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吾れ先導者たらん_GA-6_レクイエム_戦闘後
階上のセシリアが古いサルカズの歌を高らかに歌い、鐘の音が鳴り響く。「教皇」と呼ばれる老人がサンクタに問う。「これは我々にとって幸か、それとも不幸か?」と。
鐘楼の通路は狭くて、足元の石階段は湿っててつるつるする。石壁はごつごつしてて、触るとひんやりする……まるであの森の木みたい。
足音が通路に響き渡る。この先には何があるんだろう?
わたしはサンクタとサルカズの子ども……修道士さんたちは、わたしに何かが託されてるって言ってた……
それは、聞いたことのない言葉だったけど――
でも、それを言ってる時のロゼラお姉ちゃんの顔は覚えてる。
目を伏せて、ちょっと微笑んでて、両手を重ねてた。まるで手の中に宝物があるみたいに。
修道士さんたちは……みんなは、わたしに何をしてほしいの? 全然わからないよ。
だけど、自分のやるべきことはわかったよ。一番やるべきことは、わたしがやりたいことなんだ。
サンクタでも、サルカズでも関係ない……
わたしはセシリア。
セシリアとして、わたしのやりたいことをやるだけだよ。
......
さようなら、ママ……わたしを見ててくれる?
[フェデリコ] エゼル、左前方です。
[エゼル] うわっ!
[エゼル] 危なかった!
[オレン] あのよ、埒が明かねぇし、もうやめにしねぇか?
[オレン] ……ったく人の話を聞かない奴だな。
[オレン] エゼル、お前は何よりセシリアの身の安全が大事なんだろ? だったら俺の手に渡った方が安全かもしれねぇぜ?
[エゼル] 信じると思いますか?
[オレン] 俺は嘘をついたことねぇんだ。
[エゼル] たとえ本当だとしても、セシリア自身が望まないなら認めません!
[オレン] ……アンドアインも面倒なことをしてくれたもんだな。
[エゼル] !!
[フェデリコ] エゼル、集中してください。
[エゼル] いや……フェデリコ先輩……
[エゼル] 何か感じませんか……
[オレン] これは……
空気が震えている。
何かが虚空の中から溢れ出しているかのように。
それは強大で純粋な力だった。しかし、いかなる既知のアーツとも異なる。
古の構造体が呼び覚まされようとしている。
忘れ去られた音が鳴り響こうとしている。
[フェデリコ] エゼル、作戦変更です。鐘楼へ向かい状況を確認してください。
[フェデリコ] 反逆者のトランスポーターは私が引き受けます。
[ヴェルリヴ] 教皇聖下、これは!
[教皇] シーッ――静かに。
[教皇] ヴェルリヴ、ホールを閉鎖し、面会の予定を一旦すべてキャンセルしなさい。
[ヴェルリヴ] 一体何が起こっているのです?
[教皇] ……
[教皇] 私の前任者――つまり先代の教皇は、歴史の研究をこよなく愛していた。聞いたことはあるかね?
[ヴェルリヴ] ……いえ、初耳です。
[教皇] うむ、それも無理はない。粗雑なお方で研究記録には誤りが多く、とても褒められた文章ではなかったからね。
[教皇] 歴史の研究というよりも、歴史を題材に、想像力を働かせて楽しんでいたと言うべきだろうか。
[教皇] あのお方はね……かなりロマンチックな比喩を好んで書いた。歴史論文としては感情過多と言わざるを得ないが、確かに印象深いものではあった。
[教皇] 「歴史、それは形なき巨人が大地に書いた無限なるポリフォニーの楽章である」……と度々語っていたものだ。
[教皇] その比喩に照らしてみれば、その巨人の音楽家が、新たな一小節に差し掛かったのかもしれないね。
......
肺の中の空気をすべて絞り出し、間髪入れずにまた肺いっぱいに吸い込む。
つまずき、必死に身を起こして、また前へと突き進む。
何かが起ころうとしている。それをはっきりと感じた。
鐘楼の頂上、その扉の向こう、セシリアのいる場所で、何かが起ころうとしているのだ。
扉を開けると――
やせ細った少女がそこで歌っていた。
古いサルカズの歌を。
真剣に歌う彼女の幼い声に、すべての感情が注ぎ込まれていた。
僕は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。自分の乱れた呼吸が歌声の邪魔になるのを恐れて、必死に息を抑える。
ふと、僕は何も聞こえなくなっていることに気付いた。
ただ唯一鐘の音だけが、まるで古を越えてやってきたように響いていた。
[ヴェルリヴ] ……鐘の音……啓示の石塔から……そんなことが……!?
[ヴェルリヴ] 今まで鳴ったことなんてないのよ!?
