aklib_story_光冠残蝕_10-9_異郷での再会_戦闘後

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光冠残蝕_10-9_異郷での再会_戦闘後

廃工場の外、ホルンが再びマンドラゴラと出会うも、それぞれ自らの目的のため、手を出すことはなかった。工場内、ハイディの救出に成功し、撤退しようとしていたアーミヤたちはWと遭遇するのだった。


[サルカズ戦士] 敵を発見! 鉄の爪を装備している――

[ダグザ] ……一人。

[サルカズ戦士] サルカズを一撃で殺しただと! 生意気なフェリーンめ、なかなかの腕前だな。貴様はヴィクトリア兵か?

[ダグザ] 黙れ!

[サルカズ戦士] ダブリンの軟弱者どもよりは歯ごたえがありそうだ。いいだろう、俺の剣で死ぬことを許そう。

[モーガン] ――危ない!

[ダグザ] ……どっちがどっちの剣で斃れるかは決まっていない。

[サルカズ戦士] ああ――

[ダグザ] サルカズ、私の剣で貴様を処断したかったが……すでに貴様の同族の体に埋まって折れている。

[モーガン] ダグザちゃん、あんまり戦いにこだわらないようにね!

[ダグザ] ……

[モーガン] ダグザちゃんの考えはわかるよ。復讐してやりたいんでしょ? でも今はその時じゃないからね。騒ぎを起こして敵を引き付けて、それから撤退、ドクターとそう約束したでしょ――

[サルカズ戦士] ハァ……ハァ……フェリーン、テメェは一人ならずサルカズを殺しやがった! テメェの命は……テメェの命はいずれサルカズがもらう。

[ダグザ] 自分の命など惜しくない。

[ダグザ] あの時もし選択ができたなら、私は一人で貴様らから逃げることはなかった。

[モーガン] なんで熱くなってるの!? 当たりそうなアーツはちゃんと避けないとだめでしょ!

[ダグザ] ……少なくとも、死ぬ前に何人かのサルカズは道連れにできる。

[モーガン] こうなることがわかってたら、絶対あんたが来るのを止めてたよ……思い出しなさいよ、ヴィーナがまだ地下でダグザちゃんを待ってるんだからね!

[ダグザ] シージ……

[モーガン] 死にたいなら止めないけど、せめてドクターとアーミヤを道連れにするのはやめてよね! でないと、あんたはヴィーナに恥をかかせることになるんだよ!

[ダグザ] ……わかった。モーガン、あとどれだけ時間を稼げばいい?

[モーガン] 五分。五分後に、応援が来るってドクターが言ってたよ。

[ホルン] 前方で戦闘が起きているわ。

[ヴィクトリア兵士] はい。一体誰でしょうか、先にサルカズと戦闘しているようです……

[ホルン] ……ブレイク、私がどうやってダブリンの手から逃れたか話したわよね。まだ覚えてる?

[ヴィクトリア兵士] 誰かがあなたを助けたと言ってましたね……

[ホルン] そうよ。その人の顔は見えなかったけど、とても強かったのはわかるわ。数百人ものダブリンが守る駐屯地に一人で出入りできるくらいにね。

[ヴィクトリア兵士] え? そんなに強いなら、こんな大騒ぎを起こす必要はないんじゃないですか?

[ホルン] その人であるとは限らないわ、でも彼は一人じゃない。サディアン区には、他にもダブリンやサルカズとずっと戦ってる人たちがいるの。

[ホルン] ブレイク、今までこれほどに確信を持ったことはないわ――

[ホルン] 残っている抵抗者は私たちだけじゃない。私たちには……まだ仲間がいる。この暗闇の中で、灯りを点してくれている。

[ヴィクトリア兵士] なら我々も手伝いに行きますか?

