aklib_story_画中人_WR-6_画中_戦闘後

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画中人_WR-6_画中_戦闘後

再び墨魎の襲撃を退けた後、皆は次第に現状を受け入れはじめた。ウユウは心を開き、実力を隠していた理由を全て話した。この嘘か真実か分からない場所で、皆は喩えようのない閉塞感に包まれる。


[墨魎] ガア――ッ!

[ラヴァ] ……墨魎の数が減ってないか?

[クルース] たしかに減ったねぇ。しかもそんなに手強くなくなったみたい~。

[ウユウ] 恩人様、この墨魎たちも何も覚えていないんですかね?

[ウユウ] 来る日も来る日も同じように、無駄にこの村を襲撃するなんて……恨めしく、悲しいことです!

[ラヴァ] 聞いても喋っちゃくれないし分かるわけないだろ――

[ウユウ] いえ、彼らは喋れないとは限らないんですよ。

[サガ] なんと。それがもし本当だとしたら、少々やりにくくなるな……住職様はよく、慈悲の心を持ちなさいと仰っていた。

[ラヴァ] もしここが本当に一幅の絵に過ぎないのだとしたら……

[ラヴァ] ……アタシたちはもう、目的の場所を探し当てたのかもしれない。

[ラヴァ] もっと早くに気づくべきだった……ニェンの奴は、あえてアタシたちにこのことを知らせなかったんだ。

[クルース] 私たちがボロを出して、シーさんを逃がしてしまわないようにぃ?

[ラヴァ] こんな常識はずれの能力を持つ奴が逃げたりするか? 正直、アタシはちょっと怖くなってる……

[ラヴァ] 具体的な原理は置いとくとしても、自身の描いた小さな箱庭に、生きた人間を放り込めるんだぞ。それがどういうことかわかるか?

[ラヴァ] 絵の中の食べ物はどれも本物みたいだし、絵の中の人々だって自然な会話までできるんだ。それが何を意味すると思う?

[ラヴァ] もしこの全てを何かしらのアーツで実現させているとすれば、ニェンの妹は――

[クルース] ……そうだねぇ。いろんな奇妙なアーツを見てきたけど、この規模となると、ちょっと常識を超えちゃってるねぇ。

[ウユウ] 恩人様方が探していたのは……それほどの方だったんですか? なんとも驚きです……

[サガ] そうか? 拙僧からすれば、この婆山町は、拙僧が遊歴した山河の中でも、一番素朴で簡素なところでござるよ。

[ラヴァ] ……今までどんなところに行ったんだ?

[サガ] よくぞ聞いてくださった。それでこそ話し甲斐があるというもの。

[サガ] 拙僧はこれまでに、酒を剣にして飛翔する者や、奇人たちが術を競い合い、滝を逆流させる様子を見たことがある。

[サガ] 他にも、八歩歩く間に詩を作れる才能を持ちながらにして、棺を引いて皇帝に謁見することを余儀なくされるなど、幾度となく悪党に煮え湯を飲まされる者――

[サガ] 空中に浮いている巨大な岩も見たな。たしか、とある先帝が皇位についた時、突然地面から丸い岩が出現し、宙に浮いたそうだ。

[サガ] 初めこそ縁起物として扱われたが、「重荷を背負わされている」という見方もあって、一部の人々は不吉なものとして捉えていたな。

[サガ] 天災が残した源石の塊から、天まで伸びる巨大な松が屹立する様子も見た。雲海を抜けて、天の果てを望むほどの高さだった。

[サガ] あとは白刃に貫かれた碁盤、鉄鍋で煮込まれた法帖も見たぞ。炎国のある奇人が一人で都市を鋳造したのも見た。なんともあやふやでぼやけた顔に見えたゆえ、近寄ることはしなかったが――

[サガ] それから、炎国皇帝と旧知の仲とおぼしき者が、真龍に遥か西の彼方で目にしたという、存在すら不明である幾千もの都市の物語を語る様子も目にした。

[サガ] その人物が口を開くたびに、拙僧には鮮明な幻影が見えたのだ。あれはなんとも美しかった!

