aklib_story_画中人_WR-8_夢幻_戦闘前

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画中人_WR-8_夢幻_戦闘前

何度も繰り返し町を守る毎日に、ラヴァ、ウユウ、クルースは辟易し始めていた。その時、レイが「墨魎は爆竹を怖れる」という情報を携えてきた。


[墨魎] ……ガア。

[レイ] 墨魎。墨の魎……良い名前ね。

[レイ] サガは天性の聡明さを持ってるわ。でも――

[レイ] 壊れても元通りになるものをいつまでも守り続けたら……いつか心の中の正義感を放棄し、はりぼてになった道徳観に心を麻痺させてしまうかしら。

[レイ] そうなっても不思議ではないわね。もし割れた陶磁器が簡単に元に戻せるのなら、割った時に心が痛むなんてことはないもの。

[レイ] いいえ。それどころか、割る感覚を楽しむようになるかもしれないわね。

[墨魎] ……ガ?

[レイ] だけど、どうしてそこまでしなきゃいけないの? ……人の心はそれほどの試練には耐えられないものよ。

[墨魎] ガウ――!

[レイ] 見てる? シー?

[レイ] そんな意地悪をするのなら……私も好きにさせてもらうわ。

[ラヴァ] ――ふっ!

[ウユウ] 恩人様方、これでもう大丈夫でしょう……!

[ウユウ] 勝利に水を差すつもりはないのですが、このまま化け物たちと戦い続けていても、ここを離れる手がかりが見つかるとは思えません。

[ラヴァ] サガが、何か方法があるかもしれないと言っていただろう。

[ウユウ] じゃあそれまで私たちは、ここで来る日も来る日も墨魎どもを倒し続けるんですか? それはあまり得策ではない気が……

[ラヴァ] ……構わない。簡単なことだ。

[ラヴァ] 自身のアーツを磨く機会と捉えればいい。

[クルース] ――ラヴァちゃん。

[ラヴァ] ん? どうした?

[クルース] …………

[ラヴァ] 何だよ?

[クルース] ……さっきのアーツ、ちょっと危なかったよぉ。

[ラヴァ] ……アタシのアーツか? あっ……

[クルース] 見えるぅ? 結構な数のお家が焼けちゃってるよ。

[クルース] あとねぇ、ウユウくん。

[クルース] さっき町に向かってった小さな墨魎を見て見ぬふりしたでしょぉ?

[ウユウ] それは恩人様が必ず仕留めてくださると思ったからで――

[クルース] 違うねぇ。「万一失敗しても、二日目には元に戻るし」って思ったからでしょお?

[ウユウ] …………

[ウユウ] ……否定はしません。そういう考えも頭に浮かびました、でも――

[クルース] 今日で七日目だよねぇ。

[クルース] 難癖をつけてるわけじゃないよぉ、意味の見出せない目標に向けて毎日戦ってれば、誰でも遅かれ早かれそうなるよねぇ。

[クルース] だけどレム・ビリトンのあの一ヶ月……あの血に濡れた教訓を忘れないようにしないとねぇ。

[クルース] 戦いは人の心を蝕む。私たちはそれを忘れちゃダメなんだよぉ。

[ラヴァ] クルース……

[クルース] ごめんねぇ……ラヴァちゃん。知ってるでしょお、私はずっと――

[ラヴァ] ああ、分かってる。

[ラヴァ] アタシたちは大丈夫だ。無事にここを離れて、ロドスに帰れるさ。

[クルース] …………

[クルース] うん~。戻ったらクルビアンコーヒーをご馳走してねぇ。

[ラヴァ] ああ。

[ラヴァ] サガはまだ部屋にいるのか?

[ウユウ] 今日、出発前にチラッと見ましたが、お坊様は座り続けてかれこれ七日になります……恩人様、もし飲まず食わずで絵の中で死んだとしたら……現実でも本当に死んじゃうと思います?

[ラヴァ] 分からない。あの時サガは「お任せあれ!」と言ったきり、息つく間もなく部屋に篭ったからな……

[ラヴァ] 現状を一番理解しているのがサガである以上、今はあいつに頼る以外に方法はない。オマエも心配ならサガみたいに他の絵巻を放浪してみるか?

[ウユウ] いやいや、ご勘弁を……私はお坊様のように心が強くありません。もしうっかりヘマをしたら、二度と出てこられなくなりますよ。

[ラヴァ] ……サガが成果を上げるまで、アタシたちがサガのためにできることはないんだ。

[レイ] あなたたち、ここにいたんですね。

[ラヴァ] レイさん? 何しにきたんだ?

