0212 施設計画 - 地獄編wiki
0212 食堂の件は、会議を重ねて漸く大体が決まってくる。 先ず、新設の大食堂だけど、みっちゃんと彼女が見込んだ料理人が監督するが、運営は剣菱グループ内のファミレスチェーンが行う。クォリティも大切だが、コスト重視でやってもらう。流石に全部予算垂れ流しではマズイ――請ける会社は、学
0212 食堂の件は、会議を重ねて漸く大体が決まってくる。 先ず、新設の大食堂だけど、みっちゃんと彼女が見込んだ料理人が監督するが、運営は剣菱グループ内のファミレスチェーンが行う。クォリティも大切だが、コスト重視でやってもらう。流石に全部予算垂れ流しではマズイ――請ける会社は、学
0210 ゴールデンウィークのことだけど、学校が休みでお店も開けないから、私も喫茶店に出るよと言う話になった。 折角だから、私と醒ヶ井さんの二人でお店を回して、店長は軽く旅行にでも出たら? と提案すると、店長は有難く余暇を頂戴したわけである。 どうも、店長は息子二人を連れて行きた
0213 国会が解散する。 今まで積み上げてきたものを一気に開放する時である。 行動党は転生者八名と同調した現役参議院議員六名、衆議院議員五名の政党として登録済みだ。 現役の議員は地元から出馬し、(党本部に誰もいないのはマズイだろうと言う理由で)比例でのみ立候補した羊子さん以外、
0204「温泉ですか?」 綾夏さんから突拍子もない計画を耳にする。「そうそう。学校の生徒も職員も増えるし、来客も増えるでしょ? それなら自分たちの為に掘ったことにはならないでしょう?」 私の聞きたかったことは、そういうタテマエではなかった。「当たるかどうか分からないのにですか?」
0217 今日の記者会見で、やや偏見のある記者に失礼な質問をされた。質問の内容自体はどうでもいいようなモノだが、言葉の端々に我々が異質の存在である事を仄めかしていた。 一方、その記者に快く思わない別の記者が、無駄に不死者を称揚していたので、これもこれでこそばゆかった。 会見は大過
0216 学校では、恐ろしい速度で工事が進んでいく。 新鋭の工法を使っているそうだが、山が一瞬で消えていくのには驚く。 あそこが平になると、こちらに手を付け、更に向こうの山が裸になると言う具合に進んでいく。 平地が出来れば最初にプレハブの寮が出来る。すぐにでも入寮する必要のある人
0214 引っ越してからというもの、暇を見つけては心音ちゃんのレッスンを受ける事が多くなった。「ちさとちゃん、多分、"自分が歌ってもそんなに上手くならないだろうな"って思いながら歌ってるでしょ?」 直球でグサリとくる。「いや、怒ってないからいいんだけど、やっぱ
0205 学園祭の時、舞台で歌って踊っていた五人組の映像が、動画共有サイトに流れた。 不死者の事とあって、再生数が伸びに伸びた。 これに気を良くしたのが、発起人である琉璃ちゃんであった。 事の始まりは去年の春からだという。 ある高校生アイドルグループのサクセスストーリーにいたく感
0203 転生者が政治に参加するようになってからどれぐらい経つだろうか。 与党連立政権の中で、縦横無尽に活躍する不死者の支持は高く、そしてその支持を背景に様々な政策を実現していった。 だが、この状況を面白く思わないのは、与野党の旧態依然の連中や、世襲議員達である。 そこで特殊発生
0189 学校周辺は厳戒状態となった。 今までECMだの何だのを使ってカメラの類をハードキルしていたが、有名になってからそれらの方法が採れなくなった。 その代わり、警察の巡回を増やし、学校持ちで民間の警備会社にあれこれお願いする必要が出てきた。 多くの場合、学校の生徒を一目見たい
0192 表に出ると、私達の写真を撮る人が非常に多い。 見つかれば、警備員に叱られ写真の削除を求められるのだけど、それでも漏れは多いし、即時バックアップが取られると手出しは出来ない。 網羅性は今の所ないが、生徒の顔写真と名札から読み取れる苗字のデータベースが、有志の手によって出来
0191 ななみちゃんが生化学的に大きな発見をしたそうで、その記者会見を開いた。Q. 小学生にでも分かるように説明できますか?A. 小学生でも分かるような記事を書くのが貴方の仕事であって、小学生のような質問をするのは貴方の仕事ではない。 ここがアメリカで、英語で記者会見をやってい