[ホルン] ……いいえ。今は任務の目標を変えることはできない。

[ホルン] あの人たちがサルカズの注意を引きつけてくれているうちに、私たちは前方から潜入しましょう。

[ロッベン] ホルンさん! ダブリンの部隊がそちらへとすごいスピードで近づいています。気を付けてください、そいつらを率いているのは……率いているのは……

[ホルン] ……マンドラゴラ。

[マンドラゴラ] ……

[マンドラゴラ] あんた。

[ハイディ] ……火の光。

[ロンディニウム市民] はい、ハイディさん。交戦している音が聞こえたと多数の報告がありました。

[ハイディ] ええ。警備はどうなっているかしら?

[ロンディニウム市民] ほとんどはその場で待機しています。おびき出されてはいません。

[ハイディ] やはり……向こうは準備していたようですね。

[ロンディニウム市民] なら俺たちはどうします? 動きますか?

[ハイディ] 外の火を見てください。私たちの計画はもう動いています。

[ハイディ] 皆様に準備を整えるようにと伝えてください。

[ハイディ] どうか忘れないでください――私たちに与えられたチャンスは一度きりです。

[サルカズ戦士] あれは――何が起きた? 貴様ら工場の機械をわざと壊しやがったのか?

[サルカズ戦士] 誰がここに来ていいと言った……テメェの仕業か!

[ハイディ] ええ、またお会いしましたね。

[サルカズ戦士] フン、テメェが何か企んでいたのはわかってた。こっちへ来い!

[ハイディ] 私が何を企んでいようが、あなたのような戦士にとっては、どうでもよいことなのでは?

[ハイディ] 蒸気騎士が姿を消し、塔楼騎士がことごとく息絶えてから、ここロンディニウム……いえ、ヴィクトリア全体であなたのお眼鏡に適う戦士はどれくらいいることでしょうか?

[サルカズ戦士] フェリーン、訳のわからねぇ世辞を言って俺の警戒を解こうって魂胆か? サルカズをなめすぎだ。

[サルカズ戦士] 言ってた通りだよ、俺は今晩貴様を殺すことができない。だが矢を首に当てるくらいは構わねぇんだ。

[ハイディ] うっ……

[サルカズ戦士] 知ってるか? 温室育ちの首はな、軽くかすっただけで血が流れるんだぜ。

[サルカズ戦士] ハハ、ゆっくりと血を流しながら、仲間がどうやって死んでいくのをしっかり見ておくがいい。明日の朝になれば、貴様も――

[ハイディ] もし……この程度の血であなたを満足させられるなら……

[ロンディニウム市民] ――これを食らえ!

[サルカズ戦士] あああ! な、何だこれは! 目が……熱い!

[サルカズ戦士] うっ――!

[ロンディニウム市民] ハイディさん! 大丈夫ですか?

[ハイディ] かすり傷です、血はすぐに止まるでしょう。

[ロンディニウム市民] 見ましたか? このサルカズ引っかかりましたよ! あなたに集めるよう言われた試薬が本当に役に立ちました!

[ハイディ] 彼にはここで眠っていてもらいましょう。クロスボウを奪い、気絶させただけで、手が……ちぎれるかと思いました。

[ハイディ] サルカズは……本当に硬いですね。もし彼らの目が血と憎悪で曇っていなかったら、近付くあなたに気付いていたでしょうね……

[ハイディ] ……まあ考えるのはやめましょう。ベニーさん、ほかの方は?

[ロンディニウム市民] あなたに教わった方法で、ひとまず建物を制圧できました。ですがあまり長くは持ちません。サルカズの警備たちが急いで向かってきているので、同じ手は通用しないでしょう。

[ハイディ] では急ぎましょう。

[サルカズ戦士] 将軍、奴らが来ました。

[マンフレッド] どこの入り口かな?

[サルカズ戦士] 三箇所の入り口が同時に襲撃されました。

[マンフレッド] ……想定の範囲内だ。

[マンフレッド] ダブリンの動きは?

[サルカズ戦士] 現在反乱軍と交戦中です。

[マンフレッド] マンドラゴラはどこに?

[サルカズ戦士] 奴らのリーダーについては発見できていないようです。

[マンフレッド] わかった。彼女は我々のいるここに興味があるのかもしれないね。

[マンフレッド] ヘドリーは?