[ヴェルリヴ] ……いや、唯一……
[教皇] 数千年前、初代の聖徒がまだ地上を闊歩していた時代……
[ヴェルリヴ] ……
[教皇] 「日中、サンクタが天を仰げど陽は見えず、漆黒の空が広がるばかりだった。夜が更けると、悪魔の軍勢が押し寄せ数多のサンクタを殺めた。かくして、サンクタは多くの輝きを失った。」
[ヴェルリヴ] ……「聖徒たちが『我々に付き従え』と呼びかけると、石の塔がそびえ立った。聖徒たちが『我々に耳を傾けよ』と呼びかけると、鐘の音が鳴り響いた。」
[感動する市民] 「鐘の音が荒野にこだますると、サンクタの心は一つになった。」
[信心深い市民] 「これは啓示であり、これは戒めなのだ。」
[感動する市民] 「それ以来、陽光が遮られることはなくなった。」
[信心深い市民] 「聖徒たちは『サンクタの楽園となる都市を建てなさい』と呼びかけた。」
[アンドアイン] 「聖徒たちは『それをラテラーノと呼びなさい』と言い渡した。」
[パティア] ……こんなことって……
[アンドアイン] 啓示の石塔はラテラーノで最古の建造物の一つ……いや、書物によれば、まず先に啓示の石塔があり、それからラテラーノが誕生したようだ。
[パティア] そして、その石塔の聖鐘が今再び鳴った……
[アンドアイン] あの幼きセシリアによって。
[ヴェルリヴ] ですが、どうして……
[教皇] 巨人の音楽家が楽章にいくつかフォルテシモを加えようとして、その際に目に留まったラテラーノの古い鐘を割り当てたのだろう。
[教皇] 枢機卿ヴェルリヴ、今この瞬間、聖堂にいるのは我ら二人だけだ。これは果たして幸か、不幸か……
[ヴェルリヴ] ……教皇聖下、聖鐘が鳴った原因をすぐにでも明らかにする必要があります……いえ、実際の原因が何であれ、その原因を提示し、解釈するのは……教皇庁でなければなりません。
[ヴェルリヴ] 諸国の使節がラテラーノに集まっている今ならば、出席者がその証人となってくださいます。これはチャンスとも言えるはずです。
[教皇] ならば行くがよい、ヴェルリヴ。使節たちに知らせるのだ――数千年の時を経て再び鳴り響いた聖鐘の音は、変革をもたらす予兆であるからして、我々は団結しこれからの未来に備えねばならないと。
[ヴェルリヴ] では啓示の石塔の方は……?
[教皇] 時が満ちたら、こちらも動くとしよう。
[パティア] 先導者様、もしかして……こうなることを知っていたんですか? セシリアは一体何者なんですか……あ、あの子は混血ですが……まさかまだ何か秘密があるんですか?
[アンドアイン] いいや、まさか。あの子は私たちの知るセシリアそのものさ。いささか特別な境遇の子ではあるが、何も秘密なんてないよ。
[アンドアイン] もしかすると、ラテラーノ自身が変化を渇望していて、セシリアは……ちょうどその瞬間に居合わせただけかもしれないね。
[アンドアイン] あるいは、あの子は本当に長きにわたるサルカズとサンクタの亀裂を埋める資質を有しているのかもしれない。啓示が舞い降り、聖鐘が鳴り響くほどのね。
[アンドアイン] もちろん、あの聖鐘の音は単なる誤解や偶然、あるいは歴史に埋もれた悪い冗談でしかない可能性もある。
[アンドアイン] しかし知っての通り、最も重要なのは真相ではないんだ。
[パティア] はい……いずれにせよ、あたしたちにとってはチャンスです。この瞬間に居合わせることができたのは、あたしたちもまだ神に愛されているという証拠かもしれません。
[パティア] 今、教皇庁の注意は使節の滞在エリアと啓示の石塔に向いているはず……
[パティア] ……あたしたちが道を作ります。先導者様はただひたすら突き進んでください。
[レミュアン] ……アンドアイン、鐘が鳴ったわ。
[アンドアイン] この鐘の音は、まもなく旅に出ようとしている少女によるものだ。
[レミュアン] そうなのね。
[レミュアン] 晴れやかな口調だけど、ようやく決心したのね。
[アンドアイン] 決心が揺らいだことなどないよ。
[レミュアン] すべてを差し出すことになっても?
[アンドアイン] ああ、すべてを差し出してでもだ。
[レミュアン] ……それに意味はあるの?
[アンドアイン] 意味か……意味は何もないところに降って湧きはしない。私たちの選択はどれも、そこに「意味」を構想し、形を作り、舞い降りる機会を与えているだけに過ぎないよ。
[レミュアン] そう。わかったわ。
[レミュアン] あなたにいつの日か安らぎが訪れますように。
[アンドアイン] パティア、君のさっきの言葉は、我々の初志に背いているよ。
[アンドアイン] 人々は誰もが礎であるべきだ。我々が重なり合って築かれた平坦な道は、後から来る者のためにある。
[教皇騎士] 今すぐ教皇聖下と面会せねばならん!
[修道士] 銃騎士タルヴァドレ様、教皇聖下はただいま祈りを捧げておられますので、いかなる面会も受け付けておりません。
[教皇騎士] しかしこの状況は!
[修道士] どうかご了承ください。
[教皇騎士] 爆発?