[サガ] つまり――不思議な事は、数え切れないほどあるのだ!

[ウユウ] ううむ、空中に浮く巨大岩の話は聞いた事があります。何年も前に天災で破壊されたあの景勝地のことでは?

[サガ] いかにも。拙僧はこの目で岩が浮くのを見たのだ――

[ウユウ] しかし、それは遥か昔の話ではないのですか!?

[サガ] 先に確認させて頂けまいか。お二人の知り合いとは、あの方の姉君なのか?

[ラヴァ] ああ。

[サガ] 彼女たちの仲は……良好なのか?

[ラヴァ] …………

[クルース] お~。的を射た質問だねぇ。

[ウユウ] まさか姉妹は仲が悪いのでしょうか?

[ラヴァ] アタシが見せた物を覚えてるか? あれはニェンがくれたものだ。アタシたちが何者なのかを、シーに知ってもらうための印みたいなものだろうと思ってたが……

[サガ] おお、あの珍妙なものか? あれは一体何に使うのだ?

[ラヴァ] わからない……

[ウユウ] ちょっと見せてもらえますか? ……あ、あの講談師さんにも見せていましたよね?

[サガ] むっ? 煮傘さんにも見せたのか? 彼は……その時なんと言っていたのだ?

[ラヴァ] 見たことがないと。

[サガ] ……拙僧はもう一度訊いてみるべきだと思うぞ。

[ウユウ] あのぅ……私も訊きたいことがあるのですが……

[ラヴァ] 何だ?

[ウユウ] えーと、つまりその……恩人様、さっき私は自分の腕前を少しだけお見せしましたよね?

[ラヴァ] ああ……オマエと一匹の墨魎が身構えた後、延々と激戦を繰り広げたことか?

[ウユウ] そうです!

[サガ] 拙僧も見たが、なぜ今、突然その話をするのだ?

[ウユウ] それは……あの、私はこれまでは羽獣も捕まえられないような臆病者でしたのに、突然あのような達人の如き武芸を披露したことに、皆さんは……驚かれませんでしたか?

[クルース] 達人……って呼べる程のものじゃなかったけどぉ?

[ウユウ] ゴ、ゴホン! それはまだ、私が実力を隠しているから――ああ、ですがそれは別に力を使いたくないというわけではなくて、もっと深い理由があるんです――

[ラヴァ] ……だから何が訊きたいんだ?

[ウユウ] あの……力を隠してたことで、恩人様は、私を疑わないんですか?

[ラヴァ] 何を今さら……他の奴は騙せてもアタシを騙せるわけないだろ? そのくらい見抜く力すらなきゃ、まともに任務なんてやってられないって。

[サガ] 拙僧も疑問に思っておったところだ! ウユウ殿が少女を背負って走る様子は速きこと雷鳴の如しであった。息も切らしていなかったし、明らかに拙僧の寺のどの兄弟子よりも上の実力者だ!

[ウユウ] は、はは……そんな顔しないでくださいよ。私も全力を尽くしたんですから、あれでも。

[ウユウ] そうだ! もう日暮れです。早く煮傘さんの所へ行きましょう! たしか病気になったと言ってませんでしたか? 急がなくては!

[講談師] ゴホ、ゴホゴホッ……皆さん、講談を聴きにいらしたのですか? 申し訳ありません。今日は――ゴホッゴホッ……この調子でして。中止にしようと思っています。

[町民] 先生、どうかしっかり休んでください。雑用は私たちがやるので。

[講談師] 大したことはありませんよ。ゴホゴホッ……皆さんは見ない顔だ。どちらからいらっしゃったんです?

[ウユウ] あ、その……遠い場所からです。少し立ち寄っただけなのですが、通りで村の皆さんが先生の話をしているのを聞いて、興味を持って伺った次第で。

[ウユウ] もし具合が悪いようでしたら……また今度、日を改めて参ります。はは。

[講談師] どうかお待ちください。ゴホゴホ。皆さんはご存知ないかもしれませんが、婆山町には滅多に訪問者が来ません。ゴホ――せっかくいらっしゃったお客人におもてなしをしないわけにはいきません。

[講談師] よろしければ、私の庭園の客間にお泊まりになりませんか?