[サルカズ戦士] えっと……

[ヘドリー] ……ここにいる。

[マンフレッド] 南西の入り口を守っている予定ではなかったか?

[ヘドリー] 戦場に戻る前に、あなたに報告しなければならないことがある。

[サルカズ傭兵] ゴホッ……ハァ……

[マンフレッド] ……重傷を負った傭兵か。彼は誰だ?

[ヘドリー] 彼の名はシュワブ。以前交友があった。だが彼は俺を裏切り、我々の計画にいくつかの誤算を生じさせた。

[サルカズ傭兵] 裏切りだと……聞き捨てならねぇな? ヘドリー……お前は自分が何者であるか忘れたのか?

[ヘドリー] シュワブ、自分が何者であるかを忘れたのは、恐らくお前だ。

[サルカズ傭兵] 俺たち傭兵は……ハッ……初めから……何者でもねぇだろ。

[サルカズ傭兵] ヘドリー、彼女が来たぜ……お前のことは彼女に言ってねぇ……どうだ……友達思いだろ? ハハ……まったく見てみたいもんだぜ…お前ら二人の顔をよ……

[ヘドリー] ……何を言ってるのかわからんな。

[マンフレッド] 裏切り者の話を聞く必要はない。

[ヘドリー] マンフレッド――

[マンフレッド] ヘドリー、何も説明の必要はない。

[マンフレッド] 私が知りたいのはただ一つ。君は今なお私のために力を尽くしているか?

[ヘドリー] ……疑いの余地がない。

[マンフレッド] ならよい。新たな任務を授けよう。

[フェイスト] ロックロック、ジョニー、ガビ……みんな無事に着地できたか? よし、なら大丈夫だ。

[フェイスト] ふぅ……とりあえず侵入は成功だよ。ドクター、大丈夫か?

[ドクター選択肢1] まあまあだ。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] そろそろ慣れてきた。

[フェイスト] ごめんよ。人を抱えてやったことなくてさ、万が一ワイヤーが二人分の体重を支えきれなかったらどうしようとかずっと考えてたら……

[フェイスト] ……すげーきつく掴んじまった。

[ドクター選択肢1] 少なくとも無事に着地できた。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 君はもっと頼りになるかと思っていた。

[アーミヤ] クロージャさん、中の状況は見えますか?

[ドローン] バッチシだよアーミヤちゃん、君の耳のふわっふわな毛までハッキリ見えるよ……

[アーミヤ] ……コホンッ、クロージャさん、あまりドローンを近付けないでください! お、音が大きすぎます!

[アーミヤ] それに……どうしてドローンからクロージャさんの声が聞こえるんですか? 通信機を使わないんですか?

[ドローン] 通信機を使ったら傍受される可能性があるからね! 君たち言ってたでしょ、向こうのサルカズの指揮官は頭がキレるって!

[ドローン] あたしのクロー千六百五十一号は一味違うよ。新しく書いたセキュリティーシステムを搭載してるの。そう、ロドスを出る時に全艦に更新をかけたあれだよ……

[ロックロック] ……クロー千六百五十一号?

[ドローン] そう! あっ……ロックロック……君のドローンからちょっとインスピレーションをもらったんだけど、大丈夫かな?

[ロックロック] ……

[ロックロック] いいよ。その名前……可愛いね。

[ドローン] でしょ! やったね!

[ドローン] それじゃあ、クロー……えっと、何号だったか忘れた……スキャン開始! 捜索目標――ハイディ・トムソン!

[ドローン] 目標……目標はここから近いよ……ヤバい、サルカズ兵だ! 敵が近付いてきてる!

[アーミヤ] みなさん、戦闘準備を!

[サルカズ戦士] ……貴様ら、ここで何をしている?

[自救軍戦士] 危ない!

[サルカズ戦士] 貴様らは……反乱軍か? わざわざ捕まりに来るとは……ハハ!

[フェイスト] アーミヤさん、あいつの後ろにまだサルカズが十数人いるよ!

[ロックロック] ロック十七号――

[アーミヤ] ここは私が。

[サルカズ戦士] 黒の閃光――貴様は例のコータスか!

