aklib_story_マリアニアール_MN-4_グローリーシールド_戦闘後

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マリア・ニアール_MN-4_グローリーシールド_戦闘後

マリアは、焔尾騎士との激戦の末に好成績を収めた。一方、時を同じくして、悪い知らせがゾフィアの耳に入ったのだった。


[ビッグマウスモーブ] 残り――八名――

[ビッグマウスモーブ] 残り八名、つまり既に半数近い騎士が戦闘不能で退場していることに驚くべきでしょうか!?

[ビッグマウスモーブ] おっと! そうこうしているうちに、「灰髪」騎士が「泉水」騎士から1ポイントを奪いました――ああっ!! “ロックドリル”ドルコが二人を急襲し2ポイントを奪取! その効果は絶大だー!!

[ビッグマウスモーブ] さあさあ、会場では盛大な得点の奪い合いが繰り広げられています――これぞファイヤブレード団体混戦の魅力、純粋なる暴力!!

[マリア] 光よ――!

[樹枝騎士] ふん! その程度の力で、どうやってイングラに勝ったんだ!?

[マリア] あなたの剣術だって……おばさんの足元にも及ばないよ!

[樹枝騎士] ちっ! 絶対にお前をランキングから引きずり降ろしてやるぞ! 食らえ、ニアール!

[マリア] あ――後ろ!

[樹枝騎士] ああん? ぐわあっ!!

[通りすがりのファン] はい、いっちょ上がりっと……あれぇ?

[通りすがりのファン] ハァイ、ニアールちゃん。今度こそ逃がさないわよ。

[ビッグマウスモーブ] 「樹枝」の次は「焔尾(えんび)」か!? おいおいっ! 試合開始からニアール家の御令嬢に向けられた襲撃はこれで何度目だ? この試合は君のワンマンショーじゃないんだぞ、マリア!

[通りすがりのファン] 何なのよあいつ? ギャンギャンうるさいわね……

[通りすがりのファン] まあ、残りの選手も少なくなってきたことだし、そろそろ勝負してくれてもいいんじゃない?

[マリア] ――勝負なら、付き合うよ。

[通りすがりのファン] あら、いい感じね! 「合成樹脂」とやり合ってた時に比べたら、大分いい目つきに仕上がってるじゃない。

[マリア] ……

[通りすがりのファン] よいしょっと――

一瞬……ほんの一瞬だけ、無意識にまばたきをした。瞼を閉じて、開いたその刹那――

[マリア] (下!?)

[マリア] くっ――!?

[通りすがりのファン] あちゃー、避けられちゃったか。

[マリア] (何なの? 今の動き……速い……いや、速すぎる――)

[通りすがりのファン] へえ。シェブチックやイングラを相手に、あれほど耐え抜いた理由がわかったわ……君、基礎が予想以上にしっかりしてるのね。

[通りすがりのファン] それ……“ウィスラッシュ”に叩き込まれたの?

[マリア] ……

[通りすがりのファン] うん、警戒心もなかなか。学習スピードも優秀ね。

[通りすがりのファン] でも――

[マリア] ……

[通りすがりのファン] はい、これで君は1ポイント減っちゃったわね……この新ルール、あたし結構気に入ったかも。

[通りすがりのファン] このままじゃ、「合成樹脂」から勝ち取ったポイントが、どんどんなくなっちゃうよ~?

[マリア] うっ――!

[樹枝騎士] うおお!! おのれ、この小リスのガキが!

[通りすがりのファン] ……いや、あんたはおとなしく寝てなさいっての!

[樹枝騎士] はっ、武器を跳ね飛ばされておいてよくもそんな口が叩けるな? どうするつもりか見ものだな!

[通りすがりのファン] 拾ってくればいいだけでしょ、バカなの?

[樹枝騎士] う、うるさい! お前は今日、ここで死ぬ!

[マリア] ――危ない!

[樹枝騎士] な!? ……どうやってアーツを――バカな! アーツユニットなしでアーツだと!?

[樹枝騎士] お前……いや、お前はまさか――

[通りすがりのファン] はい、おやすみなさーい。

[通りすがりのファン] あ~これでまた何ポイントかゲットしちゃった! 今日はツイてるわね……さて、続きをやろっか、ニアールちゃん。

[マリア] (来る――!)