[ラヴァ] かなり体調が悪そうですが、どうされたんですか?

[講談師] わかりません。風邪をもらったのかと思いましたが……そんな感じでもありません。医者も原因が分からないようでして。私が虚弱で鍛錬を怠ったせいで、皆様にご心配をおかけしております。

[講談師] イツセン、ご案内を。

[町民] 承知しました。

[ラヴァ] ……では、お言葉に甘えさせていただきます。

[町民] 皆様、こちらへどうぞ。

[ウユウ] 本当に奇妙だなぁ……たしかに今朝この部屋から出たはずなのに、ぐるぐる回って、またこの部屋に戻ってくるとは……うーん、なんとも奇妙な話だ。

[ウユウ] では、恩人様方……

[クルース] ウユウくん。

[ウユウ] あ……はは。ゴホン! 曰く、「隠れたるより見るるはなし」か。わかります、わかりますとも。

[ウユウ] では……どこからお話ししたら良いやら……実を申しますと出会ったときから……恩人様方を騙しておりましたゆえ。

[ラヴァ] それは分かっていた。

[ウユウ] 本当に、申し訳ございません。

[ラヴァ] ……随分と態度が変わったな。まあいい。荒野で偶然出会ったアタシたちを、最初から全面的に信用しろって方が無理があるからな。

[ウユウ] ……ありがとうございます!

[ラヴァ] オマエは勾呉城の人間か?

[ウユウ] いえ……私の故郷はもっと北にある、平凡な町です。

[ウユウ] 私は元々、一生農家をやる運命にありました。ですがある年の夏、街から偉い方々がやってきました。リーダーは貴婦人のような女性だったのですが、彼女が私を必要だと言ったのです。

[ウユウ] 当時私は十三歳で、勾呉城に引き取られることになりました。勾呉城には廉(レン)家の道場があり、それを束ねていたのが、あの女性でした。

[ウユウ] それから私は彼女に弟子入りしました。特別な理由などはなく、道場は衣食住が揃い、暇な時は作業場へ行ってわずかながら日銭を稼ぎ、家に仕送りをすることができたからです。

[ウユウ] その後、私は十数年の間、一時も怠けたりしませんでした。師匠に拾われたのはなんとも幸運でしたが、それで万事良しとは考えませんでした。

[ウユウ] 自立しなければ、ただひたすらにその一心でした。たとえ食い扶持を得るためでも、師匠に軽蔑されるようなことがあってはならないと。

[ウユウ] ですが……師匠は老いました。比類なき威厳を放っていたはずの師匠は、すでに病魔に冒され、満足に眠ることすらできなくなっていたのです。

[ウユウ] 私は、いつまでもここにいるわけにはいかないと思い始めました。兄弟子や姉弟子も独立した今、私も道場を出なければと。

[ウユウ] ですが……昨年、私は誤って人の命を奪ってしまいました。決して殺してはならない相手を殺めてしまったのです。

[ウユウ] それは道場間の交流試合での出来事でした。後で知ったのですが、相手は自分の命を金で売っており、彼が私の手にかかって死ぬように試合が仕組まれていたのです。

[ウユウ] 相手の道場の目的は、今や落ち目となった廉家の看板を潰して、一度も頭を下げたことのない師匠に頭を下げさせることでした。

[ウユウ] ……そして――

[ウユウ] そして私の師匠は――私の母と同じく髪を後ろでまとめ、髪に白髪が混じる歳になっても負けを認めなかった師匠は、皆の目の前で、掟通りに二升もの血を抜かれたのです――

[サガ] そんなことが……!

[ウユウ] 「掟」! あの掟は、完全に人を殺すためのものでした!

