aklib_story_狂人号_SN-1_中央広場_戦闘前

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狂人号_SN-1_中央広場_戦闘前

広場で見つかった一匹の恐魚は死にゆきながらもこの大地を観察し続け、その視線はグランファーロの置かれた危機を感じさせた。そんな中、教会に勤めるエーギルの青年ジョディは、かつての知り合いだった深海教徒に出会い、彼の手当をする。


[エリジウム] Altyさん! 僕、あなたたちの大ファンなんです! 曲でいうと「Refactored Possession」が大好きで!

[Alty] あら、意外なチョイスね。あれはサルゴンのジャングルで思いつくままに作った曲だから、ちょっと前衛的すぎるかもって思ってたんだけど。

[Alty] それにしても、あの先生にあなたみたいな部下がいるなんてね。私はてっきり、みんな彼女と同じでつまらない人だと思ってたわ。

[エリジウム] あっはは……ところで、ほかの皆さんは?

[Alty] Danは海辺に走って行っちゃった。なんだか興奮してたみたい。それから、AyaとFrostは私たちの宿泊先を見に行ったわ。あそこ、かなりおんぼろだけど、結構面白そうだったわよ。

[エリジウム] 面白そう……ですか?

[Alty] ええ。で、あなた、ケルシーから私たちのことは聞いた?

[エリジウム] はい。ちょっとだけですけどね。なんでも、皆さんは、重要な何かを持っていらっしゃるとか?

[エリジウム] まあ、僕としては、あの有名なAUSにケルシー先生との個人的な付き合いがあるってところに一番驚きましたけどね……

[Alty] 正直言うと、驚いてるのは私もよ。

[Alty] だけど……こんなところで私たちのファンに会えるなんて、なんだかこの旅にひと味違う意味が足されたような気がして嬉しいわ。

[エリジウム] 僕のほうも、皆さんにお会いできるなんて、この一ヶ月耐えてきた甲斐があったってものですよ! あっ、ご迷惑じゃなければ、このポスターにもサインをいただいていいですかね……?

[Alty] ……ねえ、一つ聞きたいんだけど……あなたはどういう心境でイベリアへ戻ってきたの?

[エリジウム] んー。ちょっと複雑なので、言葉にするのは難しいですね。まさかAUSのAltyさんからそんなことを聞かれるとは思ってもみませんでしたし。

[Alty] じゃあ、質問を変えましょう。――私たちのバンド名は、気に入ってくれてる?

[エリジウム] もちろん! 気に入るどころか、愛してるくらいですよ!

[Alty] そう、ありがとう。

[Alty] そういえば、彼女はどこなの? きっと、ここで「私は何でも知っている」って顔して待っていて、そのくせ今回も何も教えてくれないんだろうなあと思ってたんだけど。

[エリジウム] 実は、僕もケルシー先生からの連絡を待ってるところなんです。あなたをあまり待たせずに済むといいんですけど……

[Alty] 早く来てもらいたいところね……もうすぐ潮が満ちるもの。

[男性町民] ……またよそ者か。近頃は外から来た連中ばかり見かけるが、まさか裁判所はそこまで油断しているのか?

[不気味な深海教徒] 確かに、どいつもこいつもよそ者ではあるが……彼女らは皆、海の匂いを纏っている。恐らく普通の人間ではないのだろうな。

[男性町民] エーギルか?

[不気味な深海教徒] 近いようにも感じるが、恐らくは違う。我らが兄弟たちは、彼女らに恐怖を抱いているようだしな。

[不気味な深海教徒] 何にせよ、急がねばなるまい。裁判所がこうまで油断を見せるのは珍しいことだ……これはあまりに怪しい動きではあるが、この海域での警戒の緩さが罠だとしても、もはや後戻りなどできはしない。

[不気味な深海教徒] 兄弟たちを助け、使者と大地の繋がりを取り戻すために、我らは先んじてイベリアの眼の掌握か破壊、どちらかを果たさなければならんのだ!

