Only-1!

[???] 龍門の感染者たちを連れて、私はここを去る。近衛局では彼らを守れないし、この都市も彼らのことは気にも留めない。

[???] あるいは、お前がそう思っていても、この都市はお前の望み通りにはいかない。

[チェン] ナイン! 命令に従え!

[ナイン] ……三年前のあの時から、近衛局はもう私の居場所でなくなった。

[ナイン] そもそも、元は私がお前に命令する立場だったのだがな。

[チェン] ナイン……!

[ナイン] お前が言った特殊部隊とやらは、それらしきものをもう目にしたかもしれん。

[ナイン] やはり私は龍門を美化しすぎていたようだ。さらばだ、チェン。

[ナイン] それと、排水システムは調べるな。

[チェン] ……。

[チェン] 聞こえていたのか?

[スワイヤー] ええ、確かにデカい声だったわね、この街中に響いてたわよ。

[チェン] だとしても、お前の大声にはかなわんさ。

[スワイヤー] ちょっとチェン、こっちに来て。

[チェン] ……。

[スワイヤー] 座って。

[チェン] ミス・スワイヤーともあろう人間が自らを顧みず、スカートが汚れることもいとわずこんな道端に座り込むのか?

[スワイヤー] そんなのどうでもいいわよ! って、あたしがいつそんなことを気にしたのよ!

[スワイヤー] ……あの下水道のネズミにもう一度電話しようと思って。

[スワイヤー] スラムのことはよく知らないけど、あの特殊部隊はきっと恐ろしいことをやってるに違いないわ。

[チェン] お前はスラムのリンに会ったことはあるのか?

[スワイヤー] あるわ。穏やかで親切な老人って感じで、お祖父様よりもずっと良い人だったわ。

[チェン] ……だがあれは「鼠王」だ。

[スワイヤー] あの人たちはみんなそうでしょ。でもあの人は、本当に良い人よ。

[スワイヤー] ただユーシャがあんな風になるなんて思わなかったわ。昔は内気で臆病な子だったのに。いつもあんたの後ろに隠れてたっけ。

[チェン] 私は彼女が変わったとは思わない。彼女はただ……責任を背負ったのだろう。それも、本来は負わされるべきではなかったものをな。

[スワイヤー] まぁアンタがあの子にそんなことを言ってあげたところで、もうどうしようもないでしょ。あたしたちの尻尾にはもう火が点いてるんだから。

[チェン] 彼女と父親のこと、私も詳しくは知らない。ただ、彼女はそんな冷たい人間ではないはずだ。

[スワイヤー] だから電話で確かめるんでしょ。

[チェン] ……。

[チェン] 先程の情報が役に立つかもしれん。

[スワイヤー] 情報って?

[チェン] 特殊能力を持ったレユニオンの小隊がスラムに現れた。彼らが元々スラムにいたレユニオンの指揮を執っているようだ。

[チェン] この情報は私だけが知っている。お前に話した今、我々二人だけの情報ということだ。

[スワイヤー] それでどうするつもり?

[チェン] 黒装束の奴らをそれに引きつける。

[チェン] 外で近衛局と共に感染者の変異体を始末している者たち以外に、多くの特殊部隊が我々と同時にスラムに突入しているはずだ。

[チェン] だが我々はまだ特殊部隊の戦力を把握できていないし、それを抑止することもできない。これから奴らが何をしでかすか分かったものじゃない。

[チェン] そこでお前にリン・ユーシャを通して、奴らをあのレユニオン小隊に引きつけてもらおうというわけさ。

[スワイヤー] 暗躍する特殊部隊を無理やり表舞台に立たせるってわけ? 近衛局のメンバー全員にその存在を知らしめるつもり?

[チェン] ああ、全ての近衛局のメンバーに。更に言えば、ロドスにもだ。

[スワイヤー] いつの間にロドスをそんなに信用するようになったの?