[ウユウ] 私はすでに意識を失った師匠を連れて帰りました。しかし相手方の人間が、うちの道場の周りをがっちりと取り囲んでいたのです。

[ウユウ] 救急車を呼ぶことすら許されませんでした。この件を別の街に住む兄弟子、姉弟子に告げることなど言わずもがなでした!

[ウユウ] 私は、師匠が少しずつ冷たくなるのを見ていることしかできませんでした。彼らは門の外で私が師匠を埋めるのを見届けて、ようやく帰っていきました。

[ウユウ] 師匠が残してくれたのはこの扇子一本だけです。しかし私にはこの扇子を使う資格はありません。師匠の教えてくれた武術を使う資格ともなればなおさらです。

[ウユウ] ほどなくして道場は取り壊され、兄弟子や姉弟子たちとも連絡が取れなくなりました。その後、私は身分を隠し、占い師を装ったり、トランスポーターを装ったりして暮らしていました。

[ウユウ] 考えることと言ったら、なんとかしてあの町を抜け出し、都か、あるいは龍門……どこでもいい。人が多い場所へ行こうと、そんなことばかりになりました――

[ウユウ] そして外で力をつけて、再び勾呉城へ戻るつもりでした。戻って、師匠の復讐を果たすのです。

[ウユウ] ですが……先日ランちゃんを助けた際にクルース嬢に言われた通りです。私は言い訳をして逃げ回ってばかりだ。

[ウユウ] あれほど長い間、私は勾呉城で一体何をしていたのでしょう……

[サガ] 拙僧もかつて聞いた事がある。炎国では武術が盛んで、武芸者が至るところで見られる、と。しかしその中でこんなことが起こっているとは思わなかったでござる。

[ラヴァ] ……ということは、オマエの車が荒野でスクラップになったのも、偶然の事故じゃないんだな?

[ウユウ] その通りです……勾呉城周辺に彼らの死角などありません。私は近隣の村で数日の間身を隠していましたが、結局見つかってしまい、なんとか車を手に入れて、勾呉城から離れようとしたのです――

[クルース] お師匠様が掟に従ったのに、どうしてそいつらはあなたを見逃してくれないのぉ?

[ウユウ] 見逃す?

[ウユウ] 彼らに私を見逃すような哀れみの心があるなら、どうしてあのように殺人的な掟を持ち出すでしょう?

[サガ] この世にそんな横暴な慣習があるとは……拙僧のこれまでの見聞もどうやらまだまだ浅かったようだ。

[ラヴァ] ……分かった。何だか武侠小説でしか有り得ないような話だが……オマエを信じよう。

[ウユウ] ううう、恩人様は本当に情深い御方だ……私、感動致しました! 私――否! わたくしめは今後、命を惜しむことなく、受けたご恩に必ずや報いましょう!

[ラヴァ] ……はぁ、好きにしろ。

[ウユウ] 恩人様……私が作り話をしているのではと疑わないのですか?

[ラヴァ] こんな作り話ができるなら、その道の天才と言うほかないな。

[ラヴァ] どうぞ。

[講談師] ゴホゴホッ……皆様こちらにいらっしゃったのですか。客間に姿が見えなかったので、何か私どもに不手際があってお客様にご不快な思いをさせてしまったのかと……

[ラヴァ] あ、いえ、そんなことはありません。ただ皆で相談をしていただけです。

[講談師] ゴホゴホッ、そうでしたか……それはお邪魔いたしました。ですが皆様に忠告がございます。今日は大晦日……くれぐれも鴻洞山にはお近づきになりませんよう。あの山には怪物が出ますので。

[ラヴァ] わかりました、ありがとうございます。

[講談師] では、お邪魔いたしました。ゴホゴホッ、ゴホゴホ――

[ラヴァ] お大事に。

[ラヴァ] …………

[クルース] どうしたのぉ?

[ラヴァ] さっきの煮傘さんの様子……絵の中の人間に見えたか?

[ラヴァ] もし、あの人すらも「絵」だって言うなら……アタシたちが絵じゃないって、どうやったら証明できるんだ?

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