[不気味な深海教徒] ……とはいえ、罪のない者を無闇に殺めたくはない。お前たちはかつて、私の家族だったのだから。

[男性町民] ……

[不気味な深海教徒] ゆえにこそ、なるべく多くの人々を我々の元へ迎え入れよう。我らにはイベリアが約束するすべてのものよりはるかに優れ、この大地にすら勝る、より大いなる道が存在するのだ。

[男性町民] じゃあ、あいつら……じゃない、「我らが兄弟たち」が落ち着かない様子なのは、あのよそ者が原因なのか?

[不気味な深海教徒] その可能性は高いが、確実とは言い切れん。何よりも、我らは皆ひ弱で、兄弟たちもまた脆弱だ。軽はずみな行動は慎むべきだろう。さもなければ裁判所によって皆殺しにされかない。

[不気味な深海教徒] 我らは慎重であるべきだ。……そうでないと、陸地に数多の血が流されることになる。彼女はそれを好まない……我らも兄弟たちも、無駄死にする必要などないのだ。

[不気味な深海教徒] ……! 誰だ!?

[Alty] 思った通り。邪教徒、もしくは深海教徒……とにかく、あの連中がいるのね。ここ数年イベリアには来てなかったけど、道理でどこもかしこも嫌な匂いがしているわけだわ。

[Alty] んー……でも、また彼女に会えるのが楽しみにはなってきたわね。まだ来ないのかしら?

[エリジウム] はい。本人曰く、ケルシー先生は裁判所の監視下に置かれる可能性が高いそうで……

[Alty] 変な話ね。彼女はイベリアが勃興した当時から見ていたはずだし、上層部の人間に会う手段くらいあるはずじゃない? どうしてわざわざそんな効率の悪い方法を取る必要があったのかしら?

[エリジウム] あははっ、イベリアが勃興した当時って……そんなの、何百年も前のことじゃないですか。いくらケルシー先生でも……

[Alty] ふうん? その反応を見るに、彼女は長年の経験から処世術ってものを身につけているみたいね。……まあ、若い私にはよくわからないけど。

[エリジウム] はは、またまたご冗談を~……

[エリジウム] ……それで、ケルシー先生に何かあった時は、助けていただけるんですよね?

[Alty] ええ。……あなたが代わりにお願いしてくれるならね。

[Alty] だけどそう聞いてくるってことは、あなたたち――ええと、そう。ロドスにとって、彼女はそれだけ重要な人なのかしら?

[エリジウム] ……そうですね。実を言うと、先生がどうしてこんなリスクを冒してまでイベリアに足を運んだのか、僕にはよくわからないくらいなんです。

[エリジウム] でも、これは先生がご自分の責務を果たすためにしていることだと思いますから。それに、あの人がイベリアのために命をかけてくれるのなら、僕みたいなイベリア人はなおさら身体を張らないと。

[Alty] ……なるほどね。

[Alty] だったら、外に出て様子を見てきたほうがいいと思うわよ。まあ、ここで待ってれば誰かが駆けつけて知らせてくれるとは思うけど。

[エリジウム] えっ? それって一体――

[慌てる町民] 誰か! 誰か来てくれ! 広場に――広場に、怪物が!

[エリジウム] ――! Altyさんはここで待っていてください! 僕が行って確かめてきます!

[Alty] ……酷い匂いね。

[Alty] でも、Danの言っていた通りだわ。――頭の中の花々は逆流する滝に落ちて、鱗がメロディーに鳴り響き、茎は朗々と歌い出す……そんなイメージが湧き出してくる。

[Alty] この旅を終えたあとには、本当に素敵なアイデアが生まれるかもしれないわね。

[群がる民衆] あれは、何だ……?

[群がる民衆] ペドロさんの話通りじゃないか……! それに考えてみりゃ、昔俺の祖父さんの日記でも読んだことあるぞ! あれは海からきた怪物だ!

[群がる民衆] でもあれは……死んでるんじゃないか? さすがに、動いたりしないよな?

[エリジウム] すみません、通してくださ――

[エリジウム] ――

暗雲を突き破ったわずかな光が、灯台を模した彫刻に食い奪うように遮られ、その傷跡が影となって落ちていた。

そこにいたのは瀕死の恐魚だ。彫刻の影の下、たった一匹で静かに横たわっている。それは老い先短い老人が、木に寄りかかって眠っているかのようだった。

[瀕死の恐魚] ……

[瀕死の恐魚] …………

[エリジウム] ……もう、死んでるのかな……?