[チェン] 彼らは私が見てきた何よりも揺るぎない目標を持っている集団だ。近衛局よりも誠実と言っても良いほどにな。

[チェン] それに我々には、もう信用できる者など殆ど残っていないからな。

[スワイヤー] これはまた度胸のあることね。

[チェン] 龍門人はリンなど知らないだろうし、お前の祖父のことを知る者も少ない。そして、ウェイ・イェンウがどんな人物なのかもあまり理解していない。その下にある商会となればなおさら誰も知らない。

[チェン] 今の龍門人は近衛局しか信じない。本気で近衛局を抹消し、ただの地方警察とすげ替えるというリスクを犯す度胸など、彼らにはないだろう。

[チェン] そこにさらに外の者が加われば……分銅で重くなりすぎた天秤の傾きは、もう誰にも覆すことはできないだろう。

[スワイヤー] あんたもクビになるわよ。

[チェン] それも悪くない。

[スワイヤー] じゃあ気持ちよく最後の仕事を終わらせてちょうだい! 今度から巡回ルートにスラムも含めてもらうことにするわ。

[チェン] リンは受け入れるだろうか?

[スワイヤー] 今回スラムを守りきれさえすれば、あの人だって絶対に断ったりはしないはずよ。

[チェン] ところで……。

[スワイヤー] 何よ?

[チェン] 我々に客人が三名来ていることは聞いているか?

[ユーシャ] ……。

[ユーシャ] なに?

[スワイヤー] ネズ公、一つ情報を教えるわ。あたしたちじゃ抑えきれないレユニオンの小隊がいる。あんたの部隊の助けが必要だわ。

[ユーシャ] ……そんな訳ないでしょ? 嘘をつかないで。

[スワイヤー] あたしがアンタに嘘なんてついたことある?

[ユーシャ] 同じ学校に進学するって言っておいて、ヴィクトリアに留学に行ったじゃない。

[スワイヤー] ……。

[スワイヤー] えーと、そういうこともあったわね。……ごめんなさい。それは本当に悪かったわ……。

[ユーシャ] 別にいい、もう気にしてないから。

[スワイヤー] ユーシャ、あんたのお父様は龍門のために色々やってきたわ。あたしたちはこの場所を失いたくないし、ここの住民たちもあたしたちを失うわけにはいかないでしょ。

[ユーシャ] 嘘つき。あなたがこんなところに来るっていうの?

[ユーシャ] あなたが、このスラムに来るとでもいうの?

[スワイヤー] ……私は……行けない。でもチェンが行くわ。

[ユーシャ] ……あら、来るって嘘をつくかと思ったけど、本当に嘘はつかないみたいね。でもあのチェンに、私と何の関係があるというの?

[スワイヤー] あんたのお父様は色んな原因で、非感染者と感染者の矛盾を直接に解決することは叶わないけど、チェンならできるわ。

[スワイヤー] チェンとあんたのお父様で一緒にスラムを立て直すの。

[スワイヤー] みんなスラムをもっとたくさんの人が生活できる場所に変えようと努力してるわ。スラムなんて名前も取っ払っちゃうくらいにね。

[スワイヤー] 考えてもみて……確かに龍門の一般市民でここに住んでる人は少ないけど、ここ数年の間に、彼らもよくこの場所を訪れるようになったでしょ?

[スワイヤー] もう少し時間が経てば、スラムなんてもういらなくなるわ。

[ユーシャ] どういうこと?

[スワイヤー] 感染者の問題はまだ解決できていないけど、でも……ここはもっと素晴らしい場所になるって、あたしは信じてるわ。

[スワイヤー] そう、ここは「スラム」なんかじゃなくて、ただの龍門ダウンタウン22区から29区になるの。

[スワイヤー] 元々この都市はたくさんの、様々な人を受け入れたからこそ、ここまで発展して来れた。

[スワイヤー] だから龍門は、もう誰一人失うわけにはいかないの。

[ユーシャ] ……くだらない。あなたもあのチェンみたいにくだらないことを言うようになったのね。

[スワイヤー] ユーシャ……。

[スワイヤー] ねぇ、こんな三流ドラマみたいな雰囲気にするつもりじゃなかったんだけど。

[ユーシャ] そのレユニオンの部隊はどこにいるの?

[スワイヤー] えっ、あれ?

[ユーシャ] 同じことは二度言わないわ。

[チェン] アーミヤ、もうスラムのエリアに入っているか?

[チェン] 今の状況はかなり特殊だ。君たちにもこのことを知る権利がある。

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