[アーミヤ] ……戦士さん。

[アーミヤ] 先にお聞きします、今すぐ手を引く気はありませんか?

[サルカズ戦士] 手を引くだと……貴様、なにをふざけてやがる! テメェのその力を見るだけで胸糞悪くて震えんだよ!

[サルカズ戦士] 俺の感情は絶対に操らせねぇ!

[アーミヤ] ……同じアーツを見たことがあるのですか?

[サルカズ戦士] 笑わせんな! ここにいるサルカズはみんな知ってるに決まってんだろ!

[アーミヤ] ……

[サルカズ戦士] お前を今すぐぶち殺してぇ……だが、その前に将軍に伝えねぇとな……

[フェイスト] うぇ、あいつの後ろから攻撃が……クロスボウか? なんでまた?

[ロックロック] ロック十七号、狙って――

[ハイディ] 自救軍の皆様、そして――お初にお目にかかりますロドスの方々。

[ハイディ] ご機嫌麗しゅう。

[アーミヤ] ハイディ……さん?

[ハイディ] はい。ようやくお会いできましたね、アーミヤさん。

[ハイディ] 残念ながら、今はゆっくりとご挨拶している時間はございません。ドクターは……あなたがドクターですね? ケルシーが話していた通りですもの。

[ドクター選択肢1] 褒め言葉として受け取っていいのか?

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 悪口でなければいいが。

[ハイディ] ええ……おかげで今のお答えも概ね予想がつきました。ドクター、ここからどう脱出するか、目処はついていらっしゃいますか?

[サルカズ戦士] こっちだ! こっちに人がいる、全員こちらに急げ――

[サルカズ戦士] ぐあ――

[ロンディニウム市民] 黙っとけ、サルカズ。そんなすぐに応援は呼ばせねぇよ。

[ハイディ] ベニーさん、ありがとうございます。他の方々は?

[ロンディニウム市民] ハイディさん、仲間が南側に一番近い建物を制圧してくれました。

[ロンディニウム市民] あなたが教えてくれた方法はすごいです……非力な女性でも、サルカズの警備に対抗することができました。

[ハイディ] 大したことではありません。普段使う機械や工具が一番扱い慣れているのは当然ですから。

[ハイディ] ここは私たちの工場です。サルカズは彼らが考えているほど、この場を掌握しているわけではないんですよ。

[アーミヤ] ハイディさん……あなたがこれほど戦闘に精通しているとは思ってませんでした。

[ハイディ] アーミヤさん……

[アーミヤ] あの、ケルシー先生と同じように、アーミヤと呼んでください。

[ハイディ] わかりました、アーミヤ。

[ハイディ] ケルシーは私に多くのことを教えてくださいました。

[ハイディ] ――そう、戦い方も含めて。

[ハイディ] もっとも、私は彼女の一番優秀な生徒とは言えません。口惜しいですけどね。

[ハイディ] これまでずっと、私がケルシーのためにできることは非常に限られていました。

[ハイディ] ですが、力を尽くしてロドスと共に戦います。ちょうど今自救軍と奮闘しているのと同じように。

[ロックロック] ……またサルカズ兵が来た。

[ドローン] うん。私もあんまり空気が読めないことは言いたくないんだけど……事態が緊迫してるからね。こっちに向かってるのは一部隊じゃすまないよ……全工場のサルカズ兵が集まってきてるみたい。

[ドクター選択肢1] この建物が占拠されたことに気付いたんだろう。

[ハイディ] ええ。ドクター、皆様が動いてくださっていますが、稼げる時間はほんのわずかです。

[ハイディ] ですから、ドクターには一刻も早く脱出する方法を考えていただかないと……

[ドクター選択肢1] もう少し待て、我々の仲間がまもなく到着する。

[ドクター選択肢2] 彼はすでに東側の入り口にいる。

[ハイディ] 仲間……

[ハイディ] ……彼?

[ハイディ] 一人だけですか? それとも小隊?

