このページでは、ストーリー上のネタバレを扱っています。 各ストーリー情報を検索で探せるように作成したページなので、理解した上でご利用ください。 著作権者からの削除要請があった場合、このページは速やかに削除されます。 |
統合戦略4 エンディング2
周知の事実として、サーミの意志は時に偏愛を注ぐことがある。
ゆえにそれはかつて、寒さの中に生まれた娘に吹雪を鎮める方法を授け、死に際の戦士には一つの枝が持つ生命力を与えた。
北地の戦士の中で最も敬われた雪祭司は、致命的だった傷を大地の力により癒され、失われた角のあった場所にはその枝が残った。
[サンタラ]……私が吹雪を止めるから、あなたたちはこの場を離れなさい。
[サンタラ]今から言うことを、一秒でも早く北地の戦士に伝えるのよ。
[サンタラ]「過去の記録を塗り替えるほどの厄災が再び訪れた。」
[サンタラ]「氷原の脅威は増大し続けている。」
[サンタラ]それと……
彼の角はすでに、折れてしまっていた。
祝福は大地へと降り注ぎ、与えられた命は枯れ果てた。もはや山にも森にも沢にも帰れぬ身体を、黒い亀裂が覆っている。
[サンタラ]……「前線の重要拠点が陥落した。」
[サンタラ]「けれど、皆の協力で、悪魔と化した戦士たちはすでに制圧されている。」
[サンタラ]……「別れの儀式は、シャーマンのサンタラが引き受けた。」
数えきれない激戦ののち、冬夜の帳はようやく下りた。
山の戦士は、悪魔の侵食が不可逆的なものであることも、自らの意思と命がいずれ、敵の領土と糧に成り果てる運命にあることも、誰よりもよく知っている。
生前最期の行進をしたそのままの姿で凍り付く、その身体はすでに死と虚無に占められている。
だが、サンタラにはわかっていた。意志の灯火が今なお氷原の冷たい風に抗っていることも、わずかに残った意識のおかげで彼らはまだ待てるのだということも。
運命のもたらす苦痛に耐え、眼前の悲劇的な結末にも耐え、彼らはあとに続く者を待っている。
黒く染まりきった傷だらけの身体や、「樹痕」が大地に残した痕跡を穢れなき霧氷が覆い隠す時を待っているのだ。
ゆえにサンタラは、高く杖を掲げて彼らに別れを告げた。
そして英雄は戦士たちを連れ、最後の敵へと、彼らを待ち受ける運命へと立ち向かう。
誰一人叫ぶことも、問いただすことも、振り返ることもない。
運命は定められたものであり、戦士たちもまた、時が経とうと揺らぎはしない。
若き後継者よ――
かくして、戦士の命は凍り付くのだ。
その視線はサンタラの向こう、永遠に変わることなき氷原を見つめ続けている。
サンタラは彼らの碑林を通りすぎ、戦線上の次の拠点へと向かう。
かつてサーミから非常に大きな寵愛を受けた彼女は、自らが今再び風雪に抱かれていることを実感していた。
風を操り、戦士の折れた角へと積もった雪を払い落としているそばから、再び雪が降り積もってくる。
それでも彼女は、今この時より、自分が何度でも執拗にこの地から黒い雪の花を払いのけるだろうことを知っていた。
いずれ、時が来るまでは。
死を恐れぬ訳ではない
凍った地平線から灰色の朝日が昇る中を進む者たちがいた。
彼らは、家を移すため戦士たちに護衛され南を目指す人々だ。ケガや病気のためか、身体の弱さゆえにか、その足取りはひどく重たく、誰もが音もなく雪の中を歩いていた。風音すらも静寂に飲まれ、空漠たる大地に赤子の泣き声だけが響き渡っている。
その時、先頭を歩いていた雪祭司がふと、その泣き声に気を取られたかのように足を止めて振り向いた。薄暗い空の下、山々には闇の帳が下りている。雪祭司の視線は、一行の出発地点––彼らの暮らした故郷の方角を見ていた。すると、その場にいた者たちも耐え切れず、次々に同じほうへと振り返る。
誰かが小さく彼の名を呼ぶ。「エイクティルニル。」
雪祭司は真っ先に再び前を向き直すと、気持ちを静め、一行を連れてまた進み始めた。その手に持った啓示板を強く握りしめれば、小さな木の板はぶつかり合い、小さな音を立てる。
エイクティルニルがこうした場面で感傷的になることは滅多にない。
