aklib_story_吾れ先導者たらん_GA-1_灯台下暗し_戦闘後

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吾れ先導者たらん_GA-1_灯台下暗し_戦闘後

パティアという名のリーベリが現れ、「セシリアを守るため」と彼女を奪おうとする。「あんたが本当にセシリアを気にかけているなら、絶対に公証人役場や教皇庁に渡さないことね」という言葉が耳に残った。


[フィアメッタ] それで、もう車椅子なしでも動けるようになったの?

[レミュアン] うん、いい感じに回復してるわ。

[レミュアン] 何を隠そう、去年この病院の車椅子早撃ち大会で優勝しちゃったくらいよ! ……お医者さんに次からは出場禁止って言われちゃったけどね。

[フィアメッタ] 射撃の腕だったら、銃騎士でも連れてこないとあなたの相手にならないでしょ。

[レミュアン] あら、うれしいこと言ってくれるじゃない。

[レミュアン] 誰かさんもフィアメッタみたく素敵な言葉をかけてくれると、もっとうれしいんだけどね。

[フィアメッタ] モスティマ、いつまでそこでカーテンと同化してるつもり?

[モスティマ] 私がそんなキャラじゃないって知ってるでしょ、レミュアン。

[レミュアン] どんなキャラだったかしら? 私、記憶力が悪いから、二、三年に一度しか帰ってこない人のことなんて忘れちゃうのよ。

[モスティマ] はいはい、言えばいいんでしょ。レミュアンの射撃の腕はぶっちぎりで一番だよーっと、これでいい?

[レミュアン] やればできるじゃない。

[レミュアン] エルは龍門で元気にしてる?

[モスティマ] ちょっと前に会ったけど元気にしてたよ。

[モスティマ] あの子の心配するより、自分の心配しなよ。

[レミュアン] その言葉、そっくりそのままお返しするわ。

[レミュアン] 今回はどのくらいいるつもりなの?

[モスティマ] さあ。でも、少なくともサミットが終わるまではいるつもりだけど……再来週の水曜日だっけ?

[フィアメッタ] 火曜日よ。

[モスティマ] ああそうそう火曜日だったね。あとはヒゲ爺さんの気分次第かな。どんな任務を投げられるかわかったもんじゃないからね。

[フィアメッタ] あなた今、教皇聖下のことを……

[モスティマ] いいのいいの、そんなの本人も気にしてないんだから。

[レミュアン] 長めに滞在したいんなら、手を貸してあげてもいいわ。

[モスティマ] へぇ……どう手を貸してくれるのかな。

[レミュアン] あら、もうわかってるんでしょ?

[フィアメッタ] どういうこと? あなたたち何の話してるの?

[モスティマ] あれ、フィアメッタ……まさか気付いてないの?

[モスティマ] ここ半年、私や君の報告書は誰の手に届いてたと思う?

[レミュアン] そんなにわかりやすかった?

[フィアメッタ] え、なに? ……レミュアン、つまりあなた……教皇庁で働き始めたの? でもまだリハビリ中でしょ……?

[レミュアン] 心配しないで、ただの書類仕事だから。

[モスティマ] これからはそっちの道に進むつもり?

[レミュアン] まだわからないわ。

[フィアメッタ] じゃあ護衛隊に戻るつもりは?

[レミュアン] きっともう戻れないでしょうね。

[フィアメッタ] ……あなたの射撃の腕がこのまま埋もれてしまうなんて……もったいなさすぎるわ。

[レミュアン] ほんとに私を高く買ってくれているのね。でも、あの時私がやらかしたからこうなってるんでしょ。自業自得よ。

[フィアメッタ] ……

[フィアメッタ] あれはレミュアンのせいじゃないわ。

[レミュアン] あなたの責任でもないわ、フィアメッタ。

[レミュアン] あまり気を張りすぎちゃダメよ。

[フィアメッタ] ……いつか、あいつにはケジメをつけさせるわ。

[レミュアン] ……ねぇ、モスティマ……

[レミュアン] 角、触っていい?

[モスティマ] ダメ。

[レミュアン] ケチ。

レミュアンが窓の外に目を向ける。モスティマは窓辺に寄りかかりながら、手にした花をもてあそんでいた。

フィアメッタはふと、昔を思い出した。

ラテラーノの初春は、いつもうららかな日差しが差し込み、空気は少しばかりの肌寒さを帯びている。

窓からは、大小様々な教会の屋根が遠くに見え、時折羽獣が空を横切る。

レミュアンは普段から穏やかで、少し話すだけでその場の空気を和ませた。

クールを装いがちなモスティマも、知らず知らずのうちにリラックスしたのか、無意識に笑顔を浮かべていた。

......

あの頃と同じように。

まるで何も起こらなかったかのように。

しかしそれは、ただの錯覚だった。

フィアメッタはあれから、よく眠れなくなっていた。

[フィアメッタ] レミュアン……

[モスティマ] ねえレミュアン、気になってたんだけどさ……

[モスティマ] この病院ってボランティアの人が多かったりする?