[ハイディ] ドクター、マンフレッドが鍛えたサルカズ兵は強敵です。どこかに潜んでいるかもしれません……油断は禁物です。

[ドローン] みんな、なんか……変なことが起きてるよ! おかしいよ、前の方にいるサルカズが戦い始めた……ゴホンッ、えっとつまり、サルカズが別のサルカズとやり合ってるの!

[ドローン] 待って、あれって……サルカズの傭兵?

[ハイディ] ……きっと例の奇妙な傭兵ですね。彼らのうちの一人が、午後に私たちを助けてくれたようでした。

[ロックロック] サルカズの傭兵が?

[ロックロック] うそだっ、あたしは信じない! あの時はそいつらがビルをさらっていったんだ……ゴホゴホッ! あたしは……

[自救軍戦士] ロックロック、興奮するな。傷が深いんだから……

[ロックロック] あたしは平気、でもビルはどうなってるかわからないんだよ!

[ロックロック] 隊長、みんなにちゃんと説明して……

[フェイスト] ……ハイディさん、サルカズの傭兵が助けてくれたって話だけど、具体的には何をしてくれたんだ?

[ハイディ] 私に合図を送っているように見えました……

[ハイディ] ですが確信は持てません……

[ハイディ] あれは何の合図だったのでしょうか?

[ホルン] ……

[マンドラゴラ] ……

[ダブリン兵士] このヴィクトリア兵たち……殺しますか?

[ロッベン] ダブリンのクソ野郎ども! 絶対に……

[ダブリン兵士] 上官、どうして動かないんですか?

[マンドラゴラ] ……

[ロッベン] ホルンさん! どうして私を止めるんです! どれだけの仲間が奴らに殺されたか忘れていませんよね!

[ホルン] ……

アーツを放つ前、ダブリンの術師はいつも、両の手を高い位置に上げる。

あの両手が、掲げられたアーツユニットが、チェロを……そして他の多くのヴィクトリア兵の命を奪った。

ホルンの手は袖の中のクロスボウを掴んでいる。

マンドラゴラの指がわずかでも上がる気配を見せれば、彼女はすかさず引き金を引くだろう。

あるいは……今すぐそうするのも悪くないように思える。

そして相手の目に、自分と同じ考えが浮かんでいるのが見えた。

[サルカズ戦士] どういうことだ? 南エリアで爆発だと? なに、壁全体が爆破された? そんなの内側からしかできないだろ……クソ!

[サルカズ戦士] 行くぞ、すぐに応援に向かう――

[ダグザ] ……これは撤退の合図か?

[モーガン] え、ドクターからそんな合図があるって言われてないけど……でもサルカズ兵たちがみんな退いてくってことは、吾輩たちの任務は完了ってことかな?

[???] 問題ない。先に行くといい。

[モーガン] ……誰?

[モーガン] あんたはロドスの……

[???] この後の任務は、俺が引き継ぐ。

[ダブリン兵士] 上官、サルカズが撤退しました! これはチャンスです! 我々は入りますか、それとも……

[マンドラゴラ] ……

[マンドラゴラ] 行くわよ。

ホルンは瞬き一つしなかった。クロスボウから手を離すことなく、マンドラゴラの後ろ姿をじっと見つめる。

一矢……この距離なら、たった一本の矢でいい。引き金にかけた指をそっと動かすだけで足りる。それだけで、チェロの胸を飾った血の花が、この殺人者にも咲き誇る。

クロスボウはホルンが改造したものであるから、威力に限りがあることは彼女自身が重々承知していた。しかし今、相手との距離はこれほどまでに近い。ならば、すれ違う瞬間に……

[ロッベン] ホルンさん、奴らは行きました。

[ホルン] ……

[ロッベン] 本当に頭に血が上って自分が抑えられなくなるんじゃないかと心配していましたが……ホルンさんが止めてくれたおかげです。あなたは正しい、こんな所でダブリンと衝突は起こせません。

[ロッベン] もし本当にやり合いことになったら、サルカズに我々の存在が露見してしまうでしょう。それが一番最悪の事態です。

[ロッベン] しかし……あのマンドラゴラが黙って去るとは。今までの彼女であれば狂ったように我々に攻撃を仕掛けていたはずです……彼女は何をしに行ったのでしょう?