0195 歩く。家を出て学校へ向かう。 伸びやかに続く坂を登った先に校門があり、校舎がある。 お店に使う材料の殆どは事前に発注するのだけど、当日になっていいものが入る事もある。そんなわけで、朝一の購買は日課になっている。 授業が始まる前に仕入れをして、材料を冷蔵庫に詰める。 その
0194 奈美は不思議な雰囲気のある子だから、独特な世界感の工芸品に妙に納得がいくと言うのが世間の評判だった。 春日阿由武ひじりのHHHは、流石にそのキャラが公開されると、「あんな小娘に!」と怒る人もいた。 とはいえ、雑誌の連載から数えて半世紀近い人生相談は、彼女たちがやってきた
0196「さて、今日の会見では特に面白い事なかったけど、何か質問とかあるかな?」 今日の配信では、前段というか学校公式の定例会見で特に目立った話がなかったので、質問タイムとなった。別にゲーム配信に切り換えても良かったけれど、疲れていたのもあっただろう。 最初の質問は「不死者として
0202 稜邦中学校に於ける生徒受け入れに関する特措法の件で、教員の採用が進んでいった。 教員の半分は、具体的な研究職で、教員としての仕事を請けるのを条件に自由に研究できる環境を提供するというものだ。 研究の内容は、所謂理系の分野に限らず、哲学や歴史学のような文系の分野や音楽、芸
0200 黄色の場合以降のごたごたがあったが、我々Vtuberの活動は止まらない。 というか、不死者であることが分かった所為で、真生ちゃんルイちゃん含めて三人の引き合いが凄い。 ルチルちゃんがちょっと可哀想だが、それでも学校の話が聞けると、リスナーは多い。 真栄田さんは相変わらず
0199 今日も定例記者会見。 最近、私達の事に関して、非科学的な陰謀論が登場している。 どうやら、私達の正体は爬虫類人間で、政治家や芸能人を、ゴム人形に置き換えて5Gでコントロールしていると言うことらしい。 なんじゃそりゃって感じですけど、羊子さんたちが頑張れば頑張るほど、それ
0198「体育嫌いの問題は、体育そのものが悪いのではなくて、指導要綱が悪かったと言うだけだし、数学嫌いの問題も同じ問題ってだけだろうと言う話なので、その辺対策するのは文科省の仕事なんですね。 それを単純に教員への押しつけで解決出来ると思っていたら愚かだよ。 体育好きが多ければもっ
「御堂さん?」 呼ばれて振り向くと、只見さんがいた。「あ、水主ちゃんの……」「唯でいいよ。 模擬店の収支計算が終わったので、明細もって来ました」 彼女は、色々と複雑な事情で、校内の事務手伝いをしているのだ。「ありがとうございます」「お店、繁盛してました
「あ、真生ちゃん、ルイちゃん。いらっしゃい」「ちさとちゃんがお店出して無視するわけにはいかないでしょう!」 二人が、元気ににこやかに入ってくる。「ありがとうねぇ。何飲む? 冷蔵庫から選んでね」「あ、千代盛のワンカップなんてあるんだぁ」「エヌマーケットブルーイングのビールもあるんだ
0221 命と琉璃が北アフリカでの仕事を終えて帰って来た。テロリストのキャンプを二人で壊滅させてきたと言う。 米軍基地経由で、航空自衛隊の基地に到着し、そこから事務所の車で街に入る――今日の話をする前に、そこに至る話をしよう。 自衛隊訪問ロケ以降、私達は体力派アイドルと目されるよ
「踵様、それにしても困った人ですな。あの方は」 セバスチャンと僕は空港で一人の老人を待っていた。 その困ったちゃんとは、アレクサンダー・F・ポーター退役陸軍大佐だ。楽しい人ではあるが、十中八九何か問題を引き連れてやってくる。「アレックスと面識があったんだね?」「わたくしとしては、
喫茶店の午後。 少しゆったりした時間は、気分もよくて好きな時間だと前にも言ったけれど、どうも、この時間になると暇をしていると見られるのか、店主のご子息から妙なアプローチが舞い込んでくる。 今回は、兄の方である。やや痩せ型で運動が出来なさそうな割に、勉強も出来るかというと微妙な感