[レミュアン] え? 普通だと思うけど。

[レミュアン] どうぞ。

[真面目な医者] レミュアンさん、あなたに見せたいものが……

[真面目な医者] あっ、ご来客中でしたか?

[レミュアン] 大丈夫よ、二人とも昔の戦友だから。

[真面目な医者] 戦友……もしかして!

[レミュアン] ええ。

[真面目な医者] それなら、この検査結果を皆さんに見てもらえると……

[ヴェルリヴ] オレン、自分が何をしたかわかっているの?

[オレン] いいやわかんねぇな。お教えいただこうか。

[ヴェルリヴ] 公爵夫人はあれを「あなた個人の行動」とは見なさないわ。

[オレン] ああ、俺たちが「ラテラーノの姿勢」を示したと見なすだろうな。

[ヴェルリヴ] 一歩間違えれば、外交問題に発展してしまうかもしれないのよ。

[オレン] それこそお前の望み通りじゃないのか?

[オレン] 対立は問題を引き起こし、問題を解決するには手段が必要になる。

[オレン] そこにきて、ラテラーノが新しい手段を提示してやるってわけだ。

[ヴェルリヴ] ラテラーノがそれをやるには、二つの前提条件があるわ――私たちの発言に十分な重みと、十分な「適切さ」があることよ。

[オレン] そうだ、ラテラーノには「適切な態度」が求められる。もし俺たちが利のある方を選ぶだけになっちまえば、ラテラーノなんて必要なくなるだろ。

[オレン] ――そうでしょう、教皇聖下。

[教皇] ヴェル、君は彼の言う通りだと思うかね?

[ヴェルリヴ] いえ、彼はそれらしいことをしたり顔で語っているだけです。

[ヴェルリヴ] ラテラーノがこの大地に根を張り、レガトゥスが諸国を行き来できるのは、つまるところ信仰があるからです。

[オレン] いいや、俺たちが諸国を行き来できるのは、ラテラーノという国自体の影響力によるものだぜ、枢機卿サマ。

[オレン] 本物のラテラーノ信仰なんて、サンクタ以外には及ばないことくらいみんなわかってる。信仰に頼ってばかりはどうなんだろうな?

[ヴェルリヴ] オレン、死にたいのなら直接そう申請すればいいわ。

[教皇] 君たち二人はなぜいつも喧嘩してばかりなのかね。まったく理解に苦しむよ。

[オレン] ……ヴィクトリアからラテラーノへと戻る際、ゴドズィン公爵に一つ質問をされました。

[オレン] ――「ラテラーノのどこに私を魅了できる点がある?」と。俺なんかに答えられる問いとも思えませんが、どう答えれば良かったのでしょうか。

[ヴェルリヴ] ……

[オレン] 聖下、いずれ俺たちがテーブルに着く時、手札は十分に揃っているのでしょうか?

[教皇騎士] 聖下、モスティマが通話をしたいと。

[教皇騎士] 当人曰く、他の者には聞かせられない報告があるとのことです。

[オレン] であれば、俺はお先に失礼させてもらいますよ。

[教皇] ああ、皆下がってくれるかね。

[教皇] 繋いでくれ。

[教皇騎士] はい。

[モスティマ] 教皇聖下、お久しぶりです。

[教皇] 久しぶりだね、我が子よ。レミュアンは元気だったかね?

[モスティマ] お見通しでしたか。

[モスティマ] それで、その病院で面白いものを見つけたんです。

[教皇] うむ、聞かせてくれ。

[モスティマ] とある身体検査の結果報告を見たんですが、そこで個人的にとても馴染みのある指標をいくつか目にしまして。

[教皇] ……直に話すとしよう。大聖堂に来てくれるかな。

[モスティマ] わかりました。一応ですが、フィアメッタがこの検査報告の対象者を探しているところです。

[オレン] レミュアンの病院は確か……ステファン区だったか。

[オレン] ステファン区――

[オレン] そして、モスティマに専用回線を使わせるほどの出来事……

[オレン] ……

[オレン] 面倒なことになってきたな。

[親切な看護師] セシリアちゃん、気分はどう?

[セシリア] さっきは頭が痛かったけど……今はちょっと良くなったよ。

[親切な看護師] なら、抱っこしてあげるから行こっか。

[セシリア] ……行く? ……お姉さんは誰?

[パティア] あたしたちはあなたの仲間よ、セシリア。あなたを待ってる人がいるの。

[セシリア] それってママのこと?

[パティア] ……残念だけど、違うわ。

[パティア] セシリア、あなたのママはもう帰ってこないのよ。

[セシリア] どうして?

[パティア] ごめんね、あたしじゃ説明してあげられないわ。

[パティア] ……でも、説明してくれる人の所へ連れて行ってあげる。

[セシリア] ……お姉さん、ごめんなさい。先にママを見つけたいの。

[パティア] ……やっぱり子供の相手は苦手だわ。セシリア、悪いけど行きたくなくても来てもらうわ。ここにいたら危ないの。

[エゼル] セシリア!

[パティア] チッ、なんでこんなに早いのよ……

[エゼル] あなたたちは何者ですか? セシリアをどうするつもりです?