[通りすがりのファン] あのね……実はあたしって感染者なのよ。

[マリア] え? 感染――

[通りすがりのファン] は〜い、また1ポイント! すーぐ気が散っちゃうんだから。

[マリア] ……

[マリア] ……でも、感染者っていうのは嘘じゃないんでしょ?

[マリア] さっき、直接アーツを放ってたし……

[通りすがりのファン] 変な話よね。

[マリア] え?

[通りすがりのファン] 血騎士の優勝以降、感染者が騎士を名乗ることが公的に認められた――でも耀騎士は感染者であることが理由で、カジミエーシュから追放されたまま……変だと思わない?

[マリア] お姉ちゃんは……

[通りすがりのファン] 君はさ、デビュー戦がロアー競技場だったでしょ? 書類を持って騎士協会に登録して、参加資格を申請すれば、あとは準備万端にして会場裏で出番を待つだけ……

[通りすがりのファン] でも、感染者がここまで来るために、どれほどの苦労が必要なのかわかる?

[通りすがりのファン] まず、鉗獣が詰め込まれた檻の中で生き残らないといけないの。それから、他の感染者の流した血を、一歩、また一歩と踏み越えてようやく、普通の騎士たちと同じ資格を勝ち取れるのよ。

[通りすがりのファン] でも、騎士になったからといって感染者が尊重されるわけじゃないのよ。ただの面白い観賞物にされるだけ。

[通りすがりのファン] ……不満があって当然だと思わない?

[マリア] ……

[通りすがりのファン] あたしたちの目標は、独善的な貴族騎士の連中が……奴らが自ら定めた掟の中で、奴らの首を狩ること。

[通りすがりのファン] 本気で君をここから叩き出すつもりはないわ。だって、あたしは心からあの耀騎士を尊敬しているんだもの……感染者であるかどうかは関係なく、ね。

[通りすがりのファン] 君から奪ったポイントは、あたしが“ウィスラッシュ”の代わりに教育してあげた授業料ってことで。イングラとの戦いから察するに君はまだ騎士競技の本当の意味を理解していないみたいだから。

[通りすがりのファン] 無知ゆえの情熱や、的外れな努力なんて、普通はただ盛大に転んで怪我するくらいで済むけどさ。騎士競技では、そんなの通用しない――死んじゃうわ。

[通りすがりのファン] だから、これからはせいぜい気をつけて頑張ってね。

[マリア] ……待って!

[通りすがりのファン] ん?

[通りすがりのファン] 光? これはイングラに勝った時の……

[マリア] ――はぁっ!!

[通りすがりのファン] うっそ! 本気!?

[マリア] 1ポイント返してもらったよ――「焔尾」!

[通りすがりのファン] あちゃ~、君ってすっごい負けず嫌いだったのね……

[通りすがりのファン] ――でも、それでこそ耀騎士の妹よ!

再び距離を取り、私たちは互いに剣を向け合った。

……不思議な感じ。

たった数分、言葉を交わしただけだけど、シェブチックやイングラから感じたような吐き気のするプレッシャーが彼女からは伝わってこない……彼女の性格のせいかな?

でも、きっと彼女は強い。そうだ、尋常じゃないほど速いし、動きも洗練されてる。

[通りすがりのファン] 笑ってるわね。そんなに自信満々なの?

[マリア] ……そう見える?

[通りすがりのファン] まあ、試してみればわかることよね。

[マリア] じゃあ……

[ビッグマウスモーブ] そこまで――! 終了!!

MCがストップをかけた瞬間、私たちは同時に動きを止めた。

あと数ミリ――ほんのたった数ミリでお互いの鎧に切っ先が触れるところだった。

「焔尾」は、悪戯っぽい顔で私の盾をコツンと軽く叩いた。

[焔尾騎士] 惜しかったわね〜。あとちょっとであたしからもう1ポイント奪い返せたかもしれないのに。

[マリア] 2ポイントの可能性もあったよ。

[焔尾騎士] あはははは! おかしいわね、観客席からじゃこんなに意地っ張りな子には見えなかったんだけどなぁ。

[ビッグマウスモーブ] お待たせしました皆様! 我々の審判陣が裁定を下しました! この戦いを最後まで「生き残った」のは、たったの四人!