「ちさとは、料理をしないんじゃなくて、できないんじゃないか問題があってな」 楓が少し申し訳なさそうにして言った。 この謎の問題提起に、クラス一同が興味を示した為、月曜日の午後は調理実習室に集まることになった。 調理実習室は、何処の学校も馴染みのあるようなステンレスの大きなテーブル
真栄田峰は、真生とルイのリスナーを熱心に続けていたが、そうなると自然と他のVTuberも目に入ってくる。 真生とルイのノリに慣れてきていた頃だったので、若い子のはちゃめちゃなトークも楽しめるようになっていた。 彼女自身、ラジオ番組を長らくやっていたので、逆にリスナーの立場になれ
こう言っては自慢になってしまうが、この学校、美食家が幾人も通っている。 元々、一国の王様だったり独裁者だったりするような人間がいるので、それも当然と言えば当然か。 尤も、中学生が超高級店に行っても嫌な顔をされるだけだから、その舌を満足させることは、なかなか難しいのだけど&hel
面倒くさい客は面倒くさい客で、色々考えさせられるものだ。 いつものように、喫茶店で給仕をしていると、思想が大いに偏りっていそうなオバサンに「貴方中学生でしょ!」と突然詰められた。 どうも、中学生が勤労しているのは正しくないと言う思想を持っているらしい。 貴方の中の想定される日本
月曜日の十六時十三分、俊子は帰り道にちさとを見かける。 手を上げて、声を掛けようとした瞬間――拉致されてしまった。 黒くて大きめのバンが横付けされて、ドアが開いた瞬間、車内から伸びた腕に、引っ張り込まれたのだ。 同日十六時十五分、部屋でビールを呑んでいた楓のスマホに、俊子からの
関藤子先生が亡くなられた。 彼女が退職したのは十年ほど前だから、彼女を知るものは多い。 度々学校に手紙が届いていたが、ここ一年それも途絶えていた。 享年八十二歳、退職したのは心臓を悪くしたからである。そして、その病気が死因というわけである。 当然、葬式には学校関係者が出向く訳だ
ある詩人が言う。 それが死を免れないからこそ死を免れないものを嫌う人と、それが死なないのを望むからこそ死を免れないものを愛する人との間にいつも、いつも深い溝があるだろう。 この問題は、本来、命に限りのある人間の問いであり、答えであるのだけれど、我々には退っ引きならないほど、切実
俊子ちゃんが、どうにもカナちゃんの事を気にしている。そして、この頃、転生者の家に入り浸ってるらしいと言う情報を手に入れた――どうもそれが気に入らないのだ。 とはいえ、具体的にどう言って止めてやるものか悩ましい。 と、言う事で……例によって私の所に相談
土曜日の喫茶店。昼も過ぎ、入ってくる客も落ち着いて、長居している客だけになった時間。 仕事が楽になったと言う安堵感もあるが、静かに時間が流れるこの雰囲気は好きだ。 そんな時を見計らって、店主の下の子がやってきた。「お姉さん。ちょっといい?」 見た感じ普通の小学校五年生だ。太くも
私がせいぜい、喫茶店のバイトしか収入源がないと言う事や、新人と言うのも理由なのかも知れないけれど、クラスメイトが代わる代わる遊びに誘ってくれたりするので、来週末充実している。 今週も「ちさとちゃん、今度の日曜日に猫カフェ行かない?」と紡季ちゃんに誘われたので、近所にそんなものあ
喫茶店の仕事、やれることが増えると、当然やることが増える訳で、それを見込んでのお給料なので、それは仕方がない。そうなのだけど、それはそれとして、手が空くと暇をしているように見られるのは癪だ。 今日も今日とて、上の息子さんがちょっかいをかけに来た。 一応、喧嘩腰ではなかったので、
この学校は、郊外というには田舎過ぎるし、片田舎と言うには人里の気配のある街にある。 裏には里山が広がっていて、キャンパスは、学校の規模から考えたら広大である。 広大であるには色々理由があるが、その一つは、マッドサイエンチスト連中の研究施設があるからだ。 尤も、この世界を劇的に変
ちさとの事を目に掛けているのは、楓だけではない。 というよりも、この学校、新入生に優しい。 そもそも、この地獄にやってきた連中と言うのは、どこかの世界でひとかどの仕事を仕出かした連中なので、お互いに敬意を持つ事が常識となっている。 専門外の事は、つまり、自分の知らないことに対す