[修道士] おそらく、また市民たちのいたずらでしょう……
[教皇騎士] いや違う! 爆発音は使節滞在エリアからだ! あそこでの爆破行為はすべて禁止されているはず!
[護衛隊衛兵] じゅ……銃騎士タルヴァドレ様、使節滞在エリアが襲撃を受けています! また、それ以外にも都市内の複数箇所で火災と爆発が起きています!
[教皇騎士] 迷い人め! 聖鐘の音を聞き、ついに大きく打って出たか!
[護衛隊衛兵] 使節滞在エリアの警備は銃騎士様たちに対応していただいておりましたが……襲撃と爆破を受け、使節たちはパニックを起こし、銃騎士を増派せよと強く要求しております……
[教皇騎士] わかった。
[教皇騎士] クソッ、こんな時に!
[教皇騎士] 枢機卿ヴェルリヴ!
[ヴェルリヴ] 啓示の石塔の聖鐘が数千年の時を経て再び響き渡った……この最も神聖な瞬間に、第一回「万国サミット」の開催ができること、そして使節たちが居合わせたことを我々は喜ぶべきです。
[ヴェルリヴ] しかし異端の残党がこれに乗じて混乱を起こし、サミットの妨害を企てることでラテラーノの栄光を曇らせようとしています。
[ヴェルリヴ] 銃騎士タルヴァドレ殿、教皇聖下の命により、すぐに使節滞在エリアへ向かってください。銃騎士一丸となり使節を保護し、サミットが滞りなく開催できるよう手を尽くしてください。
[ヴェルリヴ] 私も同行いたします。
[教皇騎士] わかった。だが、枢機卿……
[教皇騎士] あなたも感じたはずだ。啓示の石塔から広がるあの力は……
[ヴェルリヴ] どうか言葉をお慎みください、銃騎士タルヴァドレ殿。
[ヴェルリヴ] あれは栄光に他なりません。
[フィアメッタ] レミュアン、これもあいつがやったの!?
[レミュアン] ……かもしれないわね。
[フィアメッタ] この期に及んで、まだあいつをかばう気!?
[レミュアン] フィアメッタ、こっち来て。
[フィアメッタ] なによ。
[レミュアン] いいから。
[フィアメッタ] ……?
[フィアメッタ] ……!?
[レミュアン] ごめんなさい、フィアメッタ。
[レミュアン] 一昨日、あなたにあんなこと言うべきじゃなかったわ。
[フィアメッタ] ……いいから離して。
[レミュアン] あなたが許してくれるならね。
[フィアメッタ] 確かにあなたにも腹は立ってる。
[フィアメッタ] ……でもそれ以上に腹が立つのは……
[フィアメッタ] ……自分自身なのかもしれないわ。
[レミュアン] フィアメッタ、一つだけ、信じてほしいの。
[レミュアン] もし彼が本当にラテラーノに危害を加えようとするなら……私は絶対に放ってはおかない。
[フィアメッタ] じゃああいつは一体何がしたいの?
[レミュアン] ……たぶん、彼には問いかけたいことがあるんだと思う。
[フィアメッタ] 誰に?
[レミュアン] ……教皇聖下に。
[フィアメッタ] ……何を?
[レミュアン] サンクタが……問うべきじゃないことを。
[フィアメッタ] もう少しわかりやすく言ってくれない?
[レミュアン] ……ごめんね、私もよくわからないの。きっと、彼が心の中にずっとしまっていた問いだと思う……本人から直接聞いたわけじゃないし、私の臆測でしかないけどね。
[レミュアン] でも八年前のことは、間違いなくその問いと関係しているわ。
[フィアメッタ] ……ってことは、モスティマも知ってたの?
[モスティマ] そんなわけないでしょ。私はレミュアンとは違うんだからさ。
[モスティマ] レミュアンはあいつのことを理解しようとしてそういう考えに至ったんだろうけど、私は……あいつなんて気にする価値もないと思ってるからね。
[モスティマ] アンドアインは確かに可哀想な奴だけど、私もいちいちあいつの考えを理解してあげるほど暇じゃないってこと。以上。問題ある?
[フィアメッタ] ……レミュアンよりあなたの方にムカついてきたわ。
[モスティマ] ……私は自分にできることは全部やったからね。でも君はさ、自分が身替わりになれたら良かったのにって後悔してるんじゃない?
[フィアメッタ] ……
[フィアメッタ] レミュアン、他に知ってることを全部教えて。
[レミュアン] あなたは聞きたくないと思うけど。
[フィアメッタ] 聞いてみないとわからないでしょ。
[教皇騎士] ……
[教皇騎士] セシリア・ラポルタ。教皇の命により、君を保護する。
[セシリア] どうして? 鐘が鳴ったから……?
[セシリア] 鐘が鳴ったことが、わたしと関係あるの?
[教皇騎士] 答えられない。
[教皇騎士] 即刻、私と共に大聖堂まで来てもらおう。
[エゼル] ……
[セシリア] エゼルお兄ちゃん、大丈夫だよ。
[セシリア] 行こう。
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