[レイ] 忠告に来ました。自分の心を強く持つようにと。

[レイ] 「仮の真となる時は真もまた仮 無の有となる処は有もまた無」。以前、サガにもこう忠告してあります。

[レイ] そうだ、サガはどうしていますか?

[ラヴァ] サガならもう何日も部屋の中で瞑想をしている。

[レイ] ……ああ、彼女は目覚めようとしているのね。

[レイ] 自力で絵の中から目覚められた人はほとんどいない……いえ、誰もできた人などいません。

[レイ] だけど……不可能とは言い切れない。

[レイ] ラヴァさん、「爆竹」というものをご存知ですか?

[レイ] 炎国の古い風習で、その起源は――

[ラヴァ] ――古の化け物を駆逐するため?

[レイ] あら……ラヴァさんはサルカズでしょう? まさか炎国の伝統にも精通しているんですか?

[ラヴァ] ……いや。アタシの友人が――

[クルース] あぁ……思い出したぁ。

[ラヴァ] 思い出さなくていい。

[クルース] 『洪炉示歳(エンシェント・フォージ)』のお話に出てきたやつだよねぇ。ニェンさんが爆竹を怖がるってことで、最後の玄極巨兵も都市防衛砲を使った爆竹で――

[ラヴァ] ――あああ、やめろ聞きたくない!

[ラヴァ] レイさん! 爆竹が今の状況と何の関係があるんだ!?

[レイ] え? ああ……あの墨魎たちも爆竹を怖がるんです。

[レイ] 爆竹を町の入り口に掛けておけば、墨魎たちは近寄らなくなるはずですよ。

[ラヴァ] 本当か!?

[ウユウ] おお、それはいい! これで毎日毎日ここを守らなくて済むぞ……もう腰がバキバキなんだよ。

[ウユウ] 善は急げだ。早く市場に探しに行こう――

[レイ] 市場には、爆竹なんてもちろん売ってません。

[ウユウ] ――そうだと思った。じゃあどうすれば?

[レイ] 方法ならあります……

[レイ] 皆さんは、爆竹がどうして爆竹と呼ばれているかご存知ですか?

[ウユウ] たしか炎国の民が、偉大なる先帝の世にも稀な戦勝の功績を称え、竹を火で焼いて爆ぜさせ、音を鳴らしたのが始まりだとか……。

[クルース] 物知りだねぇ。

[ウユウ] はは、暇さえあれば雑書を読んでいますので……

[レイ] ご存知なら話が早いですね。

[レイ] ということで、墨魎たちにサプライズを用意してあげましょう。

[レイ] この竹がちょうど良いかしら?

[ウユウ] ええ……ですがこんな美しい竹を使うなんて、少しもったいないような……

[レイ] どのみち明日にはまた生えてきますから。

[ウユウ] 身も蓋もありませんね……

[ラヴァ] ただいま。これで足りるか?

[レイ] 多ければ多いほどいいわ。

[クルース] 煮傘さんも話が分かる人だよねぇ。竹をタダでこんなにくれちゃうなんてぇ。

[レイ] 恐縮に思われるのであれば、後でお礼をしておきますよ。私の質屋は誰も買い戻しに来ませんし、店にある質種を思い切って全部譲ってしまっても構いません。

[ラヴァ] そんなことしていいのか?

[レイ] どのみち明日には元に戻りますから。

[クルース] へぇ〜。薪がパチパチ鳴るのは見たことあるけどぉ、竹だともっと鳴るのぉ?

[レイ] ええ。雨が降った後の湿った竹が一番鳴るそうですが、ここで雨は降りませんし、ひとまずこれでやってみましょう。

[レイ] そう。そうやって……かまど状に並べて……

[レイ] 火は――

[ラヴァ] ――アタシがやる。

[レイ] ……火加減に気をつけてくださいね。ちょっとしたコツが必要なんです。

[ラヴァ] や、やってみる……

[ウユウ] 恩人様! あいつらが来ました!

[レイ] 今です!

[ラヴァ] よし――

[墨魎] ガ、ガアッ――!?

[ウユウ] 成功だ! 奴ら怯んでるぞ!

[墨魎] ガア――!!

[ウユウ] 逃げた? 本当に効果があったってことだな!

[クルース] まさかこんなに効くなんて……どうしてぇ?

[ラヴァ] それはニェンに聞こう――

[講談師] ……ニェン?

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