[パティア] ……あんたに知る権利なんてないわ、サンクタ。

[パティア] この子を奪ったのはそっちでしょ。セシリアは元々あたしたちの仲間であるべきなんだから。

[エゼル] ……では、この子の両親の名前、自宅の住所、身分識別番号、およびあなたとの血縁または法的な関係を教えてください。

[パティア] ……チッ、公証人役場の石頭が。

[エゼル] もしセシリアを連れて行く正当な理由があるなら教えてください。そちらも考慮したうえで判断しますので。

[パティア] 相手がリーベリなら考えてあげてもよかったけど、あんたみたいなサンクタは……話にならないわ。

[エゼル] あなたもラテラーノのシンボルを身に着けてるじゃないですか。ラテラーノのリーベリが、どうしてサンクタを毛嫌いするんですか?

[パティア] ……いちいち説明しないとわかんないの? さすが公証人役場のクズだけあって、めでたい頭してるわね。

[パティア] あたしはね、ラテラーノのリーベリはサンクタに友好的だって決めつけてるような奴が大っ嫌いなのよ! 人生で二番目にね!

[エゼル] 理由を述べるつもりがないなら、セシリアは連れて行かせません。

[パティア] それはあんたが決めることじゃないのよ。

[パティア] こいつはあたしに任せて、セシリアを連れて行って。

[親切な看護師] わかったわ。

[親切な看護師] ごめんね、セシリアちゃん。ちょっとだけ我慢してね。

[セシリア] ……いや。

[パティア] 爆発に煙!? どこから!?

[親切な看護師] 窓……! もしかしてあの時……

[エゼル] ……先ほど強い風が吹いていたので、この子が風邪をひいてしまわないように窓を閉めておいてもいいでしょうか。

[パティア] ……このクソ執行人!

[パティア] 一つ忠告しておくわ! あんたが本当にセシリアを気にかけているなら、絶対に公証人役場や教皇庁に渡さないことね! でないと後悔することになるわよ!

[エゼル] ……

[エゼル] セシリア、しっかりつかまってて。

[セシリア] ……うん。

[エゼル] セシリア、大丈夫かい?

[セシリア] 大丈夫。

[エゼル] じゃあ、まずはあの人たちを振り切ろう。

[親切な看護師] あいつ、忠告を聞くかしら……

[パティア] 聞くはずないでしょ。サンクタがみんな楽天家のバカだとしたら、公証人役場のサンクタは、「楽天家」の三文字すら付かないただのバカなんだから。

[パティア] どっちにしろ、セシリアは……何としてでもあたしたちの目の届くところに置いておく必要があるわ。

[親切な看護師] じゃあすぐみんなに知らせないと……

[パティア] もう知らせてあるわ。

[親切な看護師] え?

[パティア] さっきあいつと話してた時にね。

[親切な看護師] なるほど……そのためににわざわざおしゃべりして時間を稼いでたのね……

[パティア] そうよ。もうあいつは逃げられないわ。

[フィアメッタ] ……どうして病室のドアが開いてるの?

[フィアメッタ] あなたは……パティア?

[パティア] ……

[フィアメッタ] この病室に八歳のサンクタの女の子はいる?

[パティア] いないわ。

[フィアメッタ] 来る途中で爆発音が聞こえたんだけど、もしかしてあなたたちと関係あるの?

[パティア] ラテラーノで爆発音なんて普通のことでしょ?

[フィアメッタ] ……あなた、本当に私が知っているあのパティアなの?

[パティア] フィアメッタ、あんたの探してる子はもう退院したわ。

[フィアメッタ] (確かにいないみたいだけど……)

[フィアメッタ] じゃああなたどうしてここにいるの?

[パティア] なによ。あんたはここに来てよくて、あたしは来たらダメなの?

[フィアメッタ] もしかして護衛隊もあの子を探してるの? あなたたちはどこから情報を得たの?

[パティア] ……護衛隊ならとっくに辞めたわ。あんたこそどこぞのレガトゥスの護衛をやってたんじゃないの? まさか、わざわざそのサンクタの子を探すために帰ってきたの?

[パティア] サンクタを追っかけ回すのがそんなに楽しい?

[パティア] あんたみたいなリーベリなら……

[フィアメッタ] パティア、私が去ってから何かあったの?

[パティア] あたしを気に掛けてるふり? 白々しいこと言わないで。

[フィアメッタ] ……その態度はいただけないけど、もういいわ。

[フィアメッタ] 例の子がいないなら、こっちもあなたに構ってあげられる時間はないから。

[パティア] あたしに何があったか聞くよりも、自分のやってることを振り返ってみなさいよ。フィアメッタ……先輩。

[???] やれやれ。パティア、てっきりお前は「フィアメッタ先輩」が大好きなのかと思ってたんだがな。せっかくの再会なのに、その態度はないんじゃないか?

[パティア] ……余計なお世話よ。公証人役場のあいつは? どうするつもり?

[???] そうカリカリすんなって。俺にいい方法があるんだ。

[???] だが少しばかりお前の手伝いが必要だ。

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