悪魔の襲撃も、家移りを強いられる人々の姿も、彼は近年あまりに多く見てきている。雪祭司にはサーミと言葉を交わす力があり、北地の戦士たちはこれによって悪魔の出現を予測していた。そのおかげで、事前に部族の者を避難させることも、部隊を動員して戦うこともできるのだ。祖霊の父は彼に特段目をかけており、その問いかけのほぼすべてに答えてくれていたが、災いを予見できてもそこからすべての者が逃れられるわけではない。今この時、彼ら戦士たちに守られながら疲れ切った身体で進み続ける者たちも、運よく生き残った人々でしかないのだ。
──エイクティルニルが彼女を思い出すことはほとんどない。だが、冬牙連峰の曲がりくねった防壁や、木彫りの地図に残る灰の跡を目にした時、その姿は何の理由もなく彼の思考に現れた。彼には、今引き連れている生存者の中に彼女がいる光景をありありと想像することができる。そんな光景を見たこともなければ、彼女が最後に参加していた救助活動に同行していたわけでもないのに、だ。
後ろからついてくる住民たちは、依然静かに足を進めていた。誰もがこうなることを知っていたかのように、何も言わず、不満や泣き言も口にせず、何かを問うてすらこない。彼らが現状に耐えられるのは、いずれは皆に死が平等に訪れ、そうなれば何に縛られることもなく、悪魔に穢されたかつての故郷へと帰り、先祖や家族の魂と再会することができると知っているからだ。
けれども、エイクティルニルにはわからないことがある。それはサーミが唯一答えをくれなかったことだ。──彼女は生きているのか、それとも死んでいるのか、そして今どこに向かっているのか……誰より熟達したシャーマンにも、それを知ることはできなかった。
彼女が装備に詰め込んでくれた、心を安らげる薬草が枯れていくにつれ、エイクティルニルは目に見えない運命を受け入れるようになっていった。恐らく彼は、死後も彼女に再び会うことはできないのだろう。悪魔に成り果てても決して退かずにいた戦士たちと同じように、その姿を見ることはかなわないのだろう。本来であれば……追想すべきなのだろうが、両肩にのしかかる責任はあまりに重く、そんな余裕は彼にはなかった。
エイクティルニルはただ戦い、傷を負っては、それが癒えればまた戦い、決して膝をつくことなく生き続けなければならない。
その命の灯火が消えぬ限り、彼女は記憶の中に存在し続けられるのだ。彼の罪悪感と後悔は、彼女の姿をより鮮やかに、生き生きとさせ続けてすらいた。
運命を受け入れたサーミフィヨドたちは凍土の上を黙々と歩き続けたが、母に抱かれた赤子だけが、風の冷たさに大声で泣いている。シャーマンの呪術医である母親は、子どもをあやすために小さく歌い始めた。彼女の戦士としてのかぶとは外され、そこには薬草や果実が入れられている。
エイクティルニルは子どもに目を向けると、アーツで温めた石をその小さな手へと握らせた。母親は少し微笑んだが、娘に向ける眼差しは徐々に憐れみを帯びたものへと変わっていく。
「私は残念でなりません。」彼女は小声で言った。
「なぜそう思う?」
「この子を、平穏ならぬサーミに産み落としてしまいましたから……」
エイクティルニルはしばらく沈黙し──
「俺も無念だ。」と、そう答えた。
倒錯した運命の嘲り
報せを受けたエイクティルニルはすぐさま、森に潜む黒き刃を追うために、冬牙連峰からサーミの奥地へと戻った。
ウルサス人が意図的に奴を放したのか、あるいは彼らがその傲慢さへの代償を払ったのかはわからないが、サーミの地を侵す異物はすべて排除せねばならない。それは責務だからではなく、サーミフィヨドの故郷たるサーミを、彼らの家たるその場所を守るのは当然のことだからだ。
しかし、今日は何やら不吉な予感がぬぐい切れなかった。平素、エイクティルニルが不安を感じることなどほとんどない。彼は死に対しても、それを超越する恐ろしい存在に対しても、恐怖など感じはしないのだ。
落ち葉は震え、枯れ枝は小さく唸り、風は声なきため息を運んでくる。サーミは語りかけてきたが、その声はできたばかりの穴へと飲み込まれてしまった。
倒れ込んだ動物たちの目に生気はなく、黒い血液が傷口からゆっくりと流れ落ちて、土の上に一筋の血痕を残している。