[ホルン] ……

ダブリンは何をしに行ったのか?

その問いの分析をホルンは拒絶した。彼女の指先は熱く、沸き返った血は、未だに落ち着く様子もなく煮え立っていた。なぜ自分は引き金を引かなかったのか?

マンドラゴラは……なぜあの時のように手を上げなかったのか?

こうした問いが、胸の内で彼女にだけ聞こえる音となって何重にも反響している。こだまするのは……明らかに後悔の声だった。

しかしそれを口に出すことはできない。

そばにいる兵士が望んでいる言葉ではないからだ。

[ホルン] ……マンドラゴラにばかり気を取られないで。今私たちのターゲットは彼女ではないわ。

[ロッベン] わかりました。ホルンさん、次はどうしますか? ダブリンに続いて侵入しますか?

[ホルン] ……その通りよ。

[ホルン] 当初の計画は変更よ。次の突入でも隠密行動を維持するわ。みんないいわね?

[ホルン] ブレイク、あなたはそのまま先頭を担当して。サルカズの警備を発見したら、即制圧。ロッベン、あなたはブレイクの後ろについて、必要に応じて火力で支援して。

[ホルン] その他の者は、私に続いて。

[ホルン] 前方のあの裂け目が見える? あれはダブリンがご丁寧に残してくれた突破口よ。彼らは先を行ってサルカズを片づけてくれてる。これを利用させてもらいましょう。

[ホルン] 覚えておいて。私たちは五人で来たの――必ず五人で帰るわよ。いいえ、違うわね……より多くの戦友を連れて、このサルカズの監獄から出るのよ。

[ホルン] 何かあったら合図を出すから、私の手に注目しておいて――

[ホルン] ――

[ホルン] 行動開始!

[フェイスト] ゴホゴホッ……ゴホゴホゴホッ……今の爆発は何だ? クロージャさん、あんたがやったんじゃないよね?

[ドローン] 故障――故障――再起動――

[フェイスト] うーん、いや、クロージャさんじゃないね。あの人は自分のドローンを平気で爆破できるような人じゃない。

[ハイディ] ドクター、これがあなたの計画ですか? 少々……やりすぎでは?

[ドクター選択肢1] 違う。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] そういうことになるかな?

[アーミヤ] ドクター、もしかして……

[ロックロック] 見て、煙の中から誰か出てきた! ……またサルカズっ! ロック十七号――

[???] どうしていつも武器が私の方を向いてるのかしらね? それに……また新しい子?

[???] {@nickname}、これがあんたの援軍に対するもてなし方なの?

[ロックロック] ……ロドスの人?

[アーミヤ] ロックロックさん、彼女から照準を外さないでください。

[???] ウサギちゃん、少し会わなかったくらいでそんなに冷たいの? それじゃ……悲しいじゃない。

[アーミヤ] フェイストさん、付近にまだ源石爆弾があるか確認できますか?

[フェイスト] そんな時間がない。まだ救出しないといけない人がいるし……

[???] そうよ、残念ね。お互いに挨拶する時間もないなんて。

[???] ハイディ、こっちへ来てもらえるかしら。

[ハイディ] ……私を訪ねてきたのですか?

[???] あのね、そんな渋らないでくれない? 会ったばっかりだし、あんた{@nickname}のこともそんな好きじゃないでしょ。

[???] もしあのババア……えーっと、あんたがだーい好きなあいつから来るよう言われてなきゃ、あたしだって来たくなかったわ。

[???] ここのサルカズならみーんな知ってるわよ、あたしのギャラはとっても高いの。

[ハイディ] ケルシーがあなたに依頼を?

[ハイディ] 爆発が得意なサルカズの傭兵……

[ハイディ] あなたは……あなたがWさんですか?

[W] わぁ、あいつあたしのこと話してたの? 感動すべきかしらね? これだけいる昔馴染みの中に、一人くらいはあたしのことを心から思ってくれてる人がいたって。

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