[ビッグマウスモーブ] さてさて! お財布の運命を決める時がやってきましたよ。たとえ応援していた騎士が開戦直後に退場したとしても、悲観してはいけません。競技場はいつでも皆様のご来場をお待ちしております!

[ビッグマウスモーブ] 第四位! 獲得したポイントは10点! 終始戦場を縦横無尽に駆け回り、まさに風に吹かれる木の枝のように正面衝突をかわし続けたクレバーな生存者、「樹枝」騎士ダニエル!!

[ビッグマウスモーブ] 第三位! 試合開始直後からほぼ全ての選手に追い回され、息つく暇も与えられませんでしたが、その結果、ポイント変動率はなんと堂々一位! 可憐な独立騎士、マリア・ニアール!

[ビッグマウスモーブ] 第二位! 開戦直後のカオスな場面でも、好機と見るやたった一人で三人をなぎ倒し、その後は会場の隅に陣取って、重厚な盾でひたすら守りに徹しました! まさに人間要塞、「石灰」騎士マルコ!

[ビッグマウスモーブ] そして! 本日のチャンピオンは――獲得ポイントは合計22! 戦えば必勝、無駄な動きなど一切なしという、素晴らしい試合巧者ぶりを見せつけました! スーパールーキー「焔尾」騎士ソーナ!

[ビッグマウスモーブ] 彼女にもう一度大きな歓声を! そしてこれより、各賞金プールの結果発表です! 一夜にして騎士は頂点に、観客は億万長者に! すべての夢は、ファイヤブレード競技場にあり!!

[代弁者チャルニー] ああ、いらっしゃいませ、お嬢様。

[代弁者チャルニー] カジミエーシュ無冑盟史上、最年少のプラチナ様にお目にかかれるとは、このチャルニー、恐悦至極にございます。

[プラチナ] 社交辞令はいらない。そもそも、私をここに呼んだのはそっちなんだけど。

[代弁者チャルニー] とんでもない。私は商業連合会を代表する者として、取締役たちの指示に従っているだけでございます。プラチナ様に指図するなど、そのような僭越な真似はできるはずもありません。

[プラチナ] 口ではそう言ってるけど、結局あの二人は手が離せない状態だし、上の三人も動かせないから私を呼んだんでしょ?

[プラチナ] はぁ、また追加の仕事か……ただでさえ任務が多過ぎるっていうのにこんなところにまで駆り出されるなんて……メジャーが終わったら、サーミ旅行にでも行こうかな。

[代弁者チャルニー] 商業連合会さえ同意すれば、今すぐにでもお嬢様のためにサーミの田園別荘をご用意いたしますよ。

[プラチナ] やっぱ仕事を終わらせないとダメか。しょうがない……

[プラチナ] で、無冑盟に何を依頼したいの?

[代弁者チャルニー] 我々が抱えている問題は多々ございます。言いつけを破る感染者、奇妙な噂、あまりに目立ち過ぎている騎士……

[代弁者チャルニー] しかし、無冑盟のプラチナ様にご協力頂けるのであれば、その程度の問題など、即座に解決できると信じています。

[ゾフィア] ただいま! 料理長は? 緊急の仕事よ!

[ゾフィア] 料理長、今夜はご馳走を用意して! もうすぐマリアが来るわ……きちんと労ってあげたいの。私の指示だってことは言わないでよ。

[使用人] ゾフィア様、お客様がお一人お見えになっております。相談したいことがあるそうですが……

[ゾフィア] 客? 今?

[ゾフィア] マリアが帰ってからに――

[企業職員] あ……すみません、ゾフィア様。勝手に入ってきてしまって……

[ゾフィア] 君はこの間の? ……ははっ、確か昔小さな会社を構えてた時も、私のスポンサー契約欲しさに、こうやって乗り込んできたわよね。

[ゾフィア] で、今度は何? 何の用なの?

[企業職員] えっと、実は……ここに幾つかの情報がありまして……もちろん、ただの噂である可能性もあるのですが……

[企業職員] 絶対に口外しないでください! たとえ嘘だったとしても、競技のスケジュールは機密中の機密なので……

[企業職員] ただ、あなたには知る権利があると思いまして……一つ借りを返すつもりでお伝えに参りました……それと、えっと、あなたたちには良い結果が訪れてほしいと思って……

[企業職員] 誇り高い騎士には……悲惨な結果が待ち受けていることが多いですから……

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