戦士たちは少しずつ森の奥へと歩みを進めた。死はますます色濃くなり、小さな流れが合わさって小川を作り出していく。枯れた枝葉が空を完全に覆っているにもかかわらず、その小川は満天の星空を映し出していた。
空気は冷たくまとわりつき、霧はまるで白い帳のように、死へと向かう隊列を迎え入れる。
雪祭司たちが呼び出した火の精霊は残灯の如く揺らめく。不吉な小川の果てにたどり着いたその時、エイクティルニルはついにここ数日の推測に対する答えを得た。
亡寒のシャーマンは変わり果ててしまっていたが、道中出会った観測隊から聞いた話と、雪祭司たちの数回にわたる儀式の失敗は、同じ答えを示していた。――彼女はサンタラだ。いや、かつてそうだったもの、と言うべきだろうか。
地面には鋭利な鎧のかけらが散乱し、辺りには黒き亡霊が漂っている。天に届かんばかりそびえ立つ巨木の根元で、サンタラは悪魔の刃を打ち砕いたが、それがもたらした死そのものを消し去ることはできなかったのだ。この歪んだ空間は、もはや現実のルールになど従わない。生まれ変わった寒災の影の中、黒い水流が蠢いたかと思うと――次の瞬間には漆黒のつららと化し、あり得ない軌道と速度を以て、動くことも難しい戦士たちへと襲い掛かった。
エイクティルニルは情けなどかけない。連れ去られたサーミの同胞に手を下すのは初めてではなかった。これまでにも幾度となく、同胞を穢した厄災を討伐してきたのだ。そして、それは彼の率いる戦士たちも同じことだった。
だが、黒き帳が徐々に空間を閉ざしていき、数多の死が生んだ不協和音が生者たちの間に響き渡る中、戦士たちは闘技場に閉じ込められた獣のように次々と倒れていく。もはや彼らには、己の身体が悪魔の餌にならぬよう、まだ戦えるうちに持てる力を振り絞り、己の命を徹底的に絶つことしかできなかった。
そうして最後の戦士が倒れた時、エイクティルニルはついに賭けに出るしかなくなった。彼が黒い水流が折り重なってできた障壁を力の限り攻撃すると、その裂け目から奇妙な色が溢れだす。色彩の入り混じった泥水が四方へ不自然に噴き出して、空中に溜まっていく。エイクティルニルは寒災に走り寄り、厄災の実体に武器をねじ込み、その動きを封じようと試みた。
瞬間、すべての悪魔が凍り付いたように動きを止める。彼の一撃はまさにその核を突いており、あとは雪祭司の力でそれを折り曲げ封じれば、少なくともこの悪魔の生んだ泥沼が外へ流れ出すことはないだろうと思えた。
しかし、地面に散らばる鎧のかけらが突然揺れ動き、瞬時に繋ぎ合わされて、有り得べからざる形を作った。黒き長槍が彼の背を狙う――
もう時間がない。
彼は無傷で帰ることなどできないと悟ったが、反面まだできることがあるという事実に安堵した。
風雪よりも冷たく、堅氷よりも硬く、骨の髄まで凍えるような冷気が雪祭司の身体からあふれ出す。黒ずんだ枯れ木までもが、瞬時に白銀の殻に覆われていく。
永遠にも思える数秒が過ぎ……その場にはもはや、雪祭司も、悪魔も――生と死さえも存在しなくなっていた。
根に帰る流人
サンタラも、この日が来ることを想像していなかったわけではない。
だが、彼女はずっとエイクティルニルを弱い人間だと思っていた。彼はその弱さゆえに己の愛を直視できず、妻の死のことで己を責め、罰し続けていたのだから。エイクティルニルは私情に心動かさずにいられる人ではなかったが、そうして動じる己を許せず、毅然とした自分でいるために目を背けることを選んだのだ。
彼は弱いからこそ忍耐強さを手に入れた。どこまでも多くの重荷を背負おうとしたのだ。人々の魂を厄災の糧とさせず、サーミの腕へと戻してやれるように。幼子が暗闇の中で産み落とされずに済むように、そして誰も吹雪の中へ打ち捨てられずに済むように。
エイクティルニルには、戦闘だけに打ち込み続ける人形のようになることなどできなかった。ゆえに彼は戦う大義や理由に縛られており、それは彼の糧や力や祝福にもなれば、呪いにもなっていた。
そう、呪いでもあったのだ。
仮にこれほど膨れ上がった呪いを受けていなければ、近年ますます頻度を増し、より危険になっていく厄災に抗い続けることなどできただろうか?