ちさとのバイト先問題は、ひじりによって解決した。 学校からほど近くの個人営の喫茶店に、無理矢理店員の口を作ったという話だ。 店主は、喫茶店の上階にあるマンションのオーナーで、一言で言えば、趣味でやっている喫茶店である。 悪い人ではないが、俗物的というのが、ひじりの見立てで、それ
この学校では、何かと武闘派がいるので、自衛隊や警察、民間軍事会社から声が掛かって訓練を施したりしている。 元の世界で槍だの剣だのを振るってた連中でも、戦闘センス、野生の勘と言うモノはフルに生きているので、この世界の武器や戦闘システムをひとたび学べば、優秀な教官になるのだ。 実際
「また飲んでやがる」 ちさとが、楓に「いい酒が入ったから飯を食いに来い」と言われて呼ばれたら、三人が料理しながらキッチンドリンカーをしていた。「学校じゃ飲めない規則だからな!」 楓はそう言って、缶ビールを一杯開けようとしていた。「いい酒飲むのに、先に舌が馬鹿になったら勿体ないでし
月曜日はお店が定休日だから、今日はまっすぐ家に帰れる。 基本的に朝食も夕食も、お店の賄いがあるし、昼は給食もある。そうなると、日曜月曜以外は、何の用意もなくてもご飯が食べられるのだ。そして、日曜日は何かと遊びに付き合うと――誠に心苦しいが――ご飯を奢って貰えたりする。となると、
仕事に慣れたと言うのは実にいいことだ。いいことなのだけど。「おきゃくさまー、当店、コーヒー一杯でリーズナブルに座席を提供するお店じゃありませんので、何も頼まれないようでしたらお帰りくださいませー」 明るい声色の直後に、地声で「はいはい、残り半口飲んで席を空けなさい」なんて脅しつ
喫茶店に勤め始めて、不快なことはクラスメートの冷やかしと、なんとも俗物的な店主とのぎこちない会話ぐらいか。 可愛い衣装も悪くない。クリーニング代は店主持ちだし、着替えの制服は違うデザインで用意されていた――と言うか、誰の所為か知らないが種類は増え続けている。 冷静に考えると怖い
楓が、校庭の端の方に立ち、ジリジリと間合いを見計らっている。 ある瞬間、抜刀し、空に斬りかかり、避け、飛び、回り込み――と流れるような動作を続けている。「楓さん、真剣で練習するんですね」 ななみに聞いてみると、「ああ、あれ、幽霊的な何かと戦ってるそうよ」と事もなげに話してくれた
私は、この真栄田峰と言う人が苦手だ。 話してみれば、ただの気のいいオバサンではあるのだが、なんだかんだで大女優だから、距離感がつかめないし、初見の印象が完全なる不審者だったからだ。 彼女の仕事も色々あって、暇になりつつあるらしい。面倒な事に、度々こっちに遊びに来るのだ。 翻って
「三惠子ちゃん、お誕生日おめでとう!」 今日は、担任である三惠子先生の誕生日である。 サプライズパーティーと言いつつ、流石に校内では酒が飲めないと言う理由で、有志が楓邸に集まった。 三惠子ちゃんは感涙を押しとどめようと、かなり不細工な顔で我慢していた。「いいんですか? 一応、普通
朝九時、模擬店開店である。「ちさとちゃん、ローストビーフ」「はいよー」「こっち、ガリピータンちょーだい」「はいはいー」 朝から大入りで繁盛している。「ちさと、やっとるかの?」 楓さんやってきた。「おかげさまで。 瓶と缶、ワンカップは冷蔵庫に値段張ってます。一品一杯はお願いします
俺、中貝カズマは、二年A組に配属された。 中本の言うには、「四六時中私に監視されるのいやでしょ?」であった。 朝は黒服の"兵舎"で朝早く叩き起こされ、登校前にジョギングと体操をみっちりさせられる。「俺は頭脳労働派なんだ」と言うと、他の男どもは「頭脳労働でもい
「ルチルちゃん、温泉行ったみたいだね? 楽しかった?」 榛名、牡丹、百合で遊びに行った時の話だ。榛名から「悩みあるみたいだけど大丈夫?」と聞かれたのだ。あの時、峰ちゃんに説教されたけど、まだ得心いってなかった訳である。若いから仕方ないか……「楽しかった
三惠子ちゃんが悩んでいる事を、学年主任の平先生に相談する。「そうねぇ、難しいねぇ」 と、やや人ごとである。「そもそも、どういう基準で教員って決まってるんですか?」 細かく聞くと、中央官庁から派遣されているのは、現状校長と理事だけであり、その他は、一部中央からの横やりがあるのを除