[慌てる町民] ペドロさんはデタラメ言ってたわけじゃなかったんだ! 本当に、怪物が……海から来た怪物が、グランファーロに現れたんだよ!

[慌てる町民] 俺はあれをどう呼ぶのかも知ってるぞ! だって俺たち、前に見たことがあるからな!

[エリジウム] (あれは、恐魚なのか……?)

[エリジウム] (だけど、どう見ても海岸は静まり返ってるし……そもそも、裁判所がこんな目立つものを放っとくわけが……)

ふと、エリジウムは怪物の生気を失った瞳に注意を引かれた。それは辺りが干からびた海であるかのように、陸地を見回している……そう見えたのだ。

しかし、それに息を呑みそうになる前に――エリジウムは、それの瞳がやはり死の淵を覗き込むかのように、微動だにしていないことに気が付いた。

[エリジウム] (こいつ……僕を見てるのかな? それとも、別の何かを……)

[群がる民衆] おい、誰かこの死体を始末してくれ!

[群がる民衆] 見てるだけでも吐き気がしてくるな……これが生きていたらどんなに恐ろしかったことか。やっぱり、人を食ったりするんだろうか?

[瀕死の恐魚] ……

恐魚は何も語らず、ただ、その奇怪な殻だけが、ぬらぬらと輝いている。

それの周囲には大勢の人が集まってきていた。恐れや疑問を抱きつつも、まるで花火でも見るかのように、すべてがそれに引き寄せられていくのだ。

――花火。そう、その死に様はどこか、自ら燃え尽きていく花火のようだった。それの身体には、ハンドキャノンの残した傷跡や弾痕は見当たらなかった。

死が恐魚を選んだのではなく、恐魚が死を選んだのだ。

[エリジウム] ……いや、こんなことゴチャゴチャ考えてる場合じゃない。

[エリジウム] もしこれが報告書にあった恐魚なら……深海教会は、確かに思ったより近くにいるみたいだな。

[群がる民衆] アマイアさん! 早く来て、これを見てくれませんか!

[アマイア] どうか落ち着いてください……

[慌てる町民] あの、アマイアさん……あの怪物って……海から来たんでしょうか……?

[アマイア] ……皆さんに嘘はつけませんね。仰る通り、これは……海から来た怪物です。

[慌てる町民] だ、だったら早くこのことを裁判所へ報告しましょう! ここに怪物が出た以上、懲罰軍に――いや、審問官に来てもらわないと!

[慌てる町民] でなけりゃ、俺たちはお終いですよ!

[ジョディ] ……? 何だか、みんな礼拝堂の方へ走って行ってるような……

[ティアゴ] おい、どうした? 何があったんだ?

[慌てる町民] 広場に怪物の死体が転がってるんですよ!

[ティアゴ] 怪物……? ペドロ爺さんが言ってたやつか?

[慌てる町民] そうなんです! だからみんなして、裁判所へトランスポーターを送ろうって大騒ぎで……!

[慌てる町民] だってあの怪物、そばで見た奴に聞いた話じゃ、牙は1メートル、目は八つもあるらし――ってちょっと、ティアゴさん!? どこ行くんですか!?

[ティアゴ] ジョディ、お前は先に戻って待ってろ! 何があろうと、外には出るんじゃないぞ!

[ジョディ] でも、おじさん――

[ジョディ] ――わ、わかったよ……

[慎重な町民] 面白半分で見に行くのはやめておこう。だって、怪物だなんて……どんな伝染病を持ってるやら、わかったもんじゃないからな。

[ジョディ] ……怪物、って……

[ジョディ] ……何がどうなっているんだろう……?

[ジョディ] ――! 誰ですか……?

[不気味な深海教徒] ……!

[ジョディ] っ、待ってください!

[不気味な深海教徒] クソッ、あのエーギル人め! 我らが同胞の命を、あれほど容易く奪うとは……!

[不気味な深海教徒] ……ぐっ、傷口が……

[ジョディ] あの、あなた……

[不気味な深海教徒] ……ジョディ、か?

[ジョディ] えっ、僕を知っているんですか? あなたは一体……?

[不気味な深海教徒] ……お前は私を知らないだろうし、知る必要もない。それに、私がお前を知っているのは、お前がエーギル人だからというだけのことだ。

[ジョディ] ……え、ええと……もしかして、け、怪我してるんじゃ……?

[不気味な深海教徒] ……ああ。それを聞くということは、手当でもしてくれるのか? 礼拝堂の介護士よ。

[ジョディ] そう……ですね……

[ジョディ] 手当てをすることはできますが、その代わりに、なぜ怪我をしたのかを教えてくれませんか?

[不気味な深海教徒] ……わかった。

[ジョディ] では、その辺りに座ってください。

[ジョディ] 少し我慢してくださいね。

[不気味な深海教徒] ……う、っ……

[ジョディ] 動いちゃダメですよ! 幸い、骨や内臓は無傷で済んだようですが……これは、何かで斬りつけられたとか……? しかも、木くずが皮膚に刺さっているのも見えますし……何があったんですか?

[不気味な深海教徒] エーギル人が、我が兄弟を殺めたんだ。私はそれに巻き込まれ、ここへ逃げ延びてきた。

[ジョディ] さ、殺人……!? この町で、ですか? だったら、早くティアゴおじさんに知らせないと――

[不気味な深海教徒] くくっ、ははは……ティアゴ町長にあのエーギルを止めることなどできんさ。皮肉なことに、奴を裁くことができるのは今となっては裁判所だけだ。

[ジョディ] で、でも、その人はあなたの家族を傷つけたんですよね……?

[不気味な深海教徒] 正確に言えば、我々が傷つけられているのはいつものことだ。無知や恐怖、そしてあの災厄から今日まで続く怒りによってな。……ありがとう。だいぶ良くなったよ。

[ジョディ] はい。……ところで、あなた……ファンさんですよね?

[不気味な深海教徒] まさか、私の顔を覚えていてくれたとはな。――ジョディ、一つ聞きたいんだが……お前は、あの海を見てみたいと思ったことはないか?

[ジョディ] 海……ですか? 前に、ティアゴおじさんが海岸へ連れていってくれたことならありますけど……

その日見た海は、黒々としていた。風が髪を巻き上げて、波がうねりを上げていたのをジョディは覚えている。

「故郷」の定義、そしてそれを想起させるものは人それぞれだ。ゆえにその答えは人によって、小麦の香りだったり、街角に落ちる影の角度だったり、雪と泥とがこすれ合う音だったりする。

しかしその時、ジョディは気付いたのだ。グランファーロを離れたことのない自分にとって、「故郷」という概念自体まだ縁遠いものであるはずなのに……海を見れば、望郷の念が湧いてくることに。

[不気味な深海教徒] この大地はすでに本当の海を忘れてしまったが、我々はいずれ……必ず海へと還ることになる。

[不気味な深海教徒] (片言のエーギル語)ありがとう、ジョディ。お前の優しさに感謝する。恐らくはいつの日か、その限りなき利他の精神が、生存を求める心によって開けられた穴を埋めてくれることもあるだろう。

[不気味な深海教徒] (片言のエーギル語)けれども、お前が一人のエーギル人であるならば、我々には関わらないほうがいい。いつも通りの生活に戻るのが一番だ。

[不気味な深海教徒] (片言のエーギル語)とはいえ、そうして過ごすうちに、もしかするとお前も……その父や母と同じように、あの灯台を目指すことになるのかもしれないが。

[ジョディ] な、何の話をしているんですか……? よく聞き取れないんですが……

[不気味な深海教徒] (片言のエーギル語)どうやら、逃げ延びた家族が迎えに来てくれたようだな。……だが、安心するといい。もとより、グランファーロは我らが深海へと飛び立つための踏み台でしかないのだから。

[ジョディ] ――!

[うごめく恐魚] (ずるずると這いずる音)

[不気味な深海教徒] ジョディ……ジョディ。エーギルの子よ。

[不気味な深海教徒] また会おう。

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