だが、あれほど強かったエイクティルニルでさえ、最後には膝をついた。それでも、もしあの場から生きて戻れた戦士がいれば、その人物は間違いなく、あの戦いも特別なものではなかったと証言したことだろう。北地の戦士たちは始終ああいった敵を相手取ってきたのだ。今回はただ、相手の数が多く、息つく暇もなかったというそれだけのことだった。
実のところ、サンタラにはそんな責務を担う自信などなかった。彼女が受けている呪いは、彼のそれに比べれば大したことのないものだ。そもそも、彼に匹敵する愛と呪いを負っているなどと言えるサーミフィヨドはいないだろう。
しかしそれでも、サンタラは十分に幸運だった。死を覚悟して戦った戦士たちとエイクティルニルが最後に残した不屈の意志を、その息吹を目にすることができたのだから。さらに彼女は、遠見の粘り強さも、永久なる狩猟への決心も、危険の中を探索せんとする渇望もその目で見てきたのだ。ゆえにこそ、これまでに形成され、蓄積されてきたものを継承し、この先直面し、打ち砕かねばならないものを乗り越えていけるだろう。
追放者は故郷へ戻り、サーミの意志に見守られながら、幾年も前に背を向けた儀式へと再び挑んだ。新たに生まれた雪祭司は、その重責を負える者なき任へと就くことだろう。
彼女が制御し助けを借りることになる力は、呪いよりも危険なものだが、サンタラの木の娘は生来屈服など知らないのだ。
枯木となりて
戦士は樹下へと向かい、祈りをささげた。
彼は一杯の熱い茶と、自らの捧げものを置くと、樹木に手を伸ばして静かに待った。
災いが迫っている時、木は人々に予言を与えるものだが、どんな運命をも受け入れる覚悟を持ったサーミの戦士にとっては、木を離れる時その手が空かどうかなど気にする価値もないことだ。
だがこの時、彼の目に映っていたのは木ではなかった。それは無数の枝を伸ばし、本能的にサンタラの木の形へと成長した巨大な氷塊だったのだ。
かつてこの氷塊は人々を守るアーツを宿しており、風雪を唸らせては戦士たちの戦線を築き、空間の安定を保たせていた。しかし今では、それは生命力を使い果たした枯れ木のようなもので、あとはゆっくりと融けていくばかりだった。
このアーツは、幾年も前、ある雪祭司が自らの命を投げ打って作り上げたものだ。血肉を棘と成し、命を氷に織り込んで、彼女はここに根を下ろした。「死をもって生者に命を与える」ことが、人々が生き延びるための答えとなることを願いながら。
けれども、戦士の目に映るのは、ただ一本の、祈りを捧げるに値する樹木であった。
彼は、武器が錆び、革の鎧が湿気て腐るまで、手のひらを上向けて長いことそこで動かず立ち尽くしていた。そうして何も得られなかったことを確かめると、身をかがめ、持参した捧げものに手を伸ばして、もはや土と同化しかけている腐った血肉を口にし始めた──これは戦いの準備であり、厳粛な儀式の一部なのだ。
だが、彼には己の敵が何者で、何のために戦うかなどわからなかった。
……
氷塊の中では、源石の結晶が一部始終を見つめていた。それは雪祭司の肉体が崩れ去っても残された異物であり、結晶化した彼女の「目」だった。
それは見ていた。我らが故郷サーミを守っているのだと思い込んでいる戦士たちは、実のところサーミの子らではないことを。初めに、悪魔と直に戦ったサーミの戦士たちの心に混沌の種子が蒔かれ、その後厄災に触れたすべての生命の認識が書き換えられてしまったのだ。
それは見ていた。観測者の変異に伴い、時間の流れが緩慢になり、埋めようのない黒い裂け目によって昼と夜とが曖昧になっていくさまを。
源石は大地の至る所にあり、ゆえにそれは、大地のすべてが同じ影に覆われていることも知っていた。
人々は雪祭司の探究と悲願をすでに忘れていることだろう。というのは、彼らがもはや「生き延びる」という概念を理解できなくなっているからだ。存在は新たな形を与えられ、ほとんど永遠とも呼べる静寂の中を彷徨っていた。
そうしたすべてを見届けてきた源石の目は、何かを考えることも伝えることもない。
今やこの大地から狂った認識を取り除くことは不可能で、無意味なことであるように。
可能性を問い続け、過去を想い、未来を求めて、永遠の静寂と荒廃に抗い続けられるのは生命だけなのだ。
源石には、雪祭司が最期に遺した自問も記録されていた。「私は本当にすべての力を、そして手段を尽くせたのかしら? 私の一族は、一体どこへ向かえばいいの?」
もはや何もない黒い大地に、氷塊は孤独な涙を